StudyMed医師国家試験

「原因不明」と言い切る前に―IPFとそっくりな線維化を起こす3つの原因

第103回医師国家試験 I問題 第3問

国試問題にチャレンジ

第103回 I問題 第3問

特発性肺線維症〈IPF〉と類似した病理組織像を示す疾患はどれか。3つ選べ。

  1. a.環境因性肺疾患
  2. b.サルコイドーシス
  3. c.薬剤誘発性肺障害
  4. d.びまん性汎細気管支炎
  5. e.膠原病随伴性間質性肺炎

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、特発性肺線維症の病理像を理解したうえで、それとよく似た組織像を示す疾患を選ぶ問題だ。ポイントは「特発性」という言葉の意味。原因不明と診断するには、何を除外しなければならないかを考えると答えが見えてくるよ。
医学生医学生
特発性は原因がわからないという意味ですよね。でも、病理像が似ている病気というと、間質性肺炎を起こすものを全部挙げたくなってしまいます。
ドクタードクター
その発想は半分正しい。まずIPFの病理像を整理しよう。IPFは通常型間質性肺炎、いわゆるUIPパターンを示す。胸膜直下や肺底部に強い斑状の線維化があって、線維化の強い部分とほぼ正常な肺胞が隣り合う空間的不均一性、古い瘢痕と新しい線維芽細胞巣が同じ標本に混在する時相の不均一性、そして蜂巣肺が特徴だ。
医学生医学生
病理学の講義で「時相がバラバラなのがUIP、そろっているのがNSIP」と習いました。
ドクタードクター
そう、その対比はとても大事。では、このUIPパターンやそれに近い線維化を、原因がはっきりしているのに起こしてしまう病気は何か。代表は環境・職業性曝露、薬剤、膠原病の3つなんだ。まず環境因性肺疾患から見てみよう。
医学生医学生
環境因性というと、アスベストを吸い込む石綿肺でしょうか。
ドクタードクター
その通り。石綿肺は肺底部・胸膜直下優位の線維化を示し、UIPに近い像や蜂巣肺をとりうる。石綿小体や胸膜プラークが鑑別の手がかりになるね。もう一つ重要なのが、鳥の羽毛などの抗原を慢性的に吸い込んで起こる慢性過敏性肺炎。これもUIP様の線維化を示して、IPFとの鑑別がしばしば問題になる。
医学生医学生
臨床実習の呼吸器内科で、羽毛布団を使っていないか問診していた先生がいました。あれはこの鑑別のためだったんですね。
ドクタードクター
まさにそう。問診が診断を左右する典型例だ。次に薬剤誘発性肺障害。薬剤性の肺障害はびまん性肺胞傷害、NSIP、器質化肺炎など多彩だけど、慢性に経過して肺線維症の形をとり、IPFと見分けにくくなることがある。
医学生医学生
ブレオマイシンやアミオダロン、メトトレキサートが有名ですよね。CBTの過去問でも何度も見ました。
ドクタードクター
よく覚えているね。組織だけでは区別が難しいから、服薬歴の確認が欠かせない。そして3つ目が膠原病随伴性間質性肺炎。関節リウマチではUIPパターンが比較的多く、IPFとの組織学的区別が難しい。強皮症や多発性筋炎・皮膚筋炎ではNSIPパターンが多いけれど、線維化が進むとIPFに似てくる。
医学生医学生
肺病変が先に出て、あとから膠原病が見つかることもあるんでしょうか。
ドクタードクター
ある。だからIPFを疑ったら、関節症状や皮膚症状の確認、自己抗体の検索が必要になるんだ。では、残りの2つはどうかな。サルコイドーシスも進行すれば線維化するよね。
医学生医学生
線維化するなら似てしまう気がしますが……病理実習で見たのは、乾酪壊死のない類上皮細胞肉芽腫でした。
ドクタードクター
そこが答えだね。サルコイドーシスの基本は非乾酪性類上皮細胞肉芽腫で、リンパ路に沿って気管支血管束や小葉間隔壁に分布し、両側肺門リンパ節腫脹を伴うことが多い。線維化しても上葉優位で気管支血管束周囲に沿う分布だから、肺底部・胸膜直下優位のUIPとは性質も分布も違う。
医学生医学生
びまん性汎細気管支炎は、名前の通り細気管支の病気だから違いますよね。
ドクタードクター
その通り。呼吸細気管支を中心に、リンパ球や形質細胞、泡沫細胞が浸潤して細気管支が狭窄する、気道主体の病気だ。慢性副鼻腔炎の合併、HLA-B54との関連、マクロライド少量長期療法が効くことも特徴。肺胞間質の線維化が主役のIPFとは根本的に異なる。
医学生医学生
「肺胞間質の線維化か、肉芽腫か、気道中心の炎症か」で分けて考えればいいんですね。
ドクタードクター
そう。最後に臨床的な話をしておこう。IPFは高齢男性・喫煙者に多く、乾性咳嗽と労作時呼吸困難、ばち指、両側肺底部の捻髪音が典型。KL-6やSP-Dが上昇し、拘束性換気障害と拡散能低下を示す。HRCTで典型的なUIPパターンがそろえば外科的肺生検なしで診断できるけれど、それも既知の原因を除外したうえでの話だ。
医学生医学生
治療は抗線維化薬のピルフェニドンやニンテダニブでしたよね。
ドクタードクター
そうだね。予後不良で急性増悪や肺癌合併にも注意が必要だ。一方、膠原病関連なら原疾患の治療、過敏性肺炎なら抗原回避、薬剤性なら被疑薬の中止と、原因がわかれば打つ手が変わる。だからこそ、似た線維化を起こす原因をきちんと除外することが、IPFの診断そのものなんだ。

まとめ

特発性肺線維症は病理学的にUIPパターンを示し、胸膜直下・肺底部優位の分布、空間的・時相的不均一性、線維芽細胞巣、蜂巣肺が特徴です。同様の線維化は、石綿肺や慢性過敏性肺炎などの環境因性肺疾患、ブレオマイシン・アミオダロン・メトトレキサートなどによる薬剤誘発性肺障害、関節リウマチや強皮症などの膠原病随伴性間質性肺炎でも起こり、組織像だけでは区別が難しいことがあります。一方、サルコイドーシスは非乾酪性類上皮細胞肉芽腫、びまん性汎細気管支炎は呼吸細気管支中心の炎症が本態で、UIPとは組織像も分布も異なります。IPFは除外診断であり、職業・環境歴、服薬歴、膠原病の症状や自己抗体を丁寧に確認することが、正確な診断と適切な治療選択につながります。

解答・解説

正解はa, c, eです

問われていること

特発性肺線維症(IPF:idiopathic pulmonary fibrosis)の病理組織像の特徴を理解したうえで、原因が明らかでも同じような線維化の像を示しうる疾患を選ぶ問題である。

IPFの病理像:UIPパターン

IPFは原因不明の慢性進行性の線維化性間質性肺炎で、病理学的には通常型間質性肺炎(UIP:usual interstitial pneumonia)パターンを示す。UIPの特徴は次のとおりである。 ・分布:胸膜直下や小葉辺縁(小葉間隔壁沿い)に強く、肺底部に優位な斑状の分布。 ・空間的不均一性:線維化の強い部分と、ほぼ正常な肺胞が隣り合って混在する。 ・時相の不均一性:古い膠原線維による瘢痕と、新しい線維化の現場である線維芽細胞巣(fibroblastic foci)が同じ標本の中に混在する。 ・蜂巣肺:肺胞構造が壊れて、厚い線維性の壁をもつ小さな嚢胞が集まった状態(肉眼やCTで蜂の巣状に見える)。

考え方

「特発性」とは原因不明という意味であり、IPFの診断には、同じような線維化を起こす既知の原因を除外することが必要である。UIPパターンやそれに近い肺線維症をきたす原因として代表的なのが、①粉じんなどの環境・職業性曝露、②薬剤、③膠原病(膠原病に伴う間質性肺炎)である。これらはIPFの鑑別診断として必ず確認すべき項目であり、病理組織像のみではIPFと区別が難しいことがある。 一方、肉芽腫を主体とする疾患(サルコイドーシス)や、細気管支を中心とした炎症を主体とする疾患(びまん性汎細気管支炎)は、病変の性質や分布がUIPとは根本的に異なる。

選択肢考察

  1. ○a.  環境因性肺疾患

    粉じんなど環境中・職場の物質を長期に吸入して起こる肺疾患では、IPFに類似した線維化をきたすものがある。代表は石綿(アスベスト)の吸入による石綿肺で、肺底部・胸膜直下優位の線維化を示し、UIPパターンに近い像や蜂巣肺をとりうる(石綿小体の検出や胸膜プラークの存在が鑑別の手がかりとなる)。また、鳥の羽毛・糞などの抗原を慢性的に吸入して起こる慢性過敏性肺炎(線維化性過敏性肺炎)も、UIP様の線維化を示してIPFとの鑑別が問題となる。したがって類似した病理像を示す疾患に該当する。

  2. ×b.  サルコイドーシス

    サルコイドーシスは原因不明の全身性肉芽腫性疾患で、病理学的特徴は乾酪壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫(Langhans型巨細胞を含むことがある)である。肺では気管支血管束、小葉間隔壁、胸膜などリンパ路に沿って肉芽腫が分布し、両側肺門リンパ節腫脹(BHL)を伴うことが多い。進行例では線維化をきたすこともあるが、上葉優位で気管支血管束周囲に沿う分布であり、基本となる組織像も肉芽腫である点でIPFのUIPパターンとは異なる。

  3. ○c.  薬剤誘発性肺障害

    薬剤による肺障害は、びまん性肺胞傷害(DAD)、非特異性間質性肺炎(NSIP)、器質化肺炎、好酸球性肺炎など多彩な病型をとるが、慢性に経過して肺線維症の形をとり、IPFに類似した像を示すものもある。抗腫瘍薬(ブレオマイシン、ブスルファン、シクロホスファミドなど)、アミオダロン、メトトレキサート、金製剤などが原因薬として知られる。病理組織像のみでは区別が難しいため、IPFの診断では服薬歴の確認が欠かせない。類似した病理像を示す疾患に該当する。

  4. ×d.  びまん性汎細気管支炎

    びまん性汎細気管支炎(DPB:diffuse panbronchiolitis)は、両肺の呼吸細気管支を中心とした慢性炎症性疾患である。病理学的には、呼吸細気管支の壁と周囲にリンパ球、形質細胞、泡沫状の組織球(泡沫細胞)が浸潤し、細気管支が狭窄する。病変の主体は気道(細気管支)であり、肺胞間質の線維化を主体とするIPFとは異なる。慢性副鼻腔炎の合併、HLA-B54との関連、マクロライド少量長期療法が有効であることも特徴である。

  5. ○e.  膠原病随伴性間質性肺炎

    膠原病(自己免疫性の全身性結合組織疾患)には間質性肺炎の合併が多く、慢性に経過すると肺線維症となる。関節リウマチではUIPパターンをとることが比較的多く、IPFとの組織学的区別が難しい。全身性強皮症(SSc)や多発性筋炎・皮膚筋炎(PM/DM)でも間質性肺炎が高頻度にみられ、NSIPパターンが多いものの線維化が進むとIPFに類似した像となる。肺病変が膠原病の症状に先行して現れることもあるため、IPFの診断時には膠原病の症状や自己抗体の検索が必要である。類似した病理像を示す疾患に該当する。

特発性間質性肺炎(IIPs)の分類

原因不明の間質性肺炎は特発性間質性肺炎(IIPs:idiopathic interstitial pneumonias)と総称され、病理パターンに対応して次のように分類される。 ・特発性肺線維症(IPF):UIPパターン。IIPsの中で最も多く、予後不良。 ・特発性非特異性間質性肺炎(NSIP):時相が均一な炎症・線維化。IPFより治療反応性・予後がよい。 ・特発性器質化肺炎(COP):肺胞腔内のポリープ状の器質化(Masson体)。ステロイドがよく効く。 ・急性間質性肺炎(AIP):びまん性肺胞傷害(DAD)。急速進行。 ・その他(剥離性間質性肺炎、呼吸細気管支炎を伴う間質性肺疾患など喫煙関連のもの、リンパ球性間質性肺炎など)。

IPFの臨床像

・50歳以上の男性、喫煙者に多い。 ・乾性咳嗽と労作時呼吸困難で発症し、ばち指、両側肺底部の捻髪音(fine crackles、ベルクロラ音)を聴取する。 ・血清KL-6、SP-D、SP-Aが上昇する。 ・呼吸機能検査で拘束性換気障害(%肺活量の低下)と拡散能(DLco)の低下。 ・高分解能CT(HRCT)で胸膜直下・肺底部優位の網状影と蜂巣肺。典型的な画像所見がそろえば外科的肺生検なしで診断できる。 ・経過中に急性増悪を起こすことがあり、予後を大きく左右する。肺癌の合併も多い。 ・治療として抗線維化薬(ピルフェニドン、ニンテダニブ)が用いられる。

UIP様の線維化をきたす既知の原因(IPFの除外診断で確認すべきもの)

・環境・職業性曝露:石綿肺などのじん肺、慢性過敏性肺炎 ・薬剤:抗腫瘍薬、アミオダロン、メトトレキサートなど ・膠原病:関節リウマチ、全身性強皮症、多発性筋炎・皮膚筋炎など ・その他:放射線肺臓炎の慢性期の線維化など

POINT

・IPFの病理像はUIPパターン:胸膜直下・肺底部優位、空間的・時相的不均一性、線維芽細胞巣、蜂巣肺。 ・IPFは除外診断であり、同様の線維化を起こす環境曝露(石綿肺、慢性過敏性肺炎)、薬剤、膠原病を除外する必要がある。 ・関節リウマチはUIP、強皮症・皮膚筋炎はNSIPパターンが多い。 ・サルコイドーシスは非乾酪性類上皮細胞肉芽腫、びまん性汎細気管支炎は呼吸細気管支中心の炎症で、IPFとは組織像が異なる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。