「未熟さ」が招く合併症、「お産のかたち」が招く合併症―32週で生まれた赤ちゃんに起こること
第104回医師国家試験 A問題 第13問
国試問題にチャレンジ
在胎32週,頭位分娩で出生した新生児に合併しやすいのはどれか。2つ選べ。
- a.低血糖症
- b.腕神経叢麻痺
- c.胎便吸引症候群
- d.呼吸窮迫症候群
- e.帽状腱膜下血腫
対話形式の解説
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ドクターまとめ
在胎32週の出生は37週未満の早産であり、未熟性に起因する合併症が問題となります。肺サーファクタントは在胎34週ごろ以降に十分産生されるため、32週出生児では呼吸窮迫症候群を起こしやすく、またグリコーゲンや脂肪の蓄えと糖新生能が未熟なため低血糖症にも陥りやすくなります。一方、腕神経叢麻痺は巨大児の肩甲難産や骨盤位分娩、胎便吸引症候群は過期産や胎児機能不全、帽状腱膜下血腫は吸引分娩と関連し、早産児の頭位分娩では典型的ではありません。早産児ではほかにも脳室内出血、脳室周囲白質軟化症、未熟児網膜症、壊死性腸炎、動脈管開存症などが予後に関わります。「未熟性による合併症」と「分娩様式に関連する合併症」を区別する視点は、新生児の合併症を体系的に理解し、出生直後の管理を考えるうえでの土台になります。
解答・解説
正解はa, dです
問題の条件を整理する
在胎32週での出生は、37週未満の早産にあたる(在胎28週以上32週未満を極早産、32週以上34週未満を中等度早産と分類する考え方もある)。また、頭位分娩であることから、骨盤位(逆子)の経腟分娩に伴う分娩外傷は考えにくい。
正解を導く考え方
本問では、「未熟性によって起こる合併症」と「分娩の様式や過期産・巨大児などに関連する合併症」を区別することが鍵となる。 ・早産児の未熟性に起因するもの:肺サーファクタント不足による呼吸窮迫症候群、糖の蓄えや糖新生能の未熟による低血糖症、そのほか無呼吸発作、黄疸(高ビリルビン血症)、低体温、脳室内出血、脳室周囲白質軟化症、動脈管開存症、壊死性腸炎、未熟児網膜症など。 ・分娩様式・児の大きさ・過期産に関連するもの:腕神経叢麻痺(巨大児の肩甲難産、骨盤位分娩)、帽状腱膜下血腫(吸引分娩)、胎便吸引症候群(過期産、胎児機能不全)など。 32週の早産児では前者が問題となり、低血糖症と呼吸窮迫症候群が合併しやすい。
選択肢考察
- ○a. 低血糖症
胎児は妊娠後期に肝臓へグリコーゲンを、皮下に脂肪を蓄えていく。早産児はこの蓄積が不十分なうえ、肝臓での糖新生を担う酵素系も未熟なため、出生して母体からのブドウ糖供給が途絶えると血糖を維持できず低血糖に陥りやすい。低出生体重であることが多い点も危険因子となる。低血糖は無症状のことも多いが、振戦、無呼吸、哺乳不良、けいれんなどを起こし、遷延すると脳障害を残しうるため、早産児では出生後に血糖を頻回に確認する。
- ×b. 腕神経叢麻痺
分娩時に頸部と肩の間が過度に引き伸ばされて腕神経叢が損傷されるもので、巨大児で肩が引っかかる肩甲難産や、骨盤位分娩で後続する頭部を娩出する際に起こりやすい。C5・C6が障害される上位型(Erb麻痺)が最も多い。32週の早産児は小さく、頭位分娩でもあるため、合併しやすいとはいえない。
- ×c. 胎便吸引症候群
胎児が子宮内で低酸素状態になると、腸管の蠕動亢進と肛門括約筋の弛緩により羊水中に胎便が排出され、さらに低酸素によるあえぎ呼吸でその胎便を気道に吸い込んで発症する。消化管の成熟が進んだ正期産〜過期産児、胎児発育不全児、胎児機能不全を伴う例に多い。32週の早産児では子宮内で胎便が排出されること自体が少なく、起こりにくい。
- ○d. 呼吸窮迫症候群
肺サーファクタント(肺胞の表面張力を下げて虚脱を防ぐリン脂質を主体とする物質)はII型肺胞上皮細胞で作られ、十分量が産生されるのはおおむね在胎34週ごろ以降である。それ以前に生まれた早産児ではサーファクタントが不足して肺胞がつぶれやすく、出生直後から多呼吸、呻吟、陥没呼吸、チアノーゼが出現する。胸部X線では網状顆粒状陰影、気管支透亮像、重症例ではすりガラス状陰影を呈する。在胎週数が短いほど発症しやすく、32週出生児では代表的な合併症である。
- ×e. 帽状腱膜下血腫
頭皮の帽状腱膜と頭蓋骨膜の間を走る導出静脈が断裂して起こる出血で、主に吸引分娩に伴って生じる。骨縫合を越えて広がる大きな腫脹となり、多量出血で貧血やショックをきたすこともある。本問は吸引分娩の記載がない頭位分娩であり、早産であることが直接の危険因子にはならない。
在胎週数による分類
・早産児:在胎37週未満 ・正期産児:在胎37週以上42週未満 ・過期産児:在胎42週以上
呼吸窮迫症候群の予防と治療
早産が避けられない場合、分娩前に母体へ副腎皮質ステロイド(ベタメタゾンなど)を投与すると胎児の肺成熟が促され、呼吸窮迫症候群の発症や重症度を減らせる。出生前の肺成熟の評価には、羊水中のレシチン/スフィンゴミエリン比(L/S比)やマイクロバブルテストが用いられてきた。出生後の治療は人工肺サーファクタントの気管内投与と呼吸管理(持続陽圧呼吸や人工換気)である。
頭部の分娩外傷の比較
・産瘤:先進部の皮下のむくみ。骨縫合を越える。数日で消失する。 ・頭血腫:骨膜下の出血。骨縫合を越えない。吸収に数週〜数か月かかり、黄疸を増悪させうる。 ・帽状腱膜下血腫:帽状腱膜下の出血。骨縫合を越えて広がる。大量出血でショックになりうる。
早産児の予後に関わる重要な合併症
脳室内出血、脳室周囲白質軟化症(PVL:脳性麻痺の原因となる)、新生児慢性肺疾患(CLD:Wilson-Mikity症候群を含む)、未熟児網膜症、壊死性腸炎、動脈管開存症などがある。
POINT
・早産児は未熟性による合併症(呼吸窮迫症候群、低血糖、無呼吸発作、脳室内出血、PVL、未熟児網膜症など)を起こしやすい。 ・肺サーファクタントが十分に産生されるのは在胎34週ごろ以降である。 ・胎便吸引症候群は過期産・胎児機能不全、腕神経叢麻痺は巨大児・骨盤位、帽状腱膜下血腫は吸引分娩に関連する。
