StudyMed医師国家試験

小脳に潜む子どものがん―年齢と部位で見抜く髄芽腫

第100回医師国家試験 B問題 第51問

国試問題にチャレンジ

第100回 B問題 第51問

小児に好発する脳腫瘍はどれか。

  1. a.神経膠芽腫
  2. b.髄芽腫
  3. c.下垂体腺腫
  4. d.髄膜腫
  5. e.頭蓋咽頭腫

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は「小児に好発する脳腫瘍」を選ぶ知識問題だ。脳腫瘍は年齢によって多い種類も、できやすい場所もがらりと変わる。成人と小児でどう違うか、という視点で整理していこう。まず、小児の脳腫瘍と聞いて何が浮かぶかな。
医学生医学生
小児がんの講義で、脳腫瘍は白血病の次に多い固形がんだと習いました。種類までは自信がないですが、小脳にできるものが多いイメージです。
ドクタードクター
いいところを覚えているね。小児の脳腫瘍は小脳や脳幹といった小脳テントより下、つまり後頭蓋窩や、第三脳室付近・松果体・トルコ鞍上部といった正中部に多い。一方、成人ではテントより上の大脳半球が中心だ。
医学生医学生
成人だと髄膜腫や神経膠芽腫、下垂体腺腫が多いんでしたよね。
ドクタードクター
その通り。神経鞘腫も加えて成人の代表格だ。では小児に多いものは?
医学生医学生
星細胞腫、胚細胞腫瘍、髄芽腫、頭蓋咽頭腫あたりでしょうか。
ドクタードクター
上衣腫も含めてそれで合っている。そのなかで選択肢に並ぶのは髄芽腫と頭蓋咽頭腫の2つだ。どちらを選ぶ?
医学生医学生
正直、両方小児に多い気がして迷います……。
ドクタードクター
迷うのは自然だよ。ここは年齢分布で考えるといい。髄芽腫は患者の大部分が15歳未満で、5〜10歳前後に多く、男児にやや多い。まさに小児腫瘍の代表だ。頭蓋咽頭腫も小児期に多いけれど、中高年にももう一つのピークがある二峰性で、15歳未満は全体の約2割にとどまる。だから「小児に好発」として最も典型的なのは髄芽腫になる。
医学生医学生
なるほど、二峰性かどうかが決め手なんですね。髄芽腫はどんな腫瘍なんですか。
ドクタードクター
小脳、特に正中の小脳虫部に発生する胎児性、つまり未熟な細胞からなる悪性腫瘍で、WHO分類ではgrade 4だ。第四脳室を圧迫して閉塞性水頭症を起こし、頭痛、嘔吐、うっ血乳頭が出る。小脳虫部が障害されるので、体幹失調でふらついて歩けなくなるのも特徴だね。
医学生医学生
病理実習で、小型で核の濃い細胞がぎっしり並んだ標本を見ました。あれが髄芽腫だったと思います。
ドクタードクター
そう、小型類円形細胞の密な増殖が典型だね。もう一つ大事なのが、髄液の流れに乗って脳や脊髄の表面に広がる髄腔内播種を起こしやすいことだ。だから治療では、手術で可能な限り摘出したうえで、全脳全脊髄照射を含む放射線治療と化学療法を組み合わせる。
医学生医学生
ほかの選択肢も確認させてください。神経膠芽腫は悪性度が高いので、子どもにも多いのかと思っていました。
ドクタードクター
そこはよくある誤解だ。神経膠芽腫は神経膠腫のなかで最も悪性度が高いgrade 4の腫瘍だけど、主に50〜70歳代の大脳半球にできる成人の悪性脳腫瘍の代表で、小児にはまれだ。小児の星細胞腫の多くは、むしろ悪性度の低い毛様細胞性星細胞腫なんだ。
医学生医学生
下垂体腺腫と髄膜腫は成人に多い、で良いですか。
ドクタードクター
いいよ。下垂体腺腫は20〜50歳代に多く、プロラクチン産生腫瘍による無月経・乳汁漏出や、視交叉圧迫による両耳側半盲が有名だ。髄膜腫は原発性脳腫瘍で最も多く、50歳以降の女性に多い。ただし小児期に頭部放射線照射を受けた人や神経線維腫症2型では若くても発生しうる点は覚えておこう。
医学生医学生
頭蓋咽頭腫は小児では低身長や尿崩症、CTでの石灰化がポイントでしたね。
ドクタードクター
その通り。ラトケ嚢の遺残から鞍上部に発生する良性腫瘍で、小児のトルコ鞍周辺の腫瘍としては非常に重要だ。最後に臨床の話をしよう。小児の後頭蓋窩腫瘍の鑑別では、小脳虫部から第四脳室を占める髄芽腫、小脳半球で嚢胞と壁在結節をつくる毛様細胞性星細胞腫、第四脳室底から出る上衣腫、橋に発生して予後がきわめて悪いびまん性正中神経膠腫を区別する。
医学生医学生
小児科の実習で、朝の頭痛と嘔吐を繰り返す子は胃腸炎と決めつけず頭蓋内圧亢進を疑え、と言われました。
ドクタードクター
大事な教えだね。乳児なら頭囲拡大や大泉門膨隆も手がかりになる。さらに髄芽腫は近年、WNT型、SHH型、グループ3、グループ4という分子分類で予後を予測し、治療の強さを調整する時代になっている。WNT型は予後がよいことも知っておくといい。

まとめ

脳腫瘍は年齢によって好発する種類と部位が異なり、成人ではテント上の髄膜腫・神経膠芽腫・下垂体腺腫・神経鞘腫が、小児ではテント下や正中部の星細胞腫・胚細胞腫瘍・髄芽腫・頭蓋咽頭腫・上衣腫が多くなります。髄芽腫は小児の小脳虫部に発生する悪性の胎児性腫瘍で、第四脳室の閉塞による水頭症と体幹失調を起こし、髄腔内播種を来しやすいため、手術に全脳全脊髄照射と化学療法を組み合わせて治療します。頭蓋咽頭腫も小児に多いものの中高年との二峰性を示すため、小児好発の典型としては髄芽腫が挙げられます。朝の頭痛や嘔吐、ふらつきを訴える子どもで後頭蓋窩腫瘍を想起できることは、見逃しを防ぐうえで臨床的に大きな意味を持ちます。

解答・解説

正解はbです

脳腫瘍は、年齢によって発生しやすい種類と部位が大きく異なる。 成人では、髄膜腫・神経膠腫(グリオーマ、特に神経膠芽腫)・下垂体腺腫・神経鞘腫が多い。発生部位は小脳テントより上(大脳半球など)が中心である。 一方、小児では、星細胞腫(特に小脳や視神経などに発生する悪性度の低いもの)、胚細胞腫瘍、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫などが多い。小児では小脳・脳幹などテントより下(後頭蓋窩)や正中部に発生する腫瘍の割合が高い。 この年齢ごとの違いを押さえておけば、選択肢のうち典型的な小児腫瘍を選べる。髄芽腫は小脳に発生する胎児性(未熟な細胞からなる)の悪性腫瘍で、患者の大部分が小児であり、小児腫瘍の代表である。頭蓋咽頭腫も小児期に多いが、成人にもう一つの発症ピークがある。そのため「小児に好発する」腫瘍として最も典型的なのは髄芽腫である。

選択肢考察

  1. ×a.  神経膠芽腫

    神経膠芽腫(glioblastoma)は神経膠腫のなかで最も悪性度が高い(WHO分類でgrade 4)腫瘍である。主に中高年(50〜70歳代)の大脳半球に発生し、成人の悪性脳腫瘍の代表である。小児にはまれである。なお、小児の星細胞腫の多くは、悪性度の低い毛様細胞性星細胞腫である。

  2. ○b.  髄芽腫

    髄芽腫(medulloblastoma)は小脳、特に正中の小脳虫部に発生する胎児性腫瘍で、WHO分類でgrade 4の悪性腫瘍である。患者の大部分は15歳未満の小児で、5〜10歳前後に多く、男児にやや多い。第四脳室を圧迫して閉塞性水頭症(頭痛・嘔吐・うっ血乳頭)を起こし、小脳虫部の障害で体幹失調(ふらついて歩けない)が現れる。髄液の流れに乗って脳や脊髄の表面に広がりやすい(髄腔内播種)のが特徴である。

  3. ×c.  下垂体腺腫

    下垂体腺腫は20〜50歳代の成人に多く、小児ではまれである。ホルモンを過剰に分泌する機能性腺腫では、プロラクチン産生腫瘍による無月経・乳汁漏出、成長ホルモン産生腫瘍による先端巨大症、ACTH産生腫瘍によるクッシング病などが起こる。大きくなると視交叉を圧迫して両耳側半盲を起こす。

  4. ×d.  髄膜腫

    髄膜腫は脳を包む髄膜(くも膜の細胞)から発生する多くは良性の腫瘍で、原発性脳腫瘍のなかで最も頻度が高い。中高年、特に50歳以降の女性に多く、小児ではまれである。小児期に頭部への放射線照射を受けた人や、神経線維腫症2型の患者では若年でも発生することがある。

  5. ×e.  頭蓋咽頭腫

    頭蓋咽頭腫は、胎生期に下垂体を形成したラトケ嚢の遺残組織から、トルコ鞍の上(鞍上部)に発生する良性腫瘍である。小児期(5〜14歳頃)と中高年(50〜70歳代)の二つに発症のピークがあり、全体の約2割は15歳未満である。小児のトルコ鞍周辺の腫瘍としては重要で、低身長(成長ホルモン分泌不全)、尿崩症、視野障害を起こし、CTで石灰化を伴うのが特徴である。ただし成人発症も多いため、小児に特有の好発腫瘍としては髄芽腫の方が典型的である。

小児脳腫瘍の特徴

・小児の固形がんのなかで、脳腫瘍は白血病に次いで多い。 ・日本の小児に多い脳腫瘍:星細胞腫、胚細胞腫瘍(ジャーミノーマなど)、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫など。 ・テント下(小脳・脳幹)や正中部(第三脳室付近、松果体、トルコ鞍上部)に発生しやすい。 ・髄液の通り道をふさいで水頭症を起こしやすく、頭痛(特に朝)・嘔吐・うっ血乳頭などの頭蓋内圧亢進症状で見つかることが多い。乳児では頭囲拡大や大泉門の膨隆がみられる。

小児の後頭蓋窩腫瘍の鑑別

1. 髄芽腫:小脳虫部に発生し、第四脳室を占める。悪性で、髄腔内播種を起こしやすい。 2. 毛様細胞性星細胞腫:小脳半球に多く、嚢胞と壁在結節(嚢胞の壁にできたこぶ)の形が典型的である。良性で、全摘出できれば予後はよい。 3. 上衣腫:第四脳室の底から発生する。 4. びまん性正中神経膠腫(びまん性内在性橋神経膠腫):脳幹(橋)に発生し、脳神経麻痺を起こす。予後はきわめて不良である。

髄芽腫の治療

手術で可能な限り摘出したうえで、全脳全脊髄照射を含む放射線治療と化学療法を組み合わせる。近年は分子遺伝学的な分類(WNT型、SHH型、グループ3、グループ4)によって予後を予測し、治療の強さを調整する。WNT型は予後がよい。

成人に多い脳腫瘍

髄膜腫(最多)、神経膠腫(神経膠芽腫を含む)、下垂体腺腫、神経鞘腫(聴神経腫瘍)など。

POINT

・小児脳腫瘍は、テント下(後頭蓋窩)と正中部に多い。 ・髄芽腫は小児の小脳虫部に発生する悪性の胎児性腫瘍で、髄腔内播種を起こしやすい。 ・頭蓋咽頭腫は小児と中高年の二峰性で、石灰化、尿崩症、低身長が特徴である。 ・神経膠芽腫、髄膜腫、下垂体腺腫は成人に多い。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。