StudyMed医師国家試験

2分間で何回吹き込む?―「30:2」から逆算する人工呼吸の正しいペース

第107回医師国家試験 C問題 第13問

国試問題にチャレンジ

第107回 C問題 第13問

外来待合室で心肺停止となった成人に対して,研修医2人が胸骨圧迫とバッグバルブマスク人工呼吸により効果的な心肺蘇生法を行っている。  2分間の人工呼吸の回数に最も近いのはどれか。

  1. a.10回
  2. b.20回
  3. c.30回
  4. d.40回
  5. e.50回

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は心肺蘇生で、2分間に人工呼吸を何回行うかを見積もる問題だ。ポイントは、気管挿管などの高度な気道確保がまだなく、バッグバルブマスクで換気しているという状況。この条件で胸骨圧迫と人工呼吸の比がどうなるかを思い出せば、あとは簡単な計算で答えが出るよ。
医学生医学生
OSCEのBLSの練習で何度もやりました。成人は30:2ですよね。でも救助者が2人だと15:2だった気もします。
ドクタードクター
そこはよく混乱するところだね。15:2になるのは小児で、医療従事者など救助者が2人以上いる場合だ。成人では救助者が1人でも2人でも30:2で変わらない。今回は成人だから30:2で考えよう。
医学生医学生
では、胸骨圧迫のテンポは1分間に100〜120回でしたね。
ドクタードクター
その通り。深さは約5cmで6cmを超えない、毎回胸郭を元に戻す、というのもセットで覚えておこう。さて、30回の圧迫には何秒かかるかな。
医学生医学生
100回/分なら18秒、120回/分なら15秒です。
ドクタードクター
そう。そこに人工呼吸2回が加わる。1回約1秒かけて胸が上がる程度に吹き込み、圧迫の中断は10秒未満にとどめるのが原則だから、換気には数秒かかる。すると1サイクルはどのくらいになる?
医学生医学生
15〜18秒に数秒を足して、だいたい20〜25秒ですね。2分は120秒なので、約5サイクルです。
ドクタードクター
正解。1サイクルに人工呼吸2回だから、5サイクルで約10回。答えは10回だ。ガイドラインでも「2分間でおよそ5サイクル」が目安で、ちょうど約2分ごとにリズムチェックと圧迫担当者の交代をするタイミングと重なるんだ。
医学生医学生
換気の時間を無視して多めに見積もったらどうなりますか。
ドクタードクター
いい確認だね。2分間の圧迫が200回なら200÷30×2で約13回、240回でも約16回。実際には換気中の中断があるからこれより少なくなる。どう見積もっても選択肢の中で一番近いのは10回だ。
医学生医学生
20回という数字はどこから来るんでしょうか。なんとなく聞き覚えがあります。
ドクタードクター
それは高度な気道確保後の話だね。気管挿管や声門上気道デバイスが入ったら、胸骨圧迫は中断せずに続け、換気は6秒に1回、つまり1分間に10回を非同期で加える。2分間なら20回になる。今回はマスク換気だから、この状況には当てはまらない。
医学生医学生
気道確保の有無で、圧迫と換気を同期させるかどうかが変わるんですね。
ドクタードクター
そういうこと。では30回、40回、50回はどうだろう。
医学生医学生
救急科の実習で、緊張した研修医の先生がバッグをどんどん押してしまって、指導医に止められていたのを思い出しました。換気が多すぎるのは良くないんですよね。
ドクタードクター
まさにその場面が大事な教訓なんだ。換気が多すぎると、まず胸骨圧迫の中断が長くなって冠灌流圧や脳灌流圧が下がる。さらに陽圧換気で胸腔内圧が上がると静脈還流が減り、圧迫で生み出せる心拍出量も落ちてしまう。2分間で50回なんて、ほとんど圧迫する時間が残らないね。
医学生医学生
マスク換気だと胃に空気が入ってしまう問題もありますか。
ドクタードクター
ある。胃が膨らむと嘔吐や誤嚥の原因になるし、横隔膜が押し上げられて換気もしにくくなる。だから1回の量は胸が軽く上がる程度で十分なんだ。もう一つ、人工呼吸の訓練を受けていない、あるいはためらう市民救助者は胸骨圧迫のみのCPRでよい、というのも知っておこう。
医学生医学生
結局、現在の蘇生は「質の高い胸骨圧迫を途切れさせないこと」が最優先ということですね。
ドクタードクター
その理解で完璧だ。実際の現場では、2分ごとに圧迫担当を交代して疲労による質の低下を防ぎ、換気担当は回数とペースを意識的に控えめにする。数字を覚えるだけでなく、なぜその数字なのかを理解しておくと、緊迫した場面でも迷わず動けるよ。

まとめ

高度な気道確保のない成人の心肺蘇生では、救助者の人数にかかわらず胸骨圧迫と人工呼吸を30:2で行います。圧迫は100〜120回/分なので30回に15〜18秒、換気2回に数秒かかり、1サイクルは約20〜25秒、2分間で約5サイクル、人工呼吸は約10回となります。気管挿管などの高度な気道確保後は圧迫を中断せず6秒に1回(10回/分)の非同期換気となり2分間で約20回、小児で救助者が2人以上なら15:2と、状況によって数値が変わる点に注意が必要です。過剰な換気は圧迫の中断を長くし、胸腔内圧上昇による静脈還流低下やマスク換気での胃膨満・誤嚥を招くため有害です。各数値の根拠を理解しておくことは、胸骨圧迫の質を最優先とする現在の蘇生を、実際の現場で確実に実践するための土台になります。

解答・解説

正解はaです

問われていること

成人の心肺停止に対し、気管挿管などの高度な気道確保を行わず、バッグバルブマスク(BVM:自己膨張式バッグにマスクを接続した換気器具)で換気しながら心肺蘇生(CPR:cardiopulmonary resuscitation)を行っている。このとき2分間に行う人工呼吸の回数を見積もる問題である。

前提となる蘇生ガイドラインの数値

・胸骨圧迫のテンポ:1分間に100〜120回(本問出題時のガイドラインでは「100回/分以上」とされていた)。 ・高度な気道確保がない場合の胸骨圧迫と人工呼吸の比:成人では救助者の人数にかかわらず30:2。 ・1回の換気は約1秒かけて胸が上がる程度に吹き込み、人工呼吸のための胸骨圧迫の中断は10秒未満にとどめる。 ・約2分ごとにリズムチェックと圧迫担当者の交代を行う。

計算

1サイクル=胸骨圧迫30回+人工呼吸2回である。 ・胸骨圧迫30回にかかる時間:100回/分なら18秒、120回/分なら15秒。 ・人工呼吸2回(圧迫中断)にかかる時間:数秒(10秒未満)。 したがって1サイクルはおよそ20〜25秒となり、2分間(120秒)では約5サイクル、人工呼吸は約5×2=10回となる。 換気の時間を無視して上限側に見積もっても、2分間の胸骨圧迫が200回(100回/分の場合)なら200÷30×2≒13回、240回(120回/分の場合)なら16回であり、実際には換気中の中断時間があるためこれより少なくなる。いずれの見積もりでも選択肢の中で最も近いのは10回である。ガイドラインでも「2分間でおよそ5サイクル」を目安としている。

選択肢考察

  1. ○a.  10回

    30:2のCPRでは1サイクルが約20〜25秒(胸骨圧迫30回に15〜18秒+換気2回に数秒)かかるため、2分間で約5サイクル、人工呼吸は約10回となる。換気時間を無視した上限の見積もり(13〜16回)と比べても最も近いのは10回である。

  2. ×b.  20回

    20回は、気管挿管などの高度な気道確保後に胸骨圧迫を中断せず連続して行い、6秒に1回(10回/分)の換気を非同期で加える場合の2分間の回数に相当する。本問はバッグバルブマスクによる換気であり、30:2で胸骨圧迫を中断して換気するため、2分間の換気回数は約10回にとどまる。

  3. ×c.  30回

    2分間に30回の換気を行うには、胸骨圧迫と人工呼吸の比を大きく換気側に寄せる必要があり、30:2の比とは合わない。換気が多すぎると胸骨圧迫の中断時間が延びて冠灌流圧・脳灌流圧が低下するうえ、胸腔内圧上昇による静脈還流の減少も招き、蘇生効果を損なう。

  4. ×d.  40回

    30:2のCPRでは到底到達しない回数である。過換気は胸腔内圧を上昇させて静脈還流と心拍出を減らし、BVM換気では胃膨満から嘔吐・誤嚥を招く危険もあるため避けるべきである。

  5. ×e.  50回

    2分間で50回はおよそ2〜3秒に1回の換気に相当し、胸骨圧迫を行う時間がほとんど残らない。胸骨圧迫の質を最優先とする現在の心肺蘇生の考え方とは相容れない。

成人の質の高い胸骨圧迫(JRC蘇生ガイドライン2020)

・部位:胸骨の下半分。 ・深さ:約5cm(6cmを超えない)。 ・テンポ:100〜120回/分。 ・毎回の圧迫後に胸郭を完全に元の位置に戻す。 ・中断を最小限にする(人工呼吸や電気ショックのための中断も10秒未満)。 ・約2分(5サイクル)ごとに圧迫担当者を交代し、疲労による質の低下を防ぐ。

人工呼吸

・高度な気道確保なし:成人では救助者1人でも2人でも30:2。1回約1秒で胸の上がりが見える程度の量を吹き込む。 ・高度な気道確保(気管挿管、声門上気道デバイス)あり:胸骨圧迫は中断せず連続して行い、換気は6秒に1回(10回/分)を目安に非同期で行う。 ・人工呼吸の訓練を受けていない、あるいは行う意思のない市民救助者は胸骨圧迫のみのCPRでよい。

小児の場合

救助者が1人なら30:2、医療従事者など2人以上なら15:2とする。成人とは比が異なる点に注意する。

換気過多が有害な理由

過剰な換気は胸腔内圧を上げて静脈還流を減少させ、心拍出量・冠灌流圧を低下させる。また、マスク換気では胃内に空気が入り、嘔吐・誤嚥の原因となる。

POINT

・成人CPR(高度な気道確保なし)は胸骨圧迫:人工呼吸=30:2、1サイクル約20〜25秒、2分間で約5サイクル=人工呼吸約10回。 ・胸骨圧迫は100〜120回/分、深さ約5cm(6cmを超えない)、中断は10秒未満。 ・高度な気道確保後は連続圧迫+6秒に1回(10回/分)の非同期換気。 ・小児で救助者2人以上なら15:2。 ・過換気は静脈還流を減らし有害である。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。