最後に書く一枚の重み―死亡診断書は「誰が書き、誰が署名し、どこへ出す」のか
第118回医師国家試験 E問題 第22問
国試問題にチャレンジ
死亡診断書で正しいのはどれか。
- a.解剖所見は記載できない。
- b.歯科医師は発行できない。
- c.主治医以外は記載できない。
- d.医師が署名しなければならない。
- e.保健所に届け出なければならない。
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
死亡診断書は人の死亡を医学的・法律的に証明する文書であり、人口動態統計の基礎資料でもあるため、作成した医師が署名して責任の所在を明確にします。作成するのは死亡を診断した医師で主治医に限られず、顎口腔疾患による死亡では歯科医師も作成できますが、死体検案書は医師のみが作成できます。様式には解剖・手術の欄があり、その主要所見も記載します。死亡診断書は死亡届と一体の用紙で、届出義務者が7日以内に市区町村長へ提出し、保健所への届出は不要です。最終診察後24時間以内の死亡では死後診察なしで交付できること、異状死では24時間以内に警察へ届け出ることもあわせて理解しておくと、研修医としての当直業務にそのまま役立ちます。
解答・解説
正解はdです
本問は、死亡診断書の作成者・記載内容・提出の流れについての基本的な知識を問う一般問題である。 死亡診断書は、人の死亡を医学的・法律的に証明する文書であり、同時に日本の死因統計(人口動態統計)の基礎資料にもなる。押さえるべき要点は次の3つである。 ・誰が作成するか: 診療中の患者が死亡し、その死亡を診断した医師(顎口腔領域の疾患による死亡では歯科医師も可)が作成する。主治医に限定されない。 ・何を書くか: 氏名・死亡日時・死亡場所のほか、死亡の原因(直接死因からさかのぼる原因の連鎖)、手術や解剖の有無と主要所見などを記載し、作成した医師が署名する。 ・どこへ出すか: 死亡診断書は死亡届と一体の用紙になっており、遺族などの届出義務者が市区町村長(市区町村役場)に死亡届として提出する。保健所への届出は不要である。 これらに照らすと、作成した医師が署名しなければならないとするdが正解となる。
選択肢考察
- ×a. 解剖所見は記載できない。
誤り。死亡診断書(死体検案書)の様式には「解剖」の欄があり、解剖を行ったか否かを記入し、行った場合はその主要所見を記載する。解剖所見は死因の判断の根拠となる重要な情報である。同様に「手術」の欄もあり、手術の有無・術式・主要所見・手術年月日を記載する。
- ×b. 歯科医師は発行できない。
誤り。歯科医師も、歯科医師法に基づき死亡診断書を交付できる。ただし対象は、顎口腔領域の疾患など歯科医療の対象となる疾患の診療中に患者が死亡した場合に限られる。一方、異状死体などで行う死体検案は医師のみが行えるため、死体検案書は歯科医師には作成できない。
- ×c. 主治医以外は記載できない。
誤り。死亡診断書は、その死亡を診断した医師が作成するものであり、主治医でなければならないという規定はない。例えば当直医が死亡を確認・診断した場合には、当直医が記載することができる。なお、医師法第20条により、自ら診察しないで診断書を交付することは禁じられているが、診療中の患者が最終の診察後24時間以内に死亡した場合は、改めて死後診察をしなくても死亡診断書を交付できるという例外がある(24時間を超えた場合でも、死後診察を行い生前に診療していた傷病による死亡と判断できれば交付できる)。
- ○d. 医師が署名しなければならない。
正しい。死亡診断書は、作成した医師本人が氏名を自署(署名)しなければならない。文書の作成者を明確にし、その真正性を担保するためである。かつては記名押印でもよいとされていたが、行政手続きにおける押印見直しの流れを受け、現在は署名を行うこととされている。なお、顎口腔疾患による死亡で歯科医師が作成した場合は歯科医師が署名するため、厳密にいえば署名者は医師に限られないが、選択肢の中ではこれが最も適切である。
- ×e. 保健所に届け出なければならない。
誤り。死亡診断書は死亡届と同じ用紙の右半分にあたり、医師が死亡診断書を作成して遺族などに交付し、届出義務者(同居の親族など)が死亡の事実を知った日から7日以内(国内の場合)に、市区町村長(死亡地・本籍地・届出人の所在地のいずれかの市区町村役場)へ死亡届として提出する。保健所への提出は不要である。提出された死亡届の情報は、市区町村から保健所を経由して人口動態調査票として集計されるが、これは行政内部の流れであり、医師や遺族が保健所へ届け出るものではない。
死亡診断書と死体検案書の使い分け
・死亡診断書: 自らが診療していた傷病に関連して患者が死亡した場合に、診療していた医師(または死亡を診断した医師)が作成する。歯科医師も顎口腔疾患に関しては作成できる。 ・死体検案書: 診療中の患者以外の死亡や、外因死・死因不明など異状死の可能性がある場合に、死体を検案した医師が作成する。医師のみが作成できる。 ・異状があると認めた場合は、医師法第21条に基づき24時間以内に所轄警察署へ届け出る。
関連する法規定
・医師法第19条第2項: 診察・検案をした医師は、診断書・検案書の交付を求められた場合、正当な理由がなければ拒んではならない。 ・医師法第20条: 自ら診察・検案しないで診断書・検案書を交付してはならない(最終診察後24時間以内の死亡に関する例外あり)。 ・戸籍法: 死亡届は届出義務者が死亡の事実を知った日から7日以内(国外での死亡は3か月以内)に提出し、死亡診断書または死体検案書を添付する。
死因欄の書き方
・Ⅰ欄には、直接死因(ア)から、それを引き起こした原因(イ、ウ、エ)へと因果関係の順に記載し、最も下に書いた傷病が原死因となる。 ・Ⅱ欄には、直接には死因に関係しないがⅠ欄の傷病の経過に影響を及ぼした傷病を記載する。 ・「心不全」「呼吸不全」などの終末期の状態のみを書くことは避け、原因となった疾患を明記する。
POINT
・死亡診断書は死亡を診断した医師が作成・署名する(主治医に限らない)。 ・歯科医師も顎口腔疾患による死亡では死亡診断書を作成できるが、死体検案書は医師のみ。 ・解剖・手術の有無と主要所見を記載する欄がある。 ・死亡届と一体の用紙で、届出義務者が7日以内に市区町村長へ提出する。保健所への届出は不要。 ・最終診察後24時間以内の死亡なら、死後診察なしで死亡診断書を交付できる。
