StudyMed医師国家試験

65歳の誕生年度に届く一通の案内―高齢者の定期接種と肺炎球菌ワクチン

第113回医師国家試験 F問題 第26問

国試問題にチャレンジ

第113回 F問題 第26問

定期接種として65歳時に接種が推奨されているワクチンはどれか。

  1. a.麻疹ワクチン
  2. b.肺炎球菌ワクチン
  3. c.髄膜炎菌ワクチン
  4. d.B型肝炎ワクチン
  5. e.インフルエンザ桿菌ワクチン

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は予防接種制度の問題だ。カギは「65歳」という年齢。定期接種にはA類疾病とB類疾病という2つの枠組みがあって、高齢者向けのワクチンがどちらに入るかを押さえていれば解ける。まずA類とB類の違いを覚えているかな。
医学生医学生
公衆衛生の講義で習いました。A類は集団予防が主な目的で、接種の努力義務がある。B類は個人の重症化予防が目的で、努力義務がない、でしたよね。
ドクタードクター
その通り。小児期の定期接種の多くがA類で、高齢者を対象にしたものがB類に入る。この問題が作られた当時、B類の代表は高齢者の肺炎球菌感染症とインフルエンザの2つだった。
医学生医学生
選択肢にインフルエンザ桿菌ワクチンがあるので、一瞬インフルエンザのことかと思いました。
ドクタードクター
そこは引っかけポイントだね。インフルエンザ桿菌、つまりHibは細菌で、インフルエンザウイルスとはまったく別物だ。Hibワクチンは小児の細菌性髄膜炎や急性喉頭蓋炎を防ぐためのA類の定期接種で、生後2か月から5歳未満が対象になる。
医学生医学生
小児科の実習で、乳児健診のときに予防接種スケジュールを確認していました。Hibと小児用肺炎球菌は生後2か月から始まるんですよね。
ドクタードクター
よく覚えているね。では、正解の肺炎球菌ワクチンについて。なぜ高齢者で特に重視されると思う?
医学生医学生
肺炎球菌は市中肺炎の原因菌として一番多いからでしょうか。
ドクタードクター
そう。高齢者では肺炎や、菌血症・髄膜炎といった侵襲性肺炎球菌感染症で亡くなる人が多い。だから65歳の者、つまり65歳になる年度に1回の定期接種が設けられている。さらに60〜64歳でも、心臓・腎臓・呼吸器の機能やHIVによる免疫機能に身体障害者手帳1級相当の障害がある人は対象になるんだ。
医学生医学生
肺炎球菌は小児でも定期接種でしたよね。同じワクチンなんですか。
ドクタードクター
いい疑問だ。高齢者では従来、23価の莢膜多糖体ワクチン、PPSV23が使われてきた。ただ莢膜多糖体はT細胞非依存性抗原なので、2歳未満では十分な免疫がつかず、免疫記憶も誘導しにくい。そこで小児には、多糖体にキャリア蛋白を結合させてT細胞依存性の応答を引き出す結合型ワクチンが使われている。高齢者に使うワクチンも見直しが進められているので、最新の情報を確認してほしい。
医学生医学生
免疫学の講義で習ったT細胞依存性抗原の話がここにつながるんですね。では、麻疹ワクチンは?
ドクタードクター
麻疹は麻疹風疹混合のMRワクチンとして、1歳児と小学校就学前の1年間の2回、A類として接種する。B型肝炎ワクチンも2016年からA類の定期接種になり、1歳未満の乳児に3回接種する。どちらも小児期のワクチンだ。
医学生医学生
髄膜炎菌ワクチンは定期接種のリストに出てこなかった気がします。
ドクタードクター
その通り、日本では任意接種だ。補体欠損症の人、エクリズマブなどの補体阻害薬を使っている人、脾摘後の人、それにアフリカの髄膜炎ベルトのような流行地へ渡航する人や、寮生活をする留学生などに勧められる。
医学生医学生
補体阻害薬の話は血液内科で発作性夜間ヘモグロビン尿症の患者さんを担当したときに聞きました。投与前に髄膜炎菌ワクチンを打つんですよね。
ドクタードクター
よく結びつけられたね。整理すると、65歳時の定期接種として選べるのは肺炎球菌ワクチンだけ、ということになる。
医学生医学生
年齢から「高齢者向け=B類」と考えて、B類の中身を思い出せば答えにたどり着けるんですね。
ドクタードクター
そういうこと。最後に発展知識を。インフルエンザも65歳以上が対象のB類で、こちらは毎年1回接種する。さらにこの試験の後、新型コロナウイルス感染症が2024年度から、帯状疱疹が2025年度からB類の定期接種に加わった。予防接種の制度はよく変わるから、臨床に出てからも最新の情報を確認する習慣をつけておこう。

まとめ

日本の定期接種はA類疾病(集団予防が主目的で努力義務あり)とB類疾病(個人の重症化予防が主目的で努力義務なし)に分かれ、高齢者向けの肺炎球菌ワクチンはB類として65歳になる年度に1回接種します。肺炎球菌は市中肺炎の最多原因菌で、高齢者では肺炎や侵襲性肺炎球菌感染症による死亡が多いことが背景にあります。麻疹(MR)、B型肝炎、Hibは小児期のA類定期接種であり、髄膜炎菌ワクチンは補体欠損や補体阻害薬使用、無脾、流行地渡航などで勧められる任意接種です。高齢者のB類にはインフルエンザ(毎年)に加え、その後新型コロナウイルス感染症や帯状疱疹も加わりました。制度は改正で変わるため、対象年齢と枠組みを理解したうえで最新情報を確認する姿勢が、予防医療を担う医師に求められます。

解答・解説

正解はbです

日本の予防接種法に基づく定期接種は、A類疾病とB類疾病に分けられる。 ・A類疾病:集団予防や重い疾患の予防を主な目的とし、対象者に接種の努力義務がある。小児期のワクチンの多く(麻疹・風疹、Hib、小児の肺炎球菌、B型肝炎、DPT-IPVなど)がこれにあたる。 ・B類疾病:主に個人の発症・重症化予防を目的とし、努力義務はない。高齢者を対象とする肺炎球菌感染症とインフルエンザが代表である。 本問は「65歳時」の定期接種を問うており、高齢者向けのB類疾病のワクチンを選べばよい。選択肢のうち高齢者の定期接種に該当するのは肺炎球菌ワクチンであり、その他は小児期の定期接種(麻疹、B型肝炎、インフルエンザ桿菌)か、定期接種ではない任意接種(髄膜炎菌)である。 高齢者で肺炎球菌ワクチンが重視されるのは、肺炎球菌が市中肺炎の最も多い原因菌であり、高齢者では肺炎や侵襲性肺炎球菌感染症(菌血症、髄膜炎など)による死亡が多いためである。

選択肢考察

  1. ×a.  麻疹ワクチン

    麻疹は通常、麻疹風疹混合(MR)ワクチンとして小児期に定期接種(A類)される。第1期は1歳児(生後12か月から24か月未満)、第2期は小学校就学前の1年間(いわゆる年長児)の計2回である。65歳時の定期接種ではない。

  2. ○b.  肺炎球菌ワクチン

    高齢者の肺炎球菌感染症はB類疾病の定期接種に位置づけられ、65歳の者(65歳となる年度に1回)が対象である。また、60歳以上65歳未満で、心臓・腎臓・呼吸器の機能やヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫の機能に障害があり、身体障害者手帳1級相当の者も対象となる。従来は23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV23)が用いられてきた(使用するワクチンは見直しが進められている)。なお、肺炎球菌ワクチンは小児(生後2か月から5歳未満)でもA類疾病の定期接種として、結合型ワクチンが使われている。

  3. ×c.  髄膜炎菌ワクチン

    髄膜炎菌ワクチンは日本では定期接種に含まれず、任意接種である。侵襲性髄膜炎菌感染症のリスクが高い者(補体欠損症、エクリズマブなどの補体阻害薬を使用中の者、無脾症・脾摘後など)や、流行地域(アフリカの髄膜炎ベルトなど)への渡航者、寮などで集団生活をする者(留学先で接種を求められる場合を含む)に接種が勧められる。

  4. ×d.  B型肝炎ワクチン

    B型肝炎ワクチンは2016年10月から定期接種(A類)となり、1歳に至るまでの乳児が対象である。標準的には生後2か月、3か月、7〜8か月の計3回接種する。HBs抗原陽性の母親から生まれた児に対する母子感染予防(出生直後からのワクチンとHBs抗体含有免疫グロブリン投与)は、定期接種とは別に健康保険で行う。65歳時の定期接種ではない。

  5. ×e.  インフルエンザ桿菌ワクチン

    インフルエンザ菌b型(Hib)ワクチンは、小児の細菌性髄膜炎や急性喉頭蓋炎の予防を目的としたA類の定期接種で、生後2か月から5歳未満が対象である。標準的には初回接種3回(4〜8週間隔)と、初回接種終了後7〜13か月あけて追加接種1回の計4回を行う。2024年度からは、ジフテリア・百日咳・破傷風・ポリオとの5種混合ワクチンとして接種されることが多い。65歳時の定期接種ではない。

成人・高齢者を対象とする主な定期接種(B類疾病)

・肺炎球菌感染症(高齢者):65歳の者、および60〜64歳で心臓・腎臓・呼吸器・HIVによる免疫機能に身体障害者手帳1級相当の障害がある者。生涯に1回。 ・インフルエンザ:65歳以上の者、および60〜64歳で上記と同様の障害がある者。毎年1回。 ・本試験以降に追加されたものとして、新型コロナウイルス感染症(2024年度から)、帯状疱疹(2025年度から、65歳の者など)もB類疾病の定期接種となっている。

成人に関連するその他の定期接種

・風疹の追加的対策:抗体保有率の低い世代の成人男性(1962年4月2日〜1979年4月1日生まれ)を対象に、抗体検査と、抗体が不十分な場合のMRワクチン接種が行われた(期間限定の措置)。

肺炎球菌ワクチンの種類

・莢膜多糖体ワクチン(PPSV23):23種類の莢膜型を含み、主に高齢者に用いられてきた。T細胞非依存性の抗原であるため、2歳未満では十分な免疫がつかず、免疫記憶も誘導しにくい。 ・結合型ワクチン(PCV):莢膜多糖体にキャリア蛋白を結合させ、T細胞依存性の免疫応答を引き出す。乳児にも有効で、小児の定期接種に用いられる。成人用にも結合型ワクチンが承認されている。

小児の主な定期接種の時期(A類疾病)

・Hib、小児用肺炎球菌:生後2か月から。 ・B型肝炎:生後2か月から、1歳未満に3回。 ・ロタウイルス:生後6週から(経口生ワクチン)。 ・5種混合(DPT-IPV-Hib):生後2か月から。 ・BCG:1歳未満(標準は生後5〜8か月)。 ・MR、水痘:1歳から。 ・日本脳炎:標準は3歳から。 ・HPV:小学6年生〜高校1年生相当の女子。 予防接種の対象やスケジュールは制度改正で変わることがあるため、最新の情報を確認する習慣をもつことが大切である。

POINT

・65歳時の定期接種(B類疾病):肺炎球菌ワクチン(生涯1回)、インフルエンザワクチン(毎年)。 ・B類疾病は個人の重症化予防が目的で、接種の努力義務はない。 ・60〜64歳でも、心臓・腎臓・呼吸器・HIVによる免疫機能の障害(身体障害者手帳1級相当)があれば対象。 ・麻疹(MR)、B型肝炎、Hibは小児期の定期接種(A類)。 ・髄膜炎菌ワクチンは任意接種(補体欠損、補体阻害薬使用、無脾、流行地渡航などで推奨)。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。