StudyMed医師国家試験

「介護保険のもの」だけじゃない―訪問看護ステーションを支える2つの保険と指示書のしくみ

第108回医師国家試験 E問題 第3問

国試問題にチャレンジ

第108回 E問題 第3問

訪問看護ステーションについて正しいのはどれか。

  1. a.介護保険が利用できる。
  2. b.40歳未満は利用できない。
  3. c.全国に約50か所設置されている。
  4. d.管理者は医師でなければならない。
  5. e.医師の指示書なしで訪問看護を利用できる。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は在宅医療の要、訪問看護ステーションの制度を問う問題だ。押さえるべき視点は4つ。費用をまかなう保険、利用できる年齢、管理者の資格、そして訪問を始めるための条件。この4つを整理できれば迷わず解けるよ。
医学生医学生
訪問看護というと、介護保険のサービスというイメージが強いです。公衆衛生の講義でも、介護保険の居宅サービスの一覧に入っていました。
ドクタードクター
そのイメージは半分正解なんだ。訪問看護は介護保険法に定められた居宅サービスの一つで、要介護・要支援の認定を受けた人は介護保険で利用できる。要介護認定を受けている人は、原則として介護保険が優先されるね。だから、介護保険が利用できるという記述は正しい。
医学生医学生
半分、というのはどういう意味ですか。
ドクタードクター
訪問看護は医療保険でも利用できる、という点がもう半分だ。歴史的には1992年に高齢者向けの老人訪問看護制度として始まり、1994年の健康保険法改正で年齢を問わず使えるようになった。2000年の介護保険開始後に、介護保険のサービスにも位置づけられたんだ。つまり2本立ての制度なんだよ。
医学生医学生
そうすると、40歳未満は利用できない、というのは介護保険の被保険者の年齢と混同させるひっかけですね。
ドクタードクター
その通り。40歳以上というのは介護保険の被保険者の条件で、65歳以上が第1号、40〜64歳が第2号被保険者だ。訪問看護そのものの年齢制限ではない。40歳未満の人は医療保険で訪問看護を受けられる。
医学生医学生
小児科の臨床実習で、人工呼吸器をつけたお子さんが自宅に帰るときに訪問看護の調整をしていたのを思い出しました。
ドクタードクター
いい経験をしたね。医療的ケア児、若年の神経難病や精神疾患の患者さん、若くしてがん末期になった人など、40歳未満の利用者は実際に多いんだ。次に、要介護認定があっても医療保険で行われる例外も知っておこう。末期の悪性腫瘍、ALSやパーキンソン病関連疾患など厚生労働大臣が定める疾病等、精神科訪問看護、それから主治医が特別訪問看護指示書を出した期間だ。
医学生医学生
特別訪問看護指示書というのは初めて聞きました。
ドクタードクター
急性増悪や退院直後、終末期などで頻回の訪問が必要なときに主治医が交付するもので、原則月1回、最長14日間、医療保険で毎日の訪問が可能になる。在宅の現場ではよく使われる仕組みだよ。では、全国に約50か所という記述はどうかな。
医学生医学生
50か所だと都道府県に1つくらいですよね。在宅療養を支えるには少なすぎる気がします。
ドクタードクター
その感覚で正しい。出題当時でも全国に約6,000か所規模あり、在宅医療の推進に伴って増え続け、近年は1万か所を大きく超えている。桁がまったく違うんだ。
医学生医学生
管理者は医師でなければならない、というのも違いそうです。ステーションには医師がいないイメージがあります。
ドクタードクター
そう、管理者は原則として常勤の保健師または看護師と運営基準で定められている。看護職員は常勤換算で2.5人以上必要で、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士が所属することもある。医師はステーションの外にいる主治医として、指示書を通じて医学的な指示を出すんだ。
医学生医学生
ということは、医師の指示書なしで利用できる、というのも誤りですね。病院から独立しているからといって、看護師さんだけの判断では始められない。
ドクタードクター
その理解でいい。訪問看護には保健師助産師看護師法でいう診療の補助を含む行為があるから、主治医の指示が不可欠だ。介護保険でも医療保険でも、ステーションからの訪問看護には主治医の訪問看護指示書が必要で、有効期間は最長6か月。ステーションはそれをもとに訪問看護計画書を作り、実施内容を報告書として主治医に返す。
医学生医学生
指示書、計画書、報告書で医師と看護師が情報をやりとりするんですね。
ドクタードクター
まさに。補足すると、病院や診療所の看護師がその医療機関の患者宅を訪問する場合は、同じ医療機関の医師の指示によるので、指示書の交付は要らない。区別しておこう。将来、在宅患者さんの主治医になれば、指示書を書くのは君たち自身だ。病状の変化を伝え、必要なら特別指示書を出す判断も求められるよ。
医学生医学生
在宅療養支援診療所や地域包括ケアシステムと組み合わせて、訪問看護が在宅医療の中心にあるとイメージできました。
ドクタードクター
いいまとめだね。制度の知識は、退院支援や在宅でのチーム医療をうまく動かすための道具だと思って覚えておこう。

まとめ

訪問看護ステーションは、看護師などが療養者の自宅を訪問してケアを行う事業所で、介護保険でも医療保険でも利用できます。要介護認定者は原則介護保険が優先されますが、末期がんや厚生労働大臣が定める疾病等、精神科訪問看護、特別訪問看護指示書の期間は医療保険となり、医療保険には年齢制限がないため小児や40歳未満の人も利用できます。管理者は常勤の保健師または看護師で医師である必要はなく、訪問の開始には主治医の訪問看護指示書(最長6か月)が必要です。事業所は全国に1万か所を超えて増加しており、在宅医療の中核を担っています。将来主治医として指示書を書く立場になることを意識して、保険の使い分けと指示書の仕組みを理解しておくことが大切です。

解答・解説

正解はaです

テーマ

訪問看護ステーションは、看護師などが療養者の自宅(居宅)を訪問し、病状の観察、服薬管理、褥瘡の処置、カテーテル類の管理、リハビリテーション、終末期のケア、家族への支援などを行う事業所である。病院や診療所に属さず独立して運営できるのが特徴で、1992年に高齢者を対象とする老人訪問看護制度として始まり、1994年からは健康保険法の改正により年齢を問わず利用できるようになった。2000年の介護保険制度の開始後は、介護保険の居宅サービスの一つにも位置づけられている。

正解を導く考え方

本問は、訪問看護の制度的な枠組みを押さえていれば解ける。確認すべきポイントは次の4つである。 1. 費用を賄う保険: 介護保険と医療保険の2本立てである(どちらが使われるかは利用者の年齢・要介護認定の有無・疾患・病状で決まる)。 2. 対象年齢: 医療保険による訪問看護には年齢制限がなく、小児も利用できる。 3. 運営体制: 管理者は常勤の保健師または看護師である。 4. 開始の条件: 主治医が交付する訪問看護指示書が必要である。 これらに照らすと、介護保険が利用できるとする記述が正しい。

選択肢考察

  1. ○a.  介護保険が利用できる。

    訪問看護は介護保険法に定められた居宅サービスの一つであり、要介護・要支援の認定を受けた人(要支援者は介護予防訪問看護)は介護保険で訪問看護ステーションの訪問看護を受けられる。要介護認定を受けている人は原則として介護保険が優先される。ただし、末期の悪性腫瘍、筋萎縮性側索硬化症(ALS)やパーキンソン病関連疾患など厚生労働大臣が定める疾病等の場合、急性増悪などで主治医が特別訪問看護指示書を出した場合(原則月1回、最長14日間)、精神科訪問看護の場合などは医療保険で行われる。このように介護保険と医療保険の両方が使われる。

  2. ×b.  40歳未満は利用できない。

    「40歳以上」という条件は介護保険の被保険者の年齢(65歳以上の第1号被保険者と、40〜64歳の第2号被保険者)であり、訪問看護そのものの利用条件ではない。40歳未満の人は医療保険によって訪問看護を利用できる。実際に、医療的ケアが必要な小児(人工呼吸器や経管栄養を要する重症心身障害児など)、神経難病や精神疾患をもつ若年者、若年のがん末期患者などが訪問看護を受けている。

  3. ×c.  全国に約50か所設置されている。

    訪問看護ステーションは全国に数千か所以上あり、約50か所という数は桁違いに少ない。本問出題時点(2011年頃)で約5,800か所、約6,000か所規模であった。在宅医療の推進に伴いその後も増え続け、2020年代には1万か所を大きく超えている。都道府県数(47)程度しかないという数では、在宅療養を支えることはできない。

  4. ×d.  管理者は医師でなければならない。

    介護保険法に基づく運営基準(指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準)では、訪問看護ステーションの管理者は原則として常勤の保健師または看護師と定められている。医師は管理者になる必要はなく、ステーションの外にいる主治医が訪問看護指示書を通じて医学的な指示を出す仕組みである。なお、看護職員は常勤換算で2.5人以上の配置が必要で、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が所属することもある。

  5. ×e.  医師の指示書なしで訪問看護を利用できる。

    訪問看護は、保健師助産師看護師法でいう「診療の補助」を含む医療行為を行うため、主治医の指示が不可欠である。訪問看護ステーションが訪問看護を始めるには、介護保険・医療保険のいずれの場合も、主治医から交付される訪問看護指示書(有効期間は最長6か月)が必要である。ステーションはこれに基づいて訪問看護計画書を作り、実施内容を訪問看護報告書として主治医に報告する。

訪問看護の提供主体

・訪問看護ステーションから看護師等が訪問する場合: 主治医の訪問看護指示書が必要。 ・病院・診療所の看護師が、その医療機関の患者宅を訪問する場合: 同じ医療機関の医師の指示による(指示書の交付は不要)。

介護保険と医療保険の使い分け(概要)

・介護保険: 要介護・要支援の認定を受けた人。65歳以上(第1号被保険者)は原因を問わず、40〜64歳(第2号被保険者)は特定疾病(16疾病。末期がん、関節リウマチ、ALS、脳血管疾患など)による場合に限る。 ・医療保険: 40歳未満の人、要介護認定を受けていない人、要介護認定があっても厚生労働大臣が定める疾病等(末期の悪性腫瘍、多発性硬化症、重症筋無力症、ALS、パーキンソン病関連疾患、人工呼吸器を使用している状態など)に該当する人、特別訪問看護指示書が出された期間、精神科訪問看護。 ・どちらにも当たらない場合は自費で利用することもある。

特別訪問看護指示書

急性増悪、終末期、退院直後などで頻回の訪問看護が必要なときに主治医が交付する。原則として月1回、最長14日間まで、医療保険により毎日の訪問が可能になる。

在宅医療を支える他の仕組み

在宅療養支援診療所(24時間の往診・連絡体制をもつ診療所)、機能強化型訪問看護ステーション、地域包括ケアシステムなどがあり、訪問看護はその中核の一つである。

POINT

・訪問看護は介護保険でも医療保険でも利用できる(要介護認定者は原則介護保険優先)。 ・医療保険によれば年齢制限はなく、小児も利用できる。 ・管理者は常勤の保健師または看護師(医師である必要はない)。 ・訪問看護ステーションからの訪問看護には主治医の訪問看護指示書が必要。 ・事業所数は全国で数千〜1万か所以上と多く、増加している。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。