StudyMed医師国家試験

網目の血管と壊死のない肉芽腫―気管支鏡で見抜くサルコイドーシス

第107回医師国家試験 A問題 第16問

国試問題にチャレンジ

第107回 A問題 第16問

サルコイドーシスの気管支鏡検査所見として正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. a.気管支粘膜の白苔
  2. b.粘膜下血管の網目形成所見
  3. c.気管支肺胞洗浄〈BAL〉液中のリンパ球分画低下
  4. d.米のとぎ汁様の白濁した気管支肺胞洗浄〈BAL〉液
  5. e.経気管支肺生検〈TBLB〉での非乾酪性類上皮細胞肉芽腫

対話形式の解説

ドクタードクター
今回はサルコイドーシスの気管支鏡所見を問う問題だ。気管支鏡で得られる情報は、気道内腔の「肉眼所見」、気管支肺胞洗浄で得られる「BAL液の性状と細胞分画」、そして生検による「病理組織」の3つに分けて整理すると考えやすい。それぞれでサルコイドーシスらしい所見は何か、そして他の病気の所見が紛れ込んでいないかを見ていこう。
医学生医学生
サルコイドーシスといえば、健診の胸部X線で両側肺門リンパ節腫脹を指摘されて見つかる病気、というイメージです。
ドクタードクター
そうだね。原因不明の非乾酪性類上皮細胞肉芽腫が肺・リンパ節・眼・皮膚・心臓など全身にできる病気で、確定診断には組織で肉芽腫を証明することが重要になる。だから気管支鏡は診断の中心的な検査なんだ。まず肉眼所見から。サルコイドーシスの気管支粘膜はどう見えると思う?
医学生医学生
呼吸器内科の実習で気管支鏡を見学したとき、指導医の先生が「血管が網の目みたいに見えるでしょう」と言っていた症例がありました。あれがサルコイドーシスだったのかもしれません。
ドクタードクター
まさにそれだね。肉芽腫性の炎症が粘膜下に及ぶと、毛細血管が拡張・増生して網の目状に見える。粘膜下血管の網目形成と呼ばれ、本症に比較的特徴的な所見だ。粘膜の小結節や、腫れたリンパ節による気管支の外からの圧排がみられることもある。では、気管支粘膜の白苔はどうかな。
医学生医学生
白苔というと、口腔カンジダ症の白いこびりつきを思い出します。肉芽腫でも白っぽく見えたりしないでしょうか。
ドクタードクター
連想としては良いところを突いているよ。白苔はカンジダやアスペルギルスなどの真菌感染、あるいは扁平上皮癌の腫瘍表面や結核の潰瘍性病変のように壊死を伴う病変でみられる所見だ。サルコイドーシスの肉芽腫は壊死を伴わないのが本質だから、白苔は典型的ではない。
医学生医学生
次はBALですね。サルコイドーシスではリンパ球が増えるのか減るのか、ちょっと自信がありません。
ドクタードクター
ここは病態から考えよう。サルコイドーシスでは肺胞領域にTリンパ球、特にCD4陽性のヘルパーT細胞が集まって肉芽腫形成を進めている。だからBAL液は総細胞数が増え、リンパ球分画は上昇し、CD4/CD8比も上がる。3.5を超えると本症を強く示唆するとされているよ。
医学生医学生
では「リンパ球分画低下」は逆なので誤りですね。過敏性肺炎もリンパ球が増えると講義で習いましたが、そこはどう区別するんですか。
ドクタードクター
いい質問だ。過敏性肺炎もリンパ球は増えるけれど、典型的にはCD8陽性細胞優位でCD4/CD8比は低下することが多い。ただ病型によっては上がることもあるから、比だけで決めつけず、画像や抗原曝露歴と合わせて判断するのが大切だね。では、米のとぎ汁様の白濁したBAL液は?
医学生医学生
それはCBTの勉強で覚えました。肺胞蛋白症ですよね。
ドクタードクター
正解。多くは抗GM-CSF抗体による自己免疫性で、肺胞マクロファージがサーファクタントを処理できなくなり、PAS染色陽性の物質が肺胞に溜まる。そのため回収液が乳白色に濁るんだ。サルコイドーシスのBAL液は外観はほぼ透明で、変化の中心は細胞分画にある。
医学生医学生
最後のTBLBで非乾酪性類上皮細胞肉芽腫、これはサルコイドーシスの本態そのものなので正しいですね。病理実習で、類上皮細胞と多核巨細胞が集まっていて中心に壊死がない標本を見ました。
ドクタードクター
その通り。肺野に目立った陰影がなくても、肉芽腫は気管支血管束やリンパ路に沿って分布していることが多いから、TBLBで捕まえられることがある。最近は超音波気管支鏡ガイド下針生検で縦隔・肺門リンパ節から組織を得ることも多いね。ただし注意点がある。非乾酪性肉芽腫があればそれだけで確定、とはいかないんだ。
医学生医学生
結核とか、他の肉芽腫を作る病気を除外しないといけない、ということですか。
ドクタードクター
そう。結核は乾酪壊死を伴う肉芽腫が特徴だけど、真菌症、ベリリウム肺、過敏性肺炎なども肉芽腫を作る。組織所見に加えて、培養や曝露歴などで他疾患を除外して初めて診断が固まる。
医学生医学生
まとめると、サルコイドーシスの気管支鏡では、網目状の粘膜下血管、リンパ球増加でCD4/CD8比上昇のBAL液、生検での非乾酪性肉芽腫、の3点セットということですね。
ドクタードクター
完璧だ。臨床では肺以外の病変にも目を配ってほしい。血清ACEや可溶性IL-2受容体の上昇、活性型ビタミンD産生による高カルシウム血症も参考になる。眼のぶどう膜炎は眼科への紹介を忘れずに。そして心病変は房室ブロックや心室性不整脈で突然死につながりうるから、心電図や心エコーで必ずチェックしよう。
医学生医学生
肺の検査だけで終わらせず、全身を探しに行く病気なんですね。
ドクタードクター
その姿勢が一番大事だよ。

まとめ

サルコイドーシスは原因不明の非乾酪性類上皮細胞肉芽腫が全身に生じる疾患で、確定診断には組織学的な肉芽腫の証明が重要なため、気管支鏡検査が中心的な役割を果たします。気管支鏡では粘膜下血管の網目状増生、BALではリンパ球分画の上昇とCD4/CD8比の上昇、TBLBやEBUS-TBNAでは非乾酪性類上皮細胞肉芽腫が特徴的所見です。一方、気管支粘膜の白苔は真菌感染や壊死性病変、米のとぎ汁様の白濁BAL液は肺胞蛋白症、CD4/CD8比低下を伴うリンパ球増加は典型的な過敏性肺炎を示唆するため、所見と疾患を対応づけて鑑別します。診断には結核や真菌症など他の肉芽腫性疾患の除外が必要で、診断後は眼・皮膚・心臓など肺外病変、特に突然死につながりうる心病変の評価が欠かせません。検査所見を病態と結びつけて理解することは、びまん性肺疾患全体の鑑別力を高めることにつながります。

解答・解説

正解はb, eです

サルコイドーシスは、原因不明の非乾酪性類上皮細胞肉芽腫が肺・リンパ節・眼・皮膚・心臓など全身の臓器に形成される疾患である。胸部では両側肺門リンパ節腫脹(BHL: bilateral hilar lymphadenopathy)と肺野病変が代表的で、診断の確定には組織学的に肉芽腫を証明することが重要となる。そのため気管支鏡検査は、本症の診断過程で中心的な役割を担う。 気管支鏡検査で得られる情報は大きく3つに分けて考えると整理しやすい。 1. 気道内腔の直接観察(肉眼所見): 気管支粘膜の血管や結節の有無をみる。 2. 気管支肺胞洗浄(BAL: bronchoalveolar lavage。生理食塩水を末梢気道に注入・回収し、肺胞領域の細胞や成分を調べる検査): 回収液の性状と細胞分画をみる。 3. 経気管支肺生検(TBLB: transbronchial lung biopsy。気管支鏡を通して末梢肺組織を採取する検査)や、超音波気管支鏡ガイド下針生検(EBUS-TBNA)によるリンパ節の生検: 病理組織を得る。 サルコイドーシスでは、(1) 粘膜下の毛細血管が怒張・増生して網目状に見える、(2) BAL液ではリンパ球が増加し、特にCD4陽性Tリンパ球優位となってCD4/CD8比が上昇する、(3) 生検で乾酪壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫が得られる、という3点を押さえておけば、各選択肢の正誤を判断できる。逆に、他疾患に特徴的な所見(真菌感染や腫瘍による白苔、肺胞蛋白症の白濁したBAL液など)が選択肢に紛れ込んでいるので、それぞれがどの疾患の所見かを対応づけて除外する。

選択肢考察

  1. ×a.  気管支粘膜の白苔

    誤り。気管支粘膜に付着する白苔は、カンジダなどの真菌感染(気管支カンジダ症、アスペルギルス症)や、壊死組織を伴う病変(扁平上皮癌の腫瘍表面、結核性の潰瘍性病変など)でみられる所見である。サルコイドーシスの気道粘膜は、血管の網目状変化や小結節、場合により気管支の狭窄を呈するが、壊死や白苔を形成するのは典型的ではない。

  2. ○b.  粘膜下血管の網目形成所見

    正しい。サルコイドーシスでは気管支粘膜下に肉芽腫性炎症が及ぶことで、粘膜下の毛細血管が拡張・増生し、細い血管が網の目状に張り巡らされたように見える(網目状血管増生、network formation)。本症に比較的特徴的な気管支鏡所見として知られ、このほか粘膜の小結節や黄白色の小隆起、リンパ節腫大による気管支の外部からの圧排・狭窄がみられることもある。

  3. ×c.  気管支肺胞洗浄〈BAL〉液中のリンパ球分画低下

    誤り。サルコイドーシスでは肺胞領域にTリンパ球が集積するため、BAL液の総細胞数が増え、リンパ球分画は低下ではなく上昇する。増えるのは主にCD4陽性Tリンパ球(ヘルパーT細胞)であり、CD4/CD8比が上昇する(3.5を超えると本症を強く示唆する)のが特徴である。一方、過敏性肺炎でもリンパ球は増加するがCD8陽性細胞優位でCD4/CD8比が低下することが多く、両者の鑑別点となる(ただし過敏性肺炎の病型によっては比が上昇することもある)。

  4. ×d.  米のとぎ汁様の白濁した気管支肺胞洗浄〈BAL〉液

    誤り。米のとぎ汁のように白濁したBAL液は、肺胞蛋白症に特徴的な所見である。肺胞蛋白症では、肺胞マクロファージによるサーファクタントの処理が障害され(多くは抗GM-CSF抗体による自己免疫性)、肺胞内にPAS染色陽性のサーファクタント由来物質が貯留するため、回収液が乳白色に濁る。サルコイドーシスのBAL液は外観上ほぼ透明であり、細胞分画の変化(リンパ球増加)が所見の中心となる。

  5. ○e.  経気管支肺生検〈TBLB〉での非乾酪性類上皮細胞肉芽腫

    正しい。サルコイドーシスの病理学的本態は、中心部に乾酪壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫(非乾酪性類上皮細胞肉芽腫)であり、類上皮細胞や多核巨細胞が集簇して形成される。肺野に明らかな陰影がない症例でも、肉芽腫は気管支血管束やリンパ路に沿って分布していることが多いため、TBLBで検出されることがある。組織診断群として確定診断するためには、このような肉芽腫の証明に加え、結核(乾酪壊死を伴う肉芽腫)、真菌症、ベリリウム肺、過敏性肺炎などの肉芽腫を形成する他疾患の除外が必要である。

サルコイドーシスの概要

原因不明の全身性肉芽腫性疾患で、若年成人と中高年女性に発症のピークがある。無症状で健診の胸部X線写真でBHLを指摘されて見つかることが多い。障害されやすい臓器は肺・リンパ節のほか、眼(ぶどう膜炎)、皮膚(皮膚サルコイド、結節性紅斑)、心臓(房室ブロック、心室性不整脈、心不全)、神経などである。心病変は突然死の原因となりうるため予後に大きく関わる。

診断に役立つ検査所見

・画像: 両側肺門リンパ節腫脹(BHL)、リンパ路に沿った粒状影 ・血液: 血清ACE(アンジオテンシン変換酵素)上昇、血清リゾチーム上昇、可溶性IL-2受容体(sIL-2R)上昇、高カルシウム血症(肉芽腫内のマクロファージが活性型ビタミンDを産生するため) ・核医学: ガリウムシンチグラフィやFDG-PETでの集積 ・BAL: リンパ球増加、CD4/CD8比上昇 ・ツベルクリン反応: 細胞性免疫の変調により陰性化(陰転化)しやすい

気管支鏡検査所見と鑑別疾患の対応

・粘膜下血管の網目状増生、粘膜の小結節: サルコイドーシス ・粘膜の白苔: 真菌感染(カンジダなど)、壊死を伴う腫瘍や潰瘍性病変 ・米のとぎ汁様の白濁BAL液: 肺胞蛋白症 ・血性で回収ごとに赤みが増すBAL液: びまん性肺胞出血 ・BALで好酸球増加: 好酸球性肺炎 ・BALでリンパ球増加かつCD4/CD8比低下: 過敏性肺炎(典型例) ・BALで好中球増加: 特発性肺線維症の一部、細菌性肺炎、急性呼吸窮迫症候群など

肉芽腫の種類

・非乾酪性類上皮細胞肉芽腫: サルコイドーシス、ベリリウム肺、過敏性肺炎(小型で境界不明瞭なことが多い)、クローン病など ・乾酪性肉芽腫: 結核(乾酪壊死が特徴)、一部の真菌症

POINT

・サルコイドーシスの気管支鏡所見: 粘膜下血管の網目状増生(網目形成)。 ・BAL: 総細胞数増加、リンパ球分画上昇、CD4/CD8比上昇(3.5超で本症を示唆)。 ・TBLB: 非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を証明し、結核などの他の肉芽腫性疾患を除外する。 ・米のとぎ汁様の白濁BAL液は肺胞蛋白症、気管支粘膜の白苔は真菌感染や壊死性病変を考える。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。