ホルモンを足せば出血する―負荷試験で読み解く第2度無月経
第100回医師国家試験 A問題 第44問
国試問題にチャレンジ
22歳の女性。1年前からの無月経を主訴に来院した。初経12歳。外診所見と内診所見とに異常を認めない。プロゲステロン負荷試験で消退出血を認めないが,エストロゲン・プロゲステロン負荷試験で消退出血を認める。 診断はどれか。
- a.希発月経
- b.原発性無月経
- c.無排卵周期症
- d.第1度無月経
- e.第2度無月経
対話形式の解説
ドクター
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ドクターまとめ
続発無月経は、これまであった月経が3か月以上停止したもので、満18歳になっても初経がない原発無月経や、周期が39日以上3か月以内の希発月経、出血はあるが排卵を伴わない無排卵周期症とは区別されます。妊娠を除外したうえでホルモン負荷試験を行い、プロゲステロン単独で消退出血があれば第1度無月経(内因性エストロゲンは保たれる)、エストロゲン・プロゲステロン併用で初めて出血すれば第2度無月経(エストロゲン欠乏)、両方で出血しなければ子宮性無月経と判断します。第2度無月経では体重減少性無月経や神経性やせ症などの視床下部性が多く、LH・FSH、プロラクチンの測定やGnRH負荷試験で障害部位を絞り込みます。長期のエストロゲン欠乏は骨量減少を招くため、原因への対処とホルモン補充、挙児希望に応じた排卵誘発が必要です。負荷試験の意味を月経の生理から理解しておくと、無月経の診断と治療方針の判断に一貫して応用できます。
解答・解説
正解はeです
所見の整理
・22歳女性、初経は12歳で、以前は月経があった。 ・1年前から月経が停止している。 ・外診・内診で子宮や腟、外性器に異常はない。 ・プロゲステロン負荷試験(ゲスターゲンテスト)で消退出血なし。 ・エストロゲン・プロゲステロン負荷試験(Kaufmann療法に準じた負荷)で消退出血あり。
診断への道筋
まず、初経があり、これまで来ていた月経が3か月以上停止しているので、続発無月経である。続発無月経の重症度は、ホルモン負荷試験への反応で分類する。 ①プロゲステロン(黄体ホルモン)を投与して消退出血が起これば、子宮内膜がすでに内因性のエストロゲンで増殖しており、エストロゲン分泌がある程度保たれていることを意味する。これが第1度無月経である(排卵が起こらないため黄体ホルモンが分泌されず月経が来ない状態)。 ②プロゲステロン単独では出血せず、エストロゲンとプロゲステロンを併せて投与して初めて消退出血が起これば、子宮内膜は反応できるが、内因性エストロゲンが不足して内膜が増殖していないことを意味する。これが第2度無月経である。 ③両方を投与しても出血しなければ、子宮内膜そのものに原因がある子宮性無月経(Asherman症候群など)を考える。 本例はプロゲステロン負荷で出血せず、エストロゲン・プロゲステロン負荷で出血したため、第2度無月経と診断される。
設問の考え方
本問は無月経の定義と、負荷試験による重症度分類をそのまま問う問題である。第2度無月経と判明したら、次に血中のLH・FSH、プロラクチンなどを測定し、原因が視床下部・下垂体・卵巣のどこにあるかを調べる流れとなる。
選択肢考察
- ×a. 希発月経
希発月経は、月経は来るものの周期が延長している状態で、月経周期が39日以上、3か月以内のものをいう。本例は1年間まったく月経がなく、3か月以上月経が停止しているので希発月経ではなく続発無月経に該当する。
- ×b. 原発性無月経
原発性無月経は、満18歳になっても初経が起こらないものをいう。染色体異常(Turner症候群など)や性分化疾患、Müller管の発生異常(Mayer-Rokitansky-Küster-Hauser症候群)、腟閉鎖・処女膜閉鎖などが原因となる。本例は12歳で初経を迎えており、その後に月経が停止しているので続発性の無月経であり、該当しない。
- ×c. 無排卵周期症
無排卵周期症は、周期的な出血(月経様の出血)はみられるものの排卵を伴わない状態をいう。基礎体温は一相性となり、月経周期は不順になりやすい。思春期や更年期に多く、多嚢胞性卵巣症候群などでもみられる。本例は出血そのものが1年間ないので、無排卵周期症ではない。
- ×d. 第1度無月経
第1度無月経は、プロゲステロンの単独投与で消退出血が起こる無月経である。卵巣からある程度のエストロゲンが分泌されて子宮内膜は増殖しているが、排卵がないため黄体ホルモンの作用が加わらず、月経が起こらない状態を示す。多嚢胞性卵巣症候群や軽症の視床下部性無月経などが該当する。本例はプロゲステロン負荷で消退出血を認めないので、第1度無月経ではない。
- ○e. 第2度無月経
第2度無月経は、プロゲステロン単独では消退出血が起こらず、エストロゲンとプロゲステロンを併用して初めて消退出血が起こる無月経である。子宮内膜は正常に反応するが、卵巣からのエストロゲン分泌が著しく低下していることを示し、第1度より重症である。原因は、体重減少性無月経や神経性やせ症などの視床下部性が多く、ほかに下垂体性(Sheehan症候群、下垂体腫瘍など)や卵巣性(早発卵巣不全など)がある。本例の負荷試験の結果はこれに一致する。
月経異常の用語(日本産科婦人科学会の定義に準拠)
・正常月経周期:25〜38日(変動は6日以内) ・頻発月経:周期が24日以下 ・希発月経:周期が39日以上3か月以内 ・続発無月経:これまであった月経が3か月以上停止したもの ・原発無月経:満18歳になっても初経が起こらないもの ・無排卵周期症:出血はあるが排卵を伴わないもの
無月経の診断の進め方
1. 妊娠の除外(妊娠反応)が最優先である。 2. プロゲステロン負荷試験 出血あり → 第1度無月経(内因性エストロゲンは保たれている) 出血なし → 3へ 3. エストロゲン・プロゲステロン負荷試験 出血あり → 第2度無月経(内因性エストロゲンが欠乏) 出血なし → 子宮性無月経(Asherman症候群、子宮内膜炎、子宮摘出後など) 4. 原因部位の検索 ・LH・FSHが低値 → 視床下部性または下垂体性。GnRH負荷試験で、LH・FSHが反応すれば視床下部性、反応しなければ下垂体性と推定する。 ・LH・FSHが高値 → 卵巣性(早発卵巣不全、Turner症候群など) ・プロラクチン高値 → 高プロラクチン血症(プロラクチノーマ、薬剤性など)、甲状腺機能低下症も確認する。
第2度無月経への対応
長期のエストロゲン欠乏は骨量減少や脂質異常を招くため、原因への対処(体重回復など)に加え、挙児希望がなければKaufmann療法などのホルモン補充を行う。挙児希望があれば排卵誘発(ゴナドトロピン療法など)を検討する。
POINT
・続発無月経は「3か月以上の月経停止」、原発無月経は「満18歳で初経なし」、希発月経は「周期39日以上3か月以内」。 ・プロゲステロン負荷で出血 → 第1度無月経(エストロゲンあり)。 ・プロゲステロンで出血せず、エストロゲン+プロゲステロンで出血 → 第2度無月経(エストロゲン欠乏、より重症)。 ・両方で出血なし → 子宮性無月経(Asherman症候群など)。 ・第2度無月経は視床下部性(体重減少性無月経、神経性やせ症)が多い。
