StudyMed医師国家試験

窓口はどこ?―「市町村」を軸に読み解く介護保険のしくみ

第102回医師国家試験 B問題 第4問

国試問題にチャレンジ

第102回 B問題 第4問

介護保険について正しいのはどれか。

  1. a.加入は任意である。
  2. b.保険料は全国一律である。
  3. c.要介護認定は市町村に申請する。
  4. d.介護認定審査会は医師会が設置する。
  5. e.本人はケアプランを作ることができない。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は介護保険制度の基本を問う問題だ。選択肢は加入のしかた、保険料、認定の申請先、審査会の設置者、ケアプランの作成者と、制度の骨格を一通りなぞっている。カギは「誰が保険を運営しているか」。ここを押さえれば一気に解けるよ。介護保険の保険者は誰か、覚えているかな。
医学生医学生
公衆衛生の講義で、確か市町村だと習いました。国民健康保険と同じイメージでしょうか。
ドクタードクター
その通り。介護保険は2000年に始まった社会保険で、保険者は市町村、東京23区なら特別区だ。複数の市町村が広域連合をつくって運営することもある。保険者が市町村なら、要介護認定の申請先はどこになる?
医学生医学生
保険者に申請するのが筋なので、市町村ですね。これが正解だと思います。
ドクタードクター
正解。本人や家族が市町村の窓口に申請し、地域包括支援センターなどが代行することもできる。申請後は、認定調査員による心身の状況の調査と主治医意見書をもとにコンピュータで一次判定を行い、介護認定審査会で二次判定、最終的に市町村が要支援1〜2、要介護1〜5、非該当のいずれかを認定する。原則30日以内に結果が通知されるよ。
医学生医学生
臨床実習で総合診療科を回ったとき、指導医の先生が主治医意見書を書いていました。あれが認定に使われるんですね。
ドクタードクター
そう、医師が介護保険に関わる一番身近な場面だね。では、その介護認定審査会を設置するのは医師会、という選択肢はどうだろう。
医学生医学生
医師が委員にいるので、医師会が設置していると思ってしまいそうです。
ドクタードクター
そこが引っかけだ。審査会を設置するのも市町村で、委員は保健・医療・福祉の学識経験者から市町村長が任命する。医師が委員に入ることは多いけれど、設置者は医師会ではない。複数市町村での共同設置や都道府県への委託も認められている。
医学生医学生
加入が任意というのは、保険の考え方からすると違いますよね。
ドクタードクター
いい推論だね。40歳以上は全員が加入する強制加入で、65歳以上が第1号被保険者、40〜64歳の医療保険加入者が第2号被保険者だ。任意にすると、介護が必要になりそうな人ばかりが加入する逆選択が起きて、保険として成り立たなくなる。
医学生医学生
保険料が全国一律でないのは、市町村ごとに介護サービスの量が違うからですか。
ドクタードクター
まさにそう。第1号被保険者の保険料は、各市町村がサービスの見込み量に応じて3年ごとに基準額を決め、さらに所得に応じて段階的に設定する。第2号被保険者の保険料は加入する医療保険ごとに算定され、医療保険料と一緒に徴収される。だから全国一律ではないんだ。
医学生医学生
最後のケアプランですが、ケアマネジャーが作るものなので、本人は作れないのかと思っていました。
ドクタードクター
そう誤解する人は多いね。一般的には介護支援専門員、いわゆるケアマネジャーが作成するけれど、本人や家族が自分で作るセルフケアプランも認められていて、その場合は市町村に届け出る。ちなみにケアマネジャーに作成を頼んでも利用者負担はなく、全額が保険から給付される。
医学生医学生
要するに、運営も申請も審査会も市町村、加入は強制、保険料は地域差あり、ケアプランは本人も作れる、ということですね。
ドクタードクター
完璧なまとめだ。発展知識も押さえておこう。第2号被保険者は、がん末期、関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症、初老期の認知症、脳血管疾患、パーキンソン病関連疾患など、加齢に関連する16の特定疾病が原因の場合に限って給付を受けられる。第1号は原因を問わない。
医学生医学生
50代の脳梗塞の患者さんなら介護保険が使えるけれど、交通事故による脊髄損傷では使えない、ということですか。
ドクタードクター
その理解で合っている。外傷は特定疾病に含まれないから、40〜64歳では障害福祉サービスなど別の制度を検討することになる。財源は公費50%と保険料50%、自己負担は原則1割で、所得に応じて2割または3割になる。退院支援の場面では、早めに申請を勧めることが患者さんの生活を守ることにつながるよ。
医学生医学生
病棟でも、退院前カンファレンスでケアマネジャーさんと話しているのを見かけました。医師も制度を知っておかないといけないんですね。
ドクタードクター
そう。主治医意見書を書くのも、在宅復帰を後押しするのも医師の役目だ。制度の骨格を理解しておけば、患者さんや家族からの質問にも自信を持って答えられるようになるよ。

まとめ

介護保険は2000年に始まった社会保険で、保険者は市町村であり、要介護認定の申請先も、二次判定を行う介護認定審査会の設置者も市町村です。40歳以上は強制加入で、65歳以上が第1号被保険者、40〜64歳の医療保険加入者が第2号被保険者となり、第2号は16の特定疾病が原因の場合に限り給付を受けられます。第1号被保険者の保険料は市町村ごとに3年ごとに定められるため全国一律ではなく、ケアプランはケアマネジャーが作成するのが一般的ですが本人や家族も作成できます。認定には主治医意見書が用いられるため、医師は制度の入り口から深く関わっています。「市町村が運営する」という軸を押さえることが、制度問題の正答と、退院支援や在宅医療での適切な患者支援の両方につながります。

解答・解説

正解はcです

本問は介護保険制度の基本的なしくみ(加入の方法、保険料、要介護認定の手続き、ケアプランの作成)を問う問題である。 介護保険は、高齢者の介護を社会全体で支えることを目的に、介護保険法(1997年成立)に基づき2000年4月に始まった社会保険制度である。制度を理解するうえで押さえるべき骨格は次のとおりである。 ・保険者:市町村(東京23区の特別区を含む)。複数の市町村が広域連合をつくって運営する場合もある。 ・被保険者:40歳以上の人は全員が加入する(強制加入)。65歳以上が第1号被保険者、40〜64歳の医療保険加入者が第2号被保険者である。 ・給付を受ける手順:本人または家族が市町村に申請 → 市町村による認定調査と主治医意見書 → コンピュータによる一次判定 → 介護認定審査会による二次判定 → 市町村が要支援・要介護の区分を認定 → ケアプラン(介護サービス計画)に基づいてサービスを利用する。 この流れを押さえておけば、「制度を運営し、申請を受け、審査会を置くのは市町村」という点から正解を選ぶことができる。

選択肢考察

  1. ×a.  加入は任意である。

    介護保険は社会保険であり、40歳以上の人は本人の意思にかかわらず全員が被保険者となる強制加入の制度である。65歳以上は第1号被保険者、40〜64歳で医療保険に加入している人は第2号被保険者となる。任意加入にすると、介護が必要になりそうな人だけが加入する逆選択が生じ、保険として成り立たなくなるためである。

  2. ×b.  保険料は全国一律である。

    第1号被保険者(65歳以上)の保険料は、各市町村がその地域の介護サービスの見込み量に応じて3年ごとに基準額を定めるため、市町村ごとに異なる。さらに本人の所得に応じて段階的に設定される。第2号被保険者(40〜64歳)の保険料は、加入している医療保険の保険者ごとの算定方法で決まり、医療保険料と一緒に徴収される。したがって全国一律ではない。

  3. ○c.  要介護認定は市町村に申請する。

    介護保険の保険者は市町村であり、介護サービスを利用するには、まず本人または家族が市町村の窓口に要介護(要支援)認定を申請する。地域包括支援センターや居宅介護支援事業者などが申請を代行することもできる。申請後、市町村は認定調査員による心身の状況の調査と主治医の意見書をもとに判定を進め、原則として申請から30日以内に結果を通知する。

  4. ×d.  介護認定審査会は医師会が設置する。

    介護認定審査会は市町村が設置する機関である。委員は保健・医療・福祉の学識経験者の中から市町村長が任命し、医師も委員に含まれることが多いが、医師会が設置するわけではない。なお、複数の市町村が共同で設置したり、都道府県に審査・判定業務を委託したりすることもできる。審査会は一次判定の結果、認定調査の特記事項、主治医意見書をもとに二次判定を行う。

  5. ×e.  本人はケアプランを作ることができない。

    ケアプラン(介護サービス計画)は、利用者の依頼を受けた介護支援専門員(ケアマネジャー)が作成するのが一般的だが、本人や家族が自ら作成すること(セルフケアプラン、セルフプラン)も認められている。その場合は市町村に届け出る。なお、ケアマネジャーによる居宅サービス計画の作成には利用者負担がなく、全額が保険から給付される。

被保険者の区分

・第1号被保険者:65歳以上。原因を問わず、要介護・要支援状態と認定されれば給付を受けられる。保険料は市町村が徴収し、年金額が年18万円以上なら年金から天引きされる(特別徴収)。 ・第2号被保険者:40〜64歳の医療保険加入者。加齢に伴う「特定疾病」(16疾病)が原因で要介護・要支援状態となった場合に限り給付を受けられる。特定疾病の例として、がん(末期)、関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症、初老期における認知症、脳血管疾患、パーキンソン病関連疾患、糖尿病性神経障害・腎症・網膜症、閉塞性動脈硬化症、慢性閉塞性肺疾患などがある。

要介護認定の流れ

① 市町村へ申請 ② 認定調査(全国共通の調査票による心身の状況の調査)と主治医意見書の作成 ③ 一次判定(コンピュータによる推計) ④ 介護認定審査会による二次判定 ⑤ 市町村が認定・通知(要支援1〜2、要介護1〜5、非該当) 認定には有効期間があり、継続して利用するには更新申請が必要である。

ケアプラン

・要介護者の居宅サービス:居宅介護支援事業所の介護支援専門員(ケアマネジャー)が作成する。 ・要支援者の介護予防サービス:主に地域包括支援センターが介護予防ケアプランを作成する。 ・いずれも本人・家族による作成が可能である。

財源と利用者負担

・給付費の財源は公費(国・都道府県・市町村の税金)50%、保険料50%である。 ・サービス利用時の自己負担は原則1割で、一定以上の所得がある人は2割または3割となる。

POINT

・介護保険の保険者は市町村。要介護認定の申請先も、介護認定審査会の設置者も市町村である。 ・40歳以上は強制加入(第1号:65歳以上、第2号:40〜64歳の医療保険加入者)。 ・第1号被保険者の保険料は市町村ごとに異なる(全国一律ではない)。 ・ケアプランはケアマネジャーが作成するのが一般的だが、本人・家族も作成できる。 ・第2号被保険者は特定疾病(16疾病)による場合のみ給付対象。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。