眼圧だけでは見逃す―緑内障を早く見つける「構造」と「機能」の2つの窓
第103回医師国家試験 D問題 第16問
国試問題にチャレンジ
緑内障の早期診断に有用なのはどれか。2つ選べ。
- a.眼底検査
- b.視野検査
- c.色覚検査
- d.調節検査
- e.眼位検査
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
緑内障は視神経乳頭と網膜神経線維層が進行性に障害され、それに対応した視野障害を生じる視神経症で、構造の変化が機能の変化に先行します。そのため早期診断の柱は、乳頭陥凹の拡大(C/D比)、リムの菲薄化、乳頭出血、網膜神経線維層欠損をとらえる眼底検査と、傍中心暗点・弓状暗点・鼻側階段を検出する視野検査です。日本では正常眼圧緑内障が最も多く眼圧測定だけでは見逃しやすいこと、色覚・調節・眼位は初期にはほとんど障害されないことも押さえておきましょう。OCTによる神経線維層の定量は前視野段階の検出にも役立ちます。自覚症状のないまま進行し、失った視野は回復しないからこそ、構造と機能の両面から早期に見つける意義は大きいのです。
解答・解説
正解はa, bです
緑内障は、視神経乳頭と網膜神経線維層が進行性に障害され、それに対応した特徴的な視野障害を生じる疾患である(緑内障性視神経症)。眼圧の上昇は最大の危険因子だが、日本では眼圧が正常範囲(おおむね21mmHg以下)にとどまる正常眼圧緑内障が最も多く、眼圧測定だけでは早期発見できないことが多い。 病変の進み方は「構造の変化が先、機能の変化が後」である。まず網膜神経節細胞の軸索(網膜神経線維)が失われ、視神経乳頭の陥凹が拡大し、神経線維層に欠損が現れる。神経線維がある程度失われると、それに対応した部位に視野欠損が出てくる。したがって早期診断では、構造の変化をとらえる眼底検査と、機能の変化をとらえる視野検査の2つが柱となる。 一方、緑内障の初期には中心視力・色覚・調節力・眼位はほとんど影響を受けない。自覚症状に乏しいまま進行するため、検診などで眼底と視野を調べることが早期発見の鍵となる。
選択肢考察
- ○a. 眼底検査
眼底検査では視神経乳頭を直接観察でき、緑内障の構造的変化を早い段階でとらえられる。乳頭の陥凹拡大(カッピング)は、乳頭径に対する陥凹径の比である陥凹乳頭比(C/D比)で評価し、垂直C/D比の拡大(目安として0.7以上)や左右差(0.2以上)は緑内障を疑う所見である。そのほか、陥凹の縁にあたる視神経乳頭辺縁部(リム)が上下方向で菲薄化すること、乳頭出血、網膜神経線維層欠損(乳頭から弓状〜楔状に広がる暗い帯)なども重要な所見である。これらは視野欠損が検出される前から現れうるので、早期診断に有用である。
- ○b. 視野検査
緑内障の機能障害は視野障害として現れ、視野検査は診断と進行の評価に欠かせない。初期には、固視点から10〜20度付近の傍中心暗点やBjerrum領域の弓状暗点、鼻側の水平経線を境に上下で感度差が出る鼻側階段がみられる。静的視野検査(Humphrey視野計など)では、こうしたわずかな感度低下を自覚症状が出る前に検出できる。視野障害は視神経乳頭や神経線維層の変化と部位が対応するので、眼底所見と合わせて判断すると診断の精度が上がる。中心視野は末期まで保たれやすいため、患者本人は欠損に気づきにくい。
- ×c. 色覚検査
色覚検査は先天色覚異常や、視神経炎などの後天性色覚異常の評価に用いる。緑内障でも進行すると色覚に異常が出ることはあるが、初期の変化としては目立たず、診断基準にも含まれない。早期診断の検査としての有用性は低い。
- ×d. 調節検査
調節検査は、毛様体筋と水晶体によるピント合わせの機能(調節力・近点)を調べる検査で、老視や調節麻痺・調節痙攣の評価に用いる。緑内障は視神経の疾患であり、調節機能は障害されないため、診断には役立たない。
- ×e. 眼位検査
眼位検査(遮閉試験、Hirschberg法など)は、斜視や眼球運動障害の評価に用いる。緑内障では外眼筋や眼球運動の神経支配は障害されないので、眼位検査は診断に役立たない。
緑内障の分類
原発緑内障は、隅角(角膜と虹彩の間にある房水の出口)が開いている開放隅角緑内障と、隅角が狭く閉じる閉塞隅角緑内障に大別される。開放隅角緑内障のうち、眼圧が正常範囲にあるものを正常眼圧緑内障という。日本の大規模疫学調査(多治見スタディ)では、40歳以上の緑内障有病率は約5%で、その大半が正常眼圧緑内障であった。このほか、ぶどう膜炎やステロイド使用などに伴う続発緑内障、隅角の発生異常による小児緑内障がある。
検査の役割
・眼圧検査:危険因子の評価と治療効果の判定に必要である。ただし正常眼圧緑内障があるため、眼圧だけで診断・除外はできない。 ・隅角検査(隅角鏡):開放隅角か閉塞隅角かの病型を決める。 ・眼底検査:C/D比、リムの菲薄化、乳頭出血、網膜神経線維層欠損を評価する。 ・光干渉断層計(OCT):網膜神経線維層や神経節細胞層の厚さを定量でき、視野異常が出る前の構造変化(前視野緑内障)の検出に役立つ。 ・視野検査:静的視野(Humphrey視野計)で早期の感度低下をとらえ、動的視野(Goldmann視野計)で視野全体の広がりを評価する。
視野障害の進み方
傍中心暗点・弓状暗点・鼻側階段で始まり、しだいに視野が狭くなって、末期には中心の小さな視野(中心残存視野)と耳側の島状視野だけが残る。最終的には失明に至ることがある。失われた視野は回復しないので、早期に見つけて眼圧を下げ、進行を抑えることが治療の目標となる。
POINT
・緑内障は、視神経乳頭と網膜神経線維層の構造変化に対応した視野障害を示す進行性の視神経症である。 ・早期診断の柱は眼底検査(乳頭陥凹拡大、C/D比、リムの菲薄化、乳頭出血、網膜神経線維層欠損)と視野検査(傍中心暗点、弓状暗点、鼻側階段)である。OCTも前視野段階の検出に有用である。 ・日本では正常眼圧緑内障が最も多く、眼圧測定だけでは見逃してしまう。 ・色覚・調節・眼位は緑内障の早期にはほとんど障害されない。
