その低カルシウム、本物?―アルブミンで読み解く補正Caの計算
第103回医師国家試験 G問題 第68問
国試問題にチャレンジ
血液生化学検査の結果を示す。 血糖320mg/dL,総蛋白5.5g/dL,アルブミン2.9g/dL, Na 128mEq/L,K 3.2mEq/L,Cl 101mEq/L,Ca 7.3mg/dL 補正カルシウム濃度を求めよ。 解答:①.② mg/dl
対話形式の解説
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ドクターまとめ
血清Caの測定値は総カルシウム濃度であり、約40%がアルブミンと結合しているため、低アルブミン血症では生理活性をもつイオン化Caが正常でも総Caが見かけ上低く出ます。アルブミンが4g/dL未満のときはPayneの式「補正Ca=実測Ca+(4-アルブミン)」で補正し、本問では7.3+(4.0-2.9)=8.4mg/dLとなります。計算に使うのは総蛋白ではなくアルブミンであり、血糖や他の電解質は関係しません。アルカローシスではイオン化Caが減ってテタニーを起こしうること、補正式には限界があり正確な評価にはイオン化Caの直接測定が望ましいことも合わせて理解しておくと、検査値を背景ごと解釈する力が身につきます。
解答・解説
正解は8.4 mg/dlです
考え方
血液生化学検査の「Ca」は、血清中のカルシウムの総量(総Ca濃度)を測っている。この中には、アルブミンなどの蛋白と結合したカルシウムも含まれる。一方、体内で実際に働く(生理活性をもつ)のはイオン化カルシウムである。アルブミンが減ると結合型カルシウムが減るため、イオン化カルシウムが正常でも総Ca濃度は見かけ上低く出る。そこで、低アルブミン血症(血清アルブミン4.0g/dL未満)がある場合には、アルブミン値で補正した値で評価する。
補正式(Payneの式)
補正Ca濃度(mg/dL)=実測Ca濃度(mg/dL)+(4.0-血清アルブミン濃度(g/dL)) (同じ意味で「実測Ca-アルブミン+4」とも書く) この式は、「アルブミンが基準の4.0g/dLより1g/dL低いごとに、総Caはおよそ0.8〜1mg/dL低く出る」という関係を簡略化したものである。国試では係数1のこの式を用いる。
計算過程
実測Ca=7.3mg/dL、アルブミン=2.9g/dLを代入する。 補正Ca=7.3+(4.0-2.9) =7.3+1.1 =8.4(mg/dL) よって解答は8.4mg/dLである。
結果の解釈
実測値7.3mg/dLだけをみると、著しい低カルシウム血症にみえる。しかし補正後は8.4mg/dLで、基準範囲(おおむね8.5〜10.2mg/dL)の下限付近〜わずかに下回る程度である。見かけの低Ca血症の多くは、低アルブミン血症によるものだとわかる。
問題文中の他の値について
血糖、総蛋白、Na、K、Clは補正Caの計算には使わない。計算に必要なのは、Caとアルブミンの2つだけである。なお、総蛋白の値ではなく、アルブミンの値を用いる点に注意する。
血清カルシウムの存在様式
・イオン化Ca(遊離Ca):約50%。生理作用をもつのはこの分画である。 ・蛋白結合型Ca:約40%。大部分はアルブミンと結合している。 ・陰イオンとの複合体:残りの約10%。クエン酸、リン酸、重炭酸などと結合している。 一般の生化学検査ではこれらをまとめた総Ca濃度を測定する。そのため、アルブミン濃度が変わると、生理的に重要なイオン化Caが変わらなくても測定値が上下する。
アルブミンとの関係
・低アルブミン血症(ネフローゼ症候群、肝硬変、低栄養、重症疾患など):総Caは見かけ上低くなる。 ・高アルブミン血症(脱水など):総Caは見かけ上高くなる。
pHとの関係
アシドーシスでは、アルブミンに結合していたCaが外れてイオン化Caが増える。アルカローシスでは逆にイオン化Caが減る。例えば過換気でテタニーが起こるのは、アルカローシスでイオン化Caが減るためである。
補正式の限界
Payneの式は簡便だが、慢性腎臓病や重症患者などでは精度が落ちることが知られている。正確な評価が必要なときは、血液ガス分析装置などでイオン化Ca(基準値はおよそ1.15〜1.30mmol/L)を直接測定するのが望ましい。
参考:高血糖時のNa
本問は血糖が320mg/dLと高い。高血糖があると、浸透圧の作用で細胞内から水が細胞外へ移り、血清Naが希釈されて低く出る。この場合、血糖が100mg/dL上がるごとにNaはおよそ1.6mEq/L低下するとされ、補正Naで評価することがある。補正Caとは別の概念である。
POINT
・補正Ca(mg/dL)=実測Ca+(4-アルブミン)。アルブミンが4g/dL未満のときに用いる。 ・計算に使うのは総蛋白ではなくアルブミンである。 ・生理作用をもつのはイオン化Ca(約50%)で、約40%はアルブミンと結合している。 ・低アルブミン血症では、総Caが見かけ上低値になる。 ・アルカローシスではイオン化Caが減り、テタニーを起こしうる。
