StudyMed医師国家試験

青紫色はどこで見る?―チアノーゼの視診部位を「透けやすさ」で考える

第100回医師国家試験 E問題 第14問

国試問題にチャレンジ

第100回 E問題 第14問

チアノーゼを判定する部位で最も適切なのはどれか。

  1. a.眼瞼結膜
  2. b.口唇
  3. c.舌
  4. d.手掌
  5. e.足底

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、チアノーゼを視診で判定するのに最も適した部位を問う問題だ。丸暗記ではなく、「チアノーゼの色はどこから来るのか」を考えると自然に答えが出る。まずチアノーゼとはどういう状態か、説明できるかな。
医学生医学生
皮膚や粘膜が青紫色になる状態で、酸素と結合していないヘモグロビンが増えると起こる、と生理学で習いました。
ドクタードクター
その通り。毛細血管内の還元ヘモグロビンが絶対量でおよそ5g/dL以上になると出現する。つまり見えているのは、皮膚や粘膜を通して透けて見える毛細血管の血液の色なんだ。では、観察に向いているのはどんな部位だと思う?
医学生医学生
血液の色が透けやすいところ……皮膚が薄くて、血管が多いところでしょうか。
ドクタードクター
いいね。表皮や角質層が薄い、毛細血管が豊富、メラニン色素の影響を受けにくい、そして診察で簡単に見られる。この条件を満たすのが口唇で、これが正解だ。爪床、頬粘膜などの口腔粘膜、耳朶、鼻尖もチアノーゼの代表的な観察部位だよ。
医学生医学生
眼瞼結膜も粘膜で血管が透けて見えますよね。身体診察の実習で、まぶたをめくって見る練習をしました。
ドクタードクター
そこが引っかけどころだね。眼瞼結膜は赤みの程度からヘモグロビン量を推定する、つまり貧血を見る部位なんだ。貧血では蒼白になる。チアノーゼの判定には通常使わない。ちなみに黄疸は眼瞼結膜ではなく眼球結膜、白目の部分で見る。
医学生医学生
貧血は眼瞼結膜、黄疸は眼球結膜、チアノーゼは口唇と爪床、と部位をセットで覚えるとよさそうです。
ドクタードクター
それが整理の基本だ。では手掌と足底はどうかな。
医学生医学生
手掌は貧血のときに手のしわの色を見ると教わりました。でもチアノーゼには向いていない気がします。
ドクタードクター
正しい感覚だよ。手掌や足底は角質層が厚く、下の血液の色が透けにくいから、チアノーゼの判定には適さない。手掌はむしろ手掌線で貧血を推定したり、黄疸や柑皮症で黄色くなるのを見たりする部位だ。手指でチアノーゼを見るなら爪床を観察し、あわせてばち指の有無も確認するといい。足でも同様に足趾の爪床を見る。
医学生医学生
舌は迷いました。血流も豊富ですし、チアノーゼで舌が紫色になると聞いたことがあります。
ドクタードクター
迷うのは自然だね。舌は中心性チアノーゼで青紫色になるから、中心性と末梢性の鑑別の参考にはなる。ただ、表面が舌乳頭や舌苔に覆われていて色調の判断が影響を受けやすく、日常的な判定部位としては口唇が一般的だ。だから「最も適切」とは言いにくい。
医学生医学生
中心性と末梢性の違いを、もう一度整理していただけますか。
ドクタードクター
中心性チアノーゼは動脈血の酸素飽和度が下がるもので、肺炎やCOPDなどの呼吸器疾患、ファロー四徴症のような右左シャントを伴う先天性心疾患、異常ヘモグロビン血症が原因だ。口唇や舌、口腔粘膜にも出て、温めても消えない。末梢性は酸素飽和度は正常だけれど、寒冷や心拍出量低下、レイノー現象などで末梢の血流が遅くなり、組織での酸素摂取が増えて起こる。指先や耳朶に出て、温めると改善し、舌や口腔粘膜には出にくい。
医学生医学生
還元ヘモグロビンの「絶対量」で決まるということは、貧血の人はチアノーゼが出にくいということですか。
ドクタードクター
その通り。ヘモグロビン総量が少ないと、低酸素がかなり進んでも5g/dLに達しにくい。逆に多血症では軽い酸素飽和度の低下でも出やすい。また一酸化炭素中毒では、カルボキシヘモグロビンが鮮紅色なので、低酸素でもチアノーゼを呈さない点に注意しよう。
医学生医学生
見た目でチアノーゼがないからといって、安心はできないんですね。
ドクタードクター
そう。照明や皮膚の色素沈着でも見え方は変わるから、視診には限界がある。自然光の下で観察し、パルスオキシメータでのSpO2測定や動脈血ガス分析を必ず併用して客観的に評価することが大切だよ。

まとめ

チアノーゼは毛細血管内の還元ヘモグロビンが約5g/dL以上に増えて皮膚・粘膜が青紫色に見える状態であり、表皮が薄く毛細血管が豊富で血液の色が透けやすい口唇が判定部位として最も適しています。爪床、口腔粘膜、耳朶も代表的な観察部位で、眼瞼結膜は貧血、眼球結膜は黄疸の評価部位、手掌・足底は角質が厚くチアノーゼの判定には不向きです。舌は中心性チアノーゼで青紫色となり、四肢末端中心で温めると改善する末梢性チアノーゼとの鑑別に役立ちます。チアノーゼは還元ヘモグロビンの絶対量で決まるため貧血では出にくく多血症では出やすく、一酸化炭素中毒では低酸素でも現れません。視診の限界を理解し、SpO2や血液ガスと組み合わせて評価する姿勢は、呼吸・循環の急変を見逃さない臨床力の基盤になります。

解答・解説

正解はbです

チアノーゼ(cyanosis)を視診で判定するのに適した部位を問う一般問題である。

チアノーゼとは

皮膚や粘膜が青紫色〜暗紫色に見える状態で、毛細血管内の還元ヘモグロビン(酸素と結合していないヘモグロビン、脱酸素化ヘモグロビン)が絶対量で約5g/dL以上に増えたときに出現する。メトヘモグロビンなどの異常ヘモグロビンの増加でも生じる。

判定部位の考え方

チアノーゼの色調は、皮膚・粘膜を通して透けて見える毛細血管の血液の色による。したがって、次の条件を満たす部位ほど観察に適する。 ・表皮(角質層)が薄く、血液の色が透けて見えやすい ・毛細血管が豊富である ・メラニン色素の影響を受けにくい ・日常診察で容易に観察できる 口唇はこれらを満たし、爪床(爪の下)、頬粘膜などの口腔粘膜、耳朶、鼻尖などとともにチアノーゼの観察部位として代表的である。一方、眼瞼結膜は貧血の評価に、手掌は貧血や黄疸の評価に用いられる部位であり、手掌・足底は角質が厚いため血液の色が透けにくくチアノーゼの判定には適さない。

選択肢考察

  1. ×a.  眼瞼結膜

    眼瞼結膜(まぶたの裏側の粘膜)は、赤みの程度でヘモグロビン量を推定する貧血の視診部位である。貧血では蒼白となる。チアノーゼの判定には通常用いられない。なお黄疸は眼瞼結膜ではなく眼球結膜(白目の部分)で観察する。

  2. ○b.  口唇

    口唇は表皮が薄く角質層も乏しいため、下にある豊富な毛細血管の血液の色が透けて見えやすい。そのため還元ヘモグロビンが増えると青紫色の変化が早期から明瞭に現れ、しかも診察時に容易に観察できる。爪床、口腔粘膜、耳朶とともにチアノーゼを判定する代表的部位であり、選択肢の中で最も適切である。

  3. ×c.  舌

    舌は血流が豊富で、中心性チアノーゼ(動脈血の酸素飽和度低下による)では青紫色を呈する。末梢性チアノーゼでは舌や口腔粘膜には通常出現しないため、中心性と末梢性の鑑別の参考にはなる。しかし、舌の表面は舌乳頭や舌苔に覆われ色調の判断が影響を受けやすく、日常的な判定部位としては口唇が一般的であり、「最も適切」とはいえない。

  4. ×d.  手掌

    手掌は角質層が厚く、血液の色が皮膚表面から透けて見えにくいため、チアノーゼの判定には適さない。手掌は手掌線(しわ)の色調から貧血を推定したり、柑皮症や黄疸で黄色くなるのを観察したりする部位である。手指でチアノーゼを確認する場合は、手掌ではなく爪床(ばち指の有無とあわせて)を観察する。

  5. ×e.  足底

    足底も手掌と同様に角質層が非常に厚く、チアノーゼの判定には適さない。下肢で末梢性チアノーゼを確認する場合は、足趾の爪床や足趾の皮膚の色調を観察する。

チアノーゼの出現機序

・毛細血管内の還元ヘモグロビンが約5g/dL以上で出現する(絶対量で規定される)。 ・メトヘモグロビンは約1.5g/dL以上、スルフヘモグロビンは約0.5g/dL以上で出現する。 ・貧血ではヘモグロビン総量が少ないため、低酸素血症が高度でも還元ヘモグロビンが5g/dLに達しにくく、チアノーゼが出にくい。 ・多血症ではヘモグロビン総量が多いため、軽度の酸素飽和度低下でもチアノーゼが出やすい。 ・一酸化炭素中毒ではカルボキシヘモグロビンが鮮紅色のため、低酸素でもチアノーゼを呈さない。

中心性チアノーゼと末梢性チアノーゼ

・中心性:動脈血酸素飽和度(SaO2)の低下による。原因は呼吸器疾患(肺炎、COPD、間質性肺炎など)、右左シャントを伴う先天性心疾患(ファロー四徴症、アイゼンメンジャー症候群など)、異常ヘモグロビン血症。口唇・舌・口腔粘膜・爪床など全身に出現し、温めても消えない。 ・末梢性:SaO2は正常だが、末梢の血流が遅くなり組織での酸素摂取が増えることによる。原因は寒冷曝露、心拍出量低下(心不全、ショック)、動脈閉塞、静脈うっ滞、レイノー現象など。四肢末端(指先、爪床)、耳朶、鼻尖、口唇に出現し、温めたりマッサージしたりすると改善する。舌や口腔粘膜には出にくい。

視診部位の整理

・チアノーゼ:口唇、爪床、口腔粘膜、耳朶 ・貧血:眼瞼結膜、爪床、手掌線 ・黄疸:眼球結膜(白目)、皮膚

チアノーゼ評価の注意点

照明(自然光が望ましい)や皮膚の色素沈着によって見え方が変わり、視診での検出には限界がある。客観的評価にはパルスオキシメータによるSpO2測定や動脈血ガス分析を併用する。

POINT

・チアノーゼの判定部位は口唇、爪床、口腔粘膜、耳朶など、皮膚・粘膜が薄く毛細血管が透けて見える部位。 ・眼瞼結膜は貧血、眼球結膜は黄疸の判定部位。 ・手掌・足底は角質が厚くチアノーゼの判定に不適。 ・チアノーゼは還元ヘモグロビン約5g/dL以上で出現し、貧血では出にくく、多血症では出やすい。 ・中心性チアノーゼは舌・口腔粘膜にも出現し、末梢性チアノーゼは四肢末端中心で温めると改善する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。