StudyMed医師国家試験

「質問攻め」は名医の条件じゃない―医療面接は「聴く」ことから始まる

第102回医師国家試験 H問題 第3問

国試問題にチャレンジ

第102回 H問題 第3問

医療面接を行う上での医師の心がけとして適切でないのはどれか。

  1. a.丁寧語や敬語を用いる。
  2. b.患者と視線を合わせる。
  3. c.患者の表情や体の動きに注意する。
  4. d.質問することにできるだけ多くの時間を使う。
  5. e.患者の声の調子や抑揚,アクセントに注意する。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は医療面接で医師がとるべき態度を問う問題だ。「適切でないもの」を選ぶ形式なので、そこを読み違えないように。着眼点は、医療面接の中心が「質問すること」なのか「聴くこと」なのか、という一点だよ。まず、医療面接の目的を挙げられるかな。
医学生医学生
診断に必要な情報を集めること、でしょうか。昔は「問診」と呼んでいたと講義で習いました。
ドクタードクター
それも大事な目的のひとつだね。ただ、医療面接には大きく3つの目的がある。患者さんとの信頼関係、いわゆるラポールを築くこと、診断・治療に必要な情報を集めること、そして説明や教育を通して治療への動機づけをすること。「問診」から「医療面接」へ呼び名が変わったのは、情報収集だけでなく、関係づくりや説明まで含めた対話だととらえ直したからなんだ。
医学生医学生
そう考えると、質問にできるだけ多くの時間を使うというのは、情報収集に偏りすぎている気がします。
ドクタードクター
鋭いね。それが正解、つまり適切でない心がけだ。医師が一方的に質問を重ねると、一問一答の尋問のような面接になってしまう。患者さんが本当に気にしていることや、生活・仕事・家族といった心理社会的な背景を聞き逃しやすいし、聞いた内容を要約して確認する時間や、説明の時間も足りなくなる。体調の悪い患者さんにとっては、長い面接そのものが負担にもなるよ。
医学生医学生
でも、質問しないと情報が集まらないですよね。OSCEの練習でも、聞き漏れがないように必死で質問を並べていました。
ドクタードクター
多くの学生さんがそうなるんだ。大事なのは質問の「量」より「順番と種類」だよ。最初は「今日はどうなさいましたか」のような開かれた質問で、患者さんに自由に語ってもらう。そのあと「痛みについてもう少し詳しく教えてください」のような焦点を絞った質問、最後に「熱はありますか」のような「はい・いいえ」で答えられる閉じられた質問で事実を確認していく。この流れのほうが、結果的に漏れなく効率よく情報が集まるんだ。
医学生医学生
閉じられた質問ばかりだと、患者さんが言いたいことを言えないまま終わってしまいそうですね。
ドクタードクター
その通り。逆に、誘導質問、たとえば「痛いのは右側ですよね」という聞き方や、一度に複数のことを尋ねる重複質問は避けたい。では、残りの選択肢を見ていこう。丁寧語や敬語を使うことについてはどう思う?
医学生医学生
患者さんは年齢に関係なく一人の大人として尊重すべきなので、適切だと思います。高齢の方に、なれなれしい口調で話してしまう場面を病棟で見たことがあります。
ドクタードクター
医師にそのつもりがなくても、見下されていると感じさせてしまうことがあるからね。丁寧な言葉づかいは信頼関係の土台だ。ただし、丁寧であっても専門用語ばかりでは伝わらない。平易な言葉を選ぶこともセットで考えよう。次に、視線を合わせることについて。
医学生医学生
アイコンタクトは「話を聴いています」というメッセージになりますよね。外来見学で、電子カルテの画面ばかり見ている先生だと患者さんが話しにくそうでした。
ドクタードクター
よく観察しているね。ただ、じっと凝視し続けると威圧感を与えてしまう。適度に視線を合わせ、座って目線の高さをそろえるのが望ましいよ。残る2つ、患者さんの表情や体の動き、声の調子や抑揚に注意することは、どちらも非言語的コミュニケーションへの配慮にあたる。
医学生医学生
言葉では「大丈夫です」と言っていても、表情が不安そうなら本音は違うかもしれない、ということですね。
ドクタードクター
そう。さらに、表情や動作、声そのものが診断の手がかりになることも多い。たとえば仮面様顔貌や振戦はパーキンソン病、顔の非対称は顔面神経麻痺、嗄声は反回神経麻痺や喉頭の病気、構音障害は脳血管障害や神経筋疾患、抑揚の乏しい話し方はうつ病やパーキンソン病を考えるきっかけになる。面接は、そのまま視診の場でもあるんだ。
医学生医学生
面接は話を聞くだけでなく、観察の時間でもあるんですね。
ドクタードクター
その意識が大切だ。発展として、傾聴と共感の技法も押さえておこう。うなずきや相づちで話を促す、患者さんの言葉を繰り返したり言い換えたりする、聞いた内容を要約して誤解がないか確認する、「それはおつらかったですね」と共感を示す、そして沈黙を恐れずに患者さんが考えをまとめるのを待つ。加えて、患者さんが自分の病気をどう理解し、何を心配し、何を期待しているかという解釈モデルを聴き取ることも重要だよ。
医学生医学生
医師の側の腕組みや、時計をちらちら見るしぐさも、患者さんには伝わってしまいそうですね。
ドクタードクター
まさに。非言語的なメッセージは医師から患者さんへも出ている。自分の態度も含めて「伝わり方」に気を配れるかどうかが、良い医療面接の分かれ目なんだ。

まとめ

医療面接の目的は、信頼関係(ラポール)の構築、診断・治療に必要な情報の収集、そして説明・教育による治療への動機づけの3つです。中心となるのは医師が質問を重ねることではなく患者の話を傾聴することで、開かれた質問から始め、焦点を絞った質問、閉じられた質問へと進めると、患者の関心事や心理社会的背景も含めて効率よく情報が得られます。丁寧な言葉づかいや適度なアイコンタクトは信頼関係の基盤であり、表情・動作・声の調子といった非言語的情報は患者の本音を知る手がかりになるだけでなく、パーキンソン病や反回神経麻痺などの診断にもつながります。誘導質問や重複質問を避け、要約・共感・沈黙の許容、解釈モデルの聴取といった技法を身につけることは、OSCEだけでなく臨床のあらゆる場面での診療の質を支えます。

解答・解説

正解はdです

テーマ

医療面接(かつての「問診」を発展させた概念)で医師がとるべき態度・技法が問われている。「適切でないのはどれか」を選ぶ形式である点に注意する。

医療面接の3つの目的

1. 患者との信頼関係(ラポール)を築く。 2. 診断・治療に必要な情報を集める。 3. 患者に説明・教育を行い、治療への動機づけをする。

考え方

医療面接の中心は、医師が一方的に質問を重ねることではなく、患者の話を「聴く」ことにある。そのうえで、言葉で表現される内容(言語的コミュニケーション)だけでなく、表情、視線、姿勢、しぐさ、声の調子といった言葉以外の手がかり(非言語的コミュニケーション)にも注意を払う。また医師自身の言葉づかいや態度も、意図せず患者にメッセージとして伝わる。 この原則に照らすと、丁寧な言葉づかい、アイコンタクト、患者の表情・動作・声の観察はいずれも望ましい態度であり、「質問に多くの時間を割く」ことは、患者が自由に語る時間や説明の時間を削り、医師主導の尋問的な面接になるため適切でない。

選択肢考察

  1. ×a.  丁寧語や敬語を用いる。

    適切な心がけである。患者は年齢や社会的立場にかかわらず一人の成人として尊重されるべきであり、丁寧語・敬語による礼儀正しい言葉づかいは信頼関係の土台となる。なれなれしい口調や命令口調は、医師が意図しなくても見下されているという印象を与えかねない。ただし、専門用語を多用せず、患者が理解できる平易な表現を選ぶことも同時に求められる。

  2. ×b.  患者と視線を合わせる。

    適切な心がけである。アイコンタクトは「あなたの話を真剣に聴いている」という姿勢を伝える代表的な非言語的メッセージである。カルテや電子カルテの画面ばかり見ながら話を聞くと、患者は関心を持たれていないと感じやすい。なお、じっと凝視し続けると威圧感を与えるので、適度に視線を合わせ、目線の高さをそろえる(座って向き合う)ことが望ましい。

  3. ×c.  患者の表情や体の動きに注意する。

    適切な心がけである。表情や身ぶりは、患者の不安・痛み・抑うつといった感情や、言葉では言いにくい本音を知る手がかりとなる。さらに、仮面様顔貌や振戦(パーキンソン病)、顔面の非対称(顔面神経麻痺)、落ち着きのなさ、痛みをかばう動作など、表情や動作そのものが診断に直結する所見となることも多い。面接は観察(視診)の場でもある。

  4. ○d.  質問することにできるだけ多くの時間を使う。

    適切でない。医療面接で重視されるのは、患者に自由に語ってもらい、それを傾聴することである。はじめに「今日はどうなさいましたか」のような開かれた質問(患者が自由に答えられる質問)で話を促し、その後、必要に応じて焦点を絞った質問、「はい・いいえ」で答える閉じられた質問へと移ることで、効率よく漏れなく情報を得る。質問ばかりに時間を費やすと、医師主導の一問一答になって患者の本当の関心事や心理社会的背景を聞き逃しやすく、要約・確認や説明の時間も不足する。また、長時間の面接は体調の悪い患者には負担となる。時間は質問そのものより、傾聴と相互理解に使うべきである。

  5. ×e.  患者の声の調子や抑揚,アクセントに注意する。

    適切な心がけである。声の大きさ、話す速さ、抑揚、口調などは、言葉の内容には現れない感情(不安、怒り、抑うつなど)を反映する準言語的な情報である。さらに、嗄声(反回神経麻痺や喉頭疾患)、構音障害(脳血管障害や神経筋疾患)、抑揚の乏しい話し方(うつ病、パーキンソン病)など、声や話し方の変化自体が疾患の手がかりになる。

質問法の種類

・開かれた質問(open-ended question): 「どのような症状ですか」など、患者が自由に答えられる質問。多くの情報が得られ、患者の考えや感情を引き出しやすい。面接の導入に用いる。 ・焦点を絞った質問(focused question): 「痛みについてもう少し詳しく教えてください」など、話題を限定しつつ自由に答えてもらう質問。 ・閉じられた質問(closed question): 「熱はありますか」など、「はい・いいえ」や一語で答えられる質問。事実の確認に有用だが、多用すると尋問のようになる。 ・避けるべき質問: 答えを誘導する誘導質問(「痛いのは右側ですよね」)、一度に複数を尋ねる重複質問。

傾聴・共感の技法

・促し(うなずき、相づち、「それで」など) ・繰り返し・言い換え(患者の言葉をそのまま、あるいは言い換えて返す) ・要約(聞いた内容をまとめ、誤解がないかを確認する) ・共感的な応答(「それはおつらかったですね」) ・沈黙を許容し、患者が考えをまとめるのを待つ

非言語的コミュニケーション

表情、視線、姿勢、身ぶり、患者との距離や座る位置、身だしなみ、声の調子などが含まれる。医師の側も、腕組み、時計を気にする、画面ばかり見るといった態度が患者に否定的なメッセージとして伝わりうる。

患者の解釈モデル

患者が自分の病気をどう理解し、何を心配し、何を期待しているかを聴き取ることも、医療面接の重要な要素である。

POINT

・医療面接の目的は、信頼関係の構築、情報収集、説明・教育の3つである。 ・開かれた質問から始め、焦点を絞った質問、閉じられた質問へと進める。 ・質問に時間を費やすより、傾聴と共感を重視する。 ・言葉の内容だけでなく、表情・動作・声の調子などの非言語的情報にも注意する。 ・丁寧な言葉づかいと適度なアイコンタクトが信頼関係の基盤となる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。