StudyMed医師国家試験

この抗体、どの病気?―膠原病の「名札」を正しく付け替える

第103回医師国家試験 I問題 第30問

国試問題にチャレンジ

第103回 I問題 第30問

組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. a.皮膚筋炎 ―― 抗Jo-1抗体
  2. b.関節リウマチ ―― 抗CCP抗体
  3. c.全身性強皮症〉 ―― 抗Sm抗体
  4. d.結節性多発動脈炎 ―― 抗好中球細胞質抗体〈ANCA〉
  5. e.全身性エリテマトーデス〈SLE〉 ―― 抗Scl-70抗体

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は膠原病と血管炎の自己抗体の組合せを問う問題だ。自己抗体には、多くの膠原病で陽性になる「スクリーニング向き」のものと、特定の疾患にほぼ限って陽性になる「疾患標識抗体」がある。この問題で問われているのは後者、いわば病気ごとの「名札」だね。まず全体を眺めて、気になるところはあるかな。
医学生医学生
免疫学の講義で一覧表を丸暗記したんですが、抗Sm抗体と抗Scl-70抗体がどっちの病気だったか、いつも混乱するんです。
ドクタードクター
そこが出題者の狙いどころだね。結論から言うと、抗Sm抗体はSLE、抗Scl-70抗体は全身性強皮症の特異抗体だ。この問題では、その2つが入れ替えられている。
医学生医学生
じゃあ、強皮症と抗Sm抗体、SLEと抗Scl-70抗体の組合せはどちらも誤りですね。Scl-70の「Scl」はsclerodermaのSclと覚えればいいんでしょうか。
ドクタードクター
いい覚え方だ。抗Scl-70抗体は抗トポイソメラーゼI抗体とも呼ばれ、びまん皮膚硬化型や間質性肺炎の合併と関連する。一方の抗Sm抗体は、日本人SLEでの陽性率は20〜30%程度と高くないけれど、特異度が非常に高く、分類基準の免疫学的項目にも入っている。SLEのもう1つの特異抗体である抗ds-DNA抗体は、ループス腎炎などの疾患活動性と連動して増減するのが特徴だ。
医学生医学生
抗Sm抗体は活動性とは相関しないんでしたよね。CBTでそこを問われた記憶があります。
ドクタードクター
その通り。では関節リウマチと抗CCP抗体はどうかな。
医学生医学生
これは正しいと思います。でも、関節リウマチといえばリウマトイド因子の方が有名じゃないですか?
ドクタードクター
リウマトイド因子は感度は比較的高いけれど、他の膠原病や慢性感染症、健常な高齢者でも陽性になることがあり、特異度で劣るんだ。抗CCP抗体はシトルリン化されたタンパクを認識する抗体で、特異度は約90%以上と高く、発症早期から陽性になりやすい。陽性例は骨びらんが進みやすいので、予後予測にも役立つ。現在の分類基準では両方とも血清学的項目に採用されているよ。
医学生医学生
整形外科の外来実習で、早期のRAを疑う患者さんに抗CCP抗体を出していたのはそのためだったんですね。では皮膚筋炎と抗Jo-1抗体は? 抗Jo-1抗体は多発性筋炎の抗体というイメージが強いんですが。
ドクタードクター
迷いやすいところだね。抗Jo-1抗体はヒスチジルtRNA合成酵素に対する抗体で、抗ARS抗体の代表だ。多発性筋炎の文脈で取り上げられることが多いけれど、皮膚筋炎でも陽性になるので、この組合せは正しいと扱っていい。陽性例では間質性肺炎、関節炎、発熱、レイノー現象、機械工の手などを伴いやすく、まとめて抗ARS抗体症候群と呼ばれる。
医学生医学生
だから正解は関節リウマチと抗CCP抗体、皮膚筋炎と抗Jo-1抗体の2つですね。結節性多発動脈炎とANCAは、血管炎だからANCAが陽性になりそうな気もしますが……。
ドクタードクター
それがもう1つの落とし穴なんだ。結節性多発動脈炎は中型の筋性動脈に壊死性血管炎を起こす病気で、ANCAは陰性。疾患特異的な自己抗体はなく、B型肝炎ウイルス感染との関連が知られている。ANCAが陽性になるのは小型血管を主に侵すANCA関連血管炎で、MPO-ANCAは顕微鏡的多発血管炎や好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、PR3-ANCAは多発血管炎性肉芽腫症で陽性になりやすい。
医学生医学生
昔は顕微鏡的多発血管炎が結節性多発動脈炎の一型として扱われていたと、病理の講義で聞いた気がします。
ドクタードクター
よく覚えているね。Chapel Hill分類以降は両者が明確に区別され、結節性多発動脈炎は「ANCA陰性で、糸球体腎炎や細小血管の炎症を伴わない」ことが定義に含まれている。血管炎は血管の太さで整理すると覚えやすい。大型が高安動脈炎と巨細胞性動脈炎、中型が結節性多発動脈炎と川崎病、小型がANCA関連血管炎やIgA血管炎などだ。
医学生医学生
抗体の名前だけでなく、血管のサイズの分類とセットで覚えるのが大事なんですね。
ドクタードクター
そうだね。最後に臨床で役立つ発展知識をいくつか。皮膚筋炎では、抗MDA5抗体は筋症状が乏しいのに急速進行性間質性肺炎を起こしやすく、抗TIF1-γ抗体は成人で悪性腫瘍の合併が多いので、陽性なら悪性腫瘍の検索が欠かせない。強皮症では抗セントロメア抗体が限局皮膚硬化型、抗RNAポリメラーゼIII抗体が急速な皮膚硬化や強皮症腎クリーゼと関連する。ほかにも、シェーグレン症候群の抗SS-A抗体陽性の妊婦では胎児の先天性心ブロックに注意が必要だし、混合性結合組織病では抗U1-RNP抗体、薬剤誘発性ループスでは抗ヒストン抗体が手がかりになる。
医学生医学生
抗体を見たら「どの病気か」だけでなく、「どんな合併症に気をつけるか」まで連想できるようにします。
ドクタードクター
それができれば実臨床でも十分に通用するよ。自己抗体は診断の名札であると同時に、病型や予後を教えてくれる道しるべでもあるんだ。

まとめ

膠原病・血管炎には疾患に特異的な自己抗体があり、関節リウマチでは抗CCP抗体(RFより特異度が高く、早期診断・予後予測に有用)、多発性筋炎/皮膚筋炎では抗Jo-1抗体を代表とする抗ARS抗体(間質性肺炎と関連)が陽性になります。SLEの特異抗体は抗ds-DNA抗体と抗Sm抗体、全身性強皮症は抗Scl-70抗体・抗セントロメア抗体であり、この2つの入れ替えは頻出の引っかけです。結節性多発動脈炎はANCA陰性の中型血管炎で、ANCA陽性となるのは顕微鏡的多発血管炎などの小型血管炎です。さらに抗MDA5抗体と急速進行性間質性肺炎、抗TIF1-γ抗体と悪性腫瘍合併など、抗体ごとの臨床的意味まで押さえることで、診断だけでなく合併症の予測や検索にも活かせます。

解答・解説

正解はa, bです

問われているテーマ

膠原病・血管炎と、それぞれの診断に役立つ自己抗体(自分の体の成分に反応してしまう抗体)の対応を問う問題である。自己抗体には、多くの膠原病で広く陽性になる抗核抗体(ANA)のような「スクリーニング向き」のものと、特定の疾患でほぼ限って陽性になる「疾患標識抗体(疾患特異的自己抗体)」がある。本問は後者の知識を確認している。

正解を導く考え方

代表的な組合せを整理しておく。 ・関節リウマチ:リウマトイド因子(RF)、抗CCP抗体(抗環状シトルリン化ペプチド抗体) ・全身性エリテマトーデス(SLE):抗二本鎖DNA(ds-DNA)抗体、抗Sm抗体 ・全身性強皮症:抗Scl-70抗体(抗トポイソメラーゼI抗体)、抗セントロメア抗体、抗RNAポリメラーゼIII抗体 ・多発性筋炎/皮膚筋炎:抗Jo-1抗体を含む抗ARS抗体、抗Mi-2抗体、抗MDA5抗体、抗TIF1-γ抗体など ・ANCA関連血管炎(顕微鏡的多発血管炎など):MPO-ANCA、PR3-ANCA 選択肢c(抗Sm抗体)とe(抗Scl-70抗体)は、SLEと強皮症の特異抗体が入れ替わっている。dの結節性多発動脈炎は、現在の分類では「ANCAが陰性の中型血管炎」と定義されるため誤りである。したがって残るaとbが正しい組合せとなる。

選択肢考察

  1. ○a.  皮膚筋炎 ―― 抗Jo-1抗体

    正しい組合せである。抗Jo-1抗体は、タンパク合成に関わる酵素であるヒスチジルtRNA合成酵素に対する抗体で、抗アミノアシルtRNA合成酵素(ARS)抗体の代表である。多発性筋炎・皮膚筋炎(まとめて特発性炎症性筋疾患)の患者の約20〜30%で陽性となり、筋炎に特異性が高い。陽性例では間質性肺炎、関節炎、発熱、レイノー現象、機械工の手(手指の側面の角化・亀裂)などを伴いやすく、「抗ARS抗体症候群」と呼ばれる。多発性筋炎のほうで取り上げられることが多いが、皮膚筋炎でも陽性となるため、本組合せは正しいと扱ってよい。なお皮膚筋炎により特徴的な抗体としては、抗Mi-2抗体(典型的な皮膚症状)、抗MDA5抗体(急速進行性間質性肺炎)、抗TIF1-γ抗体(悪性腫瘍合併)などがある。

  2. ○b.  関節リウマチ ―― 抗CCP抗体

    正しい組合せである。抗CCP抗体は、シトルリン化(アミノ酸のアルギニンがシトルリンに変換される修飾)を受けたタンパクを認識する抗体で、関節リウマチに対する特異度が約90%以上と高い。発症早期から陽性になりやすく、陽性例は骨びらん(関節の骨が侵食される変化)が進行しやすいなど予後予測にも役立つ。リウマトイド因子は感度は比較的高いが、他の膠原病や慢性感染症、健常高齢者でも陽性となるため特異度は抗CCP抗体に劣る。2010年のACR/EULAR分類基準では、両者はともに血清学的項目として採用されている。

  3. ×c.  全身性強皮症〉 ―― 抗Sm抗体

    誤り。抗Sm抗体はSLEの疾患標識抗体である。陽性率は日本人SLEで20〜30%程度と高くないが、特異度が非常に高く、SLEの分類基準の免疫学的項目に含まれる。全身性強皮症の特異抗体は、抗Scl-70抗体(びまん皮膚硬化型・間質性肺炎と関連)、抗セントロメア抗体(限局皮膚硬化型と関連)、抗RNAポリメラーゼIII抗体(急速な皮膚硬化・強皮症腎クリーゼと関連)である。

  4. ×d.  結節性多発動脈炎 ―― 抗好中球細胞質抗体〈ANCA〉

    誤り。結節性多発動脈炎は中型の筋性動脈に壊死性血管炎を起こす疾患で、疾患特異的な自己抗体はなく、ANCAは陰性である(B型肝炎ウイルス感染との関連が知られる)。ANCAが陽性となるのは小型血管を主に侵すANCA関連血管炎で、MPO-ANCA(P-ANCA)は顕微鏡的多発血管炎や好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、PR3-ANCA(C-ANCA)は多発血管炎性肉芽腫症で陽性となりやすい。かつては顕微鏡的多発血管炎が結節性多発動脈炎の一型(顕微鏡的多発動脈炎)として扱われていたが、Chapel Hill分類(1994年、2012年改訂)以降、両者は明確に区別され、結節性多発動脈炎は「ANCA陰性で糸球体腎炎や細小血管の炎症を伴わない」ことが定義に含まれている。

  5. ×e.  全身性エリテマトーデス〈SLE〉 ―― 抗Scl-70抗体

    誤り。抗Scl-70抗体(抗トポイソメラーゼI抗体)は全身性強皮症に特異的な抗体で、特にびまん皮膚硬化型や間質性肺炎の合併と関連する。SLEに特異的なのは抗ds-DNA抗体と抗Sm抗体であり、抗ds-DNA抗体は疾患活動性(特にループス腎炎)と相関して増減する点が重要である。

主な膠原病・血管炎と自己抗体の整理

・SLE:抗核抗体(ほぼ全例陽性、スクリーニング)、抗ds-DNA抗体(特異的・活動性と相関)、抗Sm抗体(特異的・活動性とは相関しない)、抗リン脂質抗体(血栓症・習慣流産と関連)。低補体血症を伴う。 ・薬剤誘発性ループス:抗ヒストン抗体。 ・関節リウマチ:リウマトイド因子、抗CCP抗体(特異度が高い)。 ・全身性強皮症:抗Scl-70抗体、抗セントロメア抗体、抗RNAポリメラーゼIII抗体。 ・多発性筋炎/皮膚筋炎:抗ARS抗体(抗Jo-1抗体など、間質性肺炎と関連)、抗Mi-2抗体、抗MDA5抗体(臨床的に筋症状が乏しい皮膚筋炎と急速進行性間質性肺炎)、抗TIF1-γ抗体(成人では悪性腫瘍の合併が多い)。 ・シェーグレン症候群:抗SS-A抗体、抗SS-B抗体(抗SS-A抗体陽性の母体では胎児の先天性心ブロックに注意)。 ・混合性結合組織病(MCTD):抗U1-RNP抗体(高値単独陽性)。 ・ANCA関連血管炎:MPO-ANCA(顕微鏡的多発血管炎、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症)、PR3-ANCA(多発血管炎性肉芽腫症)。 ・抗GBM病(Goodpasture症候群):抗糸球体基底膜抗体。

血管炎の大きさによる分類(Chapel Hill分類 2012)

・大型血管炎:高安動脈炎、巨細胞性動脈炎 ・中型血管炎:結節性多発動脈炎、川崎病 ・小型血管炎:ANCA関連血管炎(顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症)、免疫複合体性血管炎(IgA血管炎、抗GBM病など)

POINT

・関節リウマチ:抗CCP抗体は特異度が高く早期診断・予後予測に有用。 ・SLE:抗ds-DNA抗体と抗Sm抗体。強皮症:抗Scl-70抗体と抗セントロメア抗体(cとeは入れ替えの引っかけ)。 ・多発性筋炎/皮膚筋炎:抗Jo-1抗体(抗ARS抗体)は間質性肺炎の合併と関連する。 ・結節性多発動脈炎はANCA陰性の中型血管炎。ANCA陽性なのは顕微鏡的多発血管炎などの小型血管炎。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。