指が届くのはどこまでか―内診で「触れる」唯一の臍帯異常、臍帯脱出
第107回医師国家試験 B問題 第24問
国試問題にチャレンジ
内診で診断できる臍帯異常はどれか。
- a.巻絡
- b.脱出
- c.過捻転
- d.真結節
- e.卵膜付着
対話形式の解説
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ドクターまとめ
内診は子宮口の開大度、頸管の展退、先進部の下降度や卵膜の状態などを指で評価する診察であり、診断できるのは子宮口付近や腟内に存在する異常に限られます。臍帯異常のうち内診で直接触知できるのは、破水前の臍帯下垂と破水後の臍帯脱出で、拍動する索状物として触れます。臍帯巻絡、過捻転、真結節、卵膜付着はいずれも子宮腔内の異常で、超音波断層法(カラードプラ)や娩出後の観察で診断し、卵膜付着の血管が子宮口上を走る前置血管は破水時の胎児失血に注意が必要です。臍帯脱出は胎児の急速な低酸素に直結する超緊急事態で、先進部の用手的挙上、骨盤高位・膝胸位、緊急帝王切開で対応します。「その手技で到達できる場所はどこか」という解剖学的な視点は、診察法と疾患を結びつけて理解する基本になります。
解答・解説
正解はbです
内診とは、検者が腟内に指を挿入し、子宮口の開大度、頸管の展退・硬さ、先進部の種類と下降度、卵膜(胎胞)の状態などを指で触れて評価する診察である。したがって内診で「診断できる」のは、指の届く範囲、すなわち子宮口付近や腟内に存在する異常に限られる。 臍帯は通常、胎児と胎盤の間の子宮腔内にあり、内診指では触れられない。臍帯が先進部(多くは児頭)より先に子宮口付近まで下がってくる臍帯下垂・臍帯脱出の場合に限り、子宮口付近や腟内に索状で拍動する臍帯を直接触知でき、内診で診断が可能となる。 一方、臍帯巻絡・過捻転・真結節・卵膜付着などは子宮腔内で起きている異常であり、分娩前の診断は超音波断層法(カラードプラ法を含む)に頼るか、あるいは児の娩出後に胎盤・臍帯を観察して初めて確定する。 設問は「内診という手技で到達できる場所に異常があるか」を考えれば、解剖学的に容易に正解を導ける。
選択肢考察
- ×a. 巻絡
臍帯巻絡は、臍帯が胎児の頸部・体幹・四肢などに巻き付いた状態で、頸部巻絡が最も多く、分娩の20〜30%程度にみられるありふれた所見である。子宮腔内の胎児周囲での異常であるため内診指は届かない。分娩前にはカラードプラ法を用いた超音波断層法で推定でき、確定は児頭娩出時や出生時の観察による。多くは緩い巻絡で問題とならないが、分娩進行に伴って締め付けが強まると臍帯圧迫による変動一過性徐脈や胎児機能不全の原因となることがある。
- ○b. 脱出
臍帯脱出は、破水後に臍帯が胎児先進部より先に子宮口から腟内(さらには腟外)へ脱出した状態である。腟内に脱出した臍帯は、内診で索状の拍動する構造物として直接触知できるため、内診で診断できる。なお破水前に卵膜越しに先進部より下方に臍帯を触れる状態は臍帯下垂と呼ばれ、これも内診で診断できる。臍帯脱出では先進部と骨盤の間で臍帯が圧迫されて胎児への血流が途絶し、高度徐脈から短時間で胎児死亡や重篤な低酸素性障害に至りうるため、産科的超緊急事態である。先進部の児頭と骨盤との間に隙間ができる状況(骨盤位、横位、児頭未固定での破水、羊水過多、多胎、人工破膜など)で起こりやすい。
- ×c. 過捻転
臍帯は本来ゆるやかにらせん状にねじれているが、その捻転が過度に強い状態を過捻転という。臍帯血管が狭窄して血流障害をきたし、胎児発育不全や胎児機能不全、子宮内胎児死亡の原因となりうる。臍帯全体の性状の異常であり子宮腔内にあるため、内診では評価できない。超音波断層法で捻転の程度を推定できる場合もあるが、多くは娩出後の臍帯の観察で診断される。
- ×d. 真結節
真結節は、胎動により胎児が臍帯のループをくぐり抜けることで、臍帯に本物の結び目ができた状態である(Wharton膠質の局所的な肥厚や血管の蛇行による見かけ上の膨らみである偽結節とは区別する)。臍帯が長い場合、羊水過多、一絨毛膜性一羊膜性双胎などで起こりやすい。結び目が強く締まると血流が途絶し胎児死亡に至りうる。子宮腔内の異常であるため内診では診断できず、分娩前の超音波診断は困難なことも多く、多くは娩出後に確認される。
- ×e. 卵膜付着
卵膜付着は、臍帯が胎盤実質ではなく卵膜に付着し、臍帯血管がWharton膠質の保護を受けないまま卵膜上を走行して胎盤に達する付着異常である。露出した血管は圧迫や破綻を受けやすく、胎児発育不全や分娩時の胎児機能不全の原因となる。特にこの卵膜血管が子宮口を覆う位置を走る場合を前置血管といい、破水時に血管が断裂すると胎児失血により急速に胎児が危険な状態となる。診断は妊娠中の超音波断層法(カラードプラ法)による臍帯付着部位の確認、あるいは娩出後の胎盤の観察による。内診で臍帯付着部そのものを評価することはできない。
臍帯の基本
・長さは通常50〜60 cm程度。2本の臍帯動脈(胎児から胎盤へ静脈血を運ぶ)と1本の臍帯静脈(胎盤から胎児へ動脈血を運ぶ)がWharton膠質に包まれている。 ・臍帯動脈が1本のみの単一臍帯動脈は、胎児の形態異常(心・腎など)と関連することがある。
臍帯の主な異常と診断法
・臍帯下垂(破水前)/臍帯脱出(破水後):内診で触知、超音波でも確認可能 ・臍帯巻絡:超音波(カラードプラ)、娩出時の観察 ・過捻転:超音波、娩出後の観察 ・真結節:主に娩出後の観察(分娩前診断は困難) ・卵膜付着・前置血管:超音波(カラードプラ)、娩出後の胎盤の観察 ・過長臍帯/過短臍帯:娩出後の計測。過長臍帯は巻絡・真結節・脱出の、過短臍帯は分娩停止や胎盤早期剝離のリスクとなる。
臍帯脱出への対応
1.直ちに人手を集め、緊急帝王切開の準備をする。 2.内診指で先進部を押し上げ続けて臍帯への圧迫を軽減する。 3.骨盤高位や膝胸位をとらせ、先進部が臍帯を圧迫しにくくする。 4.臍帯を無理に子宮内へ戻そうとしたり、過度に触ったりしない(血管攣縮を誘発しうる)。 5.子宮口全開大で児頭が十分に下降しており、速やかに経腟分娩できる場合は、鉗子分娩・吸引分娩を選択することもある。
POINT
・内診で直接触れて診断できる臍帯異常は、臍帯下垂(破水前)と臍帯脱出(破水後)である。 ・巻絡、過捻転、真結節、卵膜付着は子宮腔内の異常であり、超音波断層法(カラードプラ)か娩出後の観察で診断する。 ・臍帯脱出は胎児の急速な低酸素に直結する超緊急事態で、先進部の用手的挙上、骨盤高位・膝胸位、緊急帝王切開で対応する。 ・卵膜付着で血管が子宮口上を走る前置血管は、破水時の胎児失血に注意。
