StudyMed医師国家試験

のどの痛みは「えら」の下に出る―扁桃炎の所属リンパ節を見抜く

第99回医師国家試験 B問題 第18問

国試問題にチャレンジ

第99回 B問題 第18問

頸部の写真を示す。 化膿性扁桃炎でリンパ節腫脹を認める部位はどれか。

第99回 B問題 第18問の問題画像
  1. a.①
  2. b.②
  3. c.③
  4. d.④
  5. e.⑤

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、頸部の写真上で、化膿性扁桃炎のときにどこのリンパ節が腫れるかを答える問題だ。考えるべきは「口蓋扁桃のリンパはまずどこに流れるか」という所属リンパ節の知識。写真では、下顎角、つまり「えら」と胸鎖乳突筋の位置関係を目印にしよう。
医学生医学生
扁桃は口の奥なので、顎の下のリンパ節が腫れるイメージです。オトガイの下あたりでしょうか。
ドクタードクター
惜しいところだね。顎の下でも、前方のオトガイ寄りか、後方の下顎角寄りかで流入領域が違うんだ。オトガイ下から顎下部の前方は、下口唇や口腔底、舌尖、歯や歯肉からのリンパを受ける。歯性感染症で腫れやすいのはこちらだよ。
医学生医学生
口の前のほうの病変は前のリンパ節、ということですね。じゃあ扁桃はもっと後ろですか。
ドクタードクター
その通り。口蓋扁桃のリンパは、主に下顎角の直下にあるリンパ節に注ぐ。解剖学的には上内深頸リンパ節のうちの顎二腹筋リンパ節で、扁桃リンパ節とも呼ばれる。臨床では「顎下部」のリンパ節として触れることが多い。だから写真で下顎角のすぐ下を示している部位が正解になる。
医学生医学生
解剖の講義で頸部リンパ節のレベル分類を習いましたが、名前が多くて混乱していました。位置と流入領域をセットにすると覚えやすいですね。
ドクタードクター
そうなんだ。名前だけ暗記するより、「どの臓器からのリンパがどこに来るか」で整理するといい。では残りの部位も見ていこう。胸鎖乳突筋より前方の、頸部中ほどの前頸部はどうだろう。
医学生医学生
甲状腺や喉頭の近くですよね。扁桃からは遠い気がします。
ドクタードクター
そう。そのあたりは甲状腺・喉頭・気管周囲の病変と関係が深く、扁桃炎で最初に腫れる場所ではない。次に、胸鎖乳突筋に沿った側頸部の中ほどは?
医学生医学生
内深頸リンパ節の連鎖の中部ですよね。扁桃からのリンパが下に流れていくなら、ここも腫れそうに思えます。
ドクタードクター
鋭い指摘だ。炎症が強ければ内深頸リンパ節の連鎖に沿って腫脹が広がることはある。でも典型的に、まず目立って腫れるのはより上方の下顎角直下。この部位はむしろ喉頭や下咽頭、甲状腺からのリンパを受ける領域だよ。
医学生医学生
胸鎖乳突筋より後ろの後頸部はどうですか。
ドクタードクター
後頸部は副神経リンパ節の領域で、上咽頭や後頭部の頭皮からのリンパを受ける。ここの腫脹が目立つときは、上咽頭癌の転移や伝染性単核球症などを考える。単純な化膿性扁桃炎の典型部位ではないんだ。
医学生医学生
伝染性単核球症も扁桃に白苔がつくから、扁桃炎と紛らわしいと小児科の実習で教わりました。
ドクタードクター
大事なポイントだね。白苔のある扁桃炎でも、後頸部を含む両側多数のリンパ節腫脹や肝脾腫があればEBウイルスによる伝染性単核球症を疑う。この場合、アンピシリン系抗菌薬で皮疹が出やすいから、安易に処方しないよう注意が必要だ。
医学生医学生
化膿性扁桃炎の原因菌は、A群β溶血性レンサ球菌が代表でしたよね。
ドクタードクター
そう、ウイルス性も多いけどね。溶連菌の可能性を見積もるCentor基準には、38℃以上の発熱、咳がないこと、扁桃の腫大や白苔に加えて、前頸部リンパ節の圧痛を伴う腫脹が含まれる。つまり下顎角直下の有痛性リンパ節を触れることは、診断の手がかりそのものなんだ。
医学生医学生
診察では、嚥下時痛を訴える患者さんの下顎角の下を必ず触る、ということですね。
ドクタードクター
その通り。さらに、炎症が扁桃の周りに波及して扁桃周囲膿瘍になると、開口障害や口蓋垂の健側への偏位が出てくる。こうなると穿刺や切開排膿が必要になることもあるから、見逃さないようにしたい。あわせて、左鎖骨上窩のリンパ節腫大は胃癌などの遠隔転移であるウィルヒョウ転移を疑うサインとして覚えておくと、頸部の触診全体の理解が深まるよ。

まとめ

口蓋扁桃のリンパは主に下顎角直下のリンパ節(上内深頸リンパ節の顎二腹筋リンパ節、いわゆる扁桃リンパ節)に流入するため、化膿性扁桃炎ではこの部位に圧痛を伴うリンパ節腫脹を触れるのが典型です。オトガイ下~顎下部前方は口唇・口腔底・歯など、側頸部中下部は喉頭・下咽頭・甲状腺、後頸部は上咽頭や頭皮からのリンパを受け、腫脹部位から原発病変を推定できます。白苔を伴う扁桃炎でも後頸部を含む多数のリンパ節腫脹や肝脾腫があれば伝染性単核球症を考え、アンピシリン系抗菌薬による皮疹に注意します。扁桃周囲膿瘍への進展では開口障害や口蓋垂偏位がみられます。頸部リンパ節を位置と流入領域のセットで理解しておくことは、日常の咽頭痛診療から悪性腫瘍の転移の評価まで幅広く役立ちます。

解答・解説

正解はbです

本問は、口蓋扁桃の炎症がどの頸部リンパ節に波及するか(所属リンパ節)を、写真上の部位で答える問題である。

写真の読み取り

顔を向かって左へ向け、頸部の側面を示した写真である。①はオトガイ(下あご先端)寄りの下顎下縁の下方、②は下顎角(えら)の直下、③は胸鎖乳突筋の前方で頸部中ほどの前頸部、④は胸鎖乳突筋に沿った側頸部中部、⑤は胸鎖乳突筋より後方の後頸部に位置する。

考え方

口蓋扁桃のリンパ流は、主に下顎角の直下に位置するリンパ節(上内深頸リンパ節のうち顎二腹筋リンパ節で、臨床的には「顎下部」のリンパ節として触れる。扁桃リンパ節とも呼ばれる)に注ぐ。そのため化膿性扁桃炎では、下顎角の下に圧痛を伴うリンパ節腫脹を触れるのが典型である。写真で下顎角の直下にあたるのは②である。

選択肢考察

  1. ×a.  ①

    誤り。①はオトガイ寄りの下顎下縁の下方で、オトガイ下~顎下部の前方にあたる。この領域のリンパ節は下口唇、口腔底、舌尖、歯肉・歯などの炎症(歯性感染症など)で腫れやすい。扁桃の所属リンパ節は、より後方の下顎角直下にある。

  2. ○b.  ②

    正しい。②は下顎角の直下で、口蓋扁桃のリンパが最初に流入する顎下部(上内深頸リンパ節の顎二腹筋リンパ節、いわゆる扁桃リンパ節)の位置にあたる。化膿性扁桃炎ではここに圧痛を伴う腫大リンパ節を触れ、嚥下時痛や発熱とともに診断の手がかりとなる。

  3. ×c.  ③

    誤り。③は胸鎖乳突筋より前方の前頸部である。この付近は甲状腺・喉頭・気管周囲の病変と関係が深い部位であり、化膿性扁桃炎で最初に腫れる部位ではない。

  4. ×d.  ④

    誤り。④は胸鎖乳突筋に沿った側頸部の中部(中内深頸リンパ節の領域)である。炎症が高度になれば内深頸リンパ節の連鎖に沿って腫脹が広がることはあるが、扁桃炎で典型的に腫れるのはより上方の下顎角直下である。

  5. ×e.  ⑤

    誤り。⑤は胸鎖乳突筋の後方の後頸部(副神経リンパ節の領域)である。この部位の腫脹は、上咽頭(鼻咽腔)の炎症や上咽頭癌の転移、頭皮の感染症、伝染性単核球症(EBウイルス感染症)などでみられることが多く、単純な化膿性扁桃炎の典型的な腫脹部位ではない。

頸部リンパ節と主な流入領域

・オトガイ下リンパ節: 下口唇中央、口腔底、舌尖など。 ・顎下リンパ節: 口唇、頬、歯・歯肉、舌の前方、顎下腺など。 ・上内深頸リンパ節(顎二腹筋リンパ節を含む): 口蓋扁桃、中咽頭、舌根など。下顎角の直下で触れる。 ・中・下内深頸リンパ節: 喉頭、下咽頭、甲状腺など。 ・副神経リンパ節(後頸部): 上咽頭、後頭部の頭皮など。 ・鎖骨上窩リンパ節: 胸腹部臓器からのリンパが胸管などを経て流入し、左鎖骨上窩の腫大(ウィルヒョウ転移)は胃癌などの遠隔転移を示すことがある。

化膿性扁桃炎(急性扁桃炎)

主な原因はA群β溶血性レンサ球菌(溶連菌)で、ウイルスによるものも多い。発熱、咽頭痛、嚥下時痛、扁桃の発赤腫大と白苔(膿栓)、下顎角直下のリンパ節の有痛性腫脹を示す。溶連菌感染の可能性を評価する指標(Centor基準: 38℃以上の発熱、咳がない、前頸部リンパ節の圧痛を伴う腫脹、扁桃の腫大または白苔)にもリンパ節腫脹が含まれる。炎症が扁桃周囲に波及すると扁桃周囲膿瘍となり、開口障害や口蓋垂の健側への偏位がみられる。

鑑別の手がかり

扁桃に白苔を伴い、後頸部を含む両側の多数のリンパ節腫脹、肝脾腫がある場合は伝染性単核球症を考える。この場合、アンピシリン系抗菌薬で皮疹が出やすいことに注意する。

POINT

・化膿性扁桃炎で腫れるのは、下顎角直下のリンパ節(上内深頸リンパ節の顎二腹筋リンパ節=扁桃リンパ節、臨床的には顎下部)。 ・後頸部リンパ節腫脹が目立つときは上咽頭病変や伝染性単核球症を考える。 ・左鎖骨上窩リンパ節腫大はウィルヒョウ転移(胃癌など)を疑う。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。