StudyMed医師国家試験

手足の長い17歳と「X」1本の重み―Klinefelter症候群を整理する

第101回医師国家試験 G問題 第50問

国試問題にチャレンジ

第101回 G問題 第50問

17歳の男子。二次性徴発現の遅れを主訴に来院した。身長176cm,体重60kg。手足が長い。女性化乳房がみられる。外性器は男性型で,精巣は小さく,陰毛を認めない。染色体核型は47, XXYである。 この疾患で正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. a.光線過敏がみられる。
  2. b.高度の知能障害を伴う。
  3. c.悪性腫瘍を合併しやすい。
  4. d.テストステロンは高値を示す。
  5. e.減数分裂のX染色体不分離が原因である。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、二次性徴の遅れで受診した男子の核型が47,XXYと分かっている問題だ。診断自体は核型から明らかなので、問われているのはKlinefelter症候群の原因・内分泌学的特徴・知的機能・合併症を正しく整理できているかどうか。まずは体型に注目しよう。高身長で手足が長いと聞いて、何が浮かぶかな。
医学生医学生
Marfan症候群をまず考えてしまいます。でも女性化乳房や小さな精巣は合わないですよね。
ドクタードクター
いい比較だね。Marfan症候群も高身長で四肢が長いけれど、二次性徴は正常で、水晶体偏位や大動脈の拡張を伴う。今回のように精巣が小さく、陰毛がなく、女性化乳房があるのは性腺機能低下のサインだ。テストステロンが足りないと骨端線がなかなか閉じず、下肢を中心に長管骨が伸び続けるから、手足の長い類宦官体型になるんだ。
医学生医学生
女性化乳房も、テストステロンが減ってエストロゲンの作用が相対的に強くなるからでしょうか。
ドクタードクター
そう考えられている。ではホルモンの値を考えよう。Klinefelter症候群は精巣そのものが障害される病気だ。血中テストステロンはどうなる?
医学生医学生
精巣が悪いなら作れないので低いはずです。テストステロンが高いという記述は誤りですね。
ドクタードクター
正解。Leydig細胞からの分泌が落ちてテストステロンは低値、フィードバックが外れてLHとFSHは高値になる。いわゆる高ゴナドトロピン性性腺機能低下症だ。精細管が硝子化して精子がほとんど作られず、Sertoli細胞のインヒビンBも下がるから、特にFSHの上昇が目立つ。
医学生医学生
Kallmann症候群は同じ性腺機能低下でもゴナドトロピンが低いほうでしたね。嗅覚障害がある、とCBTの勉強で覚えました。
ドクタードクター
その対比はとても大事だよ。次は原因。47,XXYはどうやってできると思う?
医学生医学生
遺伝医学の講義で習った不分離ですね。卵子か精子を作る減数分裂でXがうまく分かれなかった、ということだと思います。
ドクタードクター
その通りで、これは正しい記述だ。卵子形成でXXの卵子ができてYの精子と受精する場合と、精子形成の第一減数分裂でXとYが分かれずXYの精子ができる場合があり、父親由来と母親由来はおおよそ半々とされる。母親由来のものは母体の高年齢と関連する。なお、46,XY/47,XXYのモザイク型は受精後の体細胞分裂での不分離によるものだ。
医学生医学生
もう一つの正解は悪性腫瘍ですか。男性乳癌が多いと聞いた気がします。
ドクタードクター
よく知っているね。男性乳癌は一般男性より明らかに多い。それから縦隔に生じる性腺外胚細胞腫瘍も多くて、若い男性の縦隔胚細胞腫瘍をみたら本症を念頭に置くことが大切だ。造血器腫瘍の合併も報告されている。だから悪性腫瘍を合併しやすいという記述も正しい。
医学生医学生
知能障害についてはどうでしょう。染色体異常というとダウン症候群のようなイメージがあって、迷いました。
ドクタードクター
そこは誤解しやすいポイントだ。Klinefelter症候群では多くの人の知能は正常範囲で、障害があっても軽度にとどまることが多い。言葉の発達の遅れや読み書きの学習障害、対人関係の苦手さがみられることはあるけれど、高度の知能障害は通常ない。ただし48,XXXYや49,XXXXYのようにXが増えるほど、知能障害や身体の異常は重くなる傾向がある。
医学生医学生
光線過敏は全然関係なさそうですね。皮膚科の実習で見た色素性乾皮症を思い出しました。
ドクタードクター
そうだね。光線過敏はDNA修復障害の色素性乾皮症やポルフィリン症、SLEなどでみられるもので、Klinefelter症候群の特徴ではない。
医学生医学生
幼い頃に気づかれにくいのは、症状が思春期まで目立たないからでしょうか。
ドクタードクター
その通り。男児のおよそ500〜1,000人に1人と、性染色体異常の中では最も多いのに、思春期の二次性徴の遅れや、成人してからの不妊外来で無精子症として見つかることが多い。治療は二次性徴の発現や骨密度の維持のためのテストステロン補充だけど、精子形成は回復しない。それでも精巣内精子採取術で精子が得られれば、顕微授精で子どもをもてる可能性がある。骨粗鬆症や2型糖尿病、静脈血栓塞栓症などにも気をつけながら、長く付き合っていく病気なんだ。

まとめ

Klinefelter症候群は47,XXYを代表とする男性の性染色体異常で、配偶子形成時の減数分裂における性染色体不分離が原因です。精巣が障害される原発性性腺機能低下症のため、テストステロンは低値、LH・FSHは高値となり、小さな精巣、無精子症、女性化乳房、二次性徴不全、手足の長い類宦官体型を呈します。知能は正常から軽度低下にとどまることが多く高度の知能障害はまれですが、男性乳癌や縦隔胚細胞腫瘍などの悪性腫瘍を合併しやすい点は重要です。Marfan症候群や低ゴナドトロピン性のKallmann症候群との鑑別を意識し、思春期の発育相談や男性不妊の診療で本症を想起できることが、早期の補充療法や合併症の管理につながります。

解答・解説

正解はc, eです

所見の整理

・17歳男子。主訴は二次性徴発現の遅れ ・身長176cmと高身長で、手足が長い(類宦官体型:eunuchoid body habitus) ・女性化乳房 ・外性器は男性型だが、精巣は小さく、陰毛がない ・染色体核型 47,XXY

診断へのプロセス

高身長で手足が長いという体型だけならMarfan症候群も思い浮かぶが、Marfan症候群では二次性徴は正常で、女性化乳房や小さな精巣はみられない。本例では、精巣の発育不全、陰毛の欠如、女性化乳房という性腺機能低下の所見がそろい、核型が47,XXYであることから、Klinefelter症候群と確定できる。 Klinefelter症候群は、男性にX染色体が1本以上余分にある性染色体異常で、精巣そのものが障害される原発性性腺機能低下症(高ゴナドトロピン性性腺機能低下症)である。精巣の間質にあるLeydig細胞からのテストステロン分泌が低下するため、第二次性徴の発来が遅れたり不完全になったりする。テストステロンが不足すると骨端線の閉鎖が遅れ、下肢を中心に長管骨が伸び続けるため、手足の長い高身長となる。また、テストステロンに対してエストロゲンの作用が相対的に強くなることが女性化乳房の原因と考えられている。

設問の考え方

本症の原因(配偶子形成時の性染色体不分離)、内分泌学的特徴(テストステロン低値・ゴナドトロピン高値)、知的機能(正常〜軽度の障害)、合併症(乳癌や胚細胞腫瘍などの悪性腫瘍)を整理しておけば、正しい記述を選べる。

選択肢考察

  1. ×a.  光線過敏がみられる。

    Klinefelter症候群で光線過敏はみられない。光線過敏を示す代表的な遺伝性疾患には、色素性乾皮症(DNA修復の障害)、ポルフィリン症、Bloom症候群、Cockayne症候群などがある。また、全身性エリテマトーデス(SLE)などの自己免疫疾患でも光線過敏がみられる。

  2. ×b.  高度の知能障害を伴う。

    Klinefelter症候群では、多くの患者の知能は正常範囲にあり、知能障害があっても軽度にとどまることが多い。言語の発達の遅れ、読み書きなどの学習障害、注意の問題、対人関係の苦手さなどがみられることはある。高度の知能障害は通常みられないため、誤りである。なお、48,XXXYや49,XXXXYのようにX染色体の数が増えるほど、知能障害や身体異常は重くなる傾向がある。

  3. ○c.  悪性腫瘍を合併しやすい。

    Klinefelter症候群では、一般男性に比べて特定の悪性腫瘍の発生が多い。代表的なのは男性乳癌で、一般男性より明らかに頻度が高い。また、縦隔などに生じる性腺外胚細胞腫瘍(特に縦隔の胚細胞腫瘍)も多く、若年男性の縦隔胚細胞腫瘍をみた場合には本症を念頭に置く。そのほか、非Hodgkinリンパ腫や白血病などの造血器腫瘍の合併も報告されている。

  4. ×d.  テストステロンは高値を示す。

    Klinefelter症候群は精巣そのものの障害による原発性性腺機能低下症であり、Leydig細胞からのテストステロン分泌が低下するため、血中テストステロンは低値となる。ネガティブフィードバックが外れるため、下垂体からのゴナドトロピン(LH・FSH)は高値を示す(高ゴナドトロピン性性腺機能低下症)。精細管の硝子化によって精子形成がほとんど行われないため、Sertoli細胞からのインヒビンBも低下し、FSHの上昇が特に目立つ。治療としては、二次性徴の発現や骨密度の維持を目的にテストステロン補充療法が行われる。

  5. ○e.  減数分裂のX染色体不分離が原因である。

    47,XXYの核型は、配偶子を作る減数分裂のときに性染色体が正しく分かれない「不分離」によって生じる。卵子の形成時にX染色体が分離せず XX をもつ卵子ができて Y をもつ精子と受精する場合と、精子の形成時(第一減数分裂)にXとYが分離せず XY をもつ精子ができて X をもつ卵子と受精する場合があり、父親由来と母親由来がおおよそ半数ずつとされる。母親由来のものは母体の高年齢と関連する。なお、46,XY/47,XXYのようなモザイク型は、受精後の体細胞分裂での不分離によって生じる。

Klinefelter症候群の概要

・頻度:男児出生のおよそ500〜1,000人に1人と、性染色体異常の中で最も多い。 ・核型:47,XXYが大部分を占める。そのほか、46,XY/47,XXYのモザイク型や、48,XXXY、49,XXXXYなどがある。 ・発見の契機:幼児期には症状が乏しく、思春期の二次性徴の遅れ・女性化乳房、あるいは成人後の男性不妊(無精子症)で発見されることが多い。

主な臨床像

・小さく硬い精巣(精細管の硝子化・線維化)、無精子症による不妊 ・二次性徴の不全(陰毛・腋毛・髭が薄い、声変わりが不十分) ・高身長、手足が長い類宦官体型 ・女性化乳房 ・知能は正常〜軽度低下。言語発達の遅れ、学習障害を伴うことがある ・合併症:男性乳癌、縦隔胚細胞腫瘍などの性腺外胚細胞腫瘍、造血器腫瘍、骨粗鬆症、2型糖尿病・メタボリックシンドローム、自己免疫疾患(SLEなど)、静脈血栓塞栓症など

検査所見

・テストステロン低値、LH・FSH高値(高ゴナドトロピン性性腺機能低下症) ・エストラジオールは正常〜高値 ・精液検査で無精子症 ・細胞診で口腔粘膜細胞にX染色質(Barr小体)を認める(余分なX染色体が不活化されたもの)

治療

・テストステロン補充療法:二次性徴の発現、筋力・骨密度の維持、生活の質の改善を目的とする。精子形成は回復しない。 ・不妊に対しては、精巣内精子採取術(TESE)で精子が得られれば、顕微授精により挙児が可能な場合がある。

鑑別の要点

・Marfan症候群:高身長・長い四肢は共通だが、二次性徴は正常。水晶体偏位、大動脈拡張・解離、クモ状指などを伴う。常染色体顕性(優性)遺伝で、FBN1遺伝子の異常による。 ・Kallmann症候群:低ゴナドトロピン性性腺機能低下症(テストステロン低値、LH・FSHも低値)と嗅覚障害を伴う。 ・Turner症候群(45,X):女性の性染色体異常で、低身長、原発性無月経、翼状頸などを呈する。

POINT

・Klinefelter症候群=47,XXY。男性の原発性性腺機能低下症の代表。 ・小さな精巣、無精子症、女性化乳房、二次性徴不全、高身長・長い四肢(類宦官体型)。 ・テストステロン低値、LH・FSH高値(高ゴナドトロピン性)。 ・知能は正常〜軽度低下で、高度の知能障害はまれ。 ・男性乳癌、縦隔胚細胞腫瘍などの悪性腫瘍を合併しやすい。 ・原因は減数分裂時の性染色体不分離(父親由来・母親由来ほぼ半々、母体高齢と関連)。モザイク型は受精後の体細胞分裂での不分離。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。