「生きている」ワクチンは次を待たせる―接種間隔を決めるウイルス干渉の仕組み
第108回医師国家試験 E問題 第35問
国試問題にチャレンジ
予防接種後,他の種類の予防接種までに4週以上の間隔をおいた方が良いのはどれか。2つ選べ。
- a.水痘
- b.日本脳炎
- c.B型肝炎
- d.ムンプス
- e.インフルエンザ
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
生ワクチンは弱毒化した病原体が体内で増殖して免疫をつけるため、接種後しばらくは自然免疫が活性化し、別の生ワクチンを打つとウイルス干渉で効果が弱まるおそれがあります。そのため出題当時は生ワクチン接種後27日以上(約4週)、不活化ワクチン接種後6日以上の間隔が定められており、選択肢では生ワクチンである水痘とムンプスが該当し、日本脳炎・B型肝炎・注射のインフルエンザは不活化ワクチンです。2020年10月の改正後は、制限が「注射生ワクチンから別の注射生ワクチンへは27日以上」に限られましたが、生ワクチンの後に間隔が必要という本質は変わりません。同時接種は生ワクチン同士でも可能で、生ワクチンは妊婦・免疫不全者に原則禁忌、γグロブリン投与後は接種を延期するなど、増殖するという性質から関連事項を一貫して理解することが、予防接種の実務と試験の両方で役立ちます。
解答・解説
正解はa, dです
本問は、ワクチンの種類(生ワクチンか不活化ワクチンか)によって、次に別のワクチンを打つまでの間隔が異なることを問うている。
考え方
生ワクチンは、病原性を弱めた生きた病原体を接種し、体内で増殖させて免疫を獲得させる製剤である。接種後しばらくは体内でウイルスが増殖し、インターフェロンなどの自然免疫が活性化した状態になる。この時期に別の生ワクチンを接種すると、後から入ったワクチンウイルスの増殖が抑えられ、十分な免疫がつかない(ウイルス干渉)おそれがある。そのため、生ワクチン接種後は4週間(27日以上)空けてから次のワクチンを接種するのが原則とされてきた。 一方、不活化ワクチン(組換えタンパク・トキソイドを含む)は体内で増殖しないため、このような干渉は起こらない。本問出題時点の制度では、不活化ワクチン接種後に別のワクチンを打つ場合は1週間(6日以上)の間隔をおくこととされていた。 したがって、選択肢の中から生ワクチンを選べばよい。水痘ワクチンとムンプス(流行性耳下腺炎)ワクチンが生ワクチンであり、日本脳炎・B型肝炎・インフルエンザ(通常の注射製剤)は不活化ワクチンである。
現行制度との関係
2020年10月に予防接種実施規則が改正され、接種間隔の規定が見直された。現在は「注射生ワクチンの後に別の注射生ワクチンを接種する場合は27日以上あける」という制限のみが残り、それ以外の組み合わせ(不活化→不活化、不活化→生、生→不活化、経口生ワクチンが関わる場合など)には間隔の制限がない。現行制度でも、4週程度の間隔が必要になりうるのは注射生ワクチンの後という点は変わらず、本問の正解(a、d)は維持される。
選択肢考察
- ○a. 水痘
水痘ワクチンは水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の弱毒株(岡株)を用いた生ワクチンである。接種後に体内でワクチンウイルスが増殖するため、別の生ワクチンとの干渉を避ける目的で、次の接種まで4週(27日以上)あけることが求められる。2014年10月から定期接種(1歳以上3歳未満に2回)となっている。
- ×b. 日本脳炎
現在使われている日本脳炎ワクチンは、Vero細胞(培養細胞)でウイルスを増やして不活化した不活化ワクチンである。体内で増殖しないため他のワクチンとの干渉は問題にならず、出題当時の規定では1週間(6日以上)の間隔で足りた。現行制度では、接種後の間隔制限は設けられていない。
- ×c. B型肝炎
B型肝炎ワクチンは、遺伝子組換え技術で酵母などに作らせたHBs抗原(B型肝炎ウイルスの表面抗原)を成分とする組換えタンパクワクチンであり、不活化ワクチンに分類される。病原体を含まず増殖しないので、出題当時は1週間の間隔で他のワクチンを接種でき、現在は間隔の制限はない。2016年10月から乳児の定期接種(計3回)となった。
- ○d. ムンプス
ムンプス(流行性耳下腺炎、おたふくかぜ)ワクチンは弱毒ムンプスウイルスを用いた生ワクチンである。接種後にウイルスが増殖するため、別の生ワクチンを打つまで4週(27日以上)の間隔が必要となる。日本では現在も任意接種であり、欧米で用いられるMMR(麻疹・ムンプス・風疹)混合ワクチンは、国内では過去に無菌性髄膜炎の多発を受けて使用が中止された経緯がある。
- ×e. インフルエンザ
日本で一般に用いられる注射のインフルエンザワクチンは、ウイルスを分解して表面のヘマグルチニン(HA)を主体に精製した不活化ワクチン(HAワクチン)である。増殖しないため干渉の問題はなく、出題当時の規定で1週間の間隔でよく、現行制度では制限はない。なお2023年度からは経鼻投与の弱毒生インフルエンザワクチンも国内で使用可能となったが、本問の出題時点では存在せず、通常「インフルエンザワクチン」といえば注射の不活化製剤を指す。
主なワクチンの分類
生ワクチン: BCG、麻疹・風疹(MR)、水痘、ムンプス、ロタウイルス(経口)、黄熱、経鼻インフルエンザ(弱毒生)など。 不活化ワクチン(組換え・トキソイドを含む): 日本脳炎、B型肝炎、インフルエンザ(注射)、Hib(インフルエンザ菌b型)、肺炎球菌、DPT-IPV(ジフテリア・百日咳・破傷風・不活化ポリオ)、HPV(ヒトパピローマウイルス)、A型肝炎、狂犬病など。ジフテリア・破傷風はトキソイド(毒素を無毒化したもの)である。
接種間隔の変遷
2020年9月まで: 生ワクチン接種後は27日以上、不活化ワクチン接種後は6日以上あけて、別の種類のワクチンを接種する。 2020年10月以降: 注射生ワクチンから別の注射生ワクチンへは27日以上あける。それ以外の組み合わせに間隔の制限はない。 いずれの時期も、同じワクチンを複数回接種する場合は、各ワクチンで定められた接種間隔を守る必要がある。
同時接種
医師が必要と認めれば、複数のワクチン(生ワクチン同士を含む)を同じ日に別の部位へ接種する同時接種が可能である。同時に打てば干渉の問題は生じにくいと考えられており、乳児期の多数の定期接種を効率よく進めるために推奨されている。
その他の注意
生ワクチンは、妊婦や免疫不全者(免疫抑制療法中を含む)には原則禁忌である。また、輸血やγグロブリン製剤の投与を受けた後は、含まれる抗体によってワクチンウイルスが中和されるため、麻疹・風疹などの注射生ワクチンの接種を一定期間(通常3か月以上、大量投与では6か月以上)延期する。
POINT
・接種間隔が長く必要なのは生ワクチンの後(27日以上、約4週)。理由はウイルス干渉による効果減弱の防止。 ・水痘・ムンプス・麻疹・風疹・BCG・ロタは生ワクチン、日本脳炎・B型肝炎・インフルエンザ(注射)は不活化ワクチン。 ・2020年10月以降、間隔制限は「注射生ワクチン→注射生ワクチン:27日以上」のみ。それ以外の組み合わせは制限なし。
