幼児期の難治てんかん―「止まらない発作」が示すLennox-Gastaut症候群の素顔
第100回医師国家試験 B問題 第54問
国試問題にチャレンジ
Lennox-Gastaut症候群について正しいのはどれか。
- a.乳児期に好発する。
- b.知能低下はない。
- c.欠神発作が主体である。
- d.けいれん重積発作を起こす。
- e.脳波でhypsarrhythmiaがみられる。
対話形式の解説
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ドクターまとめ
Lennox-Gastaut症候群は3〜5歳の幼児期を中心に発症する発達性てんかん性脳症で、強直発作(特に睡眠中)・非定型欠神発作・脱力発作などの多彩な発作、覚醒時2.5Hz未満の全般性遅棘徐波複合、知的障害を特徴とします。発作は頻回かつ薬剤抵抗性で、強直発作や非定型欠神発作の重積状態を起こしやすく、脱力発作による転倒外傷にも注意が必要です。乳児期発症でヒプスアリスミアを示すのはWest症候群、定型欠神発作と3Hz棘徐波複合を示し知能正常なのは小児欠神てんかんであり、一部はWest症候群からLennox-Gastaut症候群へ移行します。治療はバルプロ酸を基本に多剤併用、難治例ではケトン食や脳梁離断術も検討され、カルバマゼピンによる発作増悪に注意します。小児てんかん症候群を発症年齢・発作型・脳波・知能予後で比較する視点は、診断だけでなく治療選択や家族への説明にも直結します。
解答・解説
正解はdです
Lennox-Gastaut症候群(LGS)は、小児期に発症する代表的な難治性てんかんである。現在の国際抗てんかん連盟(ILAE)の分類では「発達性てんかん性脳症(developmental and epileptic encephalopathy:DEE)」に位置づけられ、頻回の発作とてんかん性の脳波異常そのものが発達に悪影響を及ぼす病態と理解されている。 本症の特徴は次の3つにまとめられる。 1. 多彩な発作型:強直発作(特に睡眠中)、非定型欠神発作、脱力発作が中心で、ミオクロニー発作や強直間代発作を伴うこともある。 2. 特徴的な脳波:覚醒時に2.5 Hz未満(おおむね1.5〜2.5 Hz)の全般性遅棘徐波複合、睡眠中に約10 Hzの全般性速律動(generalized paroxysmal fast activity)がみられる。 3. 知的障害(発達の遅れ・退行)を伴う。 発症年齢は1〜8歳頃で、3〜5歳の幼児期にピークがある。発作は頻回かつ薬剤抵抗性で、強直発作や非定型欠神発作の重積状態を起こしやすい。 本問を解くには、同じく小児の難治性てんかんであるWest症候群(点頭てんかん:乳児期発症、てんかん性スパズム、ヒプスアリスミア)や、小児欠神てんかん(学童期発症、定型欠神発作、3 Hz棘徐波複合、知能は正常)と混同しないことが重要である。発症年齢・発作型・脳波所見・知能予後の4点で比較すると、各選択肢の正誤を判断できる。
選択肢考察
- ×a. 乳児期に好発する。
LGSの発症は1〜8歳頃で、好発は3〜5歳の幼児期である。乳児期(1歳未満、ピークは生後3〜11か月頃)に好発する難治性てんかんはWest症候群である。なお、West症候群の一部はその後LGSへ移行することが知られており、年齢に依存して病型が変化する「年齢依存性てんかん性脳症」として両者はつながりをもつ。
- ×b. 知能低下はない。
LGSでは大多数の患者に知的障害がみられる。発症前から脳の器質的疾患(周産期脳障害、結節性硬化症、脳形成異常など)による発達の遅れがある場合と、発症後に頻回の発作や持続する脳波異常によって発達が停滞・退行する場合がある。West症候群も同様に知的障害を伴う。知能が正常であることが多いのは小児欠神てんかんなどの特発性てんかんである。
- ×c. 欠神発作が主体である。
LGSでは確かに欠神発作がみられるが、それは意識減損の始まりと終わりが緩やかで筋緊張の変化を伴いやすい「非定型欠神発作」であり、しかも強直発作・脱力発作などと並ぶ多彩な発作型の一つにすぎない。特に睡眠中の強直発作はLGSの診断に重要な発作型である。数秒間の意識消失が突然始まり突然終わる定型欠神発作を主体とするのは小児欠神てんかんで、脳波では3 Hz棘徐波複合がみられ、過呼吸で誘発される。
- ○d. けいれん重積発作を起こす。
LGSでは各種の発作が1日に何回も起こり、抗てんかん薬に抵抗性であるため、発作が止まらずに続く重積状態を起こしやすい。強直発作の重積や、意識がぼんやりした状態が長く続く非定型欠神発作の重積(非けいれん性てんかん重積状態)がよく知られている。脱力発作による転倒(drop attack)で外傷を負いやすい点も臨床上の問題となる。したがって本選択肢は正しい。
- ×e. 脳波でhypsarrhythmiaがみられる。
hypsarrhythmia(ヒプスアリスミア)は、高振幅の徐波と棘波・鋭波が無秩序に混在する脳波所見で、West症候群に特徴的である。LGSの脳波は、覚醒時の2.5 Hz未満の全般性遅棘徐波複合と、睡眠中の約10 Hzの全般性速律動が特徴であり、背景活動も徐波化していることが多い。
小児の代表的てんかん症候群の比較
・West症候群(点頭てんかん) 発症:乳児期(生後3〜11か月頃がピーク) 発作:てんかん性スパズム(頭部前屈・四肢屈曲などの短い強直が数秒〜十数秒ごとにシリーズ形成して反復) 脳波:ヒプスアリスミア その他:精神運動発達の停止・退行。原因として結節性硬化症、周産期脳障害、脳形成異常など。治療はACTH療法、ビガバトリン(特に結節性硬化症例)など。 ・Lennox-Gastaut症候群 発症:1〜8歳(3〜5歳がピーク) 発作:強直発作(睡眠中に多い)、非定型欠神発作、脱力発作など多彩 脳波:覚醒時2.5 Hz未満の全般性遅棘徐波複合、睡眠時の全般性速律動 その他:知的障害、発作重積を起こしやすい、薬剤抵抗性。West症候群からの移行例がある。 ・小児欠神てんかん 発症:学童期(4〜10歳頃)、女児に多い 発作:定型欠神発作(数秒〜十数秒の意識消失、1日に多数回) 脳波:3 Hz棘徐波複合、過呼吸で誘発 その他:知能は正常、予後良好。治療はエトスクシミド、バルプロ酸など。
LGSの治療
バルプロ酸を基本とし、クロバザム、ラモトリギン、ルフィナミド、トピラマートなどを併用する。発作の完全な抑制は困難なことが多い。薬物で制御できない場合はケトン食療法、迷走神経刺激療法が検討され、転倒を伴う脱力発作・強直発作に対しては脳梁離断術が有効なことがある。なお、カルバマゼピンは非定型欠神発作やミオクロニー発作を悪化させうるため注意する。
POINT
・LGSの三徴:多彩な発作(強直発作・非定型欠神発作・脱力発作)、覚醒時2.5 Hz未満の遅棘徐波複合、知的障害。 ・好発年齢は3〜5歳(幼児期)。乳児期発症はWest症候群。 ・発作は頻回で薬剤抵抗性、重積状態を起こしやすい。 ・ヒプスアリスミアはWest症候群、3 Hz棘徐波複合は小児欠神てんかんの脳波。 ・West症候群からLGSへ移行する例がある。
