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生後3か月から3回並ぶワクチンは何か―乳児期スケジュール表の読み解き方

第115回医師国家試験 C問題 第44問

国試問題にチャレンジ

第115回 C問題 第44問

1か月の男児。健康診査のため母親に連れられて来院した。在胎40週,出生体重2,990gであった。周産期に異常はなかった。母親に今後の予防接種のスケジュールについて聞かれたため作成した標準的なスケジュール表を下に示す。  スケジュール表内の(※)にあてはまるワクチンはどれか。

第115回 C問題 第44問の問題画像
  1. a.MRワクチン
  2. b.水痘ワクチン
  3. c.日本脳炎ワクチン
  4. d.4種混合ワクチン
  5. e.おたふくかぜワクチン

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は予防接種スケジュール表の空欄を埋める問題だ。周産期に異常のない正期産児だから、標準的なスケジュールをそのまま当てはめればいい。注目すべきは「いつ始まり、1歳になるまでに何回打つか」という2点だよ。
医学生医学生
表は1歳未満までですよね。空欄の行は生後3か月から始まって、合計3回入っていました。
ドクタードクター
そう。まず、表に載っているほかのワクチンを整理しよう。Hibと肺炎球菌は生後2か月から3回、B型肝炎は2・3か月と7か月の3回、ロタウイルスは2か月から2回、BCGは生後6か月台に1回。乳児期は接種がかなり密集しているんだ。
医学生医学生
公衆衛生の講義で覚えたはずですが、こうして並ぶと混乱します。MRワクチンは1歳からですよね。
ドクタードクター
その通り。MRワクチンは弱毒生ワクチンで、第1期は1歳以上2歳未満に1回、第2期は小学校就学前の1年間に1回。乳児期は母親からの移行抗体が残っていてワクチンウイルスが増えにくく、十分な免疫がつきにくいから1歳まで待つんだ。
医学生医学生
移行抗体が生ワクチンの邪魔をするということですね。水痘ワクチンとおたふくかぜワクチンも同じ理由で1歳以降ですか。
ドクタードクター
そう考えていい。水痘ワクチンは1歳以上3歳未満に2回で、標準的には1回目を生後12〜15か月、2回目はそこから6〜12か月あける。おたふくかぜワクチンは日本ではまだ任意接種で、1歳以降と就学前の計2回が日本小児科学会から推奨されている。どちらも1歳未満の表に3回並ぶことはないね。
医学生医学生
日本脳炎ワクチンは不活化ワクチンなので、乳児期でも打てそうな気がしますが……。
ドクタードクター
鋭い疑問だ。実は1期の法定の対象は生後6か月からなので、乳児期に打つこと自体は可能なんだ。ただ標準的なスケジュールでは、3歳で1期初回を2回、4歳で1期追加を1回、9歳で2期を1回。だから標準的な乳児期の表には出てこない。「法定の対象年齢」と「標準的な接種時期」を区別しておくのがポイントだよ。
医学生医学生
そうなると残るのは4種混合ワクチンですね。ジフテリア、百日咳、破傷風、不活化ポリオの4つ。
ドクタードクター
正解。4種混合ワクチン(DPT-IPV)は不活化ワクチンで、1期初回として20日以上の間隔で3回、さらに1期追加として初回3回目から6か月以上、標準的には12〜18か月あけて1回、合計4回打つ。この児が生まれた当時は、初回の開始が生後3か月からだった。空欄の「3か月から始まる3回」とぴったり合うね。
医学生医学生
4回目の追加接種が表にないのは、1歳を過ぎてから打つからですか。
ドクタードクター
その通り。表が1歳未満までなので、初回の3回だけが載っているわけだ。初回接種の間隔は標準的には20〜56日だけれど、法律上の要件は20日以上なので、表のように少し間が空いても問題はない。
医学生医学生
小児科の臨床実習で、今は5種混合になったと聞いた気がします。
ドクタードクター
よく覚えていたね。2023年4月から4種混合の開始が生後2か月に前倒しされ、2024年4月からはHibを加えた5種混合ワクチン(DPT-IPV-Hib)が定期接種に使われている。今の乳児のスケジュール表では、Hibと4種混合が1本にまとまり、生後2か月から始まる形になっているんだ。過去問は出題当時の制度で作られているから、年度による違いには注意しよう。
医学生医学生
制度が変わると表の見た目も変わるんですね。生ワクチンと不活化ワクチンの区別も整理しておきたいです。
ドクタードクター
大事なところだ。生ワクチンはMR、水痘、おたふくかぜ、BCG、ロタウイルス。不活化ワクチンは4種混合(5種混合)、Hib、肺炎球菌、B型肝炎、日本脳炎。注射の生ワクチン同士を別の日に打つときは27日以上あける必要があるけれど、それ以外の組み合わせの間隔制限は2020年10月に撤廃された。もう一つ、ロタウイルスワクチンの初回は生後14週6日までの接種が推奨されている。初回接種が遅れると腸重積症のリスクが高まるからだ。
医学生医学生
1か月健診で予防接種の話をするのは、生後2か月からのスタートに間に合わせるためでもあるんですね。
ドクタードクター
まさにそう。生後2か月から同時接種を始められるよう、保護者に見通しを伝えておくのは小児科医の大切な役割だよ。

まとめ

乳児期の予防接種スケジュールでは、「何か月から始まり、1歳までに何回打つか」に注目するとワクチンを絞り込めます。生後3か月から3回の接種が並び、追加接種が1歳以降に回る不活化ワクチンは4種混合ワクチン(DPT-IPV)で、初回3回と追加1回の計4回接種します。MR・水痘・おたふくかぜは移行抗体の影響を避けるため1歳以降に接種する生ワクチンで、日本脳炎は法定対象こそ生後6か月からですが標準的には3歳から始めます。現在は4種混合の開始が生後2か月に前倒しされ、2024年からはHibを加えた5種混合ワクチンが使われているなど制度は変化しています。生ワクチンと不活化ワクチンの区別や接種時期を押さえることは、健診で保護者に接種の見通しを伝える小児科診療の基本になります。

解答・解説

正解はdです

症例の整理

在胎40週・出生体重2,990gで周産期に異常のない1か月児であり、早産や低出生体重など接種時期を調整すべき事情はない。したがって、標準的な定期接種スケジュールをそのまま当てはめればよい。

スケジュール表の読み取り

表は2020年1月17日生まれの児について、生後1歳未満(1〜11か月)の接種予定を示したものである。 ・インフルエンザ菌b型(Hib)と肺炎球菌:生後2か月から開始し、3・4か月と計3回 ・B型肝炎:生後2・3か月と7か月の計3回 ・ロタウイルス(1価):生後2・3か月の計2回 ・BCG:生後6か月台に1回 ・(※):生後3か月から開始し、4か月、7か月の計3回

考え方

(※)は「乳児期(1歳未満)に開始し、複数回(3回)接種する」ワクチンである。選択肢のうち乳児期に複数回接種するのは4種混合ワクチン(DPT-IPV)だけである。MRワクチン・水痘ワクチン・おたふくかぜワクチンはいずれも生ワクチンで1歳以降に接種を開始し、日本脳炎ワクチンは標準的には3歳から開始するため、1歳未満のスケジュール表には現れない。 4種混合ワクチンの1期初回接種は、本児の出生当時の制度では生後3か月から開始し、20日以上(標準的には20〜56日)の間隔で3回接種することとされていた。表の(※)の行はこれに合致する。1期追加(4回目)は1歳以降に行うため、1歳未満を示す本表には記載されていない。

選択肢考察

  1. ×a.  MRワクチン

    MRワクチン(麻疹・風疹混合ワクチン)は弱毒生ワクチンである。第1期は生後12〜24か月(1歳以上2歳未満)に1回、第2期は小学校就学前の1年間(いわゆる年長児)に1回接種する。乳児期には母体からの移行抗体が残っていてワクチンウイルスの増殖が妨げられ、十分な免疫がつきにくいため1歳以降に接種する。1歳未満の表に3回並ぶことはない。

  2. ×b.  水痘ワクチン

    水痘ワクチンは弱毒生ワクチンで、2014年から定期接種となった。対象は1歳以上3歳未満で、2回接種する。標準的には1回目を生後12〜15か月に行い、2回目は1回目から6〜12か月の間隔をあけて接種する(最短間隔は3か月)。接種開始は1歳以降であり、表の(※)とは合わない。

  3. ×c.  日本脳炎ワクチン

    日本脳炎ワクチンは不活化ワクチンである。定期接種としての対象は1期が生後6か月〜90か月(7歳6か月)未満、2期が9歳以上13歳未満である。ただし標準的なスケジュールでは、1期初回を3歳で6〜28日の間隔をあけて2回、1期追加をその概ね1年後(4歳)に1回、2期を9歳で1回の計4回接種する。標準的には乳児期に接種しないため、(※)には当てはまらない。

  4. ○d.  4種混合ワクチン

    4種混合ワクチン(DPT-IPV)は、ジフテリア(D)・百日咳(P)・破傷風(T)・不活化ポリオ(IPV)を含む不活化ワクチンである。1期初回として20日以上(標準的には20〜56日)の間隔で3回、さらに1期追加として初回3回目から6か月以上(標準的には12〜18か月)あけて1回、計4回接種する。本児の出生時(2020年)の制度では1期初回の開始は生後3か月からであり、表の(※)の「生後3か月から始まる3回接種」と一致する。1期追加は1歳以降のため本表には載っていない。なお2023年4月から開始時期は生後2か月に前倒しされ、2024年4月からはHibワクチンを加えた5種混合ワクチン(DPT-IPV-Hib)が定期接種に用いられている。

  5. ×e.  おたふくかぜワクチン

    おたふくかぜ(流行性耳下腺炎、ムンプス)ワクチンは弱毒生ワクチンで、日本では現在も任意接種である。1歳以降に1回目を接種し、日本小児科学会は小学校就学前1年間(MRワクチン第2期と同時期)に2回目を行う計2回接種を推奨している。1歳未満で3回接種することはなく、(※)には当てはまらない。

乳児期(1歳未満)の主な定期接種(本児出生時の標準的スケジュール)

・Hibワクチン:生後2か月から開始。初回3回(27日以上の間隔)、初回終了後7〜13か月あけて追加1回 ・小児用肺炎球菌ワクチン:生後2か月から開始。初回3回、1歳以降(標準12〜15か月)に追加1回 ・B型肝炎ワクチン:生後2か月から開始。27日以上の間隔で2回、1回目から139日以上あけて3回目(標準的には生後7〜8か月) ・ロタウイルスワクチン(経口生ワクチン):1価は2回、5価は3回。初回は生後14週6日までに接種することが推奨される(遅い初回接種で腸重積症のリスクが高まるため)。2020年10月から定期接種となった ・4種混合ワクチン(DPT-IPV):1期初回3回、1期追加1回。開始時期は当時生後3か月、2023年4月以降は生後2か月 ・BCG:1歳未満に1回。標準的には生後5〜8か月

1歳以降に始まる主な接種

・MRワクチン:1期(1歳)、2期(就学前1年間) ・水痘ワクチン:1歳以上3歳未満に2回 ・日本脳炎ワクチン:標準的に3歳から1期初回2回、4歳で1期追加、9歳で2期 ・おたふくかぜワクチン:任意接種。1歳以降と就学前の2回が推奨される

生ワクチンと不活化ワクチン

MR・水痘・おたふくかぜ・BCG・ロタウイルスは生ワクチン、DPT-IPV・Hib・肺炎球菌・B型肝炎・日本脳炎は不活化ワクチンである。注射の生ワクチンどうしを別の日に接種する場合は27日以上の間隔をあける。それ以外の組合せでは、接種間隔の制限は撤廃されている(2020年10月改正)。

近年の制度変更

・2023年4月:4種混合ワクチンの接種開始が生後2か月に前倒し ・2024年4月:5種混合ワクチン(DPT-IPV-Hib)が定期接種に導入され、生後2か月から開始となった

POINT

・乳児期(1歳未満)に複数回接種するのはHib・肺炎球菌・B型肝炎・ロタウイルス・4種混合(現在は5種混合)である ・MR・水痘・おたふくかぜは1歳以降に接種する生ワクチンである ・日本脳炎は標準的に3歳から開始する ・4種混合は1期初回3回と1期追加1回の計4回。追加接種は1歳以降のため、1歳未満の表には初回3回のみが載る ・BCGは1歳未満に1回(標準的には生後5〜8か月)接種する

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。