要介護の原因第1位は何か―「重さ」で順位が入れ替わる介護統計の読み方
第106回医師国家試験 B問題 第27問
国試問題にチャレンジ
平成19年国民生活基礎調査の項目で,高齢者が要介護となる原因として最も頻度が高いのはどれか。
- a.関節疾患
- b.高齢による衰弱
- c.骨折・転倒
- d.認知症
- e.脳血管疾患(脳卒中)
対話形式の解説
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ドクターまとめ
平成19年国民生活基礎調査では、要介護者が介護を必要とするに至った原因の第1位は脳血管疾患(脳卒中)で約27%を占め、第2位が認知症でした。脳卒中は片麻痺や失語、嚥下障害などの後遺症によりADLを急激かつ高度に低下させるため、重い介護状態の原因となりやすい一方、関節疾患・高齢による衰弱・骨折・転倒は比較的軽い要支援者で上位を占めます。ただし平成28年調査以降は要介護者・全体ともに認知症が第1位となっており、現在の統計では答えが変わる点に注意が必要です。「重い介護ほど脳の疾患、軽い介護ほど運動器と虚弱」という構図を理解し、最新の数値で知識を更新しておくことが、統計問題の得点と介護予防の実践の両方につながります。
解答・解説
正解はeです
国民生活基礎調査は、厚生労働省が世帯の保健・医療・福祉・年金・所得などの基礎的事項を把握するために行う調査である。毎年実施されるが、3年ごとに介護票などを含む大規模調査が行われ、その中で「介護が必要となった主な原因」が集計される。 介護保険制度では、介護を必要とする者は「要支援者(要支援1・2)」と、より重度の「要介護者(要介護1〜5)」に区分される。本問は、出題当時の最新データである平成19年調査における「要介護者」の原因を問うものである。 考え方のポイントは、要介護(より重い介護状態)に至る原因ほど、日常生活動作(ADL)を大きく損なう疾患が上位に来るという点である。脳血管疾患(脳卒中)は片麻痺、失語、嚥下障害、高次脳機能障害などの後遺症を残し、急激かつ高度にADLを低下させるため、平成19年調査では要介護者の原因の第1位(27.3%)であり、要支援者を含めた全体でも第1位(23.3%)であった。 これに対して、関節疾患や高齢による衰弱、骨折・転倒は比較的軽い介護状態である要支援者で上位を占め、認知症は要支援者では少ないが要介護者では第2位(18.7%)と、重度化するほど比率が高くなるという特徴がある。 なお、この順位は時代とともに変化している。平成28年調査以降は、要介護者の原因、および全体の原因の第1位が認知症となり、脳血管疾患は第2位に後退している。したがって現在同様の問題が出題された場合は「認知症」が正解となる点に注意が必要である(本問は出題当時のデータに基づく設問であり、現在の国試対策としては最新の統計で知識を更新しておく必要がある)。
選択肢考察
- ×a. 関節疾患
平成19年調査で、要介護者の原因としての関節疾患は9.1%であり、第1位ではない。関節疾患(変形性膝関節症、関節リウマチなど)は徐々に歩行能力や動作能力を低下させるが、比較的軽度の介護状態にとどまることが多い。そのため要支援者の原因としては第1位(約2割)を占めるのが特徴であり、この傾向は現在の調査でも同様である。
- ×b. 高齢による衰弱
高齢による衰弱は、特定の疾患ではなく加齢に伴う心身機能の全般的な低下によるものであり、近年でいうフレイル(虚弱)に相当する状態である。平成19年調査では、要介護者の原因としては脳血管疾患、認知症に次ぐ位置にあり、第1位ではない。要支援者の原因としては関節疾患に次ぐ上位(第2位)を占めており、軽度の介護状態の原因として重要である。
- ×c. 骨折・転倒
平成19年調査で、要介護者の原因としての骨折・転倒は8.4%であり、第1位ではない。高齢者では骨粗鬆症を背景に、転倒による大腿骨近位部骨折や脊椎圧迫骨折が起こりやすく、これを契機に寝たきりとなることがあるため、介護予防上重要な原因である。近年の調査では骨折・転倒の割合は増加傾向にあり、要介護者の原因の第3位に位置づけられている。
- ×d. 認知症
平成19年調査で、要介護者の原因としての認知症は18.7%で第2位であり、第1位ではない。認知症は要支援者の原因としては少ない一方、要介護者では割合が高く、介護度が重くなるほど比率が上がる特徴をもつ。高齢化の進行とともに割合が増加し、平成28年調査以降は要介護者の原因、および全体の原因の第1位となっている。現在の統計に基づけば、この選択肢が正解となる点に注意する。
- ○e. 脳血管疾患(脳卒中)
平成19年調査で、要介護者の原因の第1位は脳血管疾患(脳卒中)であり、27.3%を占めていた。要支援者を含めた全体でも23.3%で第1位であった。脳梗塞・脳出血・くも膜下出血などの脳卒中は、片麻痺、失語、構音・嚥下障害、高次脳機能障害などの後遺症により、発症を境にADLが急激かつ高度に低下するため、重い介護状態の原因となりやすい。ただし、降圧治療の普及などによる脳卒中死亡・重症例の減少と、高齢化に伴う認知症の増加により、平成28年調査以降は認知症に第1位を譲っている。
要支援と要介護
介護保険制度における要介護認定は、介護の必要度に応じて、要支援1・2と要介護1〜5の7段階に区分される。要支援者は主に介護予防サービス(予防給付)、要介護者は介護サービス(介護給付)の対象となる。
介護が必要となった主な原因の傾向(国民生活基礎調査)
・平成19年(出題当時):要介護者では脳血管疾患が第1位(27.3%)、認知症が第2位(18.7%)。全体でも脳血管疾患が第1位。 ・平成28年以降:要介護者・全体ともに認知症が第1位、脳血管疾患が第2位。骨折・転倒がそれに続く。 ・要支援者:一貫して関節疾患が第1位であり、高齢による衰弱、骨折・転倒なども上位を占める。
覚え方
・重い介護状態(要介護)ほど、認知症・脳血管疾患といった脳の疾患が上位を占める。 ・軽い介護状態(要支援)では、関節疾患・衰弱・骨折転倒といった運動器の問題や虚弱が上位を占める。 ・運動器の障害によって移動機能が低下した状態をロコモティブシンドローム、加齢に伴い心身の予備能力が低下し要介護に陥りやすい状態をフレイルといい、いずれも介護予防の重要な標的である。
POINT
・平成19年国民生活基礎調査では、要介護者の原因の第1位は脳血管疾患(脳卒中)で、第2位は認知症であった。 ・平成28年調査以降は、要介護者・全体ともに認知症が第1位、脳血管疾患が第2位となっている。現在の統計では「認知症」が正解になる。 ・要支援者の原因の第1位は関節疾患である。 ・統計問題は出題年の数値に依存するため、最新の調査結果で知識を更新しておくこと。
