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「残気量」はどこに隠れている?―肺気量分画を図で解く全肺気量の計算

第103回医師国家試験 B問題 第62問

国試問題にチャレンジ

第103回 B問題 第62問

呼吸機能検査の結果を示す。  肺活量2.85L,機能的残気量1.80L,吸気予備量2.13L,呼気予備量0.35L  全肺気量を求めよ。 解答:①.②③ l

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は呼吸機能検査の数値から全肺気量を計算する問題だ。ポイントは、肺気量分画の「足し算の関係」を頭の中で図にできるかどうか。与えられた値のうち、どれとどれを組み合わせれば答えに届くかを考えてみよう。
医学生医学生
全肺気量は肺活量に何かを足すんでしたよね。でも、その足すべきものが問題文に見当たらない気がします。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。全肺気量は最大限に息を吸ったときに肺に入っている空気の総量で、「肺活量+残気量」で表される。ところが今回、残気量は直接与えられていない。だから、まず残気量を別の値から導き出す必要があるんだ。
医学生医学生
生理学の講義でスパイログラムの図を描かされましたが、4つの「量」と、それを組み合わせた「容量」があったのは覚えています。
ドクタードクター
そう、その整理が武器になる。基本の4つは1回換気量、吸気予備量、呼気予備量、残気量。これらを組み合わせたものが肺活量、最大吸気量、機能的残気量、全肺気量だ。では機能的残気量は、どの量の和だったかな。
医学生医学生
普通に息を吐き終えたところで肺に残っている量なので……呼気予備量と残気量の和ですか。
ドクタードクター
正解。安静呼気位からさらに頑張って吐ける分が呼気予備量、それでも残る分が残気量だ。だから残気量は機能的残気量から呼気予備量を引けば求まる。1.80から0.35を引いて1.45 Lになる。
医学生医学生
あとは肺活量の2.85 Lに残気量の1.45 Lを足して、全肺気量は4.30 Lですね。
ドクタードクター
その通り、答えは4.30 Lだ。念のため別の経路で検算してみよう。全肺気量は「最大吸気量+機能的残気量」でも表せる。最大吸気量を出すには何が必要かな。
医学生医学生
最大吸気量は吸気予備量と1回換気量の和なので、1回換気量が要りますね。肺活量から吸気予備量と呼気予備量を引けば出せそうです。
ドクタードクター
いい推論だ。1回換気量は2.85から2.13と0.35を引いて0.37 L、最大吸気量は2.13+0.37で2.50 L。これに機能的残気量1.80を足すと、やはり4.30 Lになる。計算問題は2通りで確かめるとミスが減るよ。
医学生医学生
吸気予備量は最初の計算では使わなかったので、ひっかけの数値かと思いました。
ドクタードクター
実際、一つの経路では使わない値もある。全部使わなきゃと焦らず、図を描いて必要な部分だけを拾うのがコツだ。ところで、残気量はスパイロメータで直接測れると思う?
医学生医学生
最大限に吐いても残る空気なので、吐いた量を測るスパイロメータでは測れない……ですよね。
ドクタードクター
その通り。残気量、機能的残気量、全肺気量はスパイロメトリー単独では求められず、ヘリウム希釈法や窒素洗い出し法、体プレチスモグラフ法で機能的残気量を測り、そこから計算する。今回の問題の計算の流れは、実際の検査とまったく同じなんだ。
医学生医学生
臨床実習で呼吸器内科を回ったとき、COPDの患者さんで残気量が多いと聞きました。
ドクタードクター
閉塞性換気障害では気道が狭くて空気が抜けにくく、いわゆるエアトラッピングが起こる。そのため残気量、機能的残気量、全肺気量が増え、残気率も上がる。一方、間質性肺炎のような拘束性換気障害では肺が硬く膨らみにくいので、肺活量も全肺気量も全体に小さくなる。
医学生医学生
肺気腫だと肺活量はそれほど下がっていなくても、実は全肺気量は増えている、ということもあり得るわけですね。
ドクタードクター
まさにそこが臨床での注意点だ。スパイロメトリーの数値だけでは肺の状態を見誤ることがあるから、必要に応じて肺気量分画まで測って評価する。分画の関係を図で理解していれば、こうした病態の解釈にもそのままつながるよ。

まとめ

全肺気量は「肺活量+残気量」または「最大吸気量+機能的残気量」で求められ、本問では機能的残気量から呼気予備量を引いて残気量1.45 Lを出し、肺活量2.85 Lに加えて4.30 Lとなります。肺気量分画は1回換気量・吸気予備量・呼気予備量・残気量の4つの基本量と、その組み合わせである肺活量・最大吸気量・機能的残気量・全肺気量で整理すると、どの経路からでも計算できます。残気量を含む分画はスパイロメトリー単独では測定できず、ガス希釈法や体プレチスモグラフ法で求める点も重要です。閉塞性障害では残気量や全肺気量が増え、拘束性障害では全体に減少するため、分画の関係を図で理解しておくことが換気障害の病態把握の土台になります。

解答・解説

正解は4.30 lです

考え方

肺の容積は、4つの基本的な「気量(volume)」と、それらを組み合わせた「肺気量(capacity)」で表される。全肺気量(TLC)は最大吸気位で肺内に存在する空気の総量であり、「肺活量(VC)+残気量(RV)」で求められる。本問では肺活量は与えられているが残気量が与えられていないので、まず残気量を別の値から導く必要がある。

計算過程

(1) 残気量を求める 機能的残気量(FRC)は、安静呼気位(普通に息を吐き終えた位置)で肺に残る空気量であり、「呼気予備量(ERV)+残気量(RV)」に等しい。したがって 残気量=機能的残気量-呼気予備量=1.80-0.35=1.45 L (2) 全肺気量を求める 全肺気量=肺活量+残気量=2.85+1.45=4.30 L

別の経路による検算

肺活量=吸気予備量(IRV)+1回換気量(TV)+呼気予備量(ERV)より、 1回換気量=2.85-2.13-0.35=0.37 L 最大吸気量(IC)=吸気予備量+1回換気量=2.13+0.37=2.50 L 全肺気量=最大吸気量+機能的残気量=2.50+1.80=4.30 L (あるいは、全肺気量=IRV+TV+ERV+RV=2.13+0.37+0.35+1.45=4.30 L) どちらの経路でも同じ値になり、答えは4.30 Lである。

注意点

残気量は最大に息を吐いても肺に残る空気であり、スパイロメトリー(スパイロメータでの通常の呼吸機能検査)だけでは測定できない。そのため残気量、機能的残気量、全肺気量は、ヘリウム希釈法、窒素洗い出し法、体プレチスモグラフ法などで機能的残気量を測定し、そこから計算して求める。本問の計算は、まさにこの臨床検査の流れと同じである。

肺気量分画の整理

基本の4つの気量(volume) ・1回換気量(TV:tidal volume):安静時の1回の呼吸で出入りする空気量。成人で約0.5 L。 ・吸気予備量(IRV:inspiratory reserve volume):安静吸気位からさらに最大限吸い込める量。 ・呼気予備量(ERV:expiratory reserve volume):安静呼気位からさらに最大限吐き出せる量。 ・残気量(RV:residual volume):最大呼気位でも肺内に残る量。 組み合わせの肺気量(capacity) ・肺活量(VC:vital capacity)=IRV+TV+ERV:最大吸気位から最大呼気位まで吐き出せる量。 ・最大吸気量(IC:inspiratory capacity)=IRV+TV:安静呼気位から最大限吸い込める量。 ・機能的残気量(FRC:functional residual capacity)=ERV+RV:安静呼気位で肺に残る量。肺が外向きに広がろうとする胸郭の力と、内向きに縮もうとする肺の弾性収縮力とが釣り合う位置である。 ・全肺気量(TLC:total lung capacity)=VC+RV=IC+FRC=IRV+TV+ERV+RV。

疾患との関連

・閉塞性換気障害(COPD、気管支喘息など):気道閉塞により空気が抜けにくく(エアトラッピング)、RV、FRC、TLCが増加し、残気率(RV/TLC)が上昇する。 ・拘束性換気障害(間質性肺炎、肺線維症など):肺が硬く膨らみにくくなり、VC(%VC 80%未満)、TLC、FRC、RVが全体に減少する。 ・肺気腫で肺活量がそれほど低下していなくても、残気量増加によりTLCは増えていることがあり、スパイロメトリーだけでは評価しきれない。

POINT

・全肺気量=肺活量+残気量=最大吸気量+機能的残気量 ・機能的残気量=呼気予備量+残気量 → 残気量=FRC-ERV ・肺活量=吸気予備量+1回換気量+呼気予備量 ・本問:RV=1.80-0.35=1.45 L、TLC=2.85+1.45=4.30 L ・RV、FRC、TLCはスパイロメトリー単独では測れず、ガス希釈法や体プレチスモグラフ法で求める。 ・閉塞性障害ではRV・FRC・TLCが増加、拘束性障害ではいずれも減少する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。