母と子をつなぎ、隔てる臓器―胎盤と羊水の「由来」と「数字」を整理する
第101回医師国家試験 B問題 第49問
国試問題にチャレンジ
正しいのはどれか。2つ選べ。
- a.絨毛間腔は母体血が循環する。
- b.脱落膜は胎児由来の組織である。
- c.羊水量は胎児腎機能と関連する。
- d.胎盤の構造は妊娠24週で完成する。
- e.胎盤重量は妊娠末期で平均800gである。
対話形式の解説
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ドクターまとめ
胎盤は、胎児由来の羊膜・繁生絨毛膜と、母体由来の基底脱落膜が組み合わさってできた器官であり、卵膜のうち脱落膜のみが母体由来です。絨毛膜板と基底脱落膜に挟まれた絨毛間腔にはらせん動脈から母体血が流入し、絨毛内を流れる胎児血とは直接混ざらずに物質交換が行われます。妊娠中期以降の羊水の主な供給源は胎児尿であるため羊水量は胎児腎機能を反映し、腎無形成や尿路閉塞では羊水過少、消化管閉鎖や無脳症では羊水過多となります。胎盤の基本構造は妊娠15〜16週ごろに完成し、正期産時には重量約500g、直径約20cm、厚さ約2cmとなります。由来・血流・羊水動態・基本的な数値を整理しておくことは、羊水量異常や胎盤異常から胎児の状態を推測する臨床判断の基礎になります。
解答・解説
正解はa, cです
問われていること
胎盤と胎児付属物(卵膜、胎盤、臍帯、羊水)の構造・由来・生理について、正しい記述を2つ選ぶ問題である。
考え方
胎盤は、胎児由来の部分と母体由来の部分が組み合わさってできた器官である。 ・胎児側: 羊膜と、絨毛が豊富に発達した部分の絨毛膜(繁生絨毛膜)。絨毛膜板から樹枝状の絨毛が伸びる。 ・母体側: 子宮内膜が妊娠によって変化した脱落膜のうち、胎盤の付着部にあたる基底脱落膜。 絨毛膜板と基底脱落膜の間の空間が絨毛間腔である。子宮のらせん動脈から母体血が絨毛間腔に噴き出し、絨毛の周りを灌流したのち子宮静脈へ戻る。一方、胎児血は臍帯動脈から絨毛内の毛細血管を流れ、臍帯静脈で胎児へ戻る。母体血と胎児血は直接混ざらず、絨毛の上皮(合胞体栄養膜細胞など)と血管内皮を隔てて、ガス・栄養・老廃物の交換が行われる。 羊水は、妊娠初期には主に羊膜や胎児皮膚からの滲出液に由来するが、妊娠中期以降は胎児尿が主な供給源となり、胎児の嚥下と肺からの分泌・吸収などとのバランスで量が保たれる。そのため羊水量は胎児の腎・尿路の機能を反映する。 胎盤の基本構造は妊娠15〜16週ごろに完成し、その後は妊娠の進行とともに大きくなる。正期産時の胎盤は重量約500g、直径約20cm、厚さ約2cmである。 これらから、絨毛間腔を母体血が循環する記述と、羊水量が胎児腎機能と関連する記述が正しい。
選択肢考察
- ○a. 絨毛間腔は母体血が循環する。
絨毛間腔は、胎児側の絨毛膜板と母体側の基底脱落膜に挟まれた空間で、ここに絨毛膜板から伸びた絨毛が樹枝状に広がっている。子宮のらせん動脈から流入した母体血が絨毛間腔を満たして絨毛の表面を洗うように流れ、子宮静脈へと還流する。絨毛間腔に浮かぶ遊離絨毛の内部には胎児血が流れており、母体血と胎児血は絨毛の組織を隔てて物質交換を行う。したがって絨毛間腔を循環するのは母体血であり、正しい。
- ×b. 脱落膜は胎児由来の組織である。
脱落膜は、子宮内膜が妊娠に伴いプロゲステロンの作用で脱落膜化(間質細胞の肥大・グリコーゲン蓄積など)したもので、母体由来の組織である。卵膜は胎児側から羊膜・絨毛膜・脱落膜の3層からなり、羊膜と絨毛膜は胎児(受精卵)由来、脱落膜のみが母体由来である。脱落膜は部位により、胎盤付着部の基底脱落膜、胎児を包む側の被包脱落膜、それ以外の子宮内腔を覆う壁側脱落膜に区別される。
- ○c. 羊水量は胎児腎機能と関連する。
妊娠中期以降、羊水の主な供給源は胎児尿であり、主な排出経路は胎児の嚥下である(ほかに肺胞液の分泌なども関与する)。このため羊水量は胎児の腎機能や尿路の状態を反映する。腎無形成(Potter症候群)や両側多嚢胞性異形成腎、尿路閉塞、あるいは胎盤機能不全による胎児の腎血流低下では尿量が減り羊水過少となる。逆に食道閉鎖・十二指腸閉鎖など嚥下・通過の障害や無脳症では羊水過多となる。羊水量は胎児の状態を推し量る重要な指標であり、この記述は正しい。
- ×d. 胎盤の構造は妊娠24週で完成する。
胎盤の基本的な構造は妊娠15〜16週ごろに完成する。胎盤の完成に伴い、それまで妊娠黄体が担っていたプロゲステロンなどのホルモン産生の主体が胎盤へ移行する(luteo-placental shift、妊娠7〜10週ごろから進行)。妊娠24週は完成時期として遅すぎる。完成後も胎盤は妊娠の進行に伴って増大を続ける。
- ×e. 胎盤重量は妊娠末期で平均800gである。
妊娠末期(正期産時)の胎盤は、重量約500g(おおよそ新生児体重の1/6)、直径約20cm、厚さ約2cmの円盤状である。800gは平均値としては重すぎる。胎盤の過大は母体糖尿病、胎児水腫、母児間の血液型不適合などで、過小は胎児発育不全や妊娠高血圧症候群などでみられることがある。
胎児付属物
卵膜、胎盤、臍帯、羊水の4つからなる。 ・卵膜: 胎児側から羊膜(胎児由来)、絨毛膜(胎児由来)、脱落膜(母体由来)。 ・胎盤: 胎児由来の羊膜・繁生絨毛膜と、母体由来の基底脱落膜からなる。 ・臍帯: 臍帯動脈2本(胎児から胎盤へ静脈血を運ぶ)と臍帯静脈1本(胎盤から胎児へ動脈血を運ぶ)を含み、Wharton膠質で包まれる。正期産で長さ約50cm。 ・羊水: 胎児を外力から保護し、胎児の運動と肺の発育を助け、感染防御にも関わる。量は妊娠30週代前半ごろに最大(約800mL前後)となり、その後やや減少する。
絨毛膜の分化
絨毛膜のうち基底脱落膜に面した部分は絨毛が発達して繁生絨毛膜となり胎盤を形成する。被包脱落膜に面した部分は絨毛が退縮して平滑絨毛膜となり、卵膜の一部となる。
羊水量の異常
・羊水過多: 羊水量が800mL以上、または羊水指数(AFI)が24〜25cm以上などで判断する。消化管閉鎖、無脳症、母体糖尿病、双胎間輸血症候群の受血児などが原因となる。 ・羊水過少: 羊水量が100mL以下、またはAFIが5cm以下などで判断する。腎無形成・尿路閉塞、胎盤機能不全、破水などが原因となる。羊水過少が持続すると肺低形成や四肢の変形(Potterシークエンス)を来しうる。
POINT
・絨毛間腔を満たすのは母体血であり、絨毛内には胎児血が流れる。両者は直接混じらない。 ・卵膜のうち羊膜・絨毛膜は胎児由来、脱落膜は母体由来である。 ・妊娠中期以降の羊水の主な供給源は胎児尿であり、羊水量は胎児腎機能を反映する(腎無形成で羊水過少、消化管閉鎖で羊水過多)。 ・胎盤は妊娠15〜16週ごろに完成し、正期産時で重量約500g、直径約20cm、厚さ約2cmとなる。
