StudyMed医師国家試験

駅で倒れている人を見つけたら―最初の一手は「肩をたたいて呼びかける」

第101回医師国家試験 C問題 第35問

国試問題にチャレンジ

第101回 C問題 第35問

駅の構内で中年男性が倒れているのを発見した。 まず行うのはどれか。

  1. a.脈の触知
  2. b.呼吸の確認
  3. c.気道の確保
  4. d.意識状態の確認
  5. e.対光反射の確認

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、病院の外で倒れている人に出会ったときの一次救命処置、いわゆるBLSの最初の手順を問う問題だ。選択肢はどれもBLSや診察で耳にする行為ばかりだけど、大事なのは「どの順番でやるか」。最初の一手が、その後の行動をどう分けるのかに注目してほしい。
医学生医学生
倒れているなら心停止かもしれないので、まず呼吸を確認したくなります。OSCEの救急ステーションでも呼吸を見た記憶があって。
ドクタードクター
呼吸の確認は確かに重要なステップだね。でも、その前にやることがある。実は選択肢にはないけれど、本当の最初は周囲の安全確認なんだ。駅ならホームの端や線路の近く、人の往来など、救助者自身が危険にさらされないかを確かめる。そのうえで選択肢の中から最初に行うものを選ぶとしたら、何だと思う?
医学生医学生
安全を確かめたら……肩をたたいて「大丈夫ですか」と声をかける、意識状態の確認でしょうか。
ドクタードクター
正解。肩を軽くたたきながら大声で呼びかけて、目を開ける、返事をする、目的のある動きをするといった反応があるかを見る。これが意識状態、つまり反応の確認だ。
医学生医学生
反応を先に見るのは、どうしてそんなに大事なんですか。
ドクタードクター
反応の有無が、その後の行動すべての分岐点になるからだよ。反応があれば心停止ではないから、体位を工夫したり様子を見たり、必要に応じて通報したりする。反応がなければ心停止の可能性を考えて、すぐに大声で周囲に助けを求め、119番通報とAEDの手配を頼む。ここで人を集めておかないと、一人で胸骨圧迫をしながら通報もAEDも探す羽目になる。
医学生医学生
なるほど、意識の確認は「助けを呼ぶかどうか」を決めるスイッチなんですね。では呼吸の確認はその後ですか。
ドクタードクター
そう。応援要請と通報・AED手配を済ませてから、胸と腹部の動きを見て「普段どおりの呼吸」があるかを10秒以内で判断する。呼吸がない、あるいはしゃくりあげるような途切れ途切れの死戦期呼吸なら心停止とみなして、ただちに胸骨圧迫を始める。
医学生医学生
死戦期呼吸は、呼吸しているように見えて騙されそうです。
ドクタードクター
まさにそこが落とし穴で、「息をしているから大丈夫」と誤認されやすい。判断に迷ったら心停止として動くのが原則だ。胸骨圧迫による害は小さく、開始が遅れる害のほうがずっと大きいからね。
医学生医学生
気道の確保はどうでしょう。昔は「ABC」と習ったと上の先生から聞きました。
ドクタードクター
よく知っているね。かつては気道、呼吸、循環のA→B→Cの順が基本だったけれど、2010年以降のガイドラインでは胸骨圧迫を最優先するC→A→Bに改められた。頭部後屈あご先挙上法などの気道確保は、胸骨圧迫を始めた後、人工呼吸をするときに行うもので、反応の確認より先にやることはないんだ。
医学生医学生
脈の触知は、医療者なら真っ先に確認してもよさそうに思えます。
ドクタードクター
ところが頸動脈の触知は、医療従事者でも短時間で正確に判断するのが難しい。そこに時間をかけると胸骨圧迫が遅れてしまう。だから市民救助者は脈を確認しないし、医療者でも反応確認と応援要請の後に、呼吸確認と同時に10秒以内で行う程度にとどめ、はっきりしなければ圧迫を始める。
医学生医学生
対光反射は神経診察の講義で習いましたが、BLSには入っていないですよね。
ドクタードクター
その通り。対光反射はペンライトで瞳孔の縮瞳を見る脳幹機能の評価で、意識障害の原因検索や脳ヘルニアの評価に使う二次的な診察だ。心停止の判断には使わないし、駅で倒れている人に最初にやることではない。
医学生医学生
整理すると、安全確認、反応の確認、応援要請と通報・AED手配、呼吸の確認、胸骨圧迫、という流れですね。
ドクタードクター
完璧だ。最後に胸骨圧迫の質も押さえておこう。部位は胸骨の下半分、深さは約5cmで6cmを超えない、テンポは1分間に100〜120回、毎回胸を元の高さまで戻し、中断は10秒未満に抑える。人工呼吸の訓練を受けていれば30対2で組み合わせ、できなければ圧迫だけでもいい。AEDが届いたらすぐ電源を入れて音声指示に従い、解析中とショック時は傷病者に触れず、ショック後はすぐ圧迫を再開する。また119番通報すれば、通信指令員が電話で圧迫の方法を口頭指導してくれることも知っておくと、市民にも説明しやすいよ。
医学生医学生
医学生だと、実習中に院外で遭遇することもありえますよね。手順が体に染みついているかどうかが大事だと感じました。
ドクタードクター
その意識が大切だね。BLSは知識より「迷わず動ける」ことに価値がある。最初に肩をたたいて呼びかける、この一手から全てが始まると覚えておこう。

まとめ

院外で倒れている人を見つけたら、周囲の安全を確認した後、まず肩をたたいて呼びかけ、反応(意識状態)を確認します。反応がなければ大声で応援を求めて119番通報とAEDの手配を依頼し、10秒以内に普段どおりの呼吸の有無を確認して、呼吸がない、または死戦期呼吸なら直ちに胸骨圧迫を開始します。現行のBLSは胸骨圧迫を最優先するC→A→Bの順で、気道確保は人工呼吸の際に行い、市民救助者は脈拍確認を行わず、対光反射はBLSに含まれません。判断に迷う場合は心停止とみなして行動し、胸骨圧迫は胸骨の下半分を約5cmの深さ、100〜120回/分で中断を最小限にすることが重要です。反応確認を起点とする一連の手順を体で覚えておくことは、医療者として院内外どこでも命をつなぐための基本になります。

解答・解説

正解はdです

【テーマ】院外で倒れている人を見つけたときの一次救命処置(BLS: basic life support)の最初の手順が問われている。

BLSの流れ(JRC蘇生ガイドラインに基づく市民・医療者共通の基本)

1. 周囲の安全確認: 駅構内であれば、ホーム端や線路付近、人の往来など救助者自身と傷病者に危険がないかを確かめる。 2. 反応(意識)の確認: 肩を軽くたたきながら大声で呼びかけ、目を開ける・返事をする・目的のある動作をするなどの反応があるかをみる。 3. 反応がなければ、大声で周囲に助けを求め、119番通報とAED(自動体外式除細動器)の手配を依頼する。 4. 呼吸の確認: 胸と腹部の動きを見て、「普段どおりの呼吸」があるかを10秒以内で判断する。呼吸がない、または死戦期呼吸(しゃくりあげるような途切れ途切れの呼吸)であれば心停止と判断する。 5. ただちに胸骨圧迫を開始し、準備ができれば人工呼吸(30:2)を組み合わせ、AEDが到着したら電源を入れて指示に従う。

考え方

倒れている人を見たとき、最初に知るべきことは「反応があるかどうか」である。反応があれば心停止ではなく、体位の工夫や経過観察、必要に応じた通報へと進む。反応がなければ心停止の可能性を念頭に、応援要請・通報・AED手配を急ぐ。つまり意識状態の確認が、その後の行動すべてを分ける分岐点になっている。選択肢の中で周囲の安全確認に続き最初に行うべきものは意識状態の確認である。

選択肢考察

  1. ×a.  脈の触知

    頸動脈などの脈拍触知は、医療従事者であっても短時間で正確に判断するのが難しく、確認に時間をかけると胸骨圧迫の開始が遅れる。現在のガイドラインでは、市民救助者は脈拍を確認しない。医療従事者が行う場合も、反応の確認と応援要請の後に呼吸の確認と同時に10秒以内で行うにとどめ、はっきりしなければ胸骨圧迫を開始する。最初に行う手順ではない。

  2. ×b.  呼吸の確認

    呼吸の確認は心停止を判断するうえで重要だが、反応がないことを確認し、助けを呼んで通報・AEDの手配を依頼した後に行う。胸と腹部の動きを見て、普段どおりの呼吸がなければ(死戦期呼吸を含む)心停止と判断して胸骨圧迫に移る。最初の手順ではない。

  3. ×c.  気道の確保

    かつては「A(airway: 気道確保)→B(breathing: 呼吸)→C(circulation: 循環)」の順が基本とされたが、2010年以降のガイドラインでは胸骨圧迫を最優先する「C→A→B」の順に改められた。気道確保(頭部後屈あご先挙上法など)は胸骨圧迫を開始した後、人工呼吸を行う際に実施するものであり、反応の確認より先に行うことはない。

  4. ○d.  意識状態の確認

    周囲の安全を確かめた後、BLSで最初に行うのが反応(意識状態)の確認である。肩を軽くたたきながら呼びかけ、反応の有無を確かめる。反応がなければ心停止の可能性があるため、ただちに周囲に助けを求め、119番通報とAEDの手配を依頼する。反応の有無がその後の対応を決めるため、まず行うべき手順である。

  5. ×e.  対光反射の確認

    対光反射は瞳孔に光を当てて縮瞳するかをみる脳幹機能の評価であり、ペンライトが必要で、意識障害の原因検索や脳ヘルニアの評価などに用いる二次的な神経学的診察である。BLSの手順には含まれず、心停止の判断にも使わないため、最初に行う処置ではない。

JRC蘇生ガイドラインにおける市民用BLSアルゴリズムの要点

・安全確認 → 反応の確認 → 反応なし(または判断に迷う)なら大声で応援要請・119番通報・AED手配 → 呼吸の確認(10秒以内) → 普段どおりの呼吸がない(または判断に迷う)なら胸骨圧迫開始。 ・判断に迷う場合は心停止とみなして行動することが推奨される(胸骨圧迫による害は小さく、遅れによる害が大きいため)。 ・119番通報時には通信指令員が口頭で胸骨圧迫の方法などを指導する(口頭指導)。

質の高い胸骨圧迫

・部位: 胸骨の下半分 ・深さ: 約5cm(6cmを超えない) ・テンポ: 100〜120回/分 ・毎回胸郭を元の位置まで戻し、中断は最小限(10秒未満)にする。 ・人工呼吸の訓練を受けていて意思がある場合は、30:2で人工呼吸を組み合わせる。できない場合は胸骨圧迫のみでよい。

AED

到着したらただちに電源を入れ、音声指示に従って電極パッドを貼る。心電図解析と電気ショックの間は傷病者に触れず、ショック後はすぐに胸骨圧迫を再開する。

死戦期呼吸

心停止直後にみられる、しゃくりあげるような不規則な呼吸。呼吸があると誤認しやすいが、心停止のサインとして扱う。

POINT

・倒れている人に対しては、周囲の安全確認の後、まず反応(意識)を確認する。 ・反応がなければ応援要請、119番通報、AED手配 → 呼吸確認(10秒以内) → 胸骨圧迫。 ・現行のBLSは「C→A→B」の順で、胸骨圧迫を最優先する。気道確保が最初ではない。 ・市民救助者は脈拍確認を行わない。対光反射はBLSに含まれない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。