「昨日からやめました」が決め手―禁煙外来で読み解く行動変容ステージ
第107回医師国家試験 C問題 第25問
国試問題にチャレンジ
61歳の男性。生来健康である。1週前に孫が生まれたのをきっかけに禁煙を思い立った。昨日から禁煙しているが,イライラ感が強いため禁煙外来を受診した。その時の医師と患者の会話を以下に示す。 患者「昨日起きてから禁煙しているのですが,たばこを吸いたくてたまらなくなります」 医師「それは大変ですね。しかし,禁煙を始められたのは,たいへん立派だと思います」 患者「ありがとうございます。禁煙のつらさがよくわかりましたので,適切な指導が必要だと思って来ました」 医師「わかりました。それでは一緒に頑張りましょう」 行動変容のステージはどれか。
- a.無関心期
- b.関心期
- c.準備期
- d.実行期
- e.維持期
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
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医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
行動変容ステージモデル(トランスセオレティカルモデル)では、まだ行動していない段階を無関心期・関心期・準備期に、すでに行動を始めた段階を実行期(6か月未満)・維持期(6か月以上)に分けて判定します。本例は受診前日から禁煙を始めているため、指導を求めて来院したことにとらわれず、実行期と判断するのが正しい考え方です。実行期はニコチン離脱症状や誘惑により逆戻りが起こりやすい時期であり、努力の称賛による自己効力感の向上、引き金となる状況への対処法の検討、ニコチン置換療法などによる離脱症状の緩和が有効です。ステージに合わせて支援の内容を変え、逆戻りしても再挑戦を支えるという視点は、禁煙指導をはじめ生活習慣の改善支援全般に役立ちます。
解答・解説
正解はdです
状況の整理
61歳男性が、孫の誕生をきっかけに禁煙を決意し、受診前日から実際にたばこをやめている。禁煙開始から1日程度で、強い喫煙欲求とイライラ感(ニコチン離脱症状)が出たため、専門的な支援を求めて禁煙外来を訪れた。
考え方
行動変容ステージモデル(トランスセオレティカルモデル、Prochaska らが提唱)では、人が健康行動を身につける過程を、無関心期→関心期→準備期→実行期→維持期の5段階に分ける。ステージを判定する鍵は「すでに行動を始めているか」と「その期間」である。 ・まだ行動していない:変える気がない(無関心期)、6か月以内に変えるつもり(関心期)、1か月以内に変えるつもりで準備を始めている(準備期) ・すでに行動している:開始から6か月未満(実行期)、6か月以上継続(維持期) 本例は「昨日から禁煙している」ので、すでに行動を開始しており、その期間は6か月未満である。したがって実行期にあたる。「適切な指導が必要だと思って来た」という発言は準備期のように見えるかもしれないが、行動をすでに起こしている点が決め手となる。
選択肢考察
- ×a. 無関心期
無関心期(前熟考期)は、今後6か月以内に行動を変えるつもりがない段階である。問題の重要性を認識していない、あるいは過去の失敗からあきらめている人が多い。本例は自ら禁煙を決意して実行しており、該当しない。この段階では情報提供や、喫煙が本人・家族に与える影響への気づきを促す支援が中心となる。
- ×b. 関心期
関心期(熟考期)は、6か月以内に行動を変えようと考えているが、まだ実行に移していない段階である。行動のメリットとデメリットの間で迷っている(両価性がある)のが特徴である。本例はすでに禁煙を始めているため該当しない。
- ×c. 準備期
準備期は、1か月以内に行動を変えるつもりで、何らかの準備(禁煙開始日を決める、相談先を探すなど)を始めている段階である。本例は受診前日からすでに禁煙を実行しているので、準備期は通過している。「指導を受けに来た」ことだけに注目すると準備期と誤りやすい。
- ○d. 実行期
実行期は、望ましい行動を始めてから6か月未満の段階である。本例は昨日から禁煙を開始しており、これに該当する。実行期は離脱症状や誘惑が強く、逆戻り(再喫煙)が起こりやすい時期であるため、努力をほめて自己効力感を高めること、喫煙の引き金となる状況への対処法を一緒に考えること、ニコチン置換療法(ニコチンパッチ・ガム)やバレニクリンなどの薬物療法で離脱症状を和らげることが有効である。会話中の医師の対応(つらさへの共感と、禁煙を始めたことの称賛)は、この段階にふさわしい支援といえる。
- ×e. 維持期
維持期は、行動を始めてから6か月以上継続している段階である。この段階では再発予防が支援の中心となる。本例は禁煙開始から1日程度であり、該当しない。
行動変容ステージモデル(トランスセオレティカルモデル)
・無関心期(前熟考期):6か月以内に行動を変える意思がない ・関心期(熟考期):6か月以内に行動を変える意思がある ・準備期:1か月以内に行動を変える意思があり、準備を始めている ・実行期:行動を変えて6か月未満 ・維持期:行動を変えて6か月以上継続 ステージは一方向に進むとは限らず、実行期や維持期から逆戻り(relapse)して前の段階に戻ることもある。逆戻りは失敗ではなく、変化の過程でよく起こることとして扱い、再挑戦を支える。
ステージに応じた支援の例
・無関心期:行動を変えない場合のリスクや、変えることの利益について情報提供し、関心を引き出す。 ・関心期:変化に伴う不安や障害を聞き取り、動機づけ面接などで両価性を解消していく。 ・準備期:具体的な目標や開始日の設定、計画づくりを支援する。 ・実行期:取り組みを称賛し、離脱症状や誘惑への対処法を示す。 ・維持期:再発のきっかけとなる状況を予測し、対策を立てておく。
ニコチン離脱症状
禁煙後数日以内に始まり、多くは1週間以内に最も強くなって、その後2〜4週間ほどで軽快していく。イライラ感、落ち着きのなさ、集中困難、不安、抑うつ気分、食欲増加、強い喫煙欲求などがみられる。禁煙外来ではニコチン依存症の診断(TDS:タバコ依存症スクリーニングなど)にもとづき、薬物療法と行動療法を組み合わせて支援する。
POINT
・行動変容ステージは、行動開始の有無と期間で判定する。 ・行動前:無関心期(6か月以内に変える気なし)→関心期(6か月以内に変える気あり)→準備期(1か月以内に変える気あり) ・行動後:実行期(6か月未満)→維持期(6か月以上) ・すでに禁煙を始めて日が浅い人は実行期であり、逆戻りを防ぐ支援が重要である。
