StudyMed医師国家試験

そのけいれん、薬は要る?―West症候群のACTHとLennox-Gastaut症候群のクロナゼパム

第106回医師国家試験 A問題 第18問

国試問題にチャレンジ

第106回 A問題 第18問

疾患と治療薬の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. a.West症候群 ―― ACTH
  2. b.憤怒けいれん ―― バルプロ酸ナトリウム
  3. c.複雑部分発作 ―― ビタミンB6
  4. d.単純型熱性けいれん ―― フェニトイン
  5. e.Lennox-Gastaut症候群 ―― クロナゼパム

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、小児のけいれん性疾患と治療薬の組合せを問う問題だ。整理のコツは、まず「てんかん性」か「非てんかん性」かに分けること。そのうえで、てんかん症候群ごとに代表的な治療を思い出していこう。
医学生医学生
けいれんがあれば全部抗てんかん薬、というわけではないんですね。
ドクタードクター
そう。てんかんは、脳の神経細胞が過剰に同期して放電することで発作を繰り返す病気で、脳波にてんかん性放電が出て、抗てんかん薬などの治療対象になる。一方、見た目はけいれんでも、てんかんではない良性の病態もある。今回の選択肢でいえば、憤怒けいれんと単純型熱性けいれんがそちら側だ。
医学生医学生
小児科実習で、熱性けいれんの子のお母さんに「てんかんになりますか」と聞かれている場面を見ました。指導医の先生は、ほとんどの場合は心配ないと説明していました。
ドクタードクター
いい経験をしたね。単純型熱性けいれんは、全身性で左右対称、15分未満で終わり、24時間以内に繰り返さないもの。予後良好で、通常は特別な治療は要らない。再発リスクが高い例に限って、発熱時にジアゼパム坐剤で予防を検討する程度だ。フェニトインには再発予防効果がなく、使わない。
医学生医学生
憤怒けいれんも同じ考え方ですか。泣いたあとに息が止まって、ぐったりするものですよね。
ドクタードクター
その通り。泣き入りひきつけとも呼ばれ、激しく泣いて呼気のまま呼吸が止まり、チアノーゼや意識消失、ときに硬直を起こす。原因は低酸素や迷走神経反射による一時的な脳血流低下で、てんかんではない。脳波は正常で、5〜6歳頃までに自然に消える。だからバルプロ酸のような抗てんかん薬は不要で、保護者への説明と安心が治療の基本だ。鉄欠乏性貧血があれば鉄剤で発作が減ることもある。
医学生医学生
必ず泣くきっかけが先にある、というのが見分けるポイントですね。では、てんかん側のWest症候群はどうでしょう。ACTHは講義で聞いた気がします。
ドクタードクター
覚えていたね。West症候群は点頭てんかんとも呼ばれ、乳児期に発症する。頭を前に倒し手足を一瞬縮めるてんかん性スパズムがシリーズで繰り返し、脳波ではヒプスアリスミアという高振幅徐波と棘波の無秩序な混在がみられ、発達が止まったり退行したりする。この三主徴に対する治療の中心がACTH療法だ。だから正しい組合せになる。
医学生医学生
ACTHはホルモンなので、副作用も気になります。
ドクタードクター
大事な視点だよ。高血圧、感染症、電解質異常、心筋肥大、それに可逆性の脳萎縮様変化などに注意が要る。ほかにビタミンB6大量療法、バルプロ酸、ゾニサミド、結節性硬化症に伴う場合に特に有効なビガバトリンも使われる。
医学生医学生
あ、ビタミンB6はWest症候群の治療なんですね。複雑部分発作とビタミンB6の組合せは、そこで引っかけているわけですか。
ドクタードクター
まさにそこ。複雑部分発作は、脳の一部から始まり意識障害を伴う発作で、今は焦点意識減損発作と呼ぶ。一点凝視や口をもぐもぐさせる自動症が特徴で、側頭葉てんかんに典型的だ。治療はカルバマゼピンが古くからの第一選択で、ラモトリギンやレベチラセタムなども使う。ビタミンB6はWest症候群やビタミンB6依存性てんかんに用いるもので、標準治療ではない。
医学生医学生
残るLennox-Gastaut症候群は、West症候群から移行することがあると習いました。
ドクタードクター
その通り。幼児期、多くは3〜5歳に発症する難治性の発達性てんかん性脳症で、睡眠中の強直発作、非定型欠神発作、脱力発作など複数の発作型をもつ。脳波は覚醒時の2.5Hz未満の遅棘徐波複合が特徴で、知的障害を伴う。治療にはバルプロ酸、クロナゼパムやクロバザムといったベンゾジアゼピン系薬、ラモトリギン、ルフィナミドなどを使う。だからクロナゼパムとの組合せも正しい。
医学生医学生
正解はWest症候群とACTH、Lennox-Gastaut症候群とクロナゼパムの2つですね。良性の非てんかん性発作に抗てんかん薬を続けない、という原則も押さえておきます。
ドクタードクター
完璧だ。発展として、発作型と薬の相性も覚えておこう。焦点発作にはカルバマゼピン系、全般発作にはバルプロ酸が代表。ただし欠神発作では、カルバマゼピンやフェニトインがかえって発作を悪化させることがある。小児欠神てんかんは3Hz棘徐波複合で、エトスクシミドやバルプロ酸を使う。
医学生医学生
Lennox-Gastaut症候群で薬が効かない場合はどうするんですか。
ドクタードクター
ケトン食療法や、脱力発作による転倒を減らす目的の脳梁離断術が検討される。それから熱性けいれんでも、焦点性、15分以上の持続、24時間以内の反復がある複雑型や、てんかんの家族歴、発達遅滞があれば将来のてんかんのリスクは上がる。良性と決めつけず、経過を見ていく姿勢が臨床では大切だ。

まとめ

小児のけいれん性疾患は、まずてんかん性か非てんかん性かを分けて考えると整理しやすくなります。West症候群はてんかん性スパズム・ヒプスアリスミア・発達退行を三主徴とし、ACTH療法が治療の中心で、Lennox-Gastaut症候群は多彩な発作型と遅棘徐波複合を示し、バルプロ酸やクロナゼパムなどのベンゾジアゼピン系薬が用いられます。複雑部分発作(焦点意識減損発作)にはカルバマゼピンなどを使い、ビタミンB6はWest症候群などに用いる薬です。憤怒けいれんや単純型熱性けいれんは良性の非てんかん性発作で、抗てんかん薬の継続投与は不要であり、保護者への説明が大切です。疾患ごとの特異的治療と「必要のない薬を使わない」原則をセットで理解することが、小児神経の診療判断の基礎になります。

解答・解説

正解はa, eです

小児期のけいれん性疾患は、大きく「てんかん性」と「非てんかん性」に分けて考えると整理しやすい。

てんかん性

脳の神経細胞の過剰な同期性放電によって発作が繰り返し起こるもので、脳波にてんかん性放電がみられ、抗てんかん薬などの治療対象となる。本問ではWest症候群、複雑部分発作、Lennox-Gastaut症候群が該当する。特にWest症候群とLennox-Gastaut症候群は、発作そのものに加えて発達の停滞・退行を来す「発達性てんかん性脳症」の代表であり、それぞれに特徴的な治療がある。

非てんかん性

憤怒けいれん(泣き入りひきつけ)や単純型熱性けいれんは、見た目はけいれん発作でも、てんかんとは異なり予後良好で、原則として抗てんかん薬の継続投与は必要ない。 本問は、各疾患に対して標準的に用いられる治療を知っているかを問うている。「非てんかん性の良性疾患に抗てんかん薬を長期投与しない」という原則と、「てんかん症候群ごとの第一選択薬・特異的治療」の知識を組み合わせて判断する。

選択肢考察

  1. ○a.  West症候群 ―― ACTH

    West症候群(点頭てんかん)は、主に乳児期(生後3〜11か月頃に多い)に発症し、①てんかん性スパズム(頭部前屈・四肢の屈曲や伸展を一瞬起こし、それを数秒〜数十秒おきに繰り返すシリーズ形成)、②脳波上のヒプスアリスミア(高振幅の徐波と棘波が無秩序に混在する所見)、③精神運動発達の停止・退行、を三主徴とする。治療の中心はACTH(副腎皮質刺激ホルモン)療法で、スパズムの消失とヒプスアリスミアの改善が期待できる。ACTH療法では高血圧、感染症、電解質異常、脳の萎縮様変化(可逆性)、心筋肥大などの副作用に注意が必要である。その他、ビタミンB6大量療法、バルプロ酸、ゾニサミド、ビガバトリン(特に結節性硬化症に伴う場合に有効)が用いられる。

  2. ×b.  憤怒けいれん ―― バルプロ酸ナトリウム

    憤怒けいれん(泣き入りひきつけ、息止め発作)は、乳幼児が痛みや怒りなどをきっかけに激しく泣き、呼気の状態で呼吸が止まってチアノーゼや顔面蒼白、意識消失、ときに全身の硬直・けいれんを起こすものである。生後6か月〜2歳頃に多く、5〜6歳頃までに自然に消失する。発作は低酸素や迷走神経反射による脳血流の一時的な低下によるもので、てんかんではない。脳波にてんかん性放電はなく、抗てんかん薬は不要である。治療の基本は、良性の病態であることを保護者に説明し、安心してもらうことである。鉄欠乏性貧血を伴う例では鉄剤で発作が減ることがある。

  3. ×c.  複雑部分発作 ―― ビタミンB6

    複雑部分発作は、脳の一部から始まる部分発作(焦点発作)のうち意識障害を伴うもので、現在の国際抗てんかん連盟(ILAE)分類では「焦点意識減損発作」と呼ばれる。動作停止や一点凝視、口をもぐもぐさせる・手をまさぐるといった自動症を伴うことが多く、側頭葉てんかんで典型的にみられる。部分発作の治療薬としてはカルバマゼピンが古くから第一選択とされ、ラモトリギン、レベチラセタム、ゾニサミドなども用いられる。ビタミンB6はWest症候群の治療やビタミンB6依存性てんかんに用いられるもので、複雑部分発作の標準治療ではない。

  4. ×d.  単純型熱性けいれん ―― フェニトイン

    熱性けいれんは、主に生後6か月〜5歳の乳幼児に38℃以上の発熱に伴って起こるけいれんで、髄膜炎・脳炎などの中枢神経感染症や代謝異常など明らかな原因がないものをいう。日本では小児の7〜8%程度が経験するとされ、小児のけいれん性疾患で最も多い。単純型(全身性・左右対称の発作で、15分未満で終わり、24時間以内に反復しない)は予後良好で、特別な治療は通常不要である。再発リスクが高い例などに限って、発熱時のジアゼパム坐剤による予防投与が検討される程度である。フェニトインには熱性けいれんの再発予防効果はなく、用いない。

  5. ○e.  Lennox-Gastaut症候群 ―― クロナゼパム

    Lennox-Gastaut症候群は、主に1〜8歳頃(多くは3〜5歳)に発症する難治性の発達性てんかん性脳症である。強直発作(特に睡眠中)、非定型欠神発作、脱力発作など複数の発作型をもち、脳波では覚醒時の全般性遅棘徐波複合(2.5Hz未満)、睡眠時の速律動がみられ、知的障害を伴う。West症候群から移行する例も少なくない。治療にはバルプロ酸、クロナゼパムやクロバザムなどのベンゾジアゼピン系薬、ラモトリギン、ルフィナミド、トピラマートなどが用いられ、薬物抵抗性の場合はケトン食療法や脳梁離断術も検討される。クロナゼパムは本症候群に用いられる薬剤として正しい組合せである。

小児の主なてんかん症候群と治療の整理

・West症候群:乳児期発症、てんかん性スパズム、ヒプスアリスミア、発達退行。ACTH、ビタミンB6、ビガバトリン、バルプロ酸、ゾニサミド。 ・Lennox-Gastaut症候群:幼児期発症、強直発作・非定型欠神・脱力発作、遅棘徐波複合。バルプロ酸、ベンゾジアゼピン系(クロナゼパム、クロバザム)、ラモトリギン、ルフィナミド、ケトン食、脳梁離断術。 ・小児欠神てんかん:学童期の女児に多い、数秒〜十数秒の意識消失、過呼吸で誘発、3Hz棘徐波複合。エトスクシミド、バルプロ酸。 ・中心・側頭部に棘波をもつ自然終息性てんかん(旧称:中心側頭部棘波を示す良性小児てんかん):睡眠中の顔面・口周囲の焦点発作。思春期までに自然に治まる。 ・若年ミオクロニーてんかん:思春期発症、起床後のミオクロニー発作。バルプロ酸、レベチラセタム。

発作型別の第一選択薬(原則)

・焦点発作(部分発作):カルバマゼピン、ラモトリギン、レベチラセタムなど。 ・全般発作:バルプロ酸が代表。 ・欠神発作ではカルバマゼピンやフェニトインは発作を悪化させることがあるので避ける。

非てんかん性発作の見分け方

憤怒けいれん:必ず啼泣などの誘因が先行し、脳波は正常。 熱性けいれん:発熱時のみに起こり、発熱のない時期には発作がない。ただし、複雑型(焦点性発作、15分以上持続、24時間以内の反復)やてんかんの家族歴、発達遅滞がある場合は、将来のてんかん発症リスクが高くなる。

POINT

・West症候群(点頭てんかん)=てんかん性スパズム+ヒプスアリスミア+発達退行→ACTH療法が代表的治療。 ・Lennox-Gastaut症候群=多彩な発作型+遅棘徐波複合+知的障害→バルプロ酸、クロナゼパムなど。 ・複雑部分発作(焦点意識減損発作)の第一選択はカルバマゼピンなど。 ・憤怒けいれん、単純型熱性けいれんは非てんかん性で良性→抗てんかん薬の継続投与は不要。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。