StudyMed医師国家試験

「〇歳未満」の罠―基準年齢と照らして見抜く思春期早発症

第100回医師国家試験 G問題 第58問

国試問題にチャレンジ

第100回 G問題 第58問

性早熟症〈思春期早発症〉が疑われるのはどれか。

  1. a.9歳未満での初経
  2. b.10歳未満での乳房発育
  3. c.12歳未満での精巣の発育
  4. d.12歳未満女児での陰毛発生
  5. e.13歳未満男児での陰毛発生

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、思春期早発症を疑うべき二次性徴の年齢を問う問題だ。ポイントは、選択肢の「〇歳未満」という範囲に、正常な子どもが含まれてしまわないかを確かめること。まず、思春期早発症とはどんな状態か説明できるかな。
医学生医学生
二次性徴が普通より明らかに早く始まってしまう状態、ですよね。
ドクタードクター
そう。日本では厚生労働省研究班の診断の手引きに、徴候ごとの年齢の目安がある。女児なら乳房発育が7歳6か月未満、陰毛・腋毛が8歳未満、初経が10歳6か月未満。男児なら精巣の発育が9歳未満、陰毛が10歳未満、腋毛・ひげ・声変わりが11歳未満だ。
医学生医学生
思ったより細かいですね。小児科の講義で覚えたつもりでしたが、半年刻みの数字はうろ覚えでした。
ドクタードクター
国試ではこの数字そのものより、平均的な年齢との関係で考えると解きやすいよ。たとえば乳房発育は日本人女児で平均10歳前後に始まる。では「10歳未満での乳房発育」は早発症を疑う根拠になるかな。
医学生医学生
10歳未満なら早いような気もしますが……あ、8歳や9歳で乳房が膨らみ始めた子も含まれてしまいますね。
ドクタードクター
その通り。8〜9歳の乳房発育は正常範囲だから、「10歳未満」というだけでは早発とはいえない。この「範囲に健常児が入ってしまう」という視点で、ほかの選択肢も見てみよう。
医学生医学生
男児の精巣発育は平均10〜11歳ごろでしたっけ。それなら「12歳未満」には普通の子がたくさん入ります。
ドクタードクター
そうだね。男児の最初の二次性徴は精巣の増大で、容量4 mL以上が思春期開始の目安。早発の基準は9歳未満だから、10〜11歳の精巣発育は正常だ。陰毛はどうだろう。
医学生医学生
女児の陰毛は乳房発育の少し後、男児は精巣の増大に続いて生えるので、「12歳未満女児」も「13歳未満男児」も正常な子を含んでしまいます。
ドクタードクター
よく整理できている。女児の陰毛は平均11歳ごろで早発の基準は8歳未満、男児は平均12〜13歳ごろで基準は10歳未満だから、どちらも誤りだ。
医学生医学生
残るのは9歳未満での初経ですね。平均初経年齢は12歳くらいなので、3年以上早いことになります。
ドクタードクター
正解。初経の基準は10歳6か月未満だから、9歳未満は確実にそこに含まれる。初経は乳房発育から始まる思春期の流れの最終段階だから、これほど早く来るということは、長い期間エストロゲンにさらされていることを意味するんだ。
医学生医学生
思春期の順番は、女児なら乳房、陰毛、身長の急伸、初経でしたね。CBTの勉強で語呂合わせを作った覚えがあります。
ドクタードクター
その順序を押さえておくと、どの徴候がどの年齢なら異常かも推測しやすくなる。では次に、早発症が見つかったら何を考えるか。大きく中枢性と末梢性に分かれるんだ。
医学生医学生
中枢性はゴナドトロピン依存性で、視床下部・下垂体が早く動き出すもの、末梢性は性ステロイドが下垂体と関係なく出てしまうもの、ですよね。
ドクタードクター
そう。女児の中枢性は原因不明の特発性が多いけれど、男児では視床下部過誤腫や胚細胞腫瘍などの器質的疾患が見つかる割合が高いので、頭部MRIでしっかり調べる。末梢性では先天性副腎過形成や性腺腫瘍、McCune-Albright症候群などが原因になる。鑑別にはGnRH負荷試験でLHが思春期レベルまで反応するかを見るよ。
医学生医学生
治療しないと、どんな問題があるんですか。
ドクタードクター
性ステロイドは骨端線を早く閉じさせるから、小児期には背が高くても最終身長は低くなってしまう。手のX線で骨年齢が暦年齢より進んでいるのが手がかりだ。それに、早すぎる二次性徴や初経は心理的・社会的な負担にもなる。中枢性ではGnRHアナログを持続投与して思春期の進行を止める。
医学生医学生
「今は背が高いから大丈夫」ではなく、骨年齢まで見て判断する必要があるんですね。
ドクタードクター
その通り。成長曲線で身長の急な伸びに気づくことが、早期発見のきっかけになることも多い。小児の診察では、成長曲線と二次性徴の両方をセットで見る習慣をつけておこう。

まとめ

思春期早発症は二次性徴が標準より明らかに早く始まる状態で、日本の診断の手引きでは女児の乳房発育7歳6か月未満、陰毛8歳未満、初経10歳6か月未満、男児の精巣発育9歳未満、陰毛10歳未満などが目安です。平均初経年齢は約12歳なので、9歳未満の初経は明らかな早発であり、一方で平均年齢付近の健常児を含んでしまう年齢設定では早発とはいえません。原因は中枢性(女児は特発性が多く、男児は脳腫瘍などの器質的疾患を精査)と末梢性(先天性副腎過形成、性腺腫瘍、McCune-Albright症候群など)に分かれ、GnRH負荷試験や頭部MRIで鑑別します。未治療では骨端線が早く閉じて最終身長が低くなるため、中枢性ではGnRHアナログで思春期の進行を抑えます。正常な思春期の順序と平均年齢を押さえ、成長曲線と骨年齢をあわせて評価する姿勢は、小児の成長を見守る臨床の基本です。

解答・解説

正解はaです

問われていること

思春期早発症(性早熟症)は、二次性徴が標準より明らかに早い年齢で始まる状態である。本問では、選択肢に示された年齢と二次性徴の組み合わせを、診断基準の年齢と照らし合わせて判断する。

考え方

日本では、厚生労働省研究班の「中枢性思春期早発症の診断の手引き」に年齢の目安が定められている。二次性徴の各徴候が次の年齢より前に現れた場合、思春期早発症を疑う。 女児 ・乳房の発育: 7歳6か月未満 ・陰毛・腋毛の発生(または小陰唇の色素沈着など外陰部の成熟): 8歳未満 ・初経: 10歳6か月未満 男児 ・精巣・陰茎・陰囊の発育: 9歳未満 ・陰毛の発生: 10歳未満 ・腋毛・ひげの発生、声変わり: 11歳未満 各選択肢の年齢をこの基準と比べる。基準の年齢より前に起きていれば「早発」、基準の年齢以後なら正常範囲の可能性がある。選択肢b〜eの年齢は、いずれも基準より遅い年齢を境にしている。たとえば「10歳未満での乳房発育」には、8歳や9歳で乳房が発育した健常児も含まれる。これらの選択肢では、それだけで早発とはいえない。これに対して「9歳未満での初経」は、基準の10歳6か月未満に確実に含まれる。したがって早発症を疑うべきものである。

選択肢考察

  1. ○a.  9歳未満での初経

    日本人女児の平均初経年齢は約12歳である。初経の早発の基準は10歳6か月未満である。9歳未満の初経はこの基準に完全に含まれ、平均より3年以上早い。したがって思春期早発症を強く疑う所見であり、正しい。初経は、乳房発育に始まる思春期の進行の最終段階で起こる現象である。これがきわめて早い年齢で起きる場合、エストロゲンに長期間さらされていることを意味し、骨年齢の促進などを伴うことが多い。

  2. ×b.  10歳未満での乳房発育

    乳房の発育(乳房腫大、thelarche)は女児で最初に現れる二次性徴である。日本人では平均して10歳前後に始まる。早発と判断するのは7歳6か月未満の場合である。8〜9歳ごろの乳房発育は正常範囲に入るため、「10歳未満」というだけでは早発症を疑う根拠にならない。誤りである。

  3. ×c.  12歳未満での精巣の発育

    男児の最初の二次性徴は精巣の増大である(精巣容量4 mL以上が思春期開始の目安)。平均して10〜11歳ごろに始まる。早発と判断するのは9歳未満の場合である。10〜11歳の精巣発育は正常であるため、「12歳未満」を基準にすることはできず、誤りである。

  4. ×d.  12歳未満女児での陰毛発生

    女児の陰毛は乳房発育に少し遅れて、平均11歳ごろに生えはじめる。早発と判断するのは8歳未満の場合である。9〜11歳の陰毛発生は正常範囲なので、誤りである。

  5. ×e.  13歳未満男児での陰毛発生

    男児の陰毛は精巣の増大に続いて、平均12〜13歳ごろに生えはじめる。早発と判断するのは10歳未満の場合である。10〜12歳の陰毛発生は正常範囲なので、誤りである。

思春期早発症の分類

1. 中枢性(ゴナドトロピン依存性、真性): 視床下部-下垂体-性腺系が早い時期に活性化するもの。女児では原因がはっきりしない特発性が多い。男児では脳腫瘍などの器質的疾患が見つかる割合が高い。器質的疾患としては、視床下部過誤腫、胚細胞腫瘍、水頭症、脳炎後、頭部照射後などがある。 2. 末梢性(ゴナドトロピン非依存性、仮性): 下垂体とは関係なく性ステロイドが過剰になるもの。原因として、先天性副腎過形成(21-水酸化酵素欠損症など)、副腎腫瘍、卵巣腫瘍・精巣腫瘍、hCG産生腫瘍、McCune-Albright症候群、外因性ホルモンの摂取などがある。

検査

・骨年齢: 手のX線写真で評価する。性ステロイドの作用で暦年齢より進む。 ・LH・FSH・性ステロイド(エストラジオール、テストステロン)の測定。 ・GnRH(LHRH)負荷試験: LHが思春期レベルまで反応すれば中枢性、反応しなければ末梢性を考える。 ・中枢性の場合は頭部MRIで器質的疾患を検索する。

治療と問題点

性ステロイドは骨端線を早く閉じさせる。そのため、小児期には身長が高くても最終身長は低くなる。また、早い二次性徴や初経は心理的・社会的な負担にもなる。中枢性ではGnRHアナログ(リュープロレリンなど)の持続投与で下垂体を抑え、思春期の進行を止める。原因となる疾患がある場合は、その治療を行う。

正常な思春期の順序

女児: 乳房発育 → 陰毛 → 身長の急伸 → 初経 男児: 精巣増大 → 陰毛 → 身長の急伸・声変わり・腋毛・ひげ

POINT

・思春期早発症の目安(日本の診断の手引き)  女児: 乳房発育 7歳6か月未満、陰毛・腋毛 8歳未満、初経 10歳6か月未満  男児: 精巣発育 9歳未満、陰毛 10歳未満、腋毛・ひげ・声変わり 11歳未満 ・平均初経年齢は約12歳であり、9歳未満の初経は明らかな早発である。 ・女児は特発性が多い。男児は器質的疾患(脳腫瘍など)を精査する。 ・未治療では骨端線が早く閉じ、最終身長が低くなる。中枢性の治療はGnRHアナログである。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。