その相談、どこの窓口?―「誰が設置し、何をする機関か」で解く地域の保健・福祉マップ
第113回医師国家試験 C問題 第20問
国試問題にチャレンジ
地域における保健,医療,福祉および介護の各組織とその機能の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。
- a.児童相談所 ―― 発達障害児の療育相談
- b.地方衛生研究所 ―― 医療事故調査と原因究明
- c.社会福祉協議会 ―― 生活保護の受給手続き受付
- d.市町村保健センター ―― 自立支援医療の指定提供機関の指定
- e.地域包括支援センター ―― 高齢者虐待の被害者の保護
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
地域の保健・医療・福祉・介護に関わる機関は、「設置主体」と「機能(相談・保護か、検査・研究か、行政処分か)」の2軸で整理すると区別しやすくなります。児童相談所は都道府県・指定都市に設置義務があり、発達障害児の療育相談を含む障害相談や一時保護を担い、地域包括支援センターは市町村が設置して権利擁護業務として高齢者虐待への対応を担います。一方、医療事故調査は院内調査と医療事故調査・支援センター、生活保護の申請は福祉事務所、自立支援医療機関の指定は都道府県知事などが担当し、地方衛生研究所・社会福祉協議会・市町村保健センターの役割ではありません。患者を適切な窓口につなぐ知識は、虐待の発見や退院後の生活支援など、臨床医が地域で果たす役割の土台になります。
解答・解説
正解はa, eです
地域の保健・医療・福祉・介護に関わる公的機関や団体について、それぞれの設置主体と主な役割を正しく結びつけられるかを問う問題である。 名称が似ていたり、業務が重なって見えたりする機関が多いため、「誰が設置するか(都道府県か、市町村か、民間か)」と「何をする機関か(相談・保護か、検査・研究か、行政処分か)」の2点で整理すると判断しやすい。 ・児童相談所:都道府県・指定都市が設置する、18歳未満の子どもに関する専門的な相談・判定・保護の機関。 ・地方衛生研究所:都道府県・指定都市などに置かれる、公衆衛生に関する試験検査・調査研究の機関。 ・社会福祉協議会:社会福祉法に基づく民間の非営利団体で、地域福祉活動を推進する。 ・市町村保健センター:住民に身近な健康づくり・母子保健などの対人保健サービスを提供する場。 ・地域包括支援センター:市町村(またはその委託先)が設置する、高齢者の総合相談・権利擁護・介護予防などの拠点。 「医療事故調査」「生活保護の申請受付」「自立支援医療機関の指定」は、それぞれ別の機関・行政庁が担う業務であり、選択肢b・c・dは組合せが誤っている。正しい組合せは、児童相談所と発達障害児の療育相談、地域包括支援センターと高齢者虐待の被害者の保護である。
選択肢考察
- ○a. 児童相談所 ―― 発達障害児の療育相談
児童相談所は児童福祉法に基づき都道府県・指定都市に設置が義務づけられた機関で、児童福祉司、児童心理司、医師などが配置されている。受け付ける相談は養護相談(虐待を含む)、障害相談、非行相談、育成相談、保健相談などに分類され、発達障害や知的障害のある子どもの療育に関する相談は障害相談に含まれる。また、知的障害児の療育手帳の判定も行う。組合せとして正しい。
- ×b. 地方衛生研究所 ―― 医療事故調査と原因究明
地方衛生研究所は、感染症の病原体検査、食品や水の検査、公衆衛生情報(感染症発生動向など)の収集・解析、調査研究などを担う科学的・技術的な中核機関であり、医療事故の調査は行わない。医療事故については、2015年10月に始まった医療事故調査制度(医療法)により、予期せぬ死亡・死産が起きた場合、まず当該医療機関が院内調査を行い、第三者機関である医療事故調査・支援センターに報告する。同センターは報告の整理・分析や、遺族・医療機関からの依頼による調査を行う。組合せは誤りである。
- ×c. 社会福祉協議会 ―― 生活保護の受給手続き受付
生活保護の申請は、原則として居住地を所管する福祉事務所(都道府県・市は設置義務、町村は任意設置)で受け付け、福祉事務所が調査のうえ保護の要否を決定する。社会福祉協議会は民間の非営利団体で、ボランティア活動の推進、生活福祉資金の貸付、判断能力が不十分な人の福祉サービス利用や金銭管理を支える日常生活自立支援事業などを行うが、生活保護の申請受付は行わない。組合せは誤りである。
- ×d. 市町村保健センター ―― 自立支援医療の指定提供機関の指定
自立支援医療(精神通院医療・更生医療・育成医療)を提供する医療機関の指定は、障害者総合支援法に基づき都道府県知事(指定都市・中核市では市長が担う場合もある)が行う行政処分である。市町村保健センターは、乳幼児健診、健康相談、保健指導、予防接種など、住民に身近な対人保健サービスを提供する場であり、医療機関を指定する権限はもたない。組合せは誤りである。
- ○e. 地域包括支援センター ―― 高齢者虐待の被害者の保護
地域包括支援センターは介護保険法に基づき市町村が設置(委託も可)する機関で、保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員(ケアマネジャー)が配置される。業務の柱は、総合相談支援、権利擁護、包括的・継続的ケアマネジメント支援、介護予防ケアマネジメントである。権利擁護業務として、高齢者虐待の早期発見・通報への対応、被害者の安全確保・保護に向けた支援、成年後見制度の活用支援、消費者被害の防止などを担う。高齢者虐待防止法上の対応責任主体は市町村であるが、地域包括支援センターはその窓口・実務を担う中心的な機関であり、組合せとして正しい。
主な機関の整理
・保健所:地域保健法に基づき都道府県・指定都市・中核市・特別区などが設置。広域的・専門的な業務(感染症対策、食品衛生、環境衛生、医療監視、精神保健、難病対策など)を担う。 ・市町村保健センター:地域保健法に基づき市町村が設置できる。乳幼児健診、母子健康手帳の交付(交付は市町村の業務)、健康相談、健康教育など住民に身近なサービスを行う。 ・地方衛生研究所:試験検査、調査研究、研修指導、公衆衛生情報の収集・解析・提供。 ・児童相談所:都道府県・指定都市に設置義務(中核市・特別区も設置可)。相談、調査・判定、指導、一時保護、施設入所などの措置に関わる。 ・福祉事務所:社会福祉法に基づく。生活保護法を含む福祉六法に関する事務(町村設置の場合などで業務範囲は異なる)。 ・社会福祉協議会:社会福祉法に基づく民間団体。地域福祉の推進、ボランティアセンター、生活福祉資金貸付、日常生活自立支援事業など。 ・地域包括支援センター:介護保険法に基づき市町村が設置。総合相談支援、権利擁護(虐待対応・成年後見制度の活用支援)、包括的・継続的ケアマネジメント支援、介護予防ケアマネジメント。 ・医療事故調査・支援センター:医療法に基づき厚生労働大臣が指定する第三者機関。医療機関からの医療事故の報告の受理・分析、調査、再発防止の普及啓発を行う。
高齢者虐待防止法
虐待を受けたと思われる高齢者を発見した者は市町村に通報する(生命・身体に重大な危険がある場合は義務、それ以外は努力義務)。市町村は事実確認を行い、必要に応じて老人福祉法に基づく措置により一時的に施設へ保護するなどの対応をとる。地域包括支援センターは市町村と連携してこれらの実務を担う。
POINT
・児童相談所:都道府県・指定都市に設置義務、障害相談(発達障害の療育相談を含む)、一時保護 ・地域包括支援センター:保健師・社会福祉士・主任ケアマネジャー、権利擁護として高齢者虐待対応 ・生活保護の申請は福祉事務所(社会福祉協議会ではない) ・自立支援医療機関の指定は都道府県知事など(保健センターではない) ・医療事故調査は院内調査+医療事故調査・支援センター(地方衛生研究所ではない)
