StudyMed医師国家試験

足のどこをこする?―外くるぶしの下が教えるChaddock反射

第105回医師国家試験 C問題 第3問

国試問題にチャレンジ

第105回 C問題 第3問

神経学的診察手技の写真を別に示す。  この反射はどれか。

第105回 C問題 第3問の問題画像
  1. a.Babinski反射
  2. b.Chaddock反射
  3. c.Hoffmann反射
  4. d.Trömner反射
  5. e.Wartenberg反射

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は神経診察の手技の写真から、反射の名前を答える問題だ。ポイントは「体のどこを」「どの方向に」刺激しているか。病的反射は反応そのものより刺激部位で名前が区別されるものが多いから、そこに注目しよう。
医学生医学生
足をこすっているので、まず思い浮かぶのはBabinski反射です。
ドクタードクター
そう考えたくなるよね。でも写真をよく見ると、検者が先の細い棒でこすっているのは足の裏ではなく、外くるぶし、つまり外果の後ろから下を回り込んで、足の外側を前へ向かうラインなんだ。
医学生医学生
足底ではなく足の側面ということは、Babinski反射の変法の一つでしょうか。
ドクタードクター
その通り。外果の下を後ろから前へこする、これがChaddock反射だ。錐体路が障害されていると、Babinski反射と同じく母趾がゆっくり背屈して陽性になる。
医学生医学生
そもそもBabinski反射の刺激部位はどこでしたっけ。OSCEの練習では足の裏をこすった記憶しかなくて。
ドクタードクター
足底の外側縁を踵から趾の付け根に向かってこすり上げ、母趾の付け根のほうへ弧を描くように刺激する。正常なら母趾は足底側へ屈曲するけれど、錐体路障害があると母趾が背屈し、他の趾が扇のように開く。これが開扇現象だね。刺激はあくまで足底だから、今回の写真とは違う。
医学生医学生
同じ母趾の背屈をみるのに、わざわざ足の側面をこする意味はあるんですか。
ドクタードクター
いい疑問だ。足底はくすぐったさで足を引っ込める逃避反応が起きやすく、判定に迷うことがある。Chaddock反射は足底を刺激しないので逃避反応を起こしにくく、検出感度もBabinski反射と同等とされていて、臨床ではかなりよく使われているんだ。
医学生医学生
残りのHoffmann反射、Trömner反射、Wartenberg反射は全部手の反射ですよね。
ドクタードクター
そう、いずれも上肢で手指を刺激して、母指の屈曲・内転をみる反射だ。足を刺激している写真とはそもそも部位が違う。ただ、それぞれの手技の違いは別の問題で問われるから整理しておこう。
医学生医学生
HoffmannとTrömnerは中指をはじくのは同じで、違いがいつも曖昧になります。
ドクタードクター
はじく方向で区別するといい。Hoffmann反射は中指の爪の部分を手掌側へはじく。Trömner反射は中指の指腹を手背側へはじく。方向が逆なんだ。Wartenberg反射は、軽く曲げた患者の4指に検者の曲げた指を引っかけて引っ張り合い、母指が強く屈曲・内転するかをみる。
医学生医学生
神経内科の実習で、健康な同級生同士でHoffmann反射を試したら少し出た人がいて驚きました。
ドクタードクター
実はこれらの上肢の反射は本質的には手指屈筋の腱反射で、反射が活発な健常者では両側性に軽く出ることがある。だから左右差があるときや、腱反射亢進など他の錐体路徴候を伴うときに意味が大きいんだ。
医学生医学生
下肢の変法は他にもOppenheimやGordonがありましたよね。
ドクタードクター
よく覚えているね。Oppenheim反射は脛骨の前内側縁を膝下から足首へ強くこすり下ろす、Gordon反射はふくらはぎを強くつかむ、Schaeffer反射はアキレス腱を強くつまむ、Gonda反射は第4趾をつまんで足底側へ曲げて急に離す。どれも見るのは母趾の背屈で、違うのは刺激部位だけだ。
医学生医学生
刺激部位と名前をセットで覚えれば、写真問題でも迷わなそうです。
ドクタードクター
そうだね。最後に臨床での注意点を。病的反射は上位運動ニューロン障害の徴候で、腱反射亢進、痙性、クローヌス、腹壁反射の消失などと一緒に評価する。一方、乳児では錐体路の髄鞘化が未完成なので、Babinski反射陽性は正常で、おおむね2歳ごろまでに消える。年齢を考えずに陽性を異常と判断しないよう気をつけよう。
医学生医学生
小児科の健診で見たときに、陽性でも問題ないと言われた理由がわかりました。

まとめ

Chaddock反射は、外果の後方から下を回って足背外側縁を前方へこすり、母趾の背屈をみる錐体路障害の病的反射で、Babinski反射の変法の一つです。足底を刺激しないため逃避反応が起きにくく、臨床で広く用いられます。下肢の変法はOppenheim(脛骨前内側縁)、Gordon(腓腹筋)、Schaeffer(アキレス腱)、Gonda(第4趾)と刺激部位で区別し、Hoffmann・Trömner・Wartenberg反射は手指を刺激して母指の屈曲・内転をみる上肢の反射です。病的反射は腱反射亢進や痙性などとあわせて上位運動ニューロン障害を評価する手がかりであり、乳児では生理的に陽性となる点も押さえておくと、神経診察の解釈に役立ちます。

解答・解説

正解はbです

写真の読み取り

写真では、検者が先の細い棒状のもので患者の足の外側をこすっている。矢印は外くるぶし(外果)の後方から下方を回り込み、足の外側を前方へ向かっている。つまり、刺激しているのは足底ではなく、外果の下の足背外側部である。

考え方

錐体路(大脳皮質から脊髄へ運動の指令を伝える経路)が障害されると、正常では見られない反射(病的反射)が出現する。下肢の代表はBabinski反射で、足底の外側をこすると母趾が背屈(足の甲の方へ反り返る)し、ほかの趾が扇のように開く。この「母趾の背屈」という反応を、足底以外の部位への刺激で引き出す変法がいくつもあり、刺激部位の違いで名前が区別される。外果の下を後ろから前へこするのがChaddock反射である。 上肢の選択肢(Hoffmann反射、Trömner反射、Wartenberg反射)は、いずれも手指を刺激して母指の屈曲・内転をみるもので、写真の足への刺激とは明らかに異なる。

選択肢考察

  1. ×a.  Babinski反射

    Babinski反射は、足底の外側縁を踵から趾の付け根に向かってこすり上げ、さらに母趾の付け根の方へ弧を描くように刺激して誘発する。正常では母趾は足底側へ屈曲するが、錐体路障害があると母趾がゆっくり背屈し、他の趾が開く(開扇現象)。刺激部位は足底であり、写真のように外果の下の足の側面をこする手技ではない。

  2. ○b.  Chaddock反射

    Chaddock反射は、外果の後方から下を回って、足背の外側縁を前方へ(踵側から小趾側へ)こすって誘発する。写真の刺激部位と方向(矢印)はこれに一致する。錐体路障害があると母趾が背屈し、陽性と判定する。Babinski反射の変法の一つで、足底を刺激しないため足底をくすぐったがる患者の逃避反応を起こしにくく、Babinski反射と同等に検出感度が高いとされ、臨床でよく用いられる。

  3. ×c.  Hoffmann反射

    Hoffmann反射は上肢の反射である。患者の手関節を軽く背屈させた状態で中指の末節をつまみ、爪の部分を手掌側へはじく。反射が亢進していると母指が屈曲・内転し、他の指も屈曲する。足を刺激する写真の手技とは異なる。

  4. ×d.  Trömner反射

    Trömner反射も上肢の反射である。患者の手指を軽く屈曲させた状態で中指を支え、中指の末節の指腹(手掌側)を検者の指で手背側へ向けてはじく。反射が亢進していると母指が屈曲・内転する。Hoffmann反射とは指をはじく方向が逆である点で区別する。写真の手技とは異なる。

  5. ×e.  Wartenberg反射

    Wartenberg反射も上肢の反射である。前腕を回外させた患者の母指以外の4指を軽く屈曲させ、検者の屈曲した指を引っかけて互いに引っ張り合う。錐体路障害があると母指が強く屈曲・内転する。写真の手技とは異なる。

Babinski反射とその変法(いずれも母趾の背屈をみる)

Babinski反射:足底外側縁を踵から前へこする。 Chaddock反射:外果の下を後ろから前へこする。 Oppenheim反射:脛骨の前内側縁を膝の下から足首に向けて強くこすり下ろす。 Gordon反射:ふくらはぎ(腓腹筋)を強くつかむ。 Schaeffer反射:アキレス腱を強くつまむ。 Gonda反射:第4趾(または第3・4趾)をつまんで足底側へ強く曲げ、急に離す。

上肢の反射(母指の屈曲・内転をみる)

Hoffmann反射:中指の爪を手掌側へはじく。 Trömner反射:中指の指腹を手背側へはじく。 Wartenberg反射:屈曲した4指を検者の指で引っ張る。 これらは本質的には手指屈筋の腱反射であり、健常者でも反射が活発な人では両側性に軽く出現することがある。左右差がある場合や、他の錐体路徴候(腱反射亢進、Babinski反射陽性など)を伴う場合に意義が大きい。

錐体路障害(上位運動ニューロン障害)の徴候

腱反射の亢進、病的反射の出現、痙性(筋緊張の亢進)、クローヌス、腹壁反射の消失、筋萎縮は目立たない、などが特徴である。これに対して下位運動ニューロン障害では、腱反射の低下・消失、筋萎縮、線維束性収縮がみられる。

乳児のBabinski反射

錐体路の髄鞘化が未完成な乳児では、Babinski反射が陽性でも正常であり、通常は歩行が始まるころ(おおむね2歳ごろまで)に消失する。

POINT

・Chaddock反射=外果の下を後方から前方へこすり、母趾の背屈をみる。 ・Babinski反射の変法は刺激部位で区別する(Chaddock:外果下、Oppenheim:脛骨前内側縁、Gordon:腓腹筋、Schaeffer:アキレス腱、Gonda:第4趾)。 ・Hoffmann・Trömner・Wartenberg反射は上肢で母指の屈曲・内転をみる反射である。 ・病的反射は錐体路障害の徴候である。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。