StudyMed医師国家試験

壊れた赤血球はどこへ行く?―溶血性貧血の所見を「行き先」で整理する

第104回医師国家試験 G問題 第36問

国試問題にチャレンジ

第104回 G問題 第36問

溶血性貧血でみられないのはどれか。

  1. a.黄疸
  2. b.胆石
  3. c.脾腫
  4. d.尿路結石
  5. e.ヘモグロビン尿

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、溶血性貧血でみられる所見を問う問題だ。溶血で壊れた赤血球の成分がどこへ運ばれ、どこで処理されるのかをイメージできれば、自然と答えが見えてくる。まず溶血性貧血とはどんな病態か、説明できるかな。
医学生医学生
赤血球が本来の寿命より早く壊れてしまうことで起こる貧血ですよね。赤血球の寿命は約120日と生理学で習いました。
ドクタードクター
その通り。所見は2つに分けて考えると整理しやすい。一つは赤血球が壊れたことによる「破壊亢進」の所見、もう一つは失った赤血球を補おうと骨髄が頑張る「造血亢進」の所見だ。造血亢進のほうは何がみられる?
医学生医学生
網赤血球の増加と、骨髄での赤芽球の過形成です。
ドクタードクター
完璧だ。では破壊亢進のほう。赤血球の中のヘモグロビンは分解されると何になるかな。
医学生医学生
ヘムがビリベルジンを経てビリルビンになります。だから間接ビリルビンが増えて黄疸が出るんですね。
ドクタードクター
そう。溶血で間接ビリルビンの産生が肝臓のグルクロン酸抱合の処理能力を上回ると、血中の間接ビリルビンが増えて黄疸になる。間接ビリルビンはアルブミンと結合していて水に溶けにくいから、尿には出ない。つまりビリルビン尿はみられず、黄疸も一般には軽度から中等度にとどまるんだ。
医学生医学生
胆石も溶血と関係があるんですか。胆石というとコレステロール石のイメージが強いです。
ドクタードクター
いい疑問だね。溶血が慢性的に続くと、肝臓で抱合されて胆汁へ排泄されるビリルビンの量が増える。それが胆汁中でカルシウムと結合して沈殿し、黒色のビリルビンカルシウム石ができやすくなる。特に遺伝性球状赤血球症では胆石の合併が多くて、若い人に胆石を見つけたら慢性溶血を疑うきっかけになるんだ。
医学生医学生
消化器外科の実習で、若い患者さんの胆嚢摘出術のときに「背景に溶血がないか確認した?」と聞かれていたのを思い出しました。
ドクタードクター
まさに臨床で大事な視点だね。次は溶血が起こる「場所」で分けてみよう。血管の中で赤血球が壊れる血管内溶血と、脾臓などのマクロファージに捕まって壊される血管外溶血がある。脾腫はどちらで目立つと思う?
医学生医学生
脾臓で壊されるのだから、血管外溶血ですね。
ドクタードクター
正解。形の異常な赤血球や抗体が結合した赤血球を脾臓が処理し続けることで腫大する。遺伝性球状赤血球症、温式自己免疫性溶血性貧血、サラセミアなどが代表で、遺伝性球状赤血球症では摘脾が有効な治療になる。すべての溶血性貧血に必発ではないけれど、代表的な所見だ。
医学生医学生
では血管内溶血の特徴がヘモグロビン尿ですね。
ドクタードクター
そう。血管内で壊れると遊離ヘモグロビンが血漿中に出てくる。まずハプトグロビンと結合して処理されるけれど、ハプトグロビンを使い切ると、余ったヘモグロビンが糸球体で濾過されて尿に出る。尿は赤褐色からコーラ色で、尿潜血は陽性なのに尿沈渣で赤血球はほとんど見えないのが特徴だ。発作性夜間ヘモグロビン尿症や赤血球破砕症候群、不適合輸血などでみられる。
医学生医学生
そうすると、残る尿路結石には溶血と結びつく機序がないということですね。ビリルビンが石になるなら尿路でもできそうな気がしましたが。
ドクタードクター
そこが本問の落とし穴だ。溶血で増えるビリルビンの排泄経路は胆汁、つまり胆道系なんだ。間接ビリルビンは水に溶けにくいから尿にはほとんど出ず、尿路で結石を作ることはない。ヘモグロビン尿やヘモジデリン尿も結石の原因にはならない。尿路結石はシュウ酸カルシウムやリン酸カルシウムによるものが多く、高カルシウム尿症や高尿酸血症、脱水などが危険因子で、溶血性貧血の一般的な所見ではないんだ。
医学生医学生
ビリルビンの行き先が胆道だから胆石はできるけれど、尿路結石はできない。「行き先」で考えると間違えませんね。
ドクタードクター
その理解で完璧だ。検査所見も一緒に押さえておこう。赤血球に多く含まれるLDHが漏れ出て上昇し、ハプトグロビンは消費されて低下、尿中ウロビリノゲンも増える。この組み合わせはCBTでも国試でも頻出だよ。
医学生医学生
血液内科の実習で、溶血の評価にはまずLDH、間接ビリルビン、ハプトグロビン、網赤血球の4つを見ろと教わりました。
ドクタードクター
いい指導を受けたね。最後に臨床で注意したい合併症も挙げておこう。慢性溶血の患者さんがヒトパルボウイルスB19に感染すると、赤芽球の産生が一時的に止まって急激に貧血が進む無形成発作を起こすことがある。造血が亢進しているぶん葉酸の需要も増えるから葉酸欠乏にも注意が必要だ。さらに、PNHのような慢性の血管内溶血では尿中に鉄を失って鉄欠乏になりうる一方、頻回輸血では鉄過剰が問題になる。

まとめ

溶血性貧血は赤血球が寿命より早く破壊される病態で、所見は破壊亢進(間接ビリルビン上昇による黄疸、LDH上昇、ハプトグロビン低下、尿中ウロビリノゲン増加)と造血亢進(網赤血球増加、赤芽球過形成)に分けて整理できます。血管内溶血ではヘモグロビン尿やヘモジデリン尿、脾臓などで壊される血管外溶血では脾腫が目立ち、慢性溶血では胆汁中のビリルビン増加によりビリルビンカルシウム石の胆石を生じやすくなります。一方、ビリルビンの排泄経路は胆道系であり尿路ではないため、尿路結石は溶血性貧血の所見ではありません。壊れた赤血球の成分の「行き先」をたどって所見を理解すれば、暗記に頼らず病態から所見を導くことができ、若年者の胆石や原因不明の黄疸から溶血を疑う臨床判断にも役立ちます。

解答・解説

正解はdです

溶血性貧血とは、赤血球が本来の寿命(約120日)より早く破壊されること(溶血)により生じる貧血である。所見は、①赤血球が壊れたことによる所見(破壊亢進の所見)と、②失われた赤血球を補うために骨髄が働く所見(造血亢進の所見)に分けて考えると整理しやすい。 ①破壊亢進の所見:赤血球内のヘモグロビンは分解されてビリルビンとなるため、間接(非抱合型)ビリルビンが増加して黄疸を生じ、胆汁中へのビリルビン排泄の増加から胆石(ビリルビンカルシウム石)ができやすくなる。赤血球内に多く含まれるLDH(乳酸脱水素酵素)が血中に漏れ出して上昇し、遊離ヘモグロビンと結合して処理される血清ハプトグロビンは消費されて低下する。尿中ウロビリノゲンも増加する。 ②造血亢進の所見:網赤血球(網状赤血球)の増加、骨髄での赤芽球の過形成がみられる。 さらに、溶血が起こる場所によって所見が異なる。血管の中で赤血球が壊れる血管内溶血では、血中に出た遊離ヘモグロビンが尿中に排泄されてヘモグロビン尿を呈する。脾臓などの網内系(マクロファージ)で赤血球が捕捉・破壊される血管外溶血では、脾臓の処理量の増大から脾腫をきたす。 こうした病態のどこにも尿路結石を生じる機序はない。「溶血で増えるビリルビンが沈着して生じる結石は胆道系(胆石)であって尿路ではない」と区別できるかが本問のポイントである。

選択肢考察

  1. ×a.  黄疸

    溶血によって放出されたヘモグロビンはヘムとグロビンに分解され、ヘムは網内系でビリベルジンを経て間接ビリルビンとなる。溶血により間接ビリルビンの産生が肝臓の処理能力(グルクロン酸抱合)を上回ると、血中の間接ビリルビンが増加して黄疸を呈する。間接ビリルビンはアルブミンと結合し水に溶けにくいため尿中には出ず(ビリルビン尿はみられない)、溶血性黄疸は一般に軽度から中等度である。溶血性貧血でみられる所見である。

  2. ×b.  胆石

    溶血が慢性的に続くと、肝臓で抱合されて胆汁中へ排泄されるビリルビン量が増える。胆汁中のビリルビンがカルシウムと結合して沈殿し、黒色のビリルビンカルシウム石(黒色石)を形成しやすくなる。特に遺伝性球状赤血球症では胆石の合併が多く、若年者に胆石を認めた場合には慢性溶血性疾患を疑うきっかけになる。溶血性貧血でみられる所見である。

  3. ×c.  脾腫

    血管外溶血では、形態の異常な赤血球や抗体が結合した赤血球が主に脾臓のマクロファージに捕捉されて破壊される。脾臓での処理量が増えることで脾臓が腫大する。遺伝性球状赤血球症、温式自己免疫性溶血性貧血、サラセミアなどで脾腫がみられ、遺伝性球状赤血球症では摘脾が治療として有効である。血管内溶血が主体の疾患では目立たないため、すべての溶血性貧血に必発ではないが、溶血性貧血でみられる代表的な所見である。

  4. ○d.  尿路結石

    溶血により増加するのは主にビリルビンであり、その排泄経路は胆汁(胆道系)である。間接ビリルビンは水に溶けにくく尿中には排泄されないため、尿路にビリルビン由来の結石を作ることはない。また血管内溶血で尿中に排泄されるヘモグロビンやヘモジデリンも結石の原因にはならない。尿路結石はシュウ酸カルシウム・リン酸カルシウムなどによるものが多く、高カルシウム尿症、高尿酸血症、脱水などが危険因子であり、溶血性貧血の一般的な所見ではない。したがって溶血性貧血でみられないものとして、本肢が該当する。

  5. ×e.  ヘモグロビン尿

    血管内溶血では遊離ヘモグロビンが血漿中に放出される。遊離ヘモグロビンはまずハプトグロビンと結合して処理されるが、ハプトグロビンが使い尽くされると、結合できなかったヘモグロビンが腎糸球体で濾過されて尿中に出てくる。これがヘモグロビン尿で、尿は赤褐色〜コーラ色を呈し、尿潜血反応は陽性だが尿沈渣で赤血球はほとんどみられないのが特徴である。また尿細管上皮に取り込まれたヘモグロビンの鉄はヘモジデリンとなり、上皮とともに剥がれてヘモジデリン尿を生じる。発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、発作性寒冷ヘモグロビン尿症、赤血球破砕症候群、不適合輸血などでみられる。溶血性貧血でみられる所見である。

溶血性貧血の検査所見

・溶血(赤血球破壊)を示す所見:間接ビリルビン上昇、LDH上昇(特にLDH1・LDH2の上昇)、血清ハプトグロビン低下、尿中ウロビリノゲン増加、便中ウロビリン体増加 ・造血亢進を示す所見:網赤血球増加、骨髄赤芽球過形成 ・赤血球寿命の短縮

血管内溶血と血管外溶血

・血管内溶血:血管内で赤血球が壊れる。ヘモグロビン血症、ヘモグロビン尿、ヘモジデリン尿がみられ、ハプトグロビンは著明に低下する。脾腫は目立たない。 代表疾患:発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、発作性寒冷ヘモグロビン尿症、G6PD(グルコース-6-リン酸脱水素酵素)欠損症の溶血発作、赤血球破砕症候群(血栓性微小血管症、人工弁など)、ABO不適合輸血 ・血管外溶血:主に脾臓などの網内系で赤血球が破壊される。脾腫を伴い、ヘモグロビン尿は通常みられない。 代表疾患:遺伝性球状赤血球症、温式自己免疫性溶血性貧血、サラセミア、ピルビン酸キナーゼ欠損症 ・寒冷凝集素症では、補体の関与により血管内溶血と肝臓での血管外溶血の両方がみられる。

溶血性貧血の合併症

・胆石(ビリルビンカルシウム石):慢性溶血、特に遺伝性球状赤血球症で多い ・無形成発作(aplastic crisis):ヒトパルボウイルスB19感染により赤芽球の産生が一時的に止まり、急激に貧血が進む ・葉酸欠乏:造血亢進により葉酸の需要が増える ・鉄過剰(血管外溶血や頻回輸血)、鉄欠乏(PNHなど慢性の血管内溶血で尿中へ鉄を失う場合)

POINT

・溶血の所見:間接ビリルビン↑(黄疸)、LDH↑、ハプトグロビン↓、網赤血球↑、尿中ウロビリノゲン↑ ・血管内溶血→ヘモグロビン尿・ヘモジデリン尿 ・血管外溶血→脾腫 ・慢性溶血→ビリルビンカルシウム石による胆石(遺伝性球状赤血球症で多い) ・溶血で尿路結石は生じない(ビリルビンは胆道系へ排泄され、尿路結石の原因とならない)

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。