「特発性」は原因不明ではない?―てんかんの分類と疫学を一気に整理する
第101回医師国家試験 C問題 第39問
国試問題にチャレンジ
特発性てんかんで正しいのはどれか。
- a.環境要因が原因として重要である。
- b.脳腫瘍が原因となることがある。
- c.有病率は10% である。
- d.幼小児期の発症が多い。
- e.女性に多い。
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
特発性てんかんは、明らかな脳の器質的病変や代謝異常がなく遺伝的素因を背景とするてんかんであり、脳腫瘍や外傷・感染などの原因があれば症候性てんかんに分類されます。てんかん全体の有病率は約0.5〜1%で、明らかな女性優位はなく(小児欠神てんかんは女児に多い)、発症は乳幼児期から小児期に最も多くなります。特発性てんかんの代表病型である小児欠神てんかん、中心・側頭部に棘波をもつ小児てんかん、若年ミオクロニーてんかんは、いずれも小児〜思春期に年齢依存性に発症します。一方、高齢期の発症の再上昇は脳血管障害などによる症候性が中心で、新規発症の成人では画像検査による原因検索が欠かせません。用語の定義と疫学の数字を正しく押さえることは、発作患者を前にしたときに原因を見極める出発点になります。
解答・解説
正解はdです
てんかんとは、大脳神経細胞の過剰で同期した放電によって起こる発作(てんかん発作)を反復して生じる慢性の脳疾患である。伝統的な分類では、原因によって大きく二つに分けられてきた。 ・特発性てんかん: 脳に明らかな器質的病変や代謝異常が見つからず、遺伝的素因が背景にあると考えられるもの。神経学的所見や知能は正常であることが多く、決まった年齢で発症し、治療反応性や予後が比較的良好な病型が多い。 ・症候性てんかん(続発性てんかん): 脳腫瘍、脳血管障害、頭部外傷、脳炎・髄膜炎、周産期脳障害、脳形成異常など、原因となる脳病変がはっきりしているもの。 本問は「特発性」という言葉の意味(原因となる病変がなく、遺伝的素因が中心)と、てんかんの基本的な疫学(有病率、発症年齢、性差)を問うている。脳腫瘍や環境要因が原因であれば定義上は症候性てんかんに分類されることを押さえれば、a・bは除外できる。有病率は人口の約1%弱であり10%は明らかに過大である。発症年齢は乳幼児期から小児期に最も多く、特発性てんかんの多くの病型(小児欠神てんかん、中心・側頭部に棘波をもつ小児てんかんなど)は小児期に発症する。したがって d が正しい。
選択肢考察
- ×a. 環境要因が原因として重要である。
誤り。特発性てんかんで重視されるのは遺伝的素因である。家族内発症がみられたり、イオンチャネルなどの遺伝子異常が同定される病型もある。一方、外傷・感染・低酸素など後天的・環境的な原因による脳障害がきっかけであれば、それは症候性(続発性)てんかんに分類される。
- ×b. 脳腫瘍が原因となることがある。
誤り。脳腫瘍は症候性てんかんの代表的な原因であり、特に成人・高齢者で新たに発症したてんかんでは脳腫瘍や脳血管障害を画像検査で必ず検索する。原因となる器質的病変が見つかった時点で、そのてんかんは特発性ではなく症候性と呼ばれる。
- ×c. 有病率は10% である。
誤り。てんかん全体の有病率は人口の0.5〜1%程度(1,000人あたり5〜10人前後)であり、日本の患者数はおよそ100万人規模と推計されている。特発性てんかんはその一部であるから、10%という値は桁違いに大きい。
- ○d. 幼小児期の発症が多い。
正しい。てんかんの発症率は乳幼児期から小児期に最も高く、思春期にも比較的多い。特発性てんかんの主な病型も、小児欠神てんかん(学童期)、中心・側頭部に棘波をもつ小児てんかん(ローランドてんかん、学童期)、若年ミオクロニーてんかん(思春期)など、特定の小児〜思春期年齢で発症する年齢依存性のものが大半を占める。なお、てんかんの発症率は高齢期に再び上昇するが、これは脳血管障害や認知症などによる症候性てんかんが中心である。
- ×e. 女性に多い。
誤り。てんかん全体としては明らかな性差はないか、むしろ男性にやや多いとされる。特発性てんかんの一部の病型、たとえば小児欠神てんかんは女児に多いが、特発性てんかん全体が女性に多いわけではない。
てんかんの原因による分類
・特発性てんかん: 器質的病変なし、遺伝的素因が中心、年齢依存性に発症、神経学的所見・知能は正常のことが多く、予後比較的良好。 ・症候性てんかん: 脳腫瘍、脳血管障害、頭部外傷、中枢神経感染症、周産期脳障害、皮質形成異常、海馬硬化など明らかな原因がある。 ・潜因性てんかん: 症候性が疑われるが原因を特定できないもの。
用語の変遷
2017年の国際抗てんかん連盟(ILAE)分類では、病因を「構造的」「素因性(遺伝性)」「感染性」「代謝性」「免疫性」「病因不明」の6つに整理し、「特発性」は主に「素因性(遺伝性)」に、「症候性」は構造的・感染性などに置き換えられつつある。ただし「特発性全般てんかん(小児欠神てんかん、若年欠神てんかん、若年ミオクロニーてんかん、全般強直間代発作のみを示すてんかん)」という用語は現在も用いられている。
代表的な特発性てんかんと好発年齢
・小児欠神てんかん: 4〜10歳頃、女児に多い、脳波で3Hz棘徐波複合、過呼吸で誘発。 ・中心・側頭部に棘波をもつ小児てんかん: 3〜13歳頃、睡眠中の顔面・口部の焦点発作、思春期までに自然寛解することが多い。 ・若年ミオクロニーてんかん: 思春期、起床後のミオクロニー発作、断眠で誘発、服薬継続が必要なことが多い。
疫学のまとめ
・有病率: 約0.5〜1%。 ・発症年齢: 小児期に多く、高齢期にも第二のピーク(高齢者では症候性が主体)。
POINT
・特発性てんかん=明らかな脳病変がなく、遺伝的素因が背景。脳腫瘍・外傷・感染など原因があれば症候性てんかん。 ・てんかんの有病率は約0.5〜1%。 ・発症は小児期に多い(高齢期にも再上昇するが症候性が中心)。 ・てんかん全体に明らかな女性優位はない(小児欠神てんかんは女児に多い)。
