StudyMed医師国家試験

膵臓の「もう一つの顔」を測る―内分泌機能検査と紛らわしい検査たち

第106回医師国家試験 G問題 第14問

国試問題にチャレンジ

第106回 G問題 第14問

膵内分泌機能検査はどれか。

  1. a.BT-PABA試験
  2. b.pHモニタリング
  3. c.経口ブドウ糖負荷試験
  4. d.α1−アンチトリプシン法
  5. e.indocyanine green〈ICG〉試験

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、膵臓の機能を評価する検査を整理する問題だ。膵臓には外分泌と内分泌という2つの働きがある。それぞれをどの検査で調べるのか、そして膵臓以外を調べる検査が紛れていないか、という視点で見ていこう。まず、膵臓の外分泌と内分泌の違いを説明できるかな。
医学生医学生
外分泌は消化酵素や重炭酸イオンを膵管から十二指腸に出す働きで、内分泌はランゲルハンス島からホルモンを血中に出す働きです。
ドクタードクター
その通り。膵島ではα細胞がグルカゴン、β細胞がインスリン、δ細胞がソマトスタチンを分泌する。膵内分泌機能検査では、主にβ細胞のインスリン分泌能と、その結果としての耐糖能をみるんだ。そう考えると、どの検査が当てはまる?
医学生医学生
血糖とインスリンをみるなら、経口ブドウ糖負荷試験ですね。
ドクタードクター
正解。75 gのブドウ糖を飲んでもらい、負荷前と負荷後30分・60分・120分などに血糖値とインスリン値を測る。糖尿病の診断で使う検査として覚えている人が多いけれど、膵内分泌機能検査の代表でもあるんだ。
医学生医学生
負荷後30分のインスリン増加量を血糖増加量で割るインスリン分泌指数も、内分泌代謝内科の講義で習いました。
ドクタードクター
よく覚えているね。0.4未満なら初期分泌が低下していると判断する。2型糖尿病の早期の特徴として重要な指標だ。では、BT-PABA試験はどうだろう。
医学生医学生
名前に膵機能の検査っぽい響きがあるので、正直迷いました。
ドクタードクター
迷うのは自然だよ。BT-PABA試験はPFD試験とも呼ばれる膵機能検査だけれど、外分泌のほうなんだ。経口投与したBT-PABAが小腸で膵液中のキモトリプシンに分解され、生じたPABAが吸収されて尿中に出る。その排泄率で膵外分泌能を間接的に評価する。慢性膵炎などで排泄率が低下するよ。
医学生医学生
キモトリプシンの活性をみているから外分泌なんですね。ただ、尿中排泄をみるなら腸や腎臓の障害でも値が下がりそうです。
ドクタードクター
鋭いね。腸管の吸収障害や肝障害、腎障害でも低くなりうるから、解釈には注意が必要だ。次はpHモニタリング。これは何の検査かな。
医学生医学生
消化器内科の実習で見ました。鼻からカテーテルを入れて、食道のpHを24時間記録する検査です。
ドクタードクター
そう、胃食道逆流症の診断や評価に使う。pH 4未満の時間の割合などから酸逆流の程度を評価し、症状との関連もわかる。膵臓とは関係しないね。では、α1-アンチトリプシン法は?
医学生医学生
α1-アンチトリプシンはトリプシンを阻害する物質なので、膵臓の検査かと思ってしまいました。
ドクタードクター
名前に引っ張られやすいポイントだね。これは便中α1-アンチトリプシンのクリアランスをみる検査で、蛋白漏出性胃腸症の診断に使う。α1-アンチトリプシンは肝臓でつくられる血漿蛋白で、消化管内でほとんど分解されないから、便中の量が消化管に漏れた血漿蛋白の目安になるんだ。
医学生医学生
最後のICG試験は肝臓ですよね。肝切除前に測るとCBTの勉強で覚えました。
ドクタードクター
その通り。インドシアニングリーンを静注し、15分後の血中停滞率をみる。基準は10%未満で、肝硬変などで肝予備能が落ちると高値になる。肝切除の範囲を決める大事な指標だ。
医学生医学生
検査ごとに、何を測ってどの臓器のどの機能をみるかを対応させれば、正解は一つに絞れますね。
ドクタードクター
そうだね。発展として、膵内分泌機能はグルカゴン負荷試験で血中Cペプチドの増加をみたり、空腹時Cペプチドや尿中Cペプチドで評価したりもする。外分泌機能のほうはセクレチン試験や便中エラスターゼなども知っておくといい。
医学生医学生
慢性膵炎では、外分泌と内分泌のどちらが先に障害されるんでしょうか。
ドクタードクター
多くは外分泌機能不全が先に現れ、脂肪便や体重減少、脂溶性ビタミン欠乏をきたす。進行すると膵島も失われて膵性糖尿病になる。このときはインスリンだけでなくグルカゴンも減るから、低血糖を起こしやすく血糖が不安定になりやすい。インスリン治療ではとくに低血糖に注意が必要だよ。
医学生医学生
グルカゴンも出ないから、低血糖からの立ち直りが悪いということですね。
ドクタードクター
その理解で大丈夫。膵臓の2つの顔と、それぞれに対応する検査を整理しておくと、慢性膵炎や膵切除後の患者さんを診るときにも役立つよ。

まとめ

膵臓には消化酵素を分泌する外分泌機能と、膵島からインスリンやグルカゴンを分泌する内分泌機能があり、膵内分泌機能の代表的な検査は血糖値とインスリン値の推移をみる75 g経口ブドウ糖負荷試験です。BT-PABA試験はキモトリプシン活性を尿中PABA排泄率でみる膵外分泌機能検査であり、24時間pHモニタリングは胃食道逆流症、便中α1-アンチトリプシンクリアランスは蛋白漏出性胃腸症、ICG試験は肝予備能の評価に用いられます。内分泌機能はグルカゴン負荷試験やCペプチド、外分泌機能はセクレチン試験や便中エラスターゼでも評価できます。慢性膵炎では外分泌機能不全が先行し、進行すると膵性糖尿病をきたしてグルカゴン分泌も低下するため、血糖が不安定になりやすい点が臨床上重要です。検査名ではなく「何を測り、どの臓器のどの機能をみるか」で整理することが、検査問題全般を確実に解く力につながります。

解答・解説

正解はcです

膵臓には、2つの働きがある。一つは消化酵素(トリプシン、キモトリプシン、アミラーゼ、リパーゼなど)と重炭酸イオンを膵管から十二指腸へ分泌する「外分泌機能」である。もう一つは、膵島(ランゲルハンス島)からホルモンを血中に分泌する「内分泌機能」である。膵島ではα細胞がグルカゴン、β細胞がインスリン、δ細胞がソマトスタチンを分泌する。 膵内分泌機能検査とは、主にβ細胞のインスリン分泌能と、その結果としての耐糖能(血糖を正常範囲に保つ能力)を評価する検査である。代表は経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)である。一方、外分泌機能検査の代表はBT-PABA試験(PFD試験)やセクレチン試験である。 選択肢には、膵臓以外の臓器を評価する検査も混ざっている。「その検査で何を測り、どの臓器の、どの機能を評価するのか」を一つずつ対応させれば、正解は経口ブドウ糖負荷試験に絞られる。

選択肢考察

  1. ×a.  BT-PABA試験

    誤り。膵外分泌機能検査である(PFD試験:pancreatic function diagnostant test とも呼ばれる)。BT-PABA(N-ベンゾイル-L-チロシル-p-アミノ安息香酸)を経口投与すると、小腸内で膵液中のキモトリプシンにより分解される。分解で生じたPABA(p-アミノ安息香酸)は吸収されて尿中に排泄される。一定時間(通常6時間)の尿中PABA排泄率を測ることで、キモトリプシンの活性、すなわち膵外分泌能を間接的に評価する。慢性膵炎などの外分泌機能不全では排泄率が低下する。なお、腸管での吸収障害、肝障害、腎障害でも排泄率が低くなりうる点に注意する。

  2. ×b.  pHモニタリング

    誤り。24時間食道pHモニタリングのことで、胃食道逆流症(GERD)の診断・評価に用いる。経鼻的に細いカテーテルを留置し、下部食道内のpHを24時間連続して記録する。pH 4未満となる時間の割合などから、酸の逆流の程度を評価する。症状と逆流の時間的な関連もわかる。近年は、非酸性の逆流も検出できる多チャンネルインピーダンス・pHモニタリングも用いられる。膵機能とは関係しない。

  3. ○c.  経口ブドウ糖負荷試験

    正しい。経口ブドウ糖負荷試験(OGTT: oral glucose tolerance test)は、空腹時に75 gのブドウ糖を経口摂取させる検査である。負荷前と負荷後30分・60分・120分などに採血して、血糖値と血中インスリン値の推移をみる。これにより、膵β細胞のインスリン分泌能と耐糖能を評価できる。膵内分泌機能検査の代表である。 判定: 空腹時血糖126 mg/dL以上または2時間値200 mg/dL以上で糖尿病型とする。空腹時110 mg/dL未満かつ2時間値140 mg/dL未満で正常型とする。どちらにも属さないものを境界型とする。また、負荷後30分のインスリン増加量を血糖増加量で割った値をインスリン分泌指数(insulinogenic index)という。これが0.4未満であれば、インスリンの初期分泌が低下していると判断する。 慢性膵炎や膵切除後では、膵島が破壊・減少してインスリン分泌が低下し、膵性糖尿病(膵内分泌機能不全)を生じる。その評価にOGTTが有用である。

  4. ×d.  α1−アンチトリプシン法

    誤り。糞便中α1-アンチトリプシン(α1-AT)クリアランス試験のことで、蛋白漏出性胃腸症の診断に用いる。α1-ATは肝臓で合成される血漿蛋白(トリプシンなどの蛋白分解酵素を阻害する物質)である。消化管内でほとんど分解されずに便中に出てくるため、便中の量が消化管へ漏れ出た血漿蛋白の目安になる。血中濃度と便中排泄量からクリアランスを計算し、増加していれば、消化管からの蛋白漏出があると判断する。α1-ATは急性期蛋白でもあり、炎症時には血中濃度が上昇する。膵機能検査ではない。

  5. ×e.  indocyanine green〈ICG〉試験

    誤り。肝予備能(肝細胞の機能と肝血流)を評価する検査である。インドシアニングリーン(ICG)という色素0.5 mg/kgを静注する。ICGは肝細胞に取り込まれ、抱合を受けずに胆汁中へ排泄される。15分後に血中に残っている割合(ICG R15)を測定し、基準値は10%未満である。肝硬変などで肝予備能が低下すると、ICG R15は高値となる。肝切除の術前に、切除可能な範囲を決める指標として重要である。体質性黄疸の一つであるRotor症候群や、ICGの取り込み障害でも高値となる。

膵機能検査の整理

〈外分泌機能検査〉 ・BT-PABA試験(PFD試験): キモトリプシン活性を尿中PABA排泄率でみる。 ・セクレチン試験: セクレチン刺激後に十二指腸液を採取し、膵液量、重炭酸塩濃度、アミラーゼ排出量を測定する。外分泌機能検査の標準とされてきた。 ・便中脂肪定量、便中エラスターゼ1、便中キモトリプシン測定など。 〈内分泌機能検査〉 ・経口ブドウ糖負荷試験(75 g OGTT): 血糖値とインスリン値の推移をみる。 ・グルカゴン負荷試験: 負荷前後の血中Cペプチドの増加でインスリン分泌能をみる。 ・空腹時血中Cペプチド、24時間尿中Cペプチド、HbA1cなど。

慢性膵炎と膵機能不全

慢性膵炎では、膵実質が線維化により徐々に破壊される。多くの場合、外分泌機能不全が先に現れ、脂肪便、体重減少、脂溶性ビタミン欠乏をきたす。進行すると内分泌機能不全も加わり、膵性糖尿病となる。膵性糖尿病ではインスリンだけでなくグルカゴンの分泌も低下するため、低血糖を起こしやすく、血糖が不安定になりやすい(いわゆるブリットル型)。

選択肢の検査と対象疾患

・24時間pHモニタリング → 胃食道逆流症 ・α1-ATクリアランス → 蛋白漏出性胃腸症 ・ICG試験 → 肝予備能(肝硬変、肝切除の術前評価)

POINT

・膵内分泌機能の評価: 75 g OGTT(血糖値とインスリン値)、グルカゴン負荷試験(Cペプチド) ・膵外分泌機能の評価: BT-PABA試験(キモトリプシン活性)、セクレチン試験 ・pHモニタリングは胃食道逆流症、α1-ATクリアランスは蛋白漏出性胃腸症、ICG試験は肝予備能の検査である。 ・慢性膵炎では外分泌機能不全が先行し、進行すると膵性糖尿病(内分泌機能不全)をきたす。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。