StudyMed医師国家試験

黄色くならない肝臓病―ビリルビンの流れで読み解く黄疸の鑑別

第104回医師国家試験 H問題 第9問

国試問題にチャレンジ

第104回 H問題 第9問

黄疸を起こしにくいのはどれか。

  1. a.脂肪肝
  2. b.肝硬変
  3. c.肝癌
  4. d.胆管炎
  5. e.膵癌

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、黄疸を起こす疾患と起こしにくい疾患を見分ける問題だ。ポイントは、ビリルビンが作られてから胆汁として排泄されるまでの流れのどこに障害が起きるかを考えること。まず黄疸とは何か、確認しておこう。
医学生医学生
血中のビリルビンが増えて、皮膚や眼球結膜が黄色くなる状態ですよね。
ドクタードクター
そう。総ビリルビンがおよそ2〜3mg/dLを超えると目で見て分かるようになる。ビリルビンは老化した赤血球のヘモグロビンから間接ビリルビンとして作られ、肝細胞に取り込まれてグルクロン酸抱合を受け、直接ビリルビンとして胆汁中に出ていく。この流れに沿って、作られすぎる肝前性、肝細胞が障害される肝細胞性、肝内の胆汁うっ滞、肝外の胆管が詰まる閉塞性、と分けると理解しやすいんだ。
医学生医学生
生化学の講義でやったビリルビン代謝の図ですね。選択肢は肝臓と胆道の病気ばかりなので、どれも黄疸を起こしそうに見えます。
ドクタードクター
そこで一つずつ当てはめてみよう。胆管炎はどうかな。
医学生医学生
胆管炎はCharcot三徴が発熱、右上腹部痛、黄疸なので、黄疸は典型的ですね。
ドクタードクター
その通り。急性胆管炎は総胆管結石や腫瘍で胆管が詰まり、うっ滞した胆汁に細菌が感染して起こるから、閉塞性黄疸を伴うことが多い。ショックと意識障害を加えたReynolds五徴は重症の化膿性胆管炎を示し、抗菌薬に加えて内視鏡などによる速やかな胆道ドレナージが必要になる。では膵癌は?
医学生医学生
膵臓の病気なのに黄疸が出るのが、最初は不思議でした。
ドクタードクター
解剖を思い出すと分かるよ。下部胆管は膵頭部の中を通り抜けて十二指腸につながる。だから膵頭部癌は早い時期から胆管を圧迫・浸潤して閉塞性黄疸を起こしやすく、黄疸は重要な初発症状の一つなんだ。痛みのない黄疸に腫れた胆嚢を触れるCourvoisier徴候は、下部胆管の悪性閉塞を示唆する。
医学生医学生
消化器内科の実習で、無痛性黄疸で紹介された膵頭部癌の患者さんを担当しました。逆に膵体尾部の癌は黄疸が出にくいんですよね。
ドクタードクター
よく覚えているね。体尾部は胆管から離れているので黄疸は出にくく、腹痛・背部痛や体重減少で見つかることが多いから発見が遅れやすい。次は肝硬変だ。
医学生医学生
肝硬変なら黄疸は出ると思いますが、いつも出るわけではない気がします。
ドクタードクター
いい感覚だ。肝機能が保たれている代償期には黄疸はみられないことが多い。非代償期になると働ける肝細胞が減って抱合・排泄の能力が落ち、腹水や肝性脳症と並んで黄疸が現れる。だから血清ビリルビンはChild-Pugh分類の評価項目にも入っているんだ。原発性胆汁性胆管炎のように肝内の小さな胆管が壊れる疾患から進んだ肝硬変では、胆汁うっ滞による黄疸が目立つことも補足しておこう。
医学生医学生
肝癌も、背景に肝硬変があることが多いので黄疸を起こしそうです。
ドクタードクター
そう。肝細胞癌は慢性肝炎や肝硬変を背景に発生することが多く、背景の肝機能低下、腫瘍による肝門部胆管の圧迫、さらに腫瘍が胆管内に入り込んで伸びる胆管内発育型によって黄疸を起こす。早期では黄疸がないことが多いけれど、進行例ではよくみられる所見だ。
医学生医学生
そうすると残るのは脂肪肝ですね。肝細胞に脂肪がたまっているだけなら、ビリルビンの処理は保たれていそうです。
ドクタードクター
正解。単純な脂肪肝は肝細胞の中に中性脂肪がたまった状態で、壊死や線維化はほとんどなく、ビリルビンの取り込み・抱合・排泄も胆汁の流れもほぼ保たれている。だから多くは無症状で、検査異常もAST・ALTの軽度上昇やγ-GTPの上昇程度にとどまり、黄疸はまず起こらないんだ。
医学生医学生
健診でよく見つかる脂肪肝の人が黄色くなっていないのは、そういう理由なんですね。でも脂肪肝なら絶対に黄疸は出ないと覚えていいんですか。
ドクタードクター
そこは注意が必要だ。脂肪肝を背景に脂肪性肝炎から肝硬変へ進んだ場合、アルコール性肝炎が重症化した場合、特殊な病態である急性妊娠脂肪肝では黄疸を伴うことがある。近年は代謝異常を背景とする脂肪肝を代謝機能障害関連脂肪性肝疾患、MASLDと呼び、一部は炎症と線維化を伴うMASHに進んで肝硬変や肝癌の原因になる。「単純な脂肪肝では黄疸は起こしにくい」と理解しておこう。
医学生医学生
黄疸を見たら、まずどの段階の障害なのかを考えるわけですね。
ドクタードクター
そうだね。臨床では、直接ビリルビン優位でALPやγ-GTPが上がり、尿の色が濃く便が灰白色になっていれば閉塞性黄疸を疑い、超音波やCTで上流の胆管拡張を確認する。間接ビリルビン優位なら溶血やGilbert症候群などを考える。ビリルビンの分画と画像所見を組み合わせて原因を絞り込むのが基本だよ。

まとめ

黄疸は血中ビリルビンの増加により皮膚や眼球結膜が黄染する状態で、ビリルビンの産生過剰、肝細胞障害、肝内胆汁うっ滞、肝外胆管の閉塞のどこに異常があるかで整理すると理解しやすくなります。肝硬変は非代償期に肝細胞機能の低下で、肝癌は肝機能低下や胆管の圧迫・浸潤で、胆管炎と膵頭部癌は胆管閉塞によって黄疸を起こします。一方、単純な脂肪肝は肝細胞に脂肪がたまるだけで肝機能や胆汁の流れが保たれるため、黄疸はまず起こりません。ただし脂肪性肝炎から肝硬変へ進行した場合や、重症アルコール性肝炎、急性妊娠脂肪肝では黄疸を伴うことがあります。ビリルビン代謝の流れに沿って障害部位を考える習慣は、黄疸患者の鑑別と検査計画を立てる土台になります。

解答・解説

正解はaです

黄疸とは、血液中のビリルビンが増え、皮膚や眼球結膜(白目)が黄色く染まった状態である。総ビリルビンがおよそ2~3mg/dLを超えると、目で見て分かるようになる。 黄疸の成り立ちは、ビリルビン代謝の流れに沿って次のように分けると理解しやすい。 ・肝前性: 溶血などでビリルビンが作られすぎる。間接ビリルビンが主に上昇する ・肝細胞性: 肝細胞が障害され、ビリルビンの取り込み・抱合・排泄がうまくいかなくなる(急性肝炎、非代償性肝硬変など) ・肝内胆汁うっ滞: 肝臓の中の胆汁の流れが悪くなる(薬物性肝障害、原発性胆汁性胆管炎など) ・閉塞性(肝外胆汁うっ滞): 肝臓の外の胆管が結石・腫瘍などで詰まる(総胆管結石、胆管癌、膵頭部癌など)。直接ビリルビンが主に上昇する 選択肢の疾患をこの枠組みに当てはめる。肝硬変と肝癌は肝細胞の機能低下や胆管への浸潤・圧迫によって、胆管炎と膵癌は胆管の閉塞によって黄疸を起こす。これに対して単純な脂肪肝は、肝細胞に脂肪がたまっているだけで、肝細胞の働きや胆汁の流れはほぼ保たれている。そのため黄疸はまず起こらない。

選択肢考察

  1. ○a.  脂肪肝

    脂肪肝は、肝細胞の中に中性脂肪がたまった状態である。組織学的には肝細胞のおよそ5%以上に脂肪滴を認めるものと定義される。原因には過栄養・肥満・糖尿病などの代謝異常、飲酒、薬剤がある。単純な脂肪肝では肝細胞の壊死や線維化はほとんどなく、ビリルビンを処理する力は保たれている。そのため多くは無症状で、検査値の異常もASTやALTの軽度上昇、γ-GTPの上昇程度にとどまり、黄疸を起こすことはまずない。ただし、脂肪肝を背景に脂肪性肝炎から肝硬変へ進行した場合、アルコール性肝炎が重症化した場合、特殊な病態である急性妊娠脂肪肝の場合には、黄疸を伴うことがある。

  2. ×b.  肝硬変

    肝硬変は、慢性の肝障害によって肝臓全体に線維化と再生結節が広がった状態である。肝機能が保たれている代償期には、黄疸はみられないことが多い。しかし非代償期に入ると、働ける肝細胞が減るためビリルビンの抱合と排泄の能力が低下し、黄疸が出てくる。腹水・肝性脳症と並ぶ非代償期の代表的な所見である。血清ビリルビン値は肝硬変の重症度分類であるChild-Pugh分類の評価項目にも含まれる。なお、原発性胆汁性胆管炎(PBC)のように肝臓内の小さな胆管が壊れる疾患から進んだ肝硬変では、胆汁うっ滞による黄疸が目立つ。

  3. ×c.  肝癌

    肝癌(主に肝細胞癌)は、その多くが慢性肝炎や肝硬変を背景に発生する。黄疸が起こる仕組みには次のものがある。 ・背景にある肝硬変が進行したり、腫瘍が大きくなったりして肝機能が低下する ・腫瘍が肝門部の胆管を圧迫する ・腫瘍が胆管の中に入り込んで伸びる(胆管内発育型、黄疸型肝癌) 早期の肝癌では黄疸を起こさないことが多いが、進行した肝癌では黄疸はよくみられる所見である。

  4. ×d.  胆管炎

    急性胆管炎は、総胆管結石や腫瘍などで胆管が詰まり、うっ滞した胆汁に細菌が感染して起こる。胆管が閉塞しているため、閉塞性黄疸を伴うことが多い。発熱、右上腹部痛、黄疸の組合せをCharcot三徴という。さらにショックと意識障害を加えたものをReynolds五徴といい、重症の化膿性胆管炎を示す。重症例では、抗菌薬の投与に加えて、内視鏡などによる速やかな胆道ドレナージが必要になる。

  5. ×e.  膵癌

    膵頭部は、総胆管の下の端(下部胆管)がその中を通り抜けて十二指腸につながる部位である。そのため膵頭部癌は早い時期から下部胆管を圧迫・浸潤し、閉塞性黄疸を起こしやすい。黄疸は膵頭部癌の重要な初発症状の一つである。痛みを伴わずに黄疸が出て、腫れた胆嚢を触れる場合をCourvoisier徴候といい、下部胆管の悪性閉塞を示唆する。一方、膵体部・膵尾部の癌は胆管から離れているため、黄疸は出にくい。腹痛・背部痛や体重減少で見つかることが多く、発見が遅れやすい。

ビリルビン代謝と黄疸の分類

老化した赤血球のヘモグロビンが壊されて間接(非抱合型)ビリルビンができる。これが肝細胞に取り込まれ、グルクロン酸抱合を受けて直接(抱合型)ビリルビンとなり、胆汁として胆管から十二指腸へ出される。 ・間接ビリルビンが主に上昇するもの: 溶血性貧血、無効造血、Gilbert症候群、Crigler-Najjar症候群、新生児黄疸 ・直接ビリルビンが主に上昇するもの: 肝細胞障害(急性肝炎、非代償性肝硬変)、肝内胆汁うっ滞、閉塞性黄疸(総胆管結石、胆管癌、膵頭部癌、乳頭部癌)、Dubin-Johnson症候群、Rotor症候群

閉塞性黄疸の特徴

・尿の色が濃くなる(ビリルビン尿)、便が灰白色になる、胆汁酸がたまることでかゆみが出る ・胆道系酵素(ALP、γ-GTP)が上昇する ・腹部超音波検査やCTで閉塞部位より上流の胆管の拡張を確認し、原因を調べる

脂肪肝(脂肪性肝疾患)

近年は、代謝異常を背景とした脂肪肝を代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)と呼ぶ。かつては非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)と呼ばれていた。多くは単純な脂肪肝のまま経過する。一部は炎症と線維化を伴う脂肪性肝炎(MASH、旧称NASH)に進み、肝硬変や肝癌の原因となる。

POINT

・単純な脂肪肝は肝細胞の働きや胆汁の流れが保たれているため、黄疸をほとんど起こさない ・肝硬変では非代償期に黄疸が出る(Child-Pugh分類の評価項目の一つ) ・急性胆管炎のCharcot三徴は発熱・右上腹部痛・黄疸である ・膵頭部癌は下部胆管を閉塞して閉塞性黄疸を起こしやすい(Courvoisier徴候)。膵体部・膵尾部の癌では黄疸は出にくい ・肝癌は、肝機能の低下、胆管の圧迫、胆管内への発育によって黄疸を起こす

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。