左半身を襲った炎―「9の法則」と手のひらで測る熱傷面積
第100回医師国家試験 I問題 第12問
国試問題にチャレンジ
46歳の男性。工場で作業中に引火事故で熱傷を受けて,救急車で搬入された。熱傷の受傷部位を別に示す。 受傷面積の体表面積に占める割合はどれか。

- a.8%
- b.12%
- c.18%
- d.24%
- e.30%
対話形式の解説
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ドクターまとめ
成人の熱傷面積は「9の法則」(頭頸部9%、上肢各9%、体幹前面・後面各18%、下肢各18%、陰部1%)で概算し、手など小範囲の熱傷には本人の手掌が約1%に相当する手掌法を併用します。本問では頭頸部の左半分約4〜4.5%、体幹前面の左半分9%、左上肢9%、右手の両面約2%を合計して約24%となり、前面図では図の左右と患者の左右が逆になる点に注意が必要です。小児では頭部の比率が大きいため5の法則やLund & Browderの法則を用い、面積にはⅡ度以上のみを算入します。算出した面積は初期輸液量(Parkland法)や熱傷指数、Artzの基準による重症度判定の基礎となり、顔面を含む火炎熱傷では気道熱傷の評価も欠かせません。部位を漏れなく拾い正確に面積を見積もる力は、熱傷の初期診療全体を左右する基本技術です。
解答・解説
正解はdです
所見の整理
46歳男性が工場の引火事故で受傷した。図の受傷部位は次のとおりである(前面図では図の右側が患者の左側になることに注意する)。 ・頭頸部:左半分(前面・後面とも左側) ・体幹前面:左半分(左胸部〜左腹部) ・体幹後面:左肩の上部に細い帯状の受傷があるのみで、ほぼ無傷 ・左上肢:全体(前面・後面とも) ・右上肢:手のみ(手掌側と手背側の両面) ・両下肢:受傷なし
解き方
成人の熱傷面積の概算には「9の法則」を用いる。頭頸部9%、左右の上肢各9%、体幹前面18%、体幹後面18%、左右の下肢各18%、陰部1%で合計100%となる。手のひら(指を含む)の面積は体表面積の約1%とみなせる(手掌法)ので、片手の手掌側と手背側を合わせて約2%と見積もれる。
計算
・頭頸部の左半分:9% × 1/2 ≒ 4.5%(頸部の一部が無傷なのでやや少なめで約4%) ・体幹前面の左半分:18% × 1/2 = 9% ・左上肢全体:9% ・右手(手掌+手背):約1% × 2 = 約2% ・体幹後面(肩の細い帯状部分)・下肢:ほぼ0% 合計:4〜4.5 + 9 + 9 + 2 ≒ 24〜24.5% したがって選択肢の中で最も近いのは24%である。
選択肢考察
- ×a. 8%
左上肢全体だけでも9の法則で9%となり、8%では受傷面積を大きく過小評価している。
- ×b. 12%
左上肢(9%)に右手(約2%)を加えた程度の値であり、頭頸部の左半分(約4.5%)と体幹前面の左半分(9%)が計算に含まれていない。
- ×c. 18%
体幹前面の左半分(9%)と左上肢(9%)だけを足した値に相当する。頭頸部の左半分(約4.5%)と右手(約2%)の受傷を見落としている。
- ○d. 24%
9の法則と手掌法で部位ごとに見積もると、頭頸部の左半分 約4〜4.5%、体幹前面の左半分9%、左上肢9%、右手の両面 約2%で、合計は約24%となる。体幹後面と下肢はほぼ受傷していない。選択肢のうちこの値に最も近い。
- ×e. 30%
30%とするには、さらに約6%分の受傷が必要となる。体幹後面の左半分(9%)が受傷しているとみなすなど過大評価した場合の値であり、図では後面の受傷は左肩の細い帯状部分に限られるため誤りである。
熱傷面積の算定法
・9の法則(成人):頭頸部9%、上肢各9%、体幹前面18%、体幹後面18%、下肢各18%、陰部1%。簡便でプレホスピタルや初期評価に適する。 ・5の法則(小児・乳児):小児は頭部の比率が大きいため、乳児では頭部20%、体幹前面20%、体幹後面20%、上肢各10%、下肢各10%、幼児では頭部15%、体幹前面20%、体幹後面15%、上肢各10%、下肢各15%などとする。 ・Lund & Browderの法則:年齢ごとに頭部・大腿・下腿の比率を補正した表を用いる、より正確な方法。小児の評価に特に有用。 ・手掌法:患者本人の手掌(指を含む)が体表面積の約1%に相当する。散在する小範囲の熱傷の評価に便利である。 ・面積算定では、紅斑のみのⅠ度熱傷は含めず、Ⅱ度以上を算入する。
熱傷の重症度評価の関連事項
・熱傷深度:Ⅰ度(表皮のみ、紅斑・疼痛)、浅達性Ⅱ度(真皮浅層、水疱・強い疼痛)、深達性Ⅱ度(真皮深層、水疱・知覚鈍麻)、Ⅲ度(皮膚全層、白色〜黒色・無痛)。 ・熱傷指数(burn index)=Ⅲ度熱傷面積(%)+1/2×Ⅱ度熱傷面積(%)。10〜15以上で重症とされる。 ・Artzの基準:Ⅱ度30%以上、Ⅲ度10%以上、顔面・手・足・会陰の熱傷、気道熱傷、電撃傷、化学損傷、骨折や軟部組織損傷の合併などは重症熱傷として熱傷専門施設での入院治療を要する。 ・成人でⅡ度以上が15%程度以上(小児では10%程度以上)では、熱傷ショックの予防のため初期輸液が必要になる。代表的なParkland(Baxter)法では、受傷後24時間の乳酸リンゲル液量を4mL×体重(kg)×熱傷面積(%)とし、その半量を受傷後最初の8時間で投与する。 ・本症例のように顔面を含む火炎熱傷では、気道熱傷(鼻毛の焦げ、口腔内のすす、嗄声など)の有無を必ず評価する。
POINT
・成人の熱傷面積は9の法則:頭頸部9%、上肢各9%、体幹前後各18%、下肢各18%、陰部1%。 ・手掌法:本人の手掌(指を含む)=約1%、片手の両面=約2%。 ・小児は5の法則またはLund & Browderの法則を用いる。 ・前面図では図の左右と患者の左右が逆になることに注意する。 ・本問:左頭頸部約4.5%+左体幹前面9%+左上肢9%+右手2%≒24%。
