StudyMed医師国家試験

褥瘡ケアは「間隔」と「除去」が勝負―頻度の数字と壊死組織への向き合い方

第101回医師国家試験 C問題 第42問

国試問題にチャレンジ

第101回 C問題 第42問

褥瘡への対応で正しいのはどれか。

  1. a.1週ごとの観察
  2. b.1か月ごとの栄養管理
  3. c.8時間ごとの体位変換
  4. d.壊死組織のデブリドマン
  5. e.ホルムアルデヒドによる洗浄

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は褥瘡への基本的な対応を問う問題だ。選択肢には観察、栄養、体位変換、局所処置といった褥瘡ケアの柱が並んでいるけれど、注目してほしいのは「その頻度は妥当か」「その処置は創を守るのか傷つけるのか」という2点だ。まず、褥瘡がどうやってできるか確認しておこう。
医学生医学生
骨が出っ張った部分に持続的な圧がかかって、血流が途絶えて組織が壊死する、という理解です。
ドクタードクター
その通り。仰臥位なら仙骨部が最多で、踵部や後頭部、側臥位なら大転子部、座位なら坐骨部が好発部位だ。圧迫に加えて、ずれ(剪断力)や湿潤といった外的要因、低栄養やるい痩、知覚・運動障害、関節拘縮などの内的要因が重なって発生する。
医学生医学生
選択肢を見ると、観察も栄養管理も体位変換も全部やるべきことに見えて、どれも正しそうに思えてしまいました。
ドクタードクター
そこがこの問題の引っかけだね。行うこと自体は正しくても、示された間隔が現実離れしているんだ。たとえば観察。褥瘡は数日で急に深くなったり感染したりするから、体位変換やおむつ交換のたびに、少なくとも毎日皮膚と創を見る必要がある。1週ごとでは悪化を見逃してしまう。
医学生医学生
看護師さんがおむつ交換のときに仙骨部を必ず確認しているのは、そういう意味だったんですね。
ドクタードクター
そう。指で押しても消えない発赤の段階で気づけば、除圧でそれ以上の進行を防げる。次に栄養管理はどうかな。
医学生医学生
低栄養は褥瘡の危険因子でしたよね。1か月ごとというのは、管理としては間が空きすぎでしょうか。
ドクタードクター
その通り。栄養は日々の摂取量を把握しながら継続的に支えるもので、エネルギーや蛋白質、亜鉛などを十分に補う。体重や血液検査での評価も定期的に、もっと短い間隔で行う。では体位変換は?
医学生医学生
基礎看護の授業で「2時間ごと」と習った記憶があります。8時間は長すぎますね。
ドクタードクター
よく覚えているね。数時間の圧迫で組織は不可逆的な障害に至りうるから、原則は2時間以内。ただし体圧分散効果の高いマットレスを使っている場合は4時間以内でもよいとされている。8時間ではどちらの基準にも届かない。
医学生医学生
残るのは壊死組織のデブリドマンとホルムアルデヒドによる洗浄ですね。ホルムアルデヒドは病理実習で臓器の固定に使っていた薬品なので、生きた創に使うのは怖い気がします。
ドクタードクター
まさにその感覚が正しい。ホルムアルデヒドは強い蛋白凝固作用をもち、正常な細胞まで傷害して治癒を遅らせるから、創に使ってはいけない。褥瘡の洗浄は十分な量の生理食塩水か微温湯で行い、汚れや細菌を物理的に洗い流すのが基本だ。
医学生医学生
ということで、正解は壊死組織のデブリドマンですね。壊死組織は残しておくと何がまずいんですか。
ドクタードクター
壊死組織は細菌の温床になって感染の原因になるうえ、肉芽形成や上皮化の邪魔をする。だから取り除く必要があるんだ。方法はメスや剪刀で切除する外科的デブリドマン、蛋白分解酵素製剤を使う化学的デブリドマン、ドレッシング材で湿潤環境を保って自己融解を促す方法などがある。感染を伴う場合や壊死が厚い場合は、外科的デブリドマンが優先される。
医学生医学生
局所治療の流れとしては、洗浄して、壊死組織を除去して、感染を抑えて、それから肉芽が育つ環境を整える、という順番ですか。
ドクタードクター
そのとおり。最後は適度な湿潤環境を保つmoist wound healingで肉芽形成と上皮化を促す。乾かせばよいという昔の考え方とは違うから注意しよう。評価には日本褥瘡学会のDESIGN-Rがよく使われていて、深さ、滲出液、大きさ、炎症・感染、肉芽組織、壊死組織、ポケットの項目で経過を追う。
医学生医学生
皮膚科の実習で回診についたとき、DESIGN-Rの点数をカルテに書いているのを見ました。
ドクタードクター
実際の現場ではあの点数の推移で治療効果を判断しているんだ。予防面では、ベッドの頭側挙上を30度以下にしてずれを減らす、30度側臥位で骨突出部を避ける、失禁や発汗による湿潤を防ぐといった工夫も大切だ。褥瘡は医師だけでなく看護師、管理栄養士、理学療法士などがチームで取り組む代表的な病態だということも覚えておこう。

まとめ

褥瘡は骨突出部への持続的な圧迫やずれにより組織が虚血・壊死に陥った状態で、低栄養や知覚・運動障害、湿潤などの内的・外的要因が重なって生じます。対応の柱は観察・除圧・栄養管理・局所治療であり、観察は少なくとも毎日、体位変換は原則2時間以内(高機能マットレス使用時は4時間以内)、栄養は日々継続して管理します。局所治療は生理食塩水や微温湯による洗浄、感染の温床となり治癒を妨げる壊死組織のデブリドマン、適度な湿潤環境の維持という流れで行い、ホルムアルデヒドのような組織障害性の強い薬剤は使用しません。ケアの「頻度」と「創を傷つけない処置」という視点を押さえることは、病棟や在宅で褥瘡を防ぎ治すための実践的な基礎になります。

解答・解説

正解はdです

褥瘡(じょくそう)とは、身体の一部に持続的な圧迫が加わることで皮膚や皮下組織の血流が低下し、組織が虚血・壊死に陥った状態である。仙骨部、大転子部、踵部、坐骨部など骨の突出した部位にできやすい。発生には「圧迫・ずれ(剪断力)」という外的要因と、「低栄養、るい痩、関節拘縮、知覚・運動障害、湿潤(尿・便失禁、発汗)」などの内的要因が関わる。 対応は大きく「予防(除圧・スキンケア・栄養)」と「治療(局所治療と全身管理)」に分けて考える。予防と全身管理では、圧迫を取り除く体位変換と体圧分散寝具の使用、皮膚の清潔と乾燥の保持、栄養状態の改善が柱となり、いずれも継続的・頻回に行う必要がある。局所治療では、創を十分な量の生理食塩水や微温湯で洗浄し、治癒を妨げる壊死組織や感染源を除去(デブリドマン)したうえで、適度な湿潤環境を保って肉芽形成・上皮化を促す。 選択肢のうち、観察・栄養管理・体位変換は行うこと自体は正しいが、示された間隔が長すぎて不適切である。洗浄に組織障害性の強い薬剤を用いるのも誤りである。治癒の妨げとなる壊死組織を除去するデブリドマンが正しい対応である。

選択肢考察

  1. ×a.  1週ごとの観察

    誤り。褥瘡は短期間で悪化しうるため、皮膚や創部の状態(大きさ、深さ、滲出液、感染徴候、壊死組織、肉芽の状態など)は少なくとも毎日、体位変換やおむつ交換などのケアの際に観察する。発赤の段階(消えない発赤=d1)で気づけば、早期の除圧で進行を防げる。1週ごとでは悪化や感染を見逃すおそれがある。

  2. ×b.  1か月ごとの栄養管理

    誤り。低栄養(低アルブミン血症、体重減少など)は褥瘡の発生と治癒遅延の重要な危険因子であり、栄養管理は日々継続して行うものである。摂取量の把握は毎日、体重や血液検査による栄養評価も定期的・より短い間隔で行い、エネルギーや蛋白質、亜鉛などの微量元素を十分に補う。1か月ごとでは管理として不十分である。

  3. ×c.  8時間ごとの体位変換

    誤り。体位変換は原則として2時間以内の間隔で行う。組織の虚血は数時間の圧迫で不可逆的な障害に至りうるため、8時間では間隔が長すぎる。なお、体圧分散効果の高いマットレス(粘弾性フォームや圧切替型エアマットレスなど)を使用している場合は4時間以内の間隔でもよいとされる。

  4. ○d.  壊死組織のデブリドマン

    正しい。壊死組織は細菌の温床となって感染を引き起こし、肉芽形成や上皮化を妨げるため、除去(デブリドマン)する。方法には、メスや剪刀で切除する外科的デブリドマン、蛋白分解酵素製剤などを用いる化学的デブリドマン、ドレッシング材で湿潤環境を保ち自己融解を促す方法などがある。特に感染を伴う場合や壊死組織が厚い場合は、外科的デブリドマンが優先される。

  5. ×e.  ホルムアルデヒドによる洗浄

    誤り(禁忌)。ホルムアルデヒドは強い蛋白凝固作用と組織障害性をもつ消毒・固定用の薬剤であり、生体の創に用いてはならない。正常な細胞まで傷害して治癒を遅らせる。褥瘡の洗浄には十分な量の生理食塩水または微温湯(水道水)を用い、創面の汚れや細菌量を物理的に減らす。

褥瘡の好発部位

仰臥位: 仙骨部(最多)、踵部、後頭部、肩甲部。側臥位: 大転子部、腸骨部、外果。座位: 坐骨結節部。

発生要因

・外的要因: 圧迫、ずれ(剪断力)、摩擦、湿潤。 ・内的要因: 低栄養、るい痩(骨突出)、知覚・運動障害、意識障害、関節拘縮、浮腫、高齢。

予防の基本

・体位変換: 原則2時間以内ごと(高機能の体圧分散マットレス使用時は4時間以内も可)。30度側臥位などで骨突出部の圧を避ける。 ・体圧分散寝具の使用。 ・ベッドの頭側挙上は30度以下を目安とし、ずれを減らす。 ・スキンケア: 失禁・発汗による湿潤を防ぎ、皮膚を清潔・乾燥に保つ。 ・栄養管理: エネルギー・蛋白質の十分な補給。

重症度・経過評価

深達度分類としてNPUAP(現NPIAP)分類(ステージI〜IV、判定不能、深部組織損傷)や、日本褥瘡学会のDESIGN-R(深さ、滲出液、大きさ、炎症/感染、肉芽組織、壊死組織、ポケット)が用いられる。

局所治療の考え方

洗浄(生理食塩水・微温湯)→ 壊死組織除去(デブリドマン)→ 感染制御 → 適度な湿潤環境の維持(moist wound healing)による肉芽形成・上皮化の促進。ポケット形成があれば切開を検討する。

POINT

・褥瘡は毎日観察し、栄養管理も継続的に行う。 ・体位変換は原則2時間以内ごと。 ・壊死組織は感染の温床となり治癒を妨げるため、デブリドマンで除去する。 ・創の洗浄は生理食塩水や微温湯で行い、ホルムアルデヒドなど組織障害性の強い薬剤は使わない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。