StudyMed医師国家試験

ペルオキシダーゼ陰性の芽球―57歳の発熱から急性リンパ性白血病を見抜く

第104回医師国家試験 I問題 第51問

国試問題にチャレンジ

第104回 I問題 第51問

57歳の男性。38℃台の発熱と倦怠感とを主訴に来院した。頸部に小指頭大のリンパ節を数個触知する。腹部は平坦,軟で,肝・脾を触知しない。既往歴と家族歴とに特記すべきことはない。血液所見:赤血球210万,Hb 7.4 g/dL,Ht 23%,白血球16,000(異常細胞60%),血小板5.6万。異常細胞のペルオキシダーゼ反応は陰性。骨髄塗抹May-Giemsa染色標本を別に示す。  診断はどれか。

第104回 I問題 第51問の問題画像
  1. a.急性骨髄性白血病
  2. b.急性リンパ性白血病
  3. c.慢性骨髄性白血病
  4. d.慢性リンパ性白血病
  5. e.成人T細胞白血病

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、血球減少と異常細胞の出現から白血病の病型を見分ける問題だ。考える順番は2段階。まず「急性か慢性か」、次に「骨髄系かリンパ系か」。それぞれ、どの所見が手がかりになるかを意識しながら進めよう。
医学生医学生
貧血と血小板減少があるのに白血球は増えていて、しかも異常細胞が6割を占めている。骨髄で何かが増えて、正常な造血が押しやられている感じがします。
ドクタードクター
いい捉え方だね。腫瘍細胞が骨髄を占拠すると、赤血球や血小板、正常な好中球がつくれなくなる。発熱や倦怠感も、正常な白血球が減って感染しやすくなったことや貧血で説明できる。では、急性か慢性かはどう判断する?
医学生医学生
病理の講義では、急性は未熟な芽球が増えて、慢性は成熟した細胞が増えると習いました。
ドクタードクター
その通り。骨髄塗抹のMay-Giemsa染色では、核が細胞のほとんどを占めてN/C比が大きく、細胞質は狭く好塩基性で顆粒をもたない未熟な芽球が、一様に増殖している。成熟段階の細胞がそろって増える慢性白血病とは違い、これは急性白血病の像なんだ。
医学生医学生
芽球ばかりで途中の段階の細胞がない、いわゆる白血病裂孔ですね。CBTでよく出ていました。
ドクタードクター
よく覚えているね。WHO分類では、骨髄または末梢血の芽球が20%以上で急性白血病とする。次は骨髄系かリンパ系か。ここで効いてくるのがペルオキシダーゼ反応だ。
医学生医学生
ペルオキシダーゼは好中球の顆粒の酵素だから、陽性なら骨髄系、陰性ならリンパ系……でしたっけ。
ドクタードクター
基本はそれでいい。芽球の3%以上が陽性なら急性骨髄性白血病とする。今回は陰性で、芽球に顆粒がなく、頸部リンパ節腫大も伴っている。リンパ節腫大はリンパ系腫瘍で起こりやすい所見だから、すべてが急性リンパ性白血病を指しているんだ。
医学生医学生
でも急性リンパ性白血病って小児の病気というイメージで、57歳だと急性骨髄性白血病のほうが多いですよね。年齢で迷いました。
ドクタードクター
鋭い迷いだね。確かに成人の急性白血病で最も多いのは急性骨髄性白血病だし、急性リンパ性白血病は小児の白血病で最多だ。でも成人にも起こる。年齢は事前確率を変えるだけで、ペルオキシダーゼ陰性という所見のほうが決め手になる。急性骨髄性白血病なら、多くはペルオキシダーゼ陽性で、細胞質にアズール顆粒や針状のAuer小体がみられることも多い。
医学生医学生
慢性骨髄性白血病は、芽球ではなく成熟した顆粒球が増える病気だから外れますね。
ドクタードクター
そう。慢性骨髄性白血病はフィラデルフィア染色体をもつ造血幹細胞の増殖で、骨髄芽球から成熟好中球まで各段階の顆粒球が増え、好塩基球増多や脾腫を伴い、血小板はむしろ増えることが多い。急性転化すれば芽球が増えるけれど、普通は脾腫やそれまでの経過がある。今回は脾腫もなく、合わないね。
医学生医学生
慢性リンパ性白血病もリンパ節が腫れますが、増えているのは小型の成熟リンパ球でしたよね。
ドクタードクター
その通り。成熟した小型B細胞が単クローン性に増え、塗抹ではつぶれたsmudge cellがみられる。高齢者に多く経過は緩やかで、日本ではまれだ。今回のような未熟な芽球の増殖とは別物だよ。
医学生医学生
成人T細胞白血病は九州出身の患者さんで、花びらのような核のflower cellが出るんですよね。血液内科の実習で末梢血標本を見せてもらいました。
ドクタードクター
貴重な経験だね。HTLV-1感染を背景にしたCD4陽性の成熟T細胞の腫瘍で、高カルシウム血症や皮膚病変、日和見感染を伴いやすい。腫瘍細胞は成熟T細胞だから、やはり芽球とは違う。
医学生医学生
急性か慢性かは細胞の成熟度で、骨髄系かリンパ系かはペルオキシダーゼで、という2段階で絞り込むわけですね。
ドクタードクター
完璧だ。ただし臨床では「ペルオキシダーゼ陰性=急性リンパ性白血病」と決めつけないこと。最未分化型や急性巨核芽球性白血病、単球系の一部など、陰性になる急性骨髄性白血病もある。だから実際はフローサイトメトリーで表面マーカーを調べる。B細胞系ならCD19、CD10、CD79a、T細胞系ならCD3、CD7、そして未熟リンパ球のマーカーであるTdTも大事だ。
医学生医学生
成人だとフィラデルフィア染色体の検査も重要だと聞きました。
ドクタードクター
そうなんだ。成人の急性リンパ性白血病では20〜30%程度がフィラデルフィア染色体陽性で、高齢になるほど増える。陽性ならチロシンキナーゼ阻害薬を化学療法に併用する。治療は寛解導入、地固め、維持療法と進め、中枢神経浸潤を起こしやすいのでメトトレキサートの髄腔内投与などで予防する。成人は小児より予後が悪く、適応があれば同種造血幹細胞移植も検討するよ。
医学生医学生
診断の段階で染色体まで調べておくことが、そのまま治療選択につながるんですね。
ドクタードクター
その通り。形態とペルオキシダーゼで方向をつけ、マーカーと遺伝子で確定し治療を決める。この流れを身につけておこう。

まとめ

貧血・血小板減少とともに末梢血や骨髄に未熟な芽球が一様に増えていれば急性白血病を考え、成熟段階の細胞がそろって増える慢性白血病と区別します。芽球のペルオキシダーゼ反応が陰性で顆粒をもたず、リンパ節腫大を伴う場合は急性リンパ性白血病を第一に考えます。急性骨髄性白血病はペルオキシダーゼ陽性やAuer小体、慢性骨髄性白血病は各成熟段階の顆粒球増加と脾腫、慢性リンパ性白血病はsmudge cell、成人T細胞白血病はflower cellとHTLV-1が鑑別の手がかりです。ただしペルオキシダーゼ陰性の急性骨髄性白血病もあるため、フローサイトメトリーによる表面マーカーで確定し、成人例ではフィラデルフィア染色体の有無が治療方針を左右します。「成熟度」と「系統」の2段階で考える習慣は、白血病全般の診断の基本となります。

解答・解説

正解はbです

所見の整理

・57歳男性。38℃台の発熱と倦怠感で受診した。既往歴・家族歴に特記事項はない。 ・頸部に小指頭大のリンパ節を数個触れる。肝・脾は触れない。 ・Hb 7.4 g/dLの高度の貧血、血小板5.6万の血小板減少がある。 ・白血球は16,000と増加し、その60%を異常細胞が占める。 ・異常細胞のペルオキシダーゼ(MPO)反応は陰性である。 ・骨髄塗抹標本(May-Giemsa染色)では、核/細胞質比(N/C比)が大きく、細胞質が狭い好塩基性で、顆粒をもたない未熟な芽球が一様に増殖している。

診断へのプロセス

① 貧血・血小板減少と、末梢血に未熟な異常細胞が多数出現していることは、骨髄で腫瘍細胞が増殖し、正常な造血が抑えられていることを示す。発熱と倦怠感は、正常な白血球の減少による感染と貧血によるものと考えられる。骨髄が均一な芽球で占められていることから、急性白血病と考えられる。慢性白血病では、成熟段階の細胞が主体となる。 ② 急性白血病は、芽球が骨髄系かリンパ系かで分ける。MPO反応は骨髄系細胞(好中球系)の顆粒に含まれる酵素を検出する染色で、芽球の3%以上が陽性なら急性骨髄性白血病(AML)とされる。本例は陰性であり、顆粒のない芽球の形態やリンパ節腫大(リンパ系腫瘍で起こりやすい)もあわせて、急性リンパ性白血病(ALL)と診断できる。 ③ ただし、AMLの中にもMPO陰性となる病型(最未分化型、急性巨核芽球性白血病、単球系の一部など)がある。実際の診療では、フローサイトメトリーによる細胞表面マーカーの検査(B細胞系:CD19、CD10、CD79a、T細胞系:CD3、CD7など)、染色体・遺伝子検査を行って確定し、病型を決める。成人ALLでは、フィラデルフィア染色体(t(9;22)、BCR::ABL1融合遺伝子)の有無を調べることが治療方針を決めるうえで特に重要である。

選択肢考察

  1. ×a.  急性骨髄性白血病

    急性骨髄性白血病(AML)は成人の急性白血病で最も多く、芽球は多くの場合MPO反応陽性(芽球の3%以上)である。細胞質にアズール顆粒やAuer小体(針状の封入体)がみられることも特徴である。本例は芽球がMPO陰性で、顆粒をもたない均一な芽球が主体であり、AMLは考えにくい。なお、MPO陰性のAML(最未分化型、急性巨核芽球性白血病など)を最終的に除外するには、細胞表面マーカーの検査が必要である。

  2. ○b.  急性リンパ性白血病

    高度の貧血と血小板減少があり、末梢血と骨髄に未熟な芽球が多数出現していることから急性白血病と考えられる。芽球はMPO反応陰性で、N/C比が大きく顆粒のない小型〜中型の細胞であり、頸部リンパ節腫大も伴う。これらはリンパ系の芽球の特徴に合致し、急性リンパ性白血病(ALL)と診断できる。ALLは小児に多いが、成人にも発症し、成人ではフィラデルフィア染色体陽性例が多い(成人ALLの約20〜30%、高齢になるほど増える)。確定にはフローサイトメトリーによる細胞表面マーカーの検査(CD19、CD10、CD79a、TdTなど)を行う。

  3. ×c.  慢性骨髄性白血病

    慢性骨髄性白血病(CML)は、フィラデルフィア染色体(BCR::ABL1融合遺伝子)をもつ造血幹細胞が増えて起こる。慢性期には、骨髄芽球から成熟好中球まで各成熟段階の顆粒球が増え、好塩基球増多や脾腫を伴う。血小板はむしろ増えることが多い。急性転化期には芽球が増えて急性白血病のようになる(リンパ性急性転化もありうる)が、その場合には脾腫やそれまでの経過がみられるのがふつうである。本例は脾腫がなく、骨髄も各成熟段階の細胞を欠く均一な芽球の増殖であり、CMLの像とは異なる。

  4. ×d.  慢性リンパ性白血病

    慢性リンパ性白血病(CLL)は、成熟した小型のB細胞が単クローン性に増える疾患で、高齢者に多く、日本ではまれである。末梢血では核クロマチンが濃縮した小型の成熟リンパ球が増え、塗抹標本でつぶれた細胞(smudge cell)がみられる。リンパ節腫大や脾腫を伴うことが多く、経過は緩やかである。本例で増えているのは未熟な芽球であり、成熟リンパ球の増殖を特徴とするCLLとは異なる。

  5. ×e.  成人T細胞白血病

    成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)は、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)の感染を背景に発症するT細胞腫瘍で、九州・沖縄など西南日本の出身者に多い。末梢血には、核が花びら状に深く分葉した特徴的な異常リンパ球(flower cell)が出現する。高カルシウム血症、皮膚病変、日和見感染を伴いやすい。腫瘍細胞は成熟したT細胞(CD4陽性)であり、本例のような未熟な芽球とは異なる。診断には抗HTLV-1抗体の検査を行う。

白血病の分類と要点

・急性骨髄性白血病(AML):成人の急性白血病で最多。MPO陽性(芽球の3%以上)、Auer小体。急性前骨髄球性白血病(APL)では播種性血管内凝固(DIC)を起こしやすく、全トランス型レチノイン酸(ATRA)で治療する。 ・急性リンパ性白血病(ALL):小児の白血病で最多。MPO陰性、TdT陽性。リンパ節腫大、肝脾腫、中枢神経浸潤、T細胞性では縦隔腫瘤を伴いやすい。 ・慢性骨髄性白血病(CML):フィラデルフィア染色体(BCR::ABL1)。各成熟段階の顆粒球の増加、好塩基球増多、好中球アルカリホスファターゼ(NAP)スコアの低下、脾腫。チロシンキナーゼ阻害薬で治療する。 ・慢性リンパ性白血病(CLL):高齢者に多い成熟B細胞腫瘍。CD5・CD23陽性、smudge cell。欧米に多く、日本ではまれ。 ・成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL):HTLV-1感染、flower cell、高カルシウム血症、CD4陽性T細胞。

急性白血病の定義と白血病裂孔

・WHO分類では、骨髄または末梢血中の芽球が20%以上で急性白血病とする。 ・急性白血病では、未熟な芽球と少数の成熟細胞が存在し、その中間の成熟段階の細胞が欠如する(白血病裂孔)。慢性白血病では、各成熟段階の細胞がそろって増える。

MPO染色の読み方

・陽性:AML(多くの病型) ・陰性:ALL、AMLの最未分化型、急性巨核芽球性白血病、単球系白血病の一部(単球系は非特異的エステラーゼ染色が陽性で、フッ化ナトリウムで阻害される) ・したがって「MPO陰性=ALL」と決めつけず、細胞表面マーカーで確認する。

成人ALLの治療

・多剤併用化学療法(寛解導入療法→地固め療法→維持療法)と、中枢神経浸潤の予防(メトトレキサートなどの髄腔内投与)を行う。 ・フィラデルフィア染色体陽性ALLでは、チロシンキナーゼ阻害薬を併用する。 ・成人ALLは小児に比べて予後不良であり、適応があれば同種造血幹細胞移植を検討する。

POINT

・貧血+血小板減少+末梢血・骨髄での芽球増加 → 急性白血病を考える。 ・MPO陽性(芽球の3%以上)→ AML、MPO陰性 → ALLを第一に考える(ただしMPO陰性のAMLもあるため、細胞表面マーカーで確認する)。 ・ALL:N/C比が大きく顆粒のない芽球、TdT陽性、リンパ節腫大・中枢神経浸潤を伴いやすい。成人ではフィラデルフィア染色体陽性例が多い。 ・各白血病の特徴的な所見:AML=Auer小体、CML=BCR::ABL1と各成熟段階の顆粒球の増加、CLL=smudge cell、ATL=flower cell・HTLV-1。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。