StudyMed医師国家試験

同じ染色体異常でも運命は大きく違う―18トリソミーの生命予後を読み解く

第105回医師国家試験 A問題 第7問

国試問題にチャレンジ

第105回 A問題 第7問

生命予後が最も不良なのはどれか。

  1. a.18 trisomy
  2. b.21 trisomy
  3. c.猫鳴き症候群
  4. d.Klinefelter症候群
  5. e.Prader-Willi症候群

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、代表的な染色体異常症の生命予後を比べる問題だ。それぞれの症候群の特徴を細かく覚えているかよりも、「どんな種類の染色体異常か」と「命に関わる合併症があるか」という2つの軸で整理できるかがポイントだよ。
医学生医学生
選択肢を見ると、トリソミーが2つ、部分欠失、性染色体異常、それにインプリンティングの症候群が並んでいますね。
ドクタードクター
いい分類だね。まず大原則から。常染色体のトリソミーは多くの遺伝子の量が1.5倍になるので影響が大きく、ほとんどは流産になってしまう。出生まで至るのは、遺伝子数が比較的少ない13番、18番、21番にほぼ限られるんだ。
医学生医学生
遺伝学の講義で、その3つは母体年齢が上がると頻度が増えて、主な原因は卵子形成時の減数分裂での不分離だと習いました。
ドクタードクター
その通り。ではその3つのうち、生命予後が悪いのはどれだと思う?
医学生医学生
21トリソミーが一番頻度が高いので、その分重症な気もしますが……。
ドクタードクター
頻度と重症度は別物なんだ。21トリソミー、つまりDown症候群は約半数に房室中隔欠損などの心疾患を合併するけれど、心臓手術をはじめとする医療の進歩で、今では平均寿命が50~60歳を超えている。成人期まで生きるのが普通の疾患なんだよ。
医学生医学生
小児科実習で、成人のDown症候群の方が甲状腺のフォローで通院しているのを見ました。たしかに長く生きられるんですね。
ドクタードクター
そうだね。一方、18トリソミー、Edwards症候群は事情がまったく違う。90%以上に心室中隔欠損や動脈管開存、両大血管右室起始などの心奇形を合併し、食道閉鎖や臍帯ヘルニアなど多発奇形を伴う。心不全や肺高血圧、中枢性無呼吸のために、生存期間の中央値は数日から2週間程度、1歳まで生存するのは約10%以下とされている。
医学生医学生
だから、この中で最も生命予後が不良なのは18トリソミーなんですね。身体所見では握りしめた手とrocker-bottom footが有名でした。
ドクタードクター
よく覚えているね。第2指が第3指に、第5指が第4指に重なる手指の重なり、踵が突出した揺り椅子状足底、後頭部突出、小顎、耳介低位などが特徴だ。胎児期から子宮内発育遅延や羊水過多がみられることも多い。ただし近年は、心臓手術を含む積極的治療で長期生存する例も報告されているから、「必ず短期間で亡くなる」と断定するのは避けたいところだ。
医学生医学生
猫鳴き症候群はどうでしょう。重い発達遅滞があると聞いたので、予後も悪いのかと思いました。
ドクタードクター
5番染色体短腕の部分欠失で起こる症候群だね。喉頭の形態異常による子猫のような甲高い啼泣、小頭症、満月様顔貌、重度の精神運動発達遅滞が特徴だ。乳児期の哺乳障害や呼吸器感染症には注意が必要だけど、多くは成人期まで生存する。発達の重さと生命予後の悪さは必ずしも一致しないんだ。
医学生医学生
Klinefelter症候群は、不妊の精査で見つかることがあるんでしたよね。
ドクタードクター
そう。47,XXYが大部分の性染色体異常で、小さく硬い精巣、テストステロン低下に伴うLH・FSH高値、長身で四肢が長い類宦官体型、女性化乳房、無精子症が特徴だ。重い内臓奇形はないので生命予後は良好。思春期まで気づかれないことも多いくらいだよ。
医学生医学生
Prader-Willi症候群は肥満が問題になるので、合併症で寿命が縮みそうなイメージがあります。
ドクタードクター
確かに、15番染色体q11-q13領域の父由来遺伝子が働かないことで、乳児期の筋緊張低下と哺乳障害の後、幼児期以降に過食と肥満が目立ってくる。2型糖尿病や睡眠時無呼吸が予後を左右するから食事管理は重要だ。でも適切に管理すれば成人期まで生存でき、18トリソミーとは比べものにならないほど予後は良い。
医学生医学生
同じ領域の母由来遺伝子が働かないとAngelman症候群でしたね。CBTでインプリンティングの代表例としてセットで出てきました。
ドクタードクター
その通り。最後に、13トリソミー、Patau症候群も一緒に押さえておこう。全前脳胞症、口唇口蓋裂、小眼球症、多指症、頭皮欠損、心奇形が特徴で、1歳生存率は18トリソミーと同様に約10%以下だ。「予後不良なのは13と18」とまとめて覚えておくといい。
医学生医学生
出生前診断や新生児期の告知の場面では、こうした予後の情報がご家族にとってとても重い意味を持ちますね。
ドクタードクター
本当にそうだね。予後の数字は大切な情報だけれど、近年の治療の変化も踏まえ、ご家族の価値観に寄り添いながら治療方針を一緒に考えていく姿勢が求められる。知識の正確さと伝え方の両方が大事なんだ。

まとめ

出生に至る常染色体トリソミーは13番、18番、21番にほぼ限られ、このうち18トリソミー(Edwards症候群)と13トリソミー(Patau症候群)は重い心奇形を含む多発奇形や中枢性無呼吸のため、1歳まで生存するのは約10%以下と生命予後が極めて不良です。18トリソミーは手指の重なりや揺り椅子状足底が特徴で、近年は積極的治療による長期生存例も報告されていますが、代表的な染色体異常のなかで最も予後不良な疾患の一つです。一方、21トリソミーは医療の進歩で平均寿命が50~60歳以上に延び、猫鳴き症候群、Klinefelter症候群、Prader-Willi症候群も成人期までの生存が期待できます。「異常の種類」と「致死的合併症の有無」で整理すると、発達の重さや頻度と生命予後を混同せずに判断できます。こうした理解は試験対策だけでなく、出生前診断や家族への説明といった臨床の場面でも欠かせない基盤となります。

解答・解説

正解はaです

本問は代表的な染色体異常症・隣接遺伝子症候群について、生命予後(どのくらい生存できるか)を比較させる問題である。 一般に、常染色体の数的異常(トリソミー)は多数の遺伝子の量が1.5倍になるため影響が大きく、ほとんどは流産となる。出生に至る常染色体トリソミーは、遺伝子数の比較的少ない13番、18番、21番にほぼ限られる。このうち13トリソミー(Patau症候群)と18トリソミー(Edwards症候群)は重い心奇形をはじめとする多発奇形と中枢性の呼吸障害を伴い、多くが乳児期までに死亡する。これに対して21トリソミー(Down症候群)は合併症への医療の進歩により成人期まで生存するのが普通である。 一方、染色体の部分欠失による症候群(猫鳴き症候群など)や、性染色体の数的異常(Klinefelter症候群など)、インプリンティング異常を伴う症候群(Prader-Willi症候群)は、知的能力障害や内分泌異常などを伴っても、生命予後は比較的良好である。 したがって、選択肢のなかで生命予後が最も不良なのは18トリソミーである。「予後不良なのは13トリソミーと18トリソミー」と整理して覚えておくとよい。

選択肢考察

  1. ○a.  18 trisomy

    正しい。18トリソミー(Edwards症候群)は出生3,500~8,500人に1人程度の頻度で、女児に多く、母体の高年齢で頻度が上がる。胎児期からの子宮内発育遅延、羊水過多、胎盤が小さいことなどがみられ、出生後は重度の発達遅滞を示す。特徴的な所見として、後頭部の突出、小顎、耳介低位、第2指が第3指に、第5指が第4指に重なる手指の重なり(握りしめた手)、踵が突出し足底が丸く張り出した揺り椅子状足底(rocker-bottom foot)、短い胸骨がある。90%以上に心奇形(心室中隔欠損、動脈管開存、両大血管右室起始など)を合併し、腎奇形、食道閉鎖、臍帯ヘルニアなども伴う。心不全、肺高血圧、中枢性無呼吸などのため、生存期間の中央値は数日から2週間程度と短く、1歳まで生存するのは約10%以下である。従来はほぼ全例が乳児期に死亡するとされてきたが、近年は心臓手術を含む積極的治療により長期生存する例も報告されている。それでも選択肢中で生命予後が最も不良であることに変わりはない。

  2. ×b.  21 trisomy

    誤り。21トリソミー(Down症候群)は最も頻度の高い常染色体異常で、出生600~1,000人に1人程度にみられ、母体年齢の上昇とともに頻度が高くなる。名称は最初に記載した英国の医師J. L. H. Downに由来する。眼瞼裂斜上、内眼角贅皮、鼻根部平坦などの特徴的な顔貌、筋緊張低下、知的能力障害、低身長、手掌単一屈曲線(猿線)、第5指の内彎を示す。約半数に先天性心疾患(心内膜床欠損症〈房室中隔欠損症〉、心室中隔欠損など)を合併し、十二指腸閉鎖、鎖肛、ヒルシュスプルング病、環軸椎不安定性、甲状腺機能低下症、白血病(一過性骨髄異常増殖症を含む)、早期のアルツハイマー型認知症などの合併が多い。かつては短命とされたが、心臓手術などの医療の進歩により平均寿命は大きく延び、現在では50~60歳を超える。

  3. ×c.  猫鳴き症候群

    誤り。猫鳴き症候群(5p-症候群)は5番染色体短腕の部分欠失によって起こる。喉頭の形態異常により、新生児期から乳児期に子猫の鳴き声に似た甲高い啼泣を示すことが名称の由来である(この泣き声は成長とともに目立たなくなる)。小頭症、円形顔貌(満月様顔貌)、眼間開離、耳介低位などの特異顔貌、筋緊張低下、重度の精神運動発達遅滞を特徴とし、心奇形や腎奇形、合指症などを伴うことがある。乳児期には哺乳障害や呼吸器感染症に注意を要するが、多くは成人期まで生存し、生命予後は比較的良好である。

  4. ×d.  Klinefelter症候群

    誤り。Klinefelter症候群は男性にX染色体が1本以上過剰に存在する性染色体異常で、大部分は47,XXY核型である。男児500~1,000人に1人程度と頻度が高く、男性の性腺機能低下症の原因として最も多い。精巣が小さく硬く、テストステロン分泌が低下するため、フィードバックによりLH・FSHが高値となる(高ゴナドトロピン性性腺機能低下症)。長身で四肢が長く(類宦官体型)、女性化乳房、無精子症による男性不妊を示す。軽度の知的能力障害や学習・言語面の困難を伴うことがあり、女性化乳房を伴う例では男性乳癌の発生率が高い。思春期までは気づかれにくく、不妊症の精査で発見されることも多い。重篤な内臓奇形は伴わず、生命予後は良好である。

  5. ×e.  Prader-Willi症候群

    誤り。Prader-Willi症候群は15番染色体長腕q11-q13領域にある父由来の遺伝子群が働かないことで生じる。原因として父由来染色体の同領域の欠失(約70%)、母性片親性ダイソミー(2本とも母由来、約25%)、インプリンティング異常などがある。新生児期・乳児期には著明な筋緊張低下と哺乳障害を示し、幼児期以降は視床下部機能障害による過食と肥満が目立ってくる。知的能力障害、低身長、性腺機能低下(外性器低形成)、アーモンド様眼裂、小さな手足などを特徴とする。肥満に伴う2型糖尿病や睡眠時無呼吸などの合併症が予後を左右するため、食事管理が重要であるが、適切に管理されれば成人期まで生存でき、生命予後は18トリソミーに比べてはるかに良好である。

出生児にみられる主な常染色体トリソミー

・21トリソミー(Down症候群):最多。平均寿命は50~60歳以上に延びている。 ・18トリソミー(Edwards症候群):女児に多い。手指の重なり、揺り椅子状足底、心奇形。1歳生存率は約10%以下。 ・13トリソミー(Patau症候群):全前脳胞症、口唇口蓋裂、小眼球症、多指症、頭皮欠損、心奇形。1歳生存率は約10%以下で、18トリソミーと同様に予後不良である。 いずれも母体年齢の上昇に伴って頻度が高くなる。主な原因は卵子形成時の減数分裂における染色体不分離である。

その他の主な染色体異常・関連症候群

・5p-症候群(猫鳴き症候群):5番染色体短腕欠失。子猫様の啼泣、重度発達遅滞。 ・Wolf-Hirschhorn症候群(4p-症候群):4番染色体短腕欠失。ギリシャ兵士のヘルメット様顔貌。 ・Klinefelter症候群(47,XXYなど):男性。小精巣、高ゴナドトロピン性性腺機能低下症、不妊。 ・Turner症候群(45,Xなど):女性。低身長、翼状頸、原発性無月経、大動脈縮窄症。 ・Prader-Willi症候群:15q11-q13の父由来遺伝子の機能欠如。筋緊張低下、過食・肥満。 ・Angelman症候群:同じ15q11-q13領域の母由来遺伝子(UBE3A)の機能欠如。重度知的能力障害、てんかん、容易に引き起こされる笑い。 Prader-Willi症候群とAngelman症候群は、同じ染色体領域でも親の由来によって異なる症状が出る「ゲノムインプリンティング」の代表例である。

POINT

・出生可能な常染色体トリソミーは13、18、21番である。 ・生命予後が不良なのは13トリソミーと18トリソミーで、1歳までの生存は約10%以下である。 ・21トリソミーは心奇形などの治療の進歩により平均寿命が50~60歳以上に延びている。 ・猫鳴き症候群、Klinefelter症候群、Prader-Willi症候群は生命予後が比較的良好である。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。