StudyMed医師国家試験

「座れるか」「乗り移れるか」―寝たきり度は身体の動きだけで測る物差し

第106回医師国家試験 G問題 第57問

国試問題にチャレンジ

第106回 G問題 第57問

90歳の女性。夫との2人暮らしで,年金で生活している。認知機能は正常である。日中はベッド上での生活が主であるが,座位は保つことができ,車椅子には介助で移乗できる。  要介護認定を受ける際,障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)の判定に必要な因子はどれか。2つ選べ。

  1. a.座位の可否
  2. b.同居者の人数
  3. c.認知症の重症度
  4. d.世帯における収入
  5. e.車椅子移乗の可否

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は介護保険の要介護認定で使われる「障害高齢者の日常生活自立度」、いわゆる寝たきり度の判定基準を問う問題だ。ポイントは、この指標が何を評価する物差しなのかを正確に押さえること。選択肢には本人の身体機能に関するものと、それ以外の情報が混在しているから、そこを振り分けていこう。
医学生医学生
要介護認定って、家族構成やお金のことも全部ひっくるめて判断するイメージがありました。
ドクタードクター
そう誤解する人は多いね。要介護認定はあくまで「その人にどれだけ介護の手間がかかるか」を評価する制度で、その材料のひとつが寝たきり度だ。寝たきり度は主に身体の障害によって日常生活がどの程度制限されているかを、移動能力を軸にJ・A・B・Cの4ランクで評価するんだ。
医学生医学生
公衆衛生の講義で聞いた気がします。Jが一番軽くて、Cが一番重いんでしたっけ。
ドクタードクター
その通り。Jは「生活自立」で独力で外出できる。Aは「準寝たきり」で、屋内はおおむね自立しているけれど介助なしには外出しない。Bからが「寝たきり」で、日中もベッド上の生活が主体だが座位は保てる状態。Cは一日中ベッド上で、排泄・食事・着替えにも介助を要する状態だ。
医学生医学生
日中ベッド上が主体で座位は保てるということは、この方はランクBですね。座れるかどうかがBとCの境目になっているんですか。
ドクタードクター
まさにそこ。座位を保てるかがBとCを分ける基準だから、座位の可否は判定に必要な因子だ。さらにBは細分があって、自力で車椅子に移乗し食事や排泄をベッドから離れて行えればB1、介助で車椅子に移乗するならB2になる。
医学生医学生
介助で移乗できるので、この方はB2。車椅子移乗の可否も、B内の細分を決める因子なんですね。
ドクタードクター
そういうこと。ちなみにCも寝返りを自力でうてればC1、うてなければC2と分かれる。外出、ベッドから離れた生活、座位、車椅子移乗、寝返りと、移動や姿勢保持の能力を段階的に見ていく構造なんだ。
医学生医学生
では認知症の重症度はどうでしょう。認知症があると生活に介助が要るので、関係しそうな気もします。
ドクタードクター
鋭い疑問だね。でも認知機能は、寝たきり度とは別の「認知症高齢者の日常生活自立度」という指標で評価する。Ⅰ、Ⅱa・Ⅱb、Ⅲa・Ⅲb、Ⅳ、Mというランクがあって、寝たきり度と対をなす物差しなんだ。主治医意見書にも両方の記載欄がある。身体面と認知面を別々に測る、と覚えておこう。
医学生医学生
同居者の人数や世帯の収入は、身体機能とは関係ないので外れますね。でも在宅介護では家族の状況ってすごく大事な気がします。
ドクタードクター
その感覚は正しいよ。同居者の状況は、認定後にケアマネジャーがケアプランを立てるときには重要な情報になる。ただ寝たきり度や要介護度の判定そのものには使わない。収入も判定には関係せず、介護保険料の額やサービス利用時の自己負担割合、施設の食費・居住費の軽減などに関わる事柄なんだ。
医学生医学生
「判定に使う情報」と「サービスを組み立てるときに使う情報」を分けて考えればいいんですね。
ドクタードクター
その整理がとても大事。要介護認定の流れも確認しておこう。市町村に申請すると、認定調査員による訪問調査と、主治医による主治医意見書の作成が行われる。それをもとにコンピュータで介護にかかる時間を推計する一次判定、保健・医療・福祉の専門家による介護認定審査会での二次判定を経て、要支援1・2、要介護1〜5、非該当が決まる。
医学生医学生
地域医療実習で診療所を回ったとき、先生が主治医意見書を書いていました。寝たきり度の欄にチェックを入れていたのを思い出します。
ドクタードクター
医師は主治医意見書を書くことで認定に直接関わるし、審査会の委員になることもある。だから臨床に出ると、この判定基準は実務として必ず使う知識なんだ。患者さんの「座れるか」「移れるか」を日頃から具体的に観察しておくと、意見書も正確に書けるよ。

まとめ

障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)は、主に身体機能、特に移動や姿勢保持の能力によって高齢者の生活の制限を評価する指標で、J(生活自立)、A(準寝たきり)、B・C(寝たきり)の4ランクに分けられます。日中ベッド上が主体でも座位を保てればランクB、一日中ベッド上ならランクCであり、Bは車椅子への移乗が自力ならB1、介助ならB2に細分されるため、座位の可否と車椅子移乗の可否が判定に必要な因子となります。認知機能は「認知症高齢者の日常生活自立度」で別に評価し、同居者の状況や世帯収入は判定には用いず、ケアプラン作成や自己負担割合などに関わる情報です。医師は主治医意見書の作成を通じて要介護認定に関わるため、この判定基準は実際の診療でも欠かせない知識です。

解答・解説

正解はa, eです

問われていること

介護保険の要介護認定で用いられる「障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)」の判定基準を理解しているかが問われている。この指標は、主に身体的な障害によって高齢者の日常生活がどの程度制限されているかを、移動能力(外出できるか、ベッドから離れて生活しているか、座位を保てるか、車椅子へ移乗できるか、寝返りができるか)を軸に、J・A・B・Cの4ランク(各ランクをさらに1・2に細分)で評価するものである。

本例の当てはめ

・日中はベッド上での生活が主体 → 「寝たきり」に分類されるランクBまたはC ・座位は保つことができる → ランクB(ランクCは一日中ベッド上で過ごす状態) ・車椅子には介助で移乗できる → B2(自力で移乗できればB1) したがって本例は寝たきり度B2と判定される。判定の決め手となったのは「座位を保てるか」と「車椅子に移乗できるか(自力か介助か)」であり、これらが判定に必要な因子である。

考え方

寝たきり度は本人の身体的な生活機能だけを評価する物差しであり、家族構成や経済状況は評価対象にならない。また、認知機能の低下は別の指標である「認知症高齢者の日常生活自立度」で評価するため、寝たきり度の判定には用いない。「本人の身体機能か、それ以外か」「身体面か、認知面か」で選択肢を振り分ければよい。

選択肢考察

  1. ○a.  座位の可否

    寝たきり度のランクBは「屋内での生活は何らかの介助を要し、日中もベッド上での生活が主体であるが座位を保つ」状態と定義されている。一方ランクCは一日中ベッド上で過ごし、排泄・食事・着替えに介助を要する状態である。座位を保てるかどうかがランクBとランクCを分ける基準になっており、判定に必要な因子である。

  2. ×b.  同居者の人数

    寝たきり度は本人の生活機能を評価するもので、介護者の有無や同居人数といった家庭環境は判定の基準に含まれない。同居者の状況は、要介護認定を受けた後のケアプラン(どのサービスをどれだけ利用するか)を立てる際には重要な情報となるが、寝たきり度とは無関係である。

  3. ×c.  認知症の重症度

    認知症の程度は、寝たきり度とは別の「認知症高齢者の日常生活自立度(ランクⅠ、Ⅱa・Ⅱb、Ⅲa・Ⅲb、Ⅳ、M)」で評価する。要介護認定ではこの二つの指標がそれぞれ主治医意見書や認定調査に記載されるが、寝たきり度そのものは身体的な移動能力で判定し、認知機能は判定因子にならない。なお本例は認知機能正常である。

  4. ×d.  世帯における収入

    世帯の収入は寝たきり度の判定にも、要介護度の認定にも用いられない。所得は、介護保険料の額や、サービス利用時の自己負担割合(1~3割)、施設利用時の食費・居住費の軽減などに関係するものであり、生活機能の評価とは別の事柄である。

  5. ○e.  車椅子移乗の可否

    ランクBは、車椅子に自力で移乗し食事や排泄をベッドから離れて行うB1と、介助により車椅子に移乗するB2に分けられる。車椅子に移乗できるか、またそれが自力か介助を要するかは、ランクB内の細分を決める基準であり、判定に必要な因子である。本例は介助で移乗できるのでB2に相当する。

障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)判定基準

・生活自立 ランクJ:何らかの障害等を有するが、日常生活はほぼ自立しており、独力で外出する  J1:交通機関等を利用して外出する  J2:隣近所へなら外出する ・準寝たきり ランクA:屋内での生活はおおむね自立しているが、介助なしには外出しない  A1:介助により外出し、日中はほとんどベッドから離れて生活する  A2:外出の頻度が少なく、日中も寝たり起きたりの生活をしている ・寝たきり ランクB:屋内での生活は何らかの介助を要し、日中もベッド上での生活が主体であるが、座位を保つ  B1:車椅子に移乗し、食事・排泄はベッドから離れて行う  B2:介助により車椅子に移乗する ・寝たきり ランクC:一日中ベッド上で過ごし、排泄・食事・着替えにおいて介助を要する  C1:自力で寝返りをうつ  C2:自力では寝返りもうたない 判定の軸は「外出 → ベッドから離れた生活 → 座位 → 車椅子移乗 → 寝返り」という移動・姿勢保持の能力である。

認知症高齢者の日常生活自立度

認知症による生活上の支障の程度を、Ⅰ(何らかの認知症はあるが日常生活はほぼ自立)からⅡ(多少の意思疎通の困難や症状があっても誰かが注意していれば自立)、Ⅲ(日常生活に支障をきたす症状があり介護を要する)、Ⅳ(常に介護を要する)、M(著しい精神症状・問題行動や重篤な身体疾患があり専門医療を要する)まで評価する。寝たきり度と対をなす指標である。

要介護認定の流れ

1.市町村への申請(本人・家族など) 2.市町村職員などによる認定調査(心身の状況に関する基本調査)と、主治医による主治医意見書の作成。両者には寝たきり度・認知症自立度の記載欄がある。 3.一次判定:認定調査結果などをもとにコンピュータで介護に要する時間(要介護認定等基準時間)を推計する 4.二次判定:保健・医療・福祉の専門家からなる介護認定審査会が、一次判定結果・主治医意見書・特記事項をもとに審査し、要支援1・2、要介護1~5、非該当(自立)を判定する 5.市町村が認定し通知する 医師は主治医意見書の作成や介護認定審査会の委員として認定に関与する。

POINT

・寝たきり度(障害高齢者の日常生活自立度)は身体機能、特に移動能力で判定する(J・A・B・C) ・日中ベッド上主体で座位を保てる → ランクB、自力で車椅子移乗 → B1、介助で移乗 → B2 ・一日中ベッド上 → ランクC(寝返りの可否でC1・C2) ・認知機能は「認知症高齢者の日常生活自立度」で別に評価する ・家族構成・収入は要介護認定の判定には関係しない

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。