StudyMed医師国家試験

公費か、自己負担か―おたふくかぜワクチンが「任意」のまま残る理由

第115回医師国家試験 F問題 第11問

国試問題にチャレンジ

第115回 F問題 第11問

予防接種法で任意の予防接種に含まれるのはどれか。

  1. a.MRワクチン
  2. b.水痘ワクチン
  3. c.日本脳炎ワクチン
  4. d.おたふくかぜワクチン
  5. e.ヒトパピローマウイルス〈HPV〉ワクチン

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は予防接種制度の問題だ。日本の予防接種は、予防接種法に基づく「定期接種」と、法に基づかず希望者が受ける「任意接種」の2つに分かれている。選択肢のワクチンのうち、どれが定期接種の枠から外れているかを見抜けるかがポイントだよ。
医学生医学生
公衆衛生の講義で習いましたが、正直どれも小児科で普通に打っているワクチンに見えて、区別がつきにくいです。
ドクタードクター
そう感じる人は多いね。まず制度の違いを整理しよう。定期接種は市町村長が実施主体で、対象年齢や回数が政令などで決まっていて、原則公費負担。万一健康被害が起きたときは予防接種法の救済制度の対象になる。一方、任意接種は原則自己負担で、健康被害は医薬品医療機器総合機構〈PMDA〉法の医薬品副作用被害救済制度で扱われる。
医学生医学生
救済制度まで違うんですね。費用だけの違いだと思っていました。
ドクタードクター
国試ではそこもよく問われるよ。さらに定期接種は、集団予防や重篤化予防に重点を置き本人に接種の努力義務があるA類疾病と、個人の発病・重症化予防が主目的で努力義務のないB類疾病に分かれる。高齢者のインフルエンザや肺炎球菌はB類だ。では、選択肢を見ていこう。麻疹・風疹のMRワクチンはどうかな。
医学生医学生
MRは1歳と小学校入学前の年長さんの2回接種でしたよね。定期接種だと思います。
ドクタードクター
正解。1回だけでは免疫がつかない例や、時間とともに免疫が弱まる例があるから2回接種になっている。水痘ワクチンは?
医学生医学生
小児科実習で、水痘は昔は任意だったと聞いた気がします。今は定期になったんでしょうか。
ドクタードクター
その通り。2014年10月から定期接種になって、生後12か月から36か月未満に2回接種する。定期化以降、小児の水痘患者は大きく減ったんだ。日本脳炎ワクチンも不活化ワクチンで定期接種。標準的には3歳で2回、4歳で追加1回、さらに9歳以上13歳未満で第2期を1回打つ。
医学生医学生
HPVワクチンは、一時期接種が止まっていたので任意になったのかと思っていました。
ドクタードクター
そこがひっかけポイントだね。HPVワクチンは2013年4月に定期接種になり、その直後から積極的勧奨が差し控えられた。でも、定期接種という位置づけ自体は変わっていないんだ。2022年4月に積極的勧奨が再開され、機会を逃した世代へのキャッチアップ接種も行われた。対象は小学6年生から高校1年生相当の女子で、男性への接種は任意接種になる。
医学生医学生
「勧奨を控える」と「定期接種から外す」は別物なんですね。そうなると、残るのはおたふくかぜワクチンですか。
ドクタードクター
正解。おたふくかぜワクチンは今も任意接種のままなんだ。かつては麻疹・おたふくかぜ・風疹の混合であるMMRワクチンが定期接種で使われていたけれど、ムンプスワクチン株による無菌性髄膜炎が多発して1993年に中止された。それ以来、おたふくかぜワクチンは単独の任意接種として残っている。
医学生医学生
MMRの中止が原因だったとは知りませんでした。でも任意だと、接種しない子も出てきますよね。
ドクタードクター
そこが臨床上の課題だ。ムンプスは無菌性髄膜炎や精巣炎のほか、難聴を起こすことがある。多くは片側性で回復しにくいから、子どもの一生に関わる合併症だ。日本小児科学会は1歳以降の早期と就学前の計2回の接種を推奨しているし、自治体によっては費用を助成しているところもある。
医学生医学生
任意だから重要度が低い、というわけではないんですね。外来で保護者に説明するときにも大事そうです。
ドクタードクター
まさにそう。任意接種にはほかにも、小児のインフルエンザ、A型肝炎、曝露前の狂犬病、髄膜炎菌ワクチンなどがある。逆に定期接種のA類には、Hib、小児用肺炎球菌、B型肝炎、ロタウイルス、5種混合、BCG、MR、水痘、日本脳炎、HPVが並ぶ。まず定期接種の一覧を正確に覚えて、そこに入らないものを選ぶ、という解き方が確実だよ。
医学生医学生
生ワクチンと不活化ワクチンの区別もセットで覚えておくと、接種間隔の問題にも対応できそうです。
ドクタードクター
いい心がけだね。注射の生ワクチン同士を別の日に接種するときは27日以上あける。それ以外の組み合わせでは間隔の制限はない。制度は改定が多い分野だから、最新の予防接種スケジュールを確認する習慣もつけておこう。

まとめ

日本の予防接種は、予防接種法に基づき市町村が公費で行う定期接種(A類・B類)と、法に基づかず原則自己負担で受ける任意接種に分かれ、健康被害の救済制度も予防接種法とPMDA法とで異なります。MR、水痘、日本脳炎、HPV(女子)はいずれもA類の定期接種であり、HPVワクチンは積極的勧奨の差し控え期間中も定期接種の位置づけは変わりませんでした。おたふくかぜワクチンは、MMRワクチンが無菌性髄膜炎の多発で1993年に中止されて以降、任意接種として残っています。ムンプスは回復しにくい難聴などの合併症を起こすため、任意であっても2回接種が推奨されています。定期接種の一覧と制度の違いを正確に押さえることは、国試対策だけでなく、保護者への説明や接種勧奨といった日常診療にも直結します。

解答・解説

正解はdです

わが国の予防接種は、予防接種法に基づいて市町村が実施する「定期接種」と、法に基づかず本人(小児では保護者)の希望で受ける「任意接種」とに分けられる。定期接種は対象者・接種年齢・回数が政令等で定められ、原則として公費負担で行われ、健康被害が生じた場合は予防接種法に基づく救済制度の対象となる。一方、任意接種は原則自己負担であり、健康被害の救済は医薬品医療機器総合機構〈PMDA〉法による医薬品副作用被害救済制度で扱われる(自治体が独自に費用助成していることはある)。 本問は、選択肢に挙げられたワクチンのうち、定期接種に組み込まれていないものを選ぶ問題である。小児期のワクチンで代表的な任意接種として残っているのは、おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)ワクチンである。インフルエンザワクチンも小児では任意接種であるが、選択肢にはない。MR、水痘、日本脳炎、HPVの各ワクチンはいずれも定期接種(A類疾病)であり、まず「小児の定期接種の一覧」を正確に覚えておくことで、そこに含まれないものとして正解を絞り込める。

選択肢考察

  1. ×a.  MRワクチン

    MRワクチンは麻疹(measles)と風疹(rubella)の混合生ワクチンであり、定期接種(A類疾病)である。第1期は生後12か月から24か月未満、第2期は小学校就学前の1年間(いわゆる年長児、5歳以上7歳未満)の計2回接種する。1回接種では免疫が獲得されない例(primary vaccine failure)や時間とともに免疫が減弱する例(secondary vaccine failure)があるため、2回接種が採用されている。

  2. ×b.  水痘ワクチン

    水痘ワクチンは弱毒生ワクチン(岡株)であり、2014年10月から定期接種(A類疾病)となった。対象は生後12か月から36か月未満で、2回接種する(標準的には1回目の後6〜12か月の間隔をあけて2回目を接種し、最低3か月以上あける)。定期化以降、小児の水痘患者は大きく減少した。

  3. ×c.  日本脳炎ワクチン

    日本脳炎ワクチンは不活化ワクチンで、定期接種(A類疾病)である。第1期は生後6か月から90か月未満が対象で、標準的には3歳で2回(1〜4週間隔)、その約1年後の4歳で追加1回の計3回を接種する。第2期は9歳以上13歳未満で1回接種する。2005年に旧ワクチン接種後の急性散在性脳脊髄炎〈ADEM〉を契機に積極的勧奨が差し控えられたが、乾燥細胞培養ワクチンの導入後、2010年度に積極的勧奨が再開された。

  4. ○d.  おたふくかぜワクチン

    おたふくかぜ(流行性耳下腺炎、ムンプス)ワクチンは弱毒生ワクチンであり、現在も予防接種法に基づかない任意接種である。わが国ではかつて麻疹・おたふくかぜ・風疹混合〈MMR〉ワクチンが定期接種で用いられたが、ムンプスワクチン株による無菌性髄膜炎の多発が問題となり1993年に中止され、それ以降おたふくかぜワクチンは単独の任意接種として残っている。ムンプスは難聴(多くは片側性で回復しにくい)、無菌性髄膜炎、精巣炎などの合併症を起こすため、日本小児科学会は1歳以降の早期と小学校就学前の計2回の接種を推奨している。

  5. ×e.  ヒトパピローマウイルス〈HPV〉ワクチン

    HPVワクチンは2013年4月から定期接種(A類疾病)であり、対象は小学校6年生から高校1年生相当の女子である。接種後の多様な症状の報告を受けて同年6月から積極的勧奨が差し控えられたが、その間も定期接種の位置づけは変わっていない。安全性に関する評価を経て2022年4月から積極的勧奨が再開され、勧奨差し控え期間に接種機会を逃した世代に対するキャッチアップ接種も実施された。2023年4月からは9価ワクチンも定期接種で使用できるようになった。なお、男性への接種は任意接種である。

定期接種と任意接種の違い

・定期接種:予防接種法に基づき市町村長が実施する。A類疾病(集団予防・重篤化予防に重点を置き、本人に接種の努力義務がある)とB類疾病(個人の発病・重症化予防に重点を置き、努力義務はない)に分かれる。原則公費負担で、健康被害は予防接種法の救済制度の対象となる。 ・任意接種:予防接種法に基づかず、希望者が受ける。原則自己負担で、健康被害はPMDA法の医薬品副作用被害救済制度の対象となる。

主なA類疾病(定期接種)のワクチン

・Hib(インフルエンザ菌b型)、小児用肺炎球菌、B型肝炎、ロタウイルス(2020年10月から定期接種) ・ジフテリア・百日咳・破傷風・ポリオ(DPT-IPV。2024年4月からはHibを加えた5種混合ワクチンが用いられる) ・BCG(結核) ・MR(麻疹・風疹)、水痘、日本脳炎 ・HPV(女子)

主なB類疾病(定期接種)

・高齢者のインフルエンザ ・高齢者の肺炎球菌感染症(23価莢膜多糖体ワクチン) ・新型コロナウイルス感染症(2024年度から高齢者等を対象に定期接種化)

主な任意接種

・おたふくかぜワクチン ・小児(高齢者以外)のインフルエンザワクチン ・A型肝炎ワクチン、狂犬病ワクチン(曝露前)、髄膜炎菌ワクチンなど ・男性のHPVワクチン

生ワクチンと不活化ワクチン

生ワクチン:BCG、MR、水痘、おたふくかぜ、ロタウイルス 不活化ワクチン(トキソイドを含む):DPT-IPV、Hib、肺炎球菌、B型肝炎、日本脳炎、HPV、インフルエンザ 注射生ワクチン同士を別の日に接種する場合は27日以上の間隔をあける。それ以外の組み合わせでは接種間隔の制限はない。

POINT

・おたふくかぜワクチンは現在も任意接種である(MMRワクチンは無菌性髄膜炎の多発により1993年に中止された)。 ・MR、水痘、日本脳炎、HPV(女子)、ロタウイルス、Hib、肺炎球菌、B型肝炎、DPT-IPV、BCGは定期接種(A類疾病)である。 ・HPVワクチンは積極的勧奨が差し控えられていた期間も定期接種のままであり、2022年4月に積極的勧奨が再開された。 ・高齢者のインフルエンザと肺炎球菌はB類疾病である。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。