StudyMed医師国家試験

介護保険の入口はどこにある?―「訪問調査」と「主治医意見書」が要介護認定の2本柱

第118回医師国家試験 C問題 第31問

国試問題にチャレンジ

第118回 C問題 第31問

介護保険における要介護認定に必要なのはどれか。2つ選べ。

  1. a.年金手帳
  2. b.訪問調査
  3. c.主治医意見書
  4. d.保健所長の許可
  5. e.ケアプランの作成

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は介護保険制度の問題だ。介護サービスを使うには、まず「どれくらい介護の手間がかかるか」を公的に判定してもらう要介護認定が必要になる。その判定にどんな材料が使われるのか、認定の流れを頭に描きながら考えてみよう。
医学生医学生
公衆衛生の講義で介護保険をやりましたが、正直、申請から認定までの流れがあいまいです。まず申請先はどこでしたっけ。
ドクタードクター
保険者である市町村、東京23区なら特別区だ。本人や家族が窓口に申請する。地域包括支援センターなどが申請を代行することもできるよ。では、申請を受けた市町村は次に何をすると思う?
医学生医学生
本人の状態を実際に確かめないと判定できないので、誰かが会いに行くんでしょうか。
ドクタードクター
その通り。市町村の認定調査員が自宅や施設を訪れて、本人や家族から聞き取ったり動作を観察したりする。これが訪問調査、正式には認定調査だ。寝返りや歩行、食事や排泄、認知機能、問題行動、過去14日間に受けた特別な医療などを、全国共通の74項目の基本調査で評価する。項目に収まらない具体的な状況は特記事項として書き残すんだ。
医学生医学生
全国共通の項目にしているのは、地域によって判定がばらつかないようにするためですね。
ドクタードクター
そう、公平性の担保だね。そしてもう一つ、医学的な情報も欠かせない。市町村が申請者の主治医に依頼して書いてもらう書類がある。
医学生医学生
主治医意見書ですね。臨床実習で総合診療科を回ったとき、外来の合間に先生が書いているのを見ました。
ドクタードクター
まさにそれ。診断名や症状の安定性、点滴管理や経管栄養などの特別な医療、認知症の症状を含む日常生活自立度、今後必要なサービスなどを医学的な立場から記載する。主治医がいなければ市町村が指定する医師が診察して作成するんだ。訪問調査と主治医意見書、この2つが認定の判断材料として対になっている。
医学生医学生
では、その2つをどう使って最終判定するんですか。
ドクタードクター
二段階になっている。まず一次判定で、基本調査の結果と主治医意見書の一部の項目をコンピュータに入れて、介護にかかる時間を推計する。次に二次判定で、保健・医療・福祉の学識経験者からなる介護認定審査会が、一次判定に特記事項と主治医意見書の内容を加えて審査し、要支援1・2、要介護1〜5、非該当のいずれかに決める。結果は原則として申請から30日以内に通知される。
医学生医学生
機械的な判定と専門家の合議を組み合わせるわけですね。ほかの選択肢も確認させてください。年金手帳は本人確認に使いそうな気もしたんですが。
ドクタードクター
年金手帳は公的年金の基礎年金番号を証明するもので、介護保険の認定とは関係がない。申請時に要るのは介護保険の被保険者証、40〜64歳の第2号被保険者なら医療保険の被保険者証などだ。ちなみに年金手帳は2022年4月に新規交付が終わり、今は基礎年金番号通知書になっている。
医学生医学生
保健所長の許可も違いますよね。保健所は感染症や食品衛生の仕事をするところだと習いました。
ドクタードクター
そうだね。保健所は地域保健法に基づく機関で、要介護認定の手続きには関わらない。認定するのはあくまで保険者である市町村だ。では、ケアプランの作成はどうかな。
医学生医学生
ケアプランは介護サービスの計画なので、つい認定とセットで考えてしまいました。でも、区分が決まらないと使えるサービスの枠も決まらないですよね。
ドクタードクター
いい気づきだ。ケアプランは、認定で決まった区分ごとの支給限度額の範囲で、どのサービスをどう組み合わせるかを決める計画だから、認定の「後」に作るものだ。要介護1〜5なら居宅介護支援事業所のケアマネジャー、要支援1・2なら主に地域包括支援センターが作成する。順番を取り違えないことが大切だよ。
医学生医学生
申請、訪問調査と主治医意見書、一次判定、二次判定、認定、そしてケアプラン、という順番ですね。
ドクタードクター
完璧だ。最後に臨床で役立つ知識を足しておこう。要介護認定は「病気の重さ」ではなく「介護の手間」を測るものだから、重い病気でも身の回りのことが自立していれば区分は低くなりうる。だからこそ主治医意見書には、診断名だけでなく、生活の中で何に困っているかを具体的に書くことが大切なんだ。
医学生医学生
主治医意見書の書き方ひとつで、患者さんが受けられるサービスが変わりうるということですね。研修医になったら書く機会がありそうです。
ドクタードクター
間違いなくあるよ。それから、第2号被保険者は要介護状態の原因が末期がんやパーキンソン病関連疾患などの特定疾病16疾病に当たる場合に限って給付を受けられる。その確認にも主治医意見書が使われる。認定には有効期間があって更新申請や区分変更申請ができること、不服があれば都道府県の介護保険審査会に審査請求できることも押さえておこう。

まとめ

介護保険のサービスを利用するには、保険者である市町村に申請し、要介護認定を受ける必要があります。認定の判断材料は、認定調査員による訪問調査(74項目の基本調査と特記事項)と、主治医が作成する主治医意見書の2本柱で、これをもとにコンピュータによる一次判定と介護認定審査会による二次判定が行われます。ケアプランは認定で決まった区分の範囲内で認定後に作成するもので、年金手帳や保健所長の許可は認定に関係しません。要介護認定は病気の重さではなく介護の手間を測る仕組みであり、第2号被保険者では特定疾病の確認にも主治医意見書が使われます。医師は主治医意見書を通じて患者の生活を支える制度に直接関わるため、この流れを理解しておくことは臨床に出てからも役立ちます。

解答・解説

正解はb, cです

問われていること

介護保険のサービスを利用するには、まず「どの程度の介護が必要か」を公的に判定してもらう要介護認定を受けなければならない。本問はその認定プロセスで欠かせない資料・手続きを問うている。

要介護認定の流れ

1. 申請:本人または家族(代行として地域包括支援センターや居宅介護支援事業者なども可)が、住所地の市町村(特別区を含む)の窓口に申請する。 2. 認定調査(訪問調査):市町村の認定調査員が自宅や施設を訪れ、心身の状況を本人・家族から聞き取り、観察する。全国共通の調査票(概況調査・74項目の基本調査・特記事項)を用いる。 3. 主治医意見書:市町村が申請者の主治医に意見書の作成を依頼する。主治医がいなければ市町村の指定する医師が診察して作成する。 4. 一次判定:基本調査の結果と主治医意見書の一部項目をコンピュータに入力し、介護に要する時間(要介護認定等基準時間)を推計して判定する。 5. 二次判定:保健・医療・福祉の学識経験者で構成される介護認定審査会が、一次判定結果に特記事項と主治医意見書の内容を加えて審査し、最終的な区分を決める。 6. 認定・通知:市町村が要支援1・2、要介護1~5、または非該当(自立)を認定し通知する。原則として申請から30日以内に結果を出す。 このように、訪問調査(認定調査)と主治医意見書は認定の判断材料として対をなす必須の要素である。ケアプランは認定の後に作られるものであり、認定の前提ではない。

選択肢考察

  1. ×a.  年金手帳

    年金手帳は公的年金の加入者に交付されていた基礎年金番号の証明書類で、介護保険の認定とは関係がない。申請時に必要なのは介護保険被保険者証(第2号被保険者では医療保険の被保険者証など)である。なお年金手帳は2022年(令和4年)4月に新規交付が廃止され、現在は「基礎年金番号通知書」が発行されている。

  2. ○b.  訪問調査

    申請を受けた市町村は認定調査員(市町村職員または委託を受けた介護支援専門員など)を派遣し、申請者の心身の状況を調べる。麻痺・拘縮の有無、寝返り・歩行などの基本動作、食事・排泄などの日常生活動作、認知機能、精神・行動障害、社会生活への適応、過去14日間に受けた特別な医療などを全国一律の74項目で評価し、項目に収まらない具体的状況は特記事項として記録する。この基本調査の結果がコンピュータによる一次判定の主な入力データとなり、特記事項は二次判定で用いられる。認定に不可欠な手続きである。

  3. ○c.  主治医意見書

    市町村が主治医に作成を依頼する書類で、医学的見地から申請者の状態を示す。内容は、傷病に関する意見(診断名・症状の安定性など)、特別な医療(点滴管理・透析・経管栄養など)、心身の状態に関する意見(日常生活自立度、認知症の症状など)、生活機能とサービスに関する意見、特記すべき事項から構成される。一部の項目は一次判定に使われ、全体が二次判定の重要な資料となる。また40~64歳の第2号被保険者では、要介護状態の原因が特定疾病(16疾病)に該当するかの確認にも用いられる。訪問調査と並ぶ必須資料である。

  4. ×d.  保健所長の許可

    介護保険の保険者は市町村であり、要介護認定を行うのも市町村(判定は市町村に置かれる介護認定審査会)である。保健所は感染症対策や食品衛生など地域保健法に基づく業務を担う機関であり、要介護認定の手続きに保健所長の許可は求められない。

  5. ×e.  ケアプランの作成

    ケアプラン(介護サービス計画)は、認定によって決まった区分ごとの支給限度額の範囲内で、どのサービスをどう組み合わせて利用するかを定める計画である。要介護1~5では居宅介護支援事業所の介護支援専門員(ケアマネジャー)が、要支援1・2では主に地域包括支援センターが介護予防ケアプランを作成する(利用者自身が作成することも制度上は可能)。いずれも認定の後に行う手続きであり、認定に必要なものではない。

介護保険制度の概要

・保険者:市町村および特別区。 ・被保険者:第1号被保険者は65歳以上の者で、原因を問わず要介護・要支援状態になれば給付を受けられる。第2号被保険者は40~64歳の医療保険加入者で、加齢に伴う特定疾病(末期がん、関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症、初老期における認知症、脳血管疾患、パーキンソン病関連疾患など16疾病)が原因の場合に限り給付対象となる。 ・財源:利用者負担(原則1割、所得に応じて2~3割)を除いた給付費を、保険料50%と公費50%でまかなう。

要介護認定の性格

・要介護認定は「介護の手間がどれだけかかるか」を判定するもので、病気の重さとは必ずしも一致しない。たとえば重い病気でも介護の手間が少なければ低い区分となりうる。 ・客観性と公平性を担保するため、コンピュータによる一次判定と、専門家の合議による二次判定の二段階で行う。 ・認定には有効期間があり、更新申請や状態変化時の区分変更申請が可能である。結果に不服がある場合は都道府県に置かれる介護保険審査会に審査請求できる。

認定区分と利用できるサービス

・要支援1・2:介護予防サービス(予防給付)。介護予防ケアマネジメントは地域包括支援センターが担う。 ・要介護1~5:介護サービス(介護給付)。施設サービスのうち特別養護老人ホームへの新規入所は原則要介護3以上。 ・非該当(自立):介護保険の給付対象外だが、市町村の地域支援事業(介護予防・日常生活支援総合事業など)を利用できる場合がある。

POINT

・要介護認定の申請先は市町村(保険者)。 ・認定の資料は「認定調査(訪問調査、74項目の基本調査+特記事項)」と「主治医意見書」の2本柱。 ・一次判定はコンピュータ、二次判定は介護認定審査会(保健・医療・福祉の学識経験者)。 ・ケアプランは認定後にケアマネジャー(要支援では地域包括支援センター)が作成する。 ・保健所は要介護認定に関与しない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。