StudyMed医師国家試験

名前にだまされるな!「センター」と根拠法の正しい結びつけ方

第105回医師国家試験 G問題 第31問

国試問題にチャレンジ

第105回 G問題 第31問

機関・人材と法律の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. a.医療安全支援センター ―― 医療法
  2. b.監察医 ―― 死体解剖保存法
  3. c.保健センター ―― 健康増進法
  4. d.児童相談所 ―― 母子保健法
  5. e.地域包括支援センター ―― 地域保健法

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、保健・医療・福祉の機関や人材が、それぞれどの法律に基づいているかを問う問題だ。「〇〇センター」は数が多くて名前も似ているから、名称のイメージで法律を当てにいくと失敗しやすい。根拠法・設置主体・業務をセットで整理しておこう。
医学生医学生
正直、名前に「保健」とあれば保健系の法律、「児童」とあれば母子保健法、みたいに連想で解きたくなってしまいます。
ドクタードクター
まさにそこが出題者の狙いなんだ。では一つずつ見ていこう。まず医療安全支援センターはどうかな。
医学生医学生
医療安全というくらいなので医療法でしょうか。医療事故調査制度も医療法だったと公衆衛生の講義で習いました。
ドクタードクター
その通り。医療安全支援センターは2006年の医療法改正で位置づけられ、都道府県や保健所設置市、特別区が設置に努めることになっている。患者や家族からの医療に関する苦情・相談を受け、中立的な立場で助言や情報提供を行う窓口だ。医療事故調査・支援センターも同じく医療法に基づくから、混同しないように整理しておくといい。
医学生医学生
監察医は、法医学の講義で行政解剖の話と一緒に出てきました。死体解剖保存法でしたよね。
ドクタードクター
正解。監察医は死体解剖保存法に基づき、政令で定める地域に都道府県知事が置く医師だ。犯罪性のない死因不明の死体などを検案し、それでも死因がわからなければ遺族の承諾なしに解剖できる。目的は公衆衛生の向上、つまり死因を明らかにして社会に還元することにある。ここまでの2つが正しい組合せだね。
医学生医学生
保健センターは健康増進法ではないんですか。健診や健康相談をする場所なので、つい結びつけてしまいました。
ドクタードクター
そう考えた人は多いと思う。でも市町村保健センターは地域保健法に基づく施設なんだ。保健所と同じ法律だね。保健所が広域的・専門的な業務を担う行政機関なのに対して、保健センターは乳幼児健診や予防接種、健康相談など、住民に身近な対人サービスを提供する場という役割分担になっている。健康増進法は国民健康・栄養調査や受動喫煙の防止などを定める法律だ。
医学生医学生
児童相談所も母子保健法ではなく、児童福祉法ですね。小児科の実習で、虐待が疑われる子の対応で児童相談所に連絡するのを見ました。
ドクタードクター
いい経験をしたね。児童相談所は児童福祉法に基づき、都道府県と政令指定都市には設置義務がある。一時保護や施設入所措置など、児童虐待対応の中心になる機関だ。母子保健法のほうは、母子健康手帳の交付や乳幼児健康診査、低出生体重児の届出などを定めている。「児童」は福祉、「母子」は保健、と分けて覚えるといい。
医学生医学生
地域包括支援センターは「地域」とあるので地域保健法に見えますが、高齢者の相談窓口だから介護保険法でしょうか。
ドクタードクター
正解だ。地域包括支援センターは2005年の介護保険法改正で創設され、市町村または委託法人が設置する。保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャーが配置され、総合相談、高齢者虐待への対応などの権利擁護、介護予防ケアマネジメントを担う。地域包括ケアシステムの中核だね。
医学生医学生
名前のキーワードではなく、その機関が何の制度の中で動いているかを考えればいいんですね。
ドクタードクター
その発想が大事。関連して、精神保健福祉センターと精神保健指定医は精神保健福祉法、福祉事務所は社会福祉法に基づく。このあたりもセットで出題されやすいよ。
医学生医学生
監察医がいない地域で異状死が出たらどうなるんですか。
ドクタードクター
犯罪性がなければ遺族の承諾を得て行う承諾解剖、犯罪の疑いがあれば刑事訴訟法に基づく司法解剖、さらに死因・身元調査法に基づき警察署長の判断で行う調査法解剖がある。監察医を置く地域は政令上5都市だけど、実際に機能しているのは東京23区、大阪市、神戸市に限られているんだ。臨床で異状死に出会ったときに、どの解剖につながるのかを知っておくと、警察への届出や遺族への説明もスムーズになる。
医学生医学生
患者さんから医療への苦情を相談されたときに、医療安全支援センターを案内できるのも役立ちそうです。
ドクタードクター
その通り。制度の知識は試験のためだけでなく、患者さんを適切な窓口につなぐための実践的な道具なんだ。

まとめ

保健・医療・福祉の機関や人材は、名称のイメージではなく根拠法・設置主体・業務をセットで覚えることが重要です。医療安全支援センターは医療法、監察医は死体解剖保存法に基づき、市町村保健センターと保健所は地域保健法、児童相談所は児童福祉法、地域包括支援センターは介護保険法に基づきます。監察医は犯罪性のない死因不明の死体を検案し、必要なら遺族の承諾なく行政解剖を行えるのが特徴で、司法解剖・承諾解剖・調査法解剖との違いも押さえておきたい点です。こうした制度の理解は、異状死への対応や患者・家族を適切な相談窓口につなぐといった臨床現場での判断にも直結します。

解答・解説

正解はa, bです

本問は、保健・医療・福祉に関わる機関や人材が、どの法律に根拠をもつかを問う一般問題である。「〇〇センター」という名称の機関は数が多く、名称が似ているために取り違えやすい。機関ごとに「根拠法」「設置主体」「主な業務」をセットで覚えておくことが大切である。 本問の選択肢に登場する機関・人材の根拠法を整理すると次のようになる。 ・医療安全支援センター: 医療法 ・監察医: 死体解剖保存法 ・市町村保健センター: 地域保健法 ・児童相談所: 児童福祉法 ・地域包括支援センター: 介護保険法 名称に含まれる語(「保健」「児童」「地域」など)から法律名を連想すると誤りやすい。たとえば「保健センター」は健康増進法ではなく地域保健法、「地域包括支援センター」は地域保健法ではなく介護保険法に基づく。この対応を正しく押さえていれば、医療安全支援センターと監察医の組合せが正しいと判断できる。

選択肢考察

  1. ○a.  医療安全支援センター ―― 医療法

    正しい。医療安全支援センターは、2006年の医療法改正(第5次医療法改正、2007年施行)により医療法に位置づけられた機関である。都道府県、保健所設置市、特別区が設置に努めることとされている。患者や家族からの医療に関する苦情・相談への対応、医療機関・患者・住民に対する医療安全に関する助言や情報提供、医療安全の普及啓発などを行い、医療機関と患者の間の中立的な立場から医療安全の確保を図る。

  2. ○b.  監察医 ―― 死体解剖保存法

    正しい。監察医は死体解剖保存法第8条に基づき、政令で定める地域において都道府県知事が置く医師である。伝染病、中毒、災害などで死亡した疑いのある死体や、その他死因の明らかでない死体(犯罪性のないもの)について検案を行い、検案で死因が判明しない場合には遺族の承諾がなくても解剖(行政解剖)を行うことができる。死因を明らかにすることで公衆衛生の向上に役立てることが目的である。

  3. ×c.  保健センター ―― 健康増進法

    誤り。市町村保健センターは地域保健法に基づき、市町村が設置できる施設である。住民に身近な対人保健サービスの拠点として、健康相談、保健指導、健康診査(乳幼児健診など)、予防接種など地域保健に関する事業を行う。保健所が広域的・専門的な業務を担う行政機関であるのに対し、保健センターは住民に直接サービスを提供する場である。健康増進法は、国民健康・栄養調査、受動喫煙の防止、市町村による健康増進事業などを定める法律であり、保健センターの根拠法ではない。

  4. ×d.  児童相談所 ―― 母子保健法

    誤り。児童相談所は児童福祉法に基づく機関である。都道府県と政令指定都市には設置が義務づけられており、中核市や特別区も設置できる。18歳未満の児童に関するあらゆる相談への対応、児童や家庭の調査・判定、一時保護、児童福祉施設への入所措置や里親委託などを行い、児童虐待への対応でも中心的な役割を担う。母子保健法は、妊娠の届出、母子健康手帳の交付、乳幼児健康診査、低出生体重児の届出、未熟児の訪問指導などを定める法律である。

  5. ×e.  地域包括支援センター ―― 地域保健法

    誤り。地域包括支援センターは介護保険法に基づき、市町村(または市町村から委託を受けた法人)が設置する機関である。2005年の介護保険法改正(2006年施行)で創設された。保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)が配置され、高齢者の総合相談支援、権利擁護(高齢者虐待の防止・対応、成年後見制度の活用支援など)、包括的・継続的ケアマネジメント支援、介護予防ケアマネジメントなどを行い、地域包括ケアシステムの中核を担う。地域保健法は保健所や市町村保健センターの根拠法である。

主な機関・人材と根拠法の整理

・保健所: 地域保健法(都道府県、政令指定都市、中核市、その他政令市、特別区が設置) ・市町村保健センター: 地域保健法(市町村が設置できる) ・精神保健福祉センター: 精神保健福祉法(都道府県・政令指定都市) ・児童相談所: 児童福祉法 ・福祉事務所: 社会福祉法 ・地域包括支援センター: 介護保険法 ・医療安全支援センター: 医療法 ・医療事故調査・支援センター: 医療法(医療事故調査制度) ・監察医: 死体解剖保存法 ・精神保健指定医: 精神保健福祉法

行政解剖と司法解剖

・行政解剖(監察医による解剖): 死体解剖保存法に基づく。犯罪性のない異状死体の死因究明が目的で、遺族の承諾は不要。 ・承諾解剖: 監察医制度のない地域で、犯罪性のない死体について遺族の承諾を得て行う解剖。 ・司法解剖: 刑事訴訟法に基づき、犯罪の疑いのある死体について、裁判官の発する鑑定処分許可状を得て、大学の法医学教室などに鑑定嘱託して行う。 ・調査法解剖: 死因・身元調査法(2013年施行)に基づき、警察署長の判断で行う解剖。

監察医制度の地域

監察医を置く地域は政令により東京23区、大阪市、横浜市、名古屋市、神戸市と定められているが、現在実質的に監察医務機関が機能しているのは東京23区、大阪市、神戸市に限られる。

POINT

・医療安全支援センターは医療法、監察医は死体解剖保存法に基づく。 ・市町村保健センターと保健所は地域保健法に基づく。 ・児童相談所は児童福祉法に基づく(母子保健法ではない)。 ・地域包括支援センターは介護保険法に基づく(地域保健法ではない)。 ・名称から根拠法を連想せず、根拠法・設置主体・業務をセットで覚える。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。