StudyMed医師国家試験

「全員が、全員を」届け出る―梅毒で学ぶ全数把握と定点把握の境界線

第111回医師国家試験 D問題 第10問

国試問題にチャレンジ

第111回 D問題 第10問

感染症法に基づき,すべての医師がすべての患者の発生について届出を行うのはどれか。

  1. a.水痘
  2. b.梅毒
  3. c.突発性発疹
  4. d.伝染性紅斑
  5. e.性器ヘルペス

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は感染症法の届出制度の問題だ。問題文の「すべての医師が、すべての患者について」という言い回しが何を意味するのか、そこに気づけるかどうかがカギになる。
医学生医学生
公衆衛生の講義で、届出には全数把握と定点把握があると習いました。これは全数把握のことですよね。
ドクタードクター
その通り。全数把握は、その病気を診断した医師なら誰でも、患者一人ひとりについて保健所長を通じて都道府県知事に届け出る仕組み。一方の定点把握は、都道府県があらかじめ指定した医療機関、いわゆる定点医療機関だけが、患者数を週や月ごとにまとめて報告する仕組みなんだ。
医学生医学生
定点把握は、流行の傾向をつかむためのサンプル調査のようなものでしょうか。
ドクタードクター
いいたとえだね。患者数の多いありふれた感染症まで一例ずつ届け出させるのは現実的でないから、代表となる医療機関の数字で流行の動きを見る。逆に、一例一例を確実に把握して対策につなげたい病気は全数把握にする。1類から4類感染症はすべて全数把握で、直ちに届け出る決まりだ。
医学生医学生
今回の選択肢は、全部5類感染症ですよね。5類なら定点把握だと思っていました。
ドクタードクター
そこが落とし穴。5類には全数把握の疾患と定点把握の疾患が混ざっているんだ。だから「5類かどうか」では決まらず、病気ごとに覚えておく必要がある。この中で全数把握なのは梅毒だ。診断した医師は7日以内に届け出る。無症状の病原体保有者も対象になる。
医学生医学生
梅毒は最近すごく増えているとニュースで見ました。
ドクタードクター
そうなんだ。報告数の急増がわかるのも、全数把握で一例ずつデータが集まっているからこそ。では水痘はどうかな。
医学生医学生
小児科の実習で水痘の子を診たとき、届出の話は出なかった気がします。定点把握ですか。
ドクタードクター
基本は小児科定点の週単位報告だね。ただし、入院を要した水痘に限っては全数把握の対象になる。外来で診た水痘まですべて届け出るわけではないから、「すべての患者」には当てはまらない。突発性発疹と伝染性紅斑も小児科定点の疾患だ。
医学生医学生
突発性発疹はHHV-6、伝染性紅斑はパルボウイルスB19でしたね。どちらも小児科でよく見るありふれた病気だから定点、と考えると納得できます。
ドクタードクター
その発想で整理するといい。最後に性器ヘルペスはどうだろう。
医学生医学生
梅毒と同じ性感染症なので、全数把握かと迷いました。
ドクタードクター
迷いやすいところだね。性器ヘルペスは性感染症定点で、月単位の報告になる。性器クラミジア感染症、淋菌感染症、尖圭コンジローマも同じ性感染症定点だ。性感染症の中で梅毒だけが全数把握、と対比して覚えよう。
医学生医学生
同じ性感染症でも扱いが違うんですね。ほかに5類の全数把握にはどんな疾患がありますか。
ドクタードクター
代表的なのは、後天性免疫不全症候群、E型とA型を除くウイルス性肝炎、クロイツフェルト・ヤコブ病、破傷風、百日咳、侵襲性肺炎球菌感染症、急性脳炎、劇症型溶血性レンサ球菌感染症などだね。5類全数は原則7日以内だけど、麻疹、風疹、侵襲性髄膜炎菌感染症は直ちに届け出る、という例外も押さえておきたい。
医学生医学生
5類でも「直ちに」があるんですね。CBTの勉強のときはそこまで意識していませんでした。
ドクタードクター
臨床に出ると、届出は医師自身の法的義務になる。特に梅毒は皮膚科、泌尿器科、産婦人科、内科とどこでも出会いうるし、妊婦健診で見つかれば先天梅毒の予防にも直結する。診断したら届出を忘れない習慣をつけておこう。

まとめ

感染症法の届出には、診断したすべての医師が患者一人ひとりを届け出る全数把握と、指定された定点医療機関だけが週・月単位で患者数を報告する定点把握があります。1〜4類感染症はすべて全数把握ですが、5類感染症には両者が混在しており、梅毒は5類の全数把握疾患として7日以内の届出が必要です。水痘は小児科定点(入院例のみ全数把握)、突発性発疹と伝染性紅斑は小児科定点、性器ヘルペスは性感染症定点で月単位の報告となります。同じ性感染症でも梅毒だけが全数把握という対比や、麻疹・風疹など5類でも直ちに届け出る疾患を整理しておくことは、試験対策だけでなく、診断した医師としての法的義務を確実に果たすうえで重要です。

解答・解説

正解はbです

感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)では、感染症を1類〜5類などに分類し、類型ごとに医師の届出方法を定めている。本問の「すべての医師がすべての患者の発生について届出を行う」とは全数把握(全数報告)のことであり、選択肢の中から全数把握の対象疾患を選ぶ問題である。

届出の2つの仕組み

・全数把握:疾患を診断したすべての医師が、患者一人ひとりについて保健所長を経由して都道府県知事に届け出る。1〜4類感染症、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症、および5類感染症の一部がこれにあたる。 ・定点把握:都道府県があらかじめ指定した医療機関(指定届出機関、いわゆる定点医療機関)だけが、患者数を週単位または月単位でまとめて報告する。流行の動向をつかむことが目的であり、5類感染症の多くがこの方式である。

解き方

選択肢はいずれも5類感染症である。5類には全数把握の疾患と定点把握の疾患が混在しているため、5類であることだけでは決まらず、個々の疾患がどちらの方式かを覚えておく必要がある。梅毒は5類の全数把握疾患で、診断した医師は7日以内に届け出る。他の4疾患は定点把握(水痘は入院例のみ全数把握が加わる)である。

選択肢考察

  1. ×a.  水痘

    誤り。水痘は5類感染症で、小児科定点医療機関が週単位で患者数を報告する定点把握の対象である。加えて、入院を要した水痘(入院例)に限っては全数把握の対象となり、診断した医師が届け出る。しかし外来で診療した水痘患者すべてを届け出るわけではないため、「すべての患者」の届出にはあたらない。

  2. ○b.  梅毒

    正しい。梅毒(Treponema pallidumによる感染症)は5類感染症の全数把握対象疾患であり、診断したすべての医師が、すべての患者(無症状病原体保有者を含む)について7日以内に保健所へ届け出なければならない。近年、国内の梅毒報告数は大きく増加しており、全数把握のデータが流行状況の把握と対策に活用されている。

  3. ×c.  突発性発疹

    誤り。突発性発疹はヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6、一部は7型)による乳幼児の感染症で、5類感染症の定点把握疾患である。小児科定点医療機関のみが週単位で報告する。

  4. ×d.  伝染性紅斑

    誤り。伝染性紅斑(りんご病)はヒトパルボウイルスB19による感染症で、5類感染症の定点把握疾患である。小児科定点医療機関のみが週単位で報告する。

  5. ×e.  性器ヘルペス

    誤り。性器ヘルペスウイルス感染症は単純ヘルペスウイルス(主に2型、近年は1型も多い)による性感染症で、5類感染症の定点把握疾患である。性感染症定点医療機関のみが月単位で報告する。同じ性感染症でも、梅毒は全数把握、性器クラミジア感染症・淋菌感染症・尖圭コンジローマ・性器ヘルペスは定点把握と、扱いが分かれる点に注意する。

感染症法における届出の概要

・1類〜4類感染症:全数把握。診断したすべての医師が直ちに届け出る。 ・5類感染症(全数把握):診断したすべての医師が原則7日以内に届け出る(麻疹、風疹、侵襲性髄膜炎菌感染症は直ちに届け出る)。例:梅毒、後天性免疫不全症候群(AIDS)、ウイルス性肝炎(E型・A型を除く)、クロイツフェルト・ヤコブ病、破傷風、百日咳、侵襲性肺炎球菌感染症、急性脳炎、劇症型溶血性レンサ球菌感染症、カルバペネム耐性腸内細菌目細菌感染症、水痘(入院例に限る)など。 ・5類感染症(定点把握):指定届出機関が週または月ごとに報告する。

主な定点の種類と代表的な疾患

・小児科定点(週単位):水痘、突発性発疹、伝染性紅斑、手足口病、ヘルパンギーナ、流行性耳下腺炎、咽頭結膜熱、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎、感染性胃腸炎、RSウイルス感染症など。 ・眼科定点(週単位):流行性角結膜炎、急性出血性結膜炎。 ・性感染症定点(月単位):性器クラミジア感染症、性器ヘルペスウイルス感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症。 ・基幹定点(週または月単位):マイコプラズマ肺炎、細菌性髄膜炎、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症など。 ・インフルエンザなどの呼吸器感染症にも定点が設けられている(定点の区分は制度改正により見直されることがある)。

届出の経路

医師 → 最寄りの保健所長 → 都道府県知事(→ 厚生労働大臣へ報告)。

POINT

・「すべての医師がすべての患者を届け出る」=全数把握。 ・1〜4類感染症はすべて全数把握(直ちに届出)。 ・5類は全数把握と定点把握が混在する。梅毒は5類全数把握(7日以内)。 ・水痘は小児科定点だが、入院例のみ全数把握。 ・突発性発疹・伝染性紅斑は小児科定点、性器ヘルペスは性感染症定点(月単位)。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。