StudyMed医師国家試験

32歳ののぼせは「早すぎる閉経」のサイン―無月経で上がるホルモンを見抜く

第105回医師国家試験 D問題 第46問

国試問題にチャレンジ

第105回 D問題 第46問

32歳の女性。1回経妊,1回経産。1年間の無月経を主訴に来院した。1か月前からのぼせとイライラ感とが出現している。挙児希望がある。経腟超音波検査で子宮はやや萎縮しており,卵巣には卵胞が認められない。  高値を示すのはどれか。

  1. a.プロラクチン
  2. b.卵胞刺激ホルモン
  3. c.エストラジオール
  4. d.副腎皮質刺激ホルモン
  5. e.トリヨードサイロニン

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は続発性無月経の女性で、どのホルモンが高値になるかを考える問題だ。無月経は「どこが障害されているか」、つまり視床下部、下垂体、卵巣、子宮のどれなのかを見極めることが出発点になる。症状と超音波所見から、障害部位を推理してみよう。
医学生医学生
のぼせとイライラ感って、更年期の症状みたいですね。でも32歳だと更年期にはまだ早いと思います。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。のぼせ、いわゆるホットフラッシュやイライラ感は、エストロゲンが欠乏したときに出る症状なんだ。年齢に関係なく、エストロゲンが急に減れば起こりうる。さらに子宮の萎縮も、子宮の大きさはエストロゲンで保たれているから、長く低エストロゲン状態が続いていることを示している。
医学生医学生
エストロゲンが低いことはわかりました。でも、それが卵巣のせいなのか、上の視床下部や下垂体のせいなのかで、ホルモンの動きは変わりますよね。
ドクタードクター
その通り、そこが核心だ。決め手は卵巣に卵胞が見えないこと。視床下部や下垂体が原因なら、卵巣には刺激を待っている卵胞が残っているはずだよね。卵胞そのものがないということは、卵巣が働けなくなった卵巣性無月経と考えられる。40歳未満で卵巣機能が失われた状態を早発卵巣不全、略してPOIと呼ぶんだ。
医学生医学生
産婦人科の講義では早発閉経と習ったような気がします。
ドクタードクター
以前はそう呼ばれていたし、早発卵巣機能不全という言い方もあった。ただ、まれに自然排卵や妊娠が起こることもあるので、完全に止まったわけではないという意味で、今は「不全」という用語が推奨されているよ。さて、卵巣が働かなくなると、下垂体のホルモンはどうなるだろう。
医学生医学生
負のフィードバックが外れるので、ゴナドトロピンが上がる……卵胞刺激ホルモンが高くなるということですね。
ドクタードクター
正解。卵胞からはエストラジオールとインヒビンが出ていて、どちらも下垂体を抑えている。卵胞が枯渇するとこのブレーキがなくなり、FSHが閉経後の女性と同じくらい、一般に40 mIU/mL以上に上がる。LHも上がるけれど、インヒビンはFSHを選択的に抑えているから、その抑制が外れるFSHのほうが上昇が目立つんだ。この状態を高ゴナドトロピン性低エストロゲン状態と表現する。
医学生医学生
エストラジオールは逆に低いんですね。うっかり「性ホルモンの異常だから上がっている」と選んでしまいそうでした。
ドクタードクター
エストラジオールは発育中の卵胞の顆粒膜細胞で作られるから、卵胞がなければ作る場所がない。のぼせも子宮萎縮も、この低値で説明がつくよね。では、プロラクチンはどう考える?
医学生医学生
高プロラクチン血症も無月経の原因として有名ですよね。CBTの過去問でも乳汁漏出とセットでよく出ていました。
ドクタードクター
よく覚えているね。ただ高プロラクチン血症では、GnRHの分泌が抑えられるので、FSHは低値から正常になる。卵巣にはまだ卵胞が残っていることが多いし、乳汁漏出を伴うのが典型だ。卵巣自体の機能が失われても、ドパミンで調節されているプロラクチンは影響を受けないから、今回は正常範囲と考えられる。
医学生医学生
ACTHや甲状腺ホルモンは、卵巣とは別の軸なので変わらないと考えていいですか。のぼせやイライラはBasedow病でも出ますけど。
ドクタードクター
基本的にはそれでいい。甲状腺機能亢進症は鑑別に挙がるけれど、卵胞の消失や子宮萎縮は説明できない。ただ、POIの一部は自己免疫が原因で、橋本病などの甲状腺疾患やAddison病を合併することがある。だから実際の診療では甲状腺機能や副腎の評価もしておくんだ。とはいえ今回、倦怠感や色素沈着などAddison病を疑う症状はないから、ACTH高値を選ぶ根拠はないね。
医学生医学生
無月経では、FSH・LH、エストラジオール、プロラクチンの組み合わせで障害部位を当てる、という流れですね。
ドクタードクター
そう。整理すると、視床下部性や下垂体性ではFSHとLHは低値から正常、多嚢胞性卵巣症候群ではLHが優位に高くFSHは正常、卵巣性ではFSHとLHが高値でエストラジオールは低値、子宮性ではホルモン値は正常だ。表にして一度自分でまとめておくと強いよ。
医学生医学生
この患者さんは挙児希望がありますが、妊娠は難しいんでしょうか。
ドクタードクター
とても大事な点だね。エストロゲン補充で高いFSHを下げてから排卵誘発を試みる方法もあるけれど、排卵が得られる例は限られていて、自己卵子での妊娠は一般に難しい。選択肢として提供卵子による体外受精があるけれど、国内では実施体制が限られている。説明には十分な配慮が必要だ。
医学生医学生
妊娠以外の面で気をつけることはありますか。
ドクタードクター
長期的な健康管理が欠かせない。若いうちから低エストロゲン状態が続くと、骨粗鬆症や心血管疾患のリスクが上がる。だから少なくとも自然閉経の平均年齢である50歳ごろまでは、エストロゲンとプロゲスチンを併用するホルモン補充療法を続けるのが基本だ。原因としてはTurner症候群などX染色体の異常、脆弱X症候群の保因者、抗癌薬や放射線治療、卵巣手術なども知られているけれど、多くは原因不明なんだ。
医学生医学生
小児がんの治療を受けた方が、大人になってから無月経で受診することもあるんですね。病歴でも聞き逃さないようにします。
ドクタードクター
その姿勢が大切だ。若い女性の無月経では、FSHを測ることで卵巣そのものの問題かどうかが見えてくる、と覚えておこう。

まとめ

40歳未満の続発性無月経に、のぼせやイライラ感などのエストロゲン欠乏症状、子宮萎縮、卵胞の消失がそろえば、卵巣そのものが機能を失った早発卵巣不全(POI)を考えます。卵胞からのエストラジオールとインヒビンが失われることで下垂体への負のフィードバックが外れ、FSHが閉経後レベルに上昇する高ゴナドトロピン性低エストロゲン状態となり、FSH高値が診断の根拠になります。高プロラクチン血症や視床下部・下垂体性の無月経ではFSHは低値から正常で、多嚢胞性卵巣症候群ではLHが優位に上昇するなど、ホルモンの組み合わせで障害部位を推定できます。POIでは自己卵子による妊娠が一般に難しく、骨や心血管を守るため自然閉経の年齢まではホルモン補充療法を行うことが重要です。無月経の評価でFSH・LH・エストラジオール・プロラクチンを組み合わせて読む力は、婦人科内分泌の診療全体の土台となります。

解答・解説

正解はbです

所見の整理

・32歳、1回経妊1回経産:過去に妊娠・分娩が成立しており、もともとは排卵性の月経周期があったと考えられる。 ・1年間の無月経:いったん始まった月経が3か月以上停止した状態であり、続発性無月経にあたる。 ・1か月前からののぼせ(ホットフラッシュ)とイライラ感:更年期女性にみられるのと同じ、エストロゲン欠乏による血管運動神経症状・精神症状である。 ・経腟超音波で子宮がやや萎縮:子宮はエストロゲンの作用で大きさが保たれるため、萎縮は長期の低エストロゲン状態を示唆する。 ・卵巣に卵胞が認められない:卵巣内の卵胞がほぼ枯渇していることを意味する。

診断へのプロセス

続発性無月経の原因は、障害部位により視床下部性・下垂体性(高プロラクチン血症を含む)・卵巣性・子宮性に分けて考える。本例では、低エストロゲン症状と子宮萎縮があるため子宮性(Asherman症候群など、ホルモン環境は正常)は否定的である。さらに卵巣に卵胞が全く見えないことから、上位中枢ではなく卵巣そのものが働かなくなった卵巣性無月経と判断できる。40歳未満で卵巣機能が失われ無月経となった病態であり、早発卵巣不全(premature ovarian insufficiency:POI)と診断される。

設問の考え方

卵巣から分泌されるエストラジオール(E2)とインヒビンが減ると、視床下部・下垂体への負のフィードバックが外れる。その結果、下垂体からのゴナドトロピン、とくに卵胞刺激ホルモン(FSH)が著明に上昇する。つまり本症の内分泌学的な特徴は「高ゴナドトロピン性低エストロゲン状態」であり、高値を示すのはFSHである。卵巣以外の内分泌軸(プロラクチン、副腎皮質、甲状腺)は、本症そのものによって変化するわけではない。

選択肢考察

  1. ×a.  プロラクチン

    プロラクチンは下垂体前葉から分泌され、ドパミンによって分泌が抑制されている。卵巣機能が失われても、プロラクチン分泌は直接の影響を受けず正常範囲にとどまる。高プロラクチン血症も続発性無月経の重要な原因であるが、その場合はGnRHの分泌が抑えられるため、FSHは低値〜正常となり、乳汁漏出を伴うことが多い。本例のように卵胞が消失し子宮が萎縮した状態とは病態が異なる。

  2. ○b.  卵胞刺激ホルモン

    卵胞が枯渇するとE2とインヒビンがほとんど分泌されなくなり、視床下部-下垂体への負のフィードバックが消失する。そのため下垂体からのFSH分泌が亢進し、閉経後女性と同程度(一般に40 mIU/mL以上)の高値となる。黄体形成ホルモン(LH)も上昇するが、インヒビンによる選択的抑制が外れるFSHの方が上昇は顕著である。FSH高値は早発卵巣不全の診断の根拠となる検査所見である。また、GnRH負荷試験を行うとFSH・LHはいずれも過剰に反応する。

  3. ×c.  エストラジオール

    エストラジオールは主に発育卵胞の顆粒膜細胞で産生される。本例では卵胞が認められないため産生源がなく、E2は低値である。のぼせ・イライラ感といった更年期様症状や子宮の萎縮は、この低エストロゲン状態によって説明される。

  4. ×d.  副腎皮質刺激ホルモン

    副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)は視床下部-下垂体-副腎皮質系のホルモンであり、卵巣機能が低下しても変化しない。早発卵巣不全の一部は自己免疫性で、自己免疫性副腎皮質機能低下症(Addison病)を合併してACTHが上昇することもあるが、本例にはそれを示唆する症状(全身倦怠感、色素沈着、低血圧など)がなく、本症に伴う所見としてACTH高値を選ぶ根拠はない。

  5. ×e.  トリヨードサイロニン

    トリヨードサイロニン(T3)は甲状腺ホルモンであり、卵巣機能の低下とは直接関係せず正常範囲である。のぼせやイライラ感は甲状腺機能亢進症(Basedow病など)の症状とも似るため鑑別には挙がるが、甲状腺機能亢進症では卵胞の消失や子宮萎縮は説明できない。なお、自己免疫性の早発卵巣不全では橋本病などの自己免疫性甲状腺疾患を合併しやすいため、実臨床では甲状腺機能も確認しておく。

早発卵巣不全(POI)

・定義:40歳未満で卵巣機能が低下・停止し、無月経(おおむね4か月以上)となり、ゴナドトロピン(特にFSH)が閉経後レベルに上昇した状態。以前は早発卵巣機能不全(premature ovarian failure:POF)や早発閉経と呼ばれたが、卵巣機能が完全には失われず、まれに自然排卵・妊娠がみられることから、現在は「insufficiency(不全)」という用語が推奨されている。 ・頻度:40歳未満の女性の約1%、30歳未満では約0.1%とされ、続発性無月経の原因の5〜10%程度を占める。 ・原因:多くは原因不明(特発性)である。判明するものとして、染色体異常(Turner症候群などX染色体の異常)、FMR1遺伝子の前変異(脆弱X症候群の保因者)、自己免疫(甲状腺疾患、Addison病、1型糖尿病などとの合併)、医原性(抗癌薬、放射線照射、卵巣手術)、感染症(ムンプス卵巣炎)などがある。 ・病型:卵胞がほぼ消失している型のほか、卵胞は残存しているがゴナドトロピンに反応しない型(ゴナドトロピン抵抗性卵巣症候群)も含まれる。 ・内分泌所見:FSH・LH高値、E2低値(高ゴナドトロピン性低エストロゲン状態)。卵巣予備能の指標である抗Müller管ホルモン(AMH)も著明に低下する。 ・症状:無月経、不妊、ホットフラッシュ・発汗・イライラなどの更年期様症状、腟乾燥感。長期的には骨粗鬆症や心血管疾患のリスクが上がる。 ・治療:低エストロゲン状態による骨量減少や心血管リスクを防ぐため、少なくとも自然閉経の平均年齢(約50歳)まではホルモン補充療法(エストロゲン・プロゲスチン製剤の併用)を行う。挙児希望がある場合、エストロゲン補充などで高くなったFSHを下げてから排卵誘発を試みる方法があるが、排卵が得られる例は限られ、自己卵子での妊娠は一般に困難である。その場合は提供卵子による体外受精が選択肢となる(国内では実施体制が限られる)。

続発性無月経の障害部位とホルモン所見

・視床下部性(体重減少性、神経性やせ症、ストレスなど):FSH・LH低値〜正常、E2低値。 ・下垂体性(Sheehan症候群、下垂体腫瘍など):FSH・LH低値、E2低値。 ・高プロラクチン血症:プロラクチン高値、FSH・LH低値〜正常。 ・多嚢胞性卵巣症候群:LH高値(LH/FSH比の上昇)、FSH正常。 ・卵巣性(早発卵巣不全):FSH・LH高値、E2低値。 ・子宮性(Asherman症候群など):ホルモン値は正常。

POINT

・40歳未満の続発性無月経に、のぼせなどの更年期様症状、子宮萎縮、卵胞の欠如がそろえば早発卵巣不全(POI)を考える。 ・POIは卵巣性の無月経であり、負のフィードバックが外れてFSH・LHが高値、E2は低値となる(高ゴナドトロピン性低エストロゲン状態)。 ・上昇はFSHの方が顕著で、FSH高値が診断の根拠となる。GnRH負荷試験ではFSH・LHが過剰反応する。 ・無月経ではFSH・LH・E2・プロラクチンの組み合わせで障害部位(視床下部・下垂体・卵巣・子宮)を推定する。 ・POIは妊孕性の回復が難しく、ホルモン補充療法で骨・心血管を守ることが重要である。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。