肝は「マイナス」にならない―CT値のものさしで組織を見分ける
第103回医師国家試験 E問題 第28問
国試問題にチャレンジ
成人男性の正常組織とCT値(HU)の組合せで誤っているのはどれか。
- a.肺 ―― -950HU
- b.肝 ―― -20HU
- c.筋肉 ―― 50HU
- d.胆嚢 ―― 0HU
- e.大動脈 ―― 50HU
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
CT値(HU)は水を0、空気を-1,000と定義したX線減弱の指標で、脂肪は約-100、軟部組織は正の数十、骨は+1,000前後が目安です。正常肺は空気に近い-900前後、胆汁など水成分は0〜20、筋肉や単純CTでの血液(大動脈内腔)は40〜60程度、正常肝は50〜70程度で脾よりやや高い値をとります。肝が負の値を示すのは高度脂肪肝などの異常であり、肝/脾CT値比1未満が脂肪肝の目安になります。病変内の脂肪の検出、水成分か充実性かの判定、急性期出血の高吸収など、CT値の理解は画像診断のあらゆる場面で基礎となるため、組織を5つのグループに分けて捉える感覚を身につけておきましょう。
解答・解説
正解はbです
CT値とは
CT値はX線の減弱(吸収)の程度を数値で表したもので、CTを開発したHounsfieldの名にちなみHounsfield unit(HU)で表す。水を0HU、空気を-1,000HUと定め、組織のX線減弱係数μを用いて「CT値=1,000×(μ組織-μ水)/μ水」で計算する。水よりX線をよく吸収する組織ほど正の大きな値(画像では白く=高吸収)、吸収しにくい組織ほど負の値(黒く=低吸収)になる。骨(皮質骨)はおおむね+1,000HU前後かそれ以上で、慣習的に「空気-1,000、水0、骨+1,000」と覚えると全体像をつかみやすい。
主な組織の目安(単純CT)
空気・肺:-1,000〜-700程度(正常肺はほとんどが空気なので-900前後) 脂肪:-100前後(-120〜-80程度) 水・胆汁・尿・脳脊髄液:0前後(0〜20) 血液:40前後(ヘマトクリットにより変動) 筋肉:40〜60程度 肝:50〜70程度(脾よりやや高い) 凝血塊・急性期出血:60〜90程度 骨:数百〜1,000以上
解き方
本問は「誤っているもの」を選ぶ。各組織が、空気(負の大きな値)・脂肪(負の小さな値)・水(0)・軟部組織(正の数十)・骨(正の大きな値)のどのグループに属するかを考えると判断できる。肝は実質臓器であり水より高い正の値をとるはずだが、選択肢bでは脂肪に近い負の値になっており誤りである。
選択肢考察
- ×a. 肺 ―― -950HU
正しい組合せである。正常な肺は大部分が肺胞内の空気で占められ、組織成分はわずかである。そのため空気(-1,000HU)に近い-900HU前後の値をとり、CT画像では黒く描出される。肺気腫では組織破壊によってさらに空気に近づき、-950HU以下の領域が増える(定量評価の閾値に用いられる)。
- ○b. 肝 ―― -20HU
誤った組合せであり、これが正解である。正常肝は細胞成分に富む実質臓器で、単純CTでは水より高い50〜70HU程度を示し、脾より少し高い値となる。-20HUのような負の値は脂肪成分が多いことを意味し、正常肝ではみられない。なお、高度の脂肪肝では肝のCT値が低下し、脾より低くなったり、ときに0HU以下になったりすることがある(肝/脾CT値比が1未満であれば脂肪肝を疑う)。本問は「成人男性の正常組織」を問うているので、-20HUは誤りである。
- ×c. 筋肉 ―― 50HU
正しい組合せである。骨格筋は水分と蛋白質に富む軟部組織で、単純CTでは40〜60HU程度と水よりやや高い値を示す。脂肪(-100HU前後)との差が大きいため、CTでは筋肉と皮下脂肪・筋間脂肪がはっきり区別できる。
- ×d. 胆嚢 ―― 0HU
正しい組合せである。胆嚢の内腔は胆汁で満たされており、胆汁はほぼ水と同じ組成であるため0〜20HU程度の値を示す。尿(膀胱)や脳脊髄液も同様に水に近い値となる。胆嚢内に高吸収の部分があれば石灰化胆石や造影剤の排泄などを考える。
- ×e. 大動脈 ―― 50HU
正しい組合せである。単純CTでの大動脈内腔は血液のCT値を反映し、40〜50HU前後である。血液のCT値は主にヘモグロビン濃度に左右され、貧血では低く、多血症では高くなる。造影CTでは造影剤(ヨード)により大動脈内腔は数百HUまで上昇するが、本問の値は単純CTの値として妥当である。
CT値の読み方と臨床応用
・ウインドウ設定:CT値の範囲のうち、どの幅(ウインドウ幅)をどの中心(ウインドウレベル)で白黒表示するかを決める。肺野条件(レベル-600前後、幅1,500前後)では肺の構造を、縦隔条件(レベル40前後、幅350前後)では軟部組織を、骨条件(レベル数百、幅2,000前後)では骨を観察しやすい。 ・脂肪の同定:病変内に負のCT値(-100HU前後)の部分があれば脂肪を含むと判断できる。副腎腺腫(脂肪を含み単純CTで10HU以下が多い)、腎血管筋脂肪腫、奇形腫、脂肪肉腫などの診断に役立つ。 ・液体か充実性か:0〜20HUなら水成分(嚢胞など)を考え、造影で値が上がらないことも嚢胞の根拠となる。 ・出血:急性期の血腫は凝血によりヘモグロビンが濃縮され60〜90HU程度の高吸収となり、時間とともに低下する。頭部CTでくも膜下出血や脳出血が白く見えるのはこのためである。 ・石灰化:100HU以上、さらに数百HUに達すると石灰化や骨を考える。 ・脂肪肝:単純CTで肝のCT値が脾より低い(肝/脾比<1)ことが目安となる。逆に、アミオダロン内服やヘモクロマトーシス(鉄沈着)では肝のCT値が上昇する。
POINT
・CT値:空気-1,000HU、水0HU(定義)、脂肪約-100HU、骨+1,000HU前後。 ・肺は空気に近い-900HU前後。 ・胆汁・尿・脳脊髄液は水に近い0〜20HU。 ・筋肉・血液・肝などの軟部組織は正の数十HU(肝は単純CTで50〜70HU程度、脾よりやや高い)。 ・肝のCT値が負になるのは高度脂肪肝などの異常であり、正常肝ではない。
