StudyMed医師国家試験

「膨らまない肺」と「吐き出せない肺」―じん肺・肺線維症で見抜く拘束性障害

第105回医師国家試験 B問題 第35問

国試問題にチャレンジ

第105回 B問題 第35問

拘束性障害をきたす病態はどれか。2つ選べ。

  1. a.じん肺
  2. b.気管腫瘍
  3. c.肺線維症
  4. d.気管支喘息
  5. e.びまん性汎細気管支炎

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、換気障害のパターンを病態から見分ける問題だ。ポイントは、その病気が「肺そのものを硬くするのか」、それとも「気道を狭くするのか」を考えること。まずは拘束性障害と閉塞性障害の定義から確認しよう。スパイロメトリーで使う2つの指標は覚えているかな。
医学生医学生
%肺活量と1秒率です。%肺活量が80%未満なら拘束性、1秒率が70%未満なら閉塞性、両方なら混合性、と生理学の講義で習いました。
ドクタードクター
完璧だね。%肺活量は、年齢・性別・身長から予測される肺活量に対して実測値が何%か。1秒率は、努力肺活量のうち最初の1秒で吐き出せた割合だ。拘束性は「肺が十分に膨らまないので容量が小さい」状態、閉塞性は「気道が狭くて速く吐き出せない」状態、とイメージするとわかりやすい。
医学生医学生
拘束性というと、肺が硬くなる病気が思い浮かびます。間質性肺炎とか。
ドクタードクター
その通り。代表は間質に線維化が起こる病気だ。肺胞壁が厚く硬くなって、肺のコンプライアンス、つまり膨らみやすさが落ちる。だから肺活量も全肺気量も減る。では選択肢のうち、肺線維症はどうかな。
医学生医学生
まさに線維化そのものなので拘束性ですね。呼吸器内科の実習で、特発性肺線維症の患者さんの背部で捻髪音を聴かせてもらいました。ばち指もありました。
ドクタードクター
いい経験をしたね。特発性肺線維症は特発性間質性肺炎の中で最も多い病型で、典型的な拘束性障害を示す。肺胞壁が厚くなるので拡散能も下がり、特に運動時の低酸素血症が目立つ。1秒率はむしろ正常か高めになることが多いんだ。
医学生医学生
1秒率が上がるんですか? 拘束性なら全部の数字が悪くなるのかと思っていました。
ドクタードクター
よくある誤解だね。肺が硬いと、線維化した組織が気道を外側から引っ張って広げ、さらに肺の弾性収縮力も強くなる。だから吐き出す速さは保たれ、肺活量が小さい分、割合としての1秒率は高く出やすいんだ。次はじん肺。これはどう考える?
医学生医学生
粉じんを吸う職業性の病気ですよね。社会医学の講義で、珪肺や石綿肺が出てきました。でも、アレルギーで起こるんでしたっけ。
ドクタードクター
そこは区別が大事。じん肺は無機の粉じんを肺胞マクロファージが取り込み、そこから出るサイトカインが線維芽細胞を活性化して線維化が進む病態で、アレルギー機序ではない。アレルギー機序で起こるのは、カビや鳥の羽毛など有機の粉じんによる過敏性肺炎だ。どちらにしても、じん肺は線維化で肺が硬くなるから拘束性障害と拡散障害を起こす。
医学生医学生
ということは、正解はじん肺と肺線維症ですね。残りは気道の病気でしょうか。
ドクタードクター
そう。気管支喘息は気道の慢性炎症が本態で、平滑筋の収縮や粘膜のむくみ、痰で気道が狭くなる閉塞性障害だ。気管支拡張薬で1秒量が改善する可逆性が特徴だね。
医学生医学生
びまん性汎細気管支炎も名前の通り細気管支の病気なので、閉塞性ですね。CBTの勉強で、慢性副鼻腔炎の合併と寒冷凝集素価の上昇、マクロライド少量長期療法をセットで覚えました。
ドクタードクター
その通り。呼吸細気管支を中心とした慢性炎症で細い気道が狭くなり、進むと息を吐ききれずに空気が残る、いわゆるair trappingが起こる。HLA-B54との関連も知られている。最後に気管腫瘍はどうだろう。
医学生医学生
腫瘍で場所を取るなら、肺が膨らみにくくなって拘束性……とも考えてしまいます。
ドクタードクター
迷いやすいところだね。でも気管腫瘍は中枢気道の内腔を狭くする病気で、肺の実質そのものは正常だ。だから肺活量は保たれ、気流制限、つまり閉塞性のパターンになる。フローボリューム曲線で最大流速が頭打ちになって台形状に平坦化するのが特徴で、吸気時のstridorを伴うこともある。
医学生医学生
喘息と間違えられることがある、と聞いたことがあります。
ドクタードクター
そうなんだ。吸入薬が効かない「難治性喘息」の中に気管腫瘍が隠れていることがあるから、フローボリューム曲線の形をきちんと見ることが大切だよ。発展として、拘束性障害は肺実質の病気だけではないことも押さえておこう。胸水や胸膜肥厚、側弯症や高度肥満などの胸郭の問題、ALSや筋ジストロフィーなどの神経筋疾患でも肺を十分に広げられず拘束性になる。
医学生医学生
その場合、肺そのものは正常なので拡散能の評価が変わりそうですね。
ドクタードクター
鋭いね。胸郭や神経筋が原因なら肺胞自体は健常なので、肺胞気量で補正した拡散能は保たれる。一方、間質性肺疾患では低下する。それから、進行した珪肺では塊状の線維化巣や気腫性変化が加わって、閉塞性も合わさった混合性障害になることもある。病名で機械的に分類するだけでなく、「どこが、どう障害されているか」から換気パターンを推論する癖をつけておこう。

まとめ

換気障害は、%肺活量80%未満で拘束性、1秒率70%未満で閉塞性と判定し、両方が低下すれば混合性となります。拘束性障害の代表は、肺の間質に線維化が起こって肺が硬くなる病態で、肺線維症や、無機粉じんを取り込んだマクロファージを介して線維化が進むじん肺が該当します。これに対し、気管支喘息、びまん性汎細気管支炎、中枢気道を狭める気管腫瘍は、いずれも気流が制限される閉塞性障害を示します。拘束性障害は胸膜・胸郭の病変や神経筋疾患でも起こり、その場合は肺胞気量で補正した拡散能が保たれる点で間質性肺疾患と区別できます。「肺が膨らまないのか、気道が狭いのか」という病態から換気パターンを推論する力は、肺機能検査の読み方と呼吸器疾患の鑑別の基礎になります。

解答・解説

正解はa, cです

スパイロメトリー(肺機能検査)で分かる換気障害の分類を問う問題である。 換気障害は、次の2つの指標の組み合わせで分類する。 ・%肺活量(%VC):実測した肺活量が、年齢・性別・身長から予測される肺活量の何%にあたるか。80%未満を低下とする。 ・1秒率(FEV1/FVC):努力肺活量(FVC)のうち、最初の1秒間に吐き出せた量(1秒量、FEV1)の割合。70%未満を低下とする。 分類は次のとおりである。 ・拘束性換気障害:%VC<80%、1秒率は正常 ・閉塞性換気障害:1秒率<70% ・混合性換気障害:両方とも低下 拘束性障害とは、肺そのものが膨らみにくくなる(コンプライアンスが低下する)か、胸郭や呼吸筋の問題で肺を十分に広げられないために、肺の容量が小さくなった状態である。代表は間質性肺疾患であり、肺胞壁(間質)に線維化が起こって肺が硬くなる。 閉塞性障害とは、気道が狭くなって息を吐き出す速さが落ちた状態である。気管支喘息、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、びまん性汎細気管支炎などの気道の病気が該当する。中枢気道の腫瘍による狭窄も、気流が制限されるため閉塞性のパターンを示す。 したがって、選択肢の中から肺の間質に線維化を起こす病態を選べばよい。粉じんの吸入で線維化を起こすじん肺と、肺線維症が正解となる。

選択肢考察

  1. ○a.  じん肺

    正しい。じん肺は、粉じん(無機の粉じん)を長期間吸い込むことで、肺に線維性の変化が起こる職業性の肺疾患である。代表的なものに、シリカ(結晶質の二酸化ケイ素)による珪肺、石綿(アスベスト)による石綿肺、炭鉱での粉じんによる炭坑夫じん肺がある。吸い込んだ粉じんを肺胞マクロファージが取り込み、そこから放出されるサイトカインが線維芽細胞を活性化して線維化を進める。アレルギー反応によるものではなく、アレルギー機序で起こる過敏性肺炎(有機の粉じんが原因)とは区別する。線維化によって肺が硬くなり、肺活量が低下する拘束性障害と、ガスが肺胞から血液へ移りにくくなる拡散障害を起こす。進行した珪肺では、大きな線維化の塊(塊状巣)や気腫性変化を伴い、閉塞性障害が加わった混合性障害を示すこともある。

  2. ×b.  気管腫瘍

    誤り。気管腫瘍は中枢気道の内腔を狭くする病態であり、気流制限、つまり閉塞性のパターンを起こす。肺の実質は正常なので、肺活量は基本的に保たれる。上気道・中枢気道の閉塞では、フローボリューム曲線(呼気・吸気の流速と肺気量の関係を表したグラフ)で最大流速が頭打ちになり、台形状の平坦化がみられるのが特徴である。聴診では吸気時に喘鳴(stridor)が聞こえることがある。1秒率の低下が軽度なこともあるため、喘息と誤って診断されることがある点に注意する。

  3. ○c.  肺線維症

    正しい。肺線維症は、肺胞壁(間質)に炎症と線維化が起こる病態である。代表的な疾患は特発性肺線維症(IPF)であり、特発性間質性肺炎の中で最も多い。線維化によって肺胞壁が厚く硬くなり、肺のコンプライアンス(膨らみやすさ)が低下する。その結果、肺活量(VC)と全肺気量(TLC)が減少する典型的な拘束性障害を示す。1秒率は正常か、むしろ上昇する。肺胞壁が厚くなるため肺拡散能(DLCO)も低下し、特に運動時に低酸素血症が目立つ。身体所見としては、捻髪音(fine crackles)やばち指がみられる。

  4. ×d.  気管支喘息

    誤り。気管支喘息は気道の慢性炎症を本態とする疾患である。気道が過敏になっており(気道過敏性)、刺激に反応して気道平滑筋の収縮、粘膜のむくみ、痰の増加が起こり、気道が狭くなる。その結果、発作時には1秒率が低下する閉塞性障害を示す。治療や自然経過で気流制限が改善すること(可逆性)が特徴で、気管支拡張薬を吸入すると1秒量が改善する(気道可逆性試験陽性)。

  5. ×e.  びまん性汎細気管支炎

    誤り。びまん性汎細気管支炎(DPB:diffuse panbronchiolitis)は、両側の肺全体にわたって、呼吸細気管支を中心に慢性炎症が起こる疾患である。東アジアに多く、HLA-B54との関連が知られている。多くは慢性副鼻腔炎を合併する(副鼻腔気管支症候群)。細気管支が狭くなって閉塞するため、1秒率が低下する閉塞性障害を示す。進行すると残気量が増え、息を吐ききれずに肺に空気が残る空気とらえこみ(air trapping)がみられる。血液検査では寒冷凝集素価が持続的に高いのが特徴である。治療にはマクロライド少量長期療法が有効である。

換気障害の分類

・正常:%VC≧80%、1秒率≧70% ・拘束性:%VC<80%、1秒率≧70% ・閉塞性:%VC≧80%、1秒率<70% ・混合性:%VC<80%、1秒率<70%

拘束性障害をきたす主な病態

肺実質の病変 ・間質性肺炎・肺線維症(特発性肺線維症、膠原病に伴う間質性肺炎など) ・じん肺(珪肺、石綿肺など) ・過敏性肺炎 ・サルコイドーシス(進行例) ・放射線肺炎、薬剤性肺障害 ・肺切除後 胸膜・胸郭の病変 ・胸水、胸膜肥厚(石綿による胸膜肥厚など) ・側弯症、胸郭形成術後、高度の肥満 神経筋疾患(呼吸筋の筋力低下) ・筋萎縮性側索硬化症(ALS) ・筋ジストロフィー ・重症筋無力症 ・Guillain-Barré症候群

閉塞性障害をきたす主な病態

・COPD(慢性閉塞性肺疾患) ・気管支喘息 ・びまん性汎細気管支炎 ・気管支拡張症 ・閉塞性細気管支炎 ・リンパ脈管筋腫症 ・中枢気道の狭窄(腫瘍、気管狭窄)

拘束性障害と閉塞性障害の違い

・肺のコンプライアンス:拘束性では低下し、COPD(肺気腫)では上昇する。 ・全肺気量(TLC)と残気量(RV):拘束性ではともに低下し、閉塞性ではRVが増加する。 ・肺拡散能(DLCO):間質性肺疾患と肺気腫では低下し、喘息では正常か上昇する。胸郭や神経筋の病気による拘束性障害では、肺の実質は正常なので、肺胞気量で補正した拡散能(DLCO/VA)は保たれる。

POINT

・拘束性障害は%VC<80%、閉塞性障害は1秒率<70%で判定する。 ・拘束性障害の代表は、間質に線維化を起こす病態(肺線維症、じん肺、過敏性肺炎など)と、胸郭・胸膜・神経筋の病気である。 ・気管支喘息、COPD、びまん性汎細気管支炎、中枢気道の狭窄は閉塞性障害を示す。 ・じん肺は粉じんによる線維化で起こり、アレルギー機序ではない。 ・進行した珪肺などでは、拘束性と閉塞性が合わさった混合性障害になりうる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。