痛くない、ゴムのように硬い―触診で見抜く悪性リンパ腫のリンパ節
第107回医師国家試験 G問題 第21問
国試問題にチャレンジ
悪性リンパ腫のリンパ節の所見として典型的なのはどれか。
- a.圧痛
- b.自発痛
- c.弾性硬
- d.熱感
- e.癒着
対話形式の解説
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医学生
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ドクターまとめ
悪性リンパ腫のリンパ節は、無痛性で、消しゴムのような弾力のある硬さ(弾性硬)をもち、初期には可動性が保たれるのが典型です。これはリンパ腫細胞がリンパ節を均一に置き換えて増殖するためで、圧痛・自発痛・熱感を伴う軟らかい炎症性腫脹や、石様硬で周囲と癒着する癌のリンパ節転移とは触感が異なります。硬さを「炎症(軟)<悪性リンパ腫(弾性硬)<癌転移(石様硬)」と整理し、鎖骨上窩の腫脹や2cm前後以上の持続性腫大など悪性を疑う特徴も併せて押さえておくと鑑別に役立ちます。触診はあくまで疑いの強さを判断する入り口であり、悪性リンパ腫が疑われればB症状を確認し、リンパ節生検で確定診断へ進むことが重要です。
解答・解説
正解はcです
リンパ節腫脹(リンパ節が腫れて触れる状態)を診察するときは、大きさ・硬さ・痛みの有無・熱感・可動性(周囲組織との癒着の有無)・分布を確認し、原因が炎症(感染症など)か、腫瘍(悪性リンパ腫、癌のリンパ節転移)かを推定する。 触診所見の典型的なパターンは次のように整理できる。 ・炎症性(反応性)リンパ節腫脹:軟らかい〜やや弾性があり、圧痛・自発痛・熱感を伴い、可動性は保たれることが多い。急速な腫大によってリンパ節の被膜が引き伸ばされ、また炎症性メディエーターが働くことで痛みが生じる。 ・悪性リンパ腫:痛みのない(無痛性)、ゴムのような弾力のある硬さ(弾性硬)で、初期には可動性が保たれることが多い。腫瘍細胞がリンパ節内でびまん性に増殖し、内部が均一な充実性の組織に置き換わるため、この独特の触感になる。 ・癌のリンパ節転移:石のように硬く(骨様硬・石様硬)、無痛性で、被膜外へ浸潤して周囲組織と癒着し、可動性が乏しい。癌細胞の浸潤に伴って線維化(間質の増生)が起こるため硬くなる。 本問は悪性リンパ腫に「典型的な」所見を問うている。無痛性・弾性硬・可動性ありが教科書的な組み合わせであり、選択肢の中で該当するのは弾性硬である。
選択肢考察
- ×a. 圧痛
圧痛は炎症性(反応性)リンパ節腫脹を示唆する所見である。細菌・ウイルス感染などでリンパ節が急速に腫れると被膜が伸展され、押すと痛む。悪性リンパ腫のリンパ節は無痛性が典型である。ただし腫瘍の周囲のリンパ節が二次的に反応性腫大を起こした場合や、急速に増大する高悪性度リンパ腫では痛みを伴うことがあり、あくまで典型像ではないという位置づけである。
- ×b. 自発痛
何もしなくても痛む自発痛は、急性化膿性リンパ節炎など炎症の強いリンパ節腫脹でみられる所見である。悪性リンパ腫のリンパ節は通常、自発痛を伴わない。なお、Hodgkinリンパ腫では飲酒後に病変部が痛む(アルコール誘発痛)という特殊な現象が知られているが、頻度は低く典型所見とはいえない。
- ○c. 弾性硬
悪性リンパ腫ではリンパ腫細胞がリンパ節全体を均一に置き換えるように増殖するため、消しゴムやゴムのような弾力をもった硬さ(弾性硬)として触れる。正常のリンパ節や炎症性腫脹(軟らかい)より硬く、癌転移(石様硬)ほど硬くはない中間的な硬さであり、無痛性・可動性ありと合わせて悪性リンパ腫の典型的所見である。
- ×d. 熱感
局所の熱感は炎症に伴う血管拡張・血流増加によるもので、感染症などによる炎症性リンパ節腫脹の所見である。腫瘍性に腫大したリンパ節は通常、熱感を伴わない。悪性リンパ腫で発熱(B症状の一つ)がみられることはあるが、これは全身症状であり、リンパ節局所の熱感とは別である。
- ×e. 癒着
周囲組織との癒着(可動性不良)は、癌細胞が被膜を越えて浸潤する癌のリンパ節転移に典型的な所見であり、石様硬と組み合わさることが多い。悪性リンパ腫のリンパ節は、少なくとも初期には可動性が保たれるのが典型である。病変が進行して大きくなると、周囲組織を巻き込んだり、複数のリンパ節が融合して塊を作ったりして可動性が低下することはあるが、典型所見とはいえない。
リンパ節腫脹の触診所見による鑑別
・炎症性(感染症など):軟〜弾性軟、圧痛・自発痛あり、熱感あり、可動性あり。発赤を伴うこともあり、化膿すると波動を触れる。 ・悪性リンパ腫:弾性硬、無痛性、可動性あり(進行例では融合・癒着することもある)。 ・癌のリンパ節転移:石様硬(骨様硬)、無痛性、周囲と癒着して可動性不良。 ・結核性リンパ節炎:初期は弾性硬で、進行すると互いに癒着・融合し、乾酪壊死により軟化・自壊して瘻孔を形成することがある。
悪性病変を疑うリンパ節の特徴
一般に、径が大きい(目安として1.5〜2cm以上)、痛みがない、硬い、周囲と癒着している、数週間以上持続・増大傾向がある、鎖骨上窩など通常腫れにくい部位にある、といった特徴は悪性を疑う根拠となる。特に左鎖骨上窩リンパ節転移はVirchow転移と呼ばれ、胃癌など腹部悪性腫瘍の転移を示唆する。
悪性リンパ腫の全身症状
悪性リンパ腫ではB症状(原因不明の38℃以上の発熱、寝汗、6か月以内の10%以上の体重減少)を伴うことがあり、病期分類(Ann Arbor分類、Lugano分類)で記載される。Hodgkinリンパ腫では皮膚瘙痒感や、周期的な発熱(Pel-Ebstein熱)がみられることもある。確定診断はリンパ節生検による病理組織診断で行う。
POINT
・悪性リンパ腫のリンパ節:無痛性・弾性硬・可動性あり。 ・炎症性リンパ節腫脹:軟、圧痛・自発痛・熱感あり。 ・癌のリンパ節転移:石様硬、無痛性、癒着して可動性不良。 ・硬さは「軟(炎症)<弾性硬(悪性リンパ腫)<石様硬(癌転移)」と覚える。
