高齢者支援の「よろず相談所」はどこが置く?―地域包括支援センターの骨組みを押さえる
第105回医師国家試験 G問題 第7問
国試問題にチャレンジ
地域包括支援センターについて誤っているのはどれか。
- a.都道府県ごとに設置される。
- b.認知症患者は支援の対象である。
- c.介護予防マネジメント事業は対象業務である。
- d.高齢者虐待の通報受理機関としての役割がある。
- e.主任介護支援専門員〈ケアマネジャー〉の配置が義務付けられている。
対話形式の解説
ドクター
医学生
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医学生
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ドクターまとめ
地域包括支援センターは介護保険法に基づき市町村(特別区を含む)が設置する機関で、都道府県が設置するものではなく、運営を社会福祉法人や医療法人に委託することもできます。対象は認知症の人を含む地域の高齢者全般とその家族で、介護予防ケアマネジメント、総合相談支援、権利擁護(高齢者虐待への対応を含む)、包括的・継続的ケアマネジメント支援の4つが業務の柱です。保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員の3職種がチームで支援にあたり、高齢者虐待の通報受理事務も市町村から委託されて担うことができます。保健所(主に都道府県など)や市町村保健センターとの設置主体の違いは頻出のポイントです。設置主体・対象・業務・職種の4つの骨組みで整理することは、試験対策だけでなく、退院支援や在宅医療で患者さんを地域につなぐ臨床の場面でも役立ちます。
解答・解説
正解はaです
地域包括支援センターの設置主体・対象者・業務・職員配置を問う一般問題であり、「誤っているもの」を1つ選ぶ。 地域包括支援センターは、2005年の介護保険法改正で創設され、2006年度から運用が始まった機関である。高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けられるよう、介護・医療・保健・福祉の相談や支援を一か所で受け止める「地域包括ケアシステム」の中核拠点と位置づけられている。 正誤を判断するうえで押さえるべき骨組みは次の4点である。 ・設置主体は市町村(特別区を含む)。市町村が直営するほか、社会福祉法人や医療法人などに運営を委託することもできる。 ・対象は地域に住む高齢者全般とその家族であり、要介護認定の有無や疾患の種類は問わない。 ・中心となる業務は介護保険法の「包括的支援事業」で、介護予防ケアマネジメント、総合相談支援、権利擁護(高齢者虐待への対応を含む)、包括的・継続的ケアマネジメント支援の4つである。 ・保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員の3職種を置くことが原則とされ、職種間のチームアプローチで業務を行う。 この枠組みに照らすと、設置単位を「都道府県」とする記述だけが誤りとなる。介護保険の保険者が市町村であることと結び付けて覚えると間違えにくい。
選択肢考察
- ○a. 都道府県ごとに設置される。
誤った記述であり、本問の正解である。地域包括支援センターを設置するのは市町村(特別区を含む)であり、都道府県ではない。介護保険の保険者は市町村であり、センターも住民に身近な市町村が責任主体となる。実際の配置は、おおむね中学校区などの日常生活圏域を目安に、高齢者人口に応じて1つの市町村に複数か所置かれることが多い。運営は市町村直営のほか、社会福祉法人・医療法人などへの委託も認められているが、委託の場合も設置責任は市町村にある。
- ×b. 認知症患者は支援の対象である。
正しい記述である。センターの対象は地域で暮らす高齢者とその家族全般であり、認知症の人も当然含まれる。認知症の人は、介護サービスの調整に加えて、金銭管理の困難、消費者被害、虐待といった権利侵害の問題を抱えやすいため、総合相談支援や権利擁護業務(成年後見制度の利用支援など)の重要な対象となる。また、認知症初期集中支援チームや認知症地域支援推進員がセンターに配置・連携される例も多い。
- ×c. 介護予防マネジメント事業は対象業務である。
正しい記述である。介護予防ケアマネジメントは包括的支援事業の柱の一つであり、要介護状態になるおそれのある高齢者や要支援者が、心身機能の低下を防ぎ自立した生活を続けられるよう、アセスメント(課題分析)を行ってケアプランを作成し、サービス利用後の評価まで行う業務である。さらにセンターは指定介護予防支援事業所として、要支援1・2の人の介護予防サービス計画の作成も担う。
- ×d. 高齢者虐待の通報受理機関としての役割がある。
正しい記述である。高齢者虐待防止法(高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律)では、虐待を発見した者の通報先は市町村とされているが、市町村はこの通報・届出の受理や事実確認などの事務を地域包括支援センターに委託できる。そのため多くの地域でセンターが通報の窓口となっており、権利擁護業務の一環として虐待の早期発見・対応、養護者への支援、成年後見制度の利用支援、消費者被害の防止などに取り組んでいる。
- ×e. 主任介護支援専門員〈ケアマネジャー〉の配置が義務付けられている。
正しい記述である。センターには原則として保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員の3職種を置くことが定められている。主任介護支援専門員は、一定の実務経験を持つ介護支援専門員が所定の研修を修了して得る資格で、センターでは包括的・継続的ケアマネジメント支援を中心に担当する。具体的には、地域の介護支援専門員への個別の助言・指導、支援困難事例への対応、医療機関や関係機関とのネットワークづくりなどを行う。
地域包括支援センターの概要
・根拠法:介護保険法(2005年改正で創設、2006年度から運用) ・設置主体:市町村(直営または社会福祉法人・医療法人などへの委託) ・目的:高齢者の心身の健康保持と生活の安定のために必要な援助を包括的に行い、保健医療の向上と福祉の増進を図ること。地域包括ケアシステムの中核機関である。
主な業務(包括的支援事業)
1. 介護予防ケアマネジメント:要支援者や、要介護状態になるおそれのある高齢者を対象に、介護予防のケアプラン作成と評価を行う。 2. 総合相談支援:介護・医療・福祉・生活全般の相談を受け、適切なサービスや機関につなぐ。地域の高齢者の実態把握も含む。 3. 権利擁護:高齢者虐待への対応、成年後見制度の活用支援、消費者被害の防止など。 4. 包括的・継続的ケアマネジメント支援:地域の介護支援専門員への後方支援、支援困難事例への助言、関係機関との連携体制づくり。 このほか、指定介護予防支援事業所として要支援者のケアプランを作成する。
3職種と主な担当
・保健師(地域ケアの経験がある看護師で代えることも可):介護予防ケアマネジメントなど保健・医療面 ・社会福祉士:総合相談支援、権利擁護など福祉面 ・主任介護支援専門員:包括的・継続的ケアマネジメント支援 各職種が単独で完結するのではなく、互いに連携するチームアプローチが基本である。
関連する会議
センターは地域ケア会議を開催し、多職種で個別事例を検討するとともに、地域に共通する課題を抽出して地域づくりや施策につなげる役割も担う。
混同しやすい機関
・保健所:主に都道府県・政令指定都市・中核市などが設置 ・市町村保健センター:市町村が設置。住民への身近な健康づくり・健診・保健指導を担う ・地域包括支援センター:市町村が設置。高齢者の総合的な支援を担う
POINT
・地域包括支援センターの設置主体は市町村である(都道府県ではない)。委託運営も可能。 ・保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員の3職種を配置する。 ・業務の柱:介護予防ケアマネジメント、総合相談支援、権利擁護(虐待対応を含む)、包括的・継続的ケアマネジメント支援。 ・対象は高齢者全般とその家族で、認知症の人も含む。 ・高齢者虐待の通報先は市町村だが、その受理事務をセンターが担うことができる。
