StudyMed医師国家試験

人名の症候群は「一言の本態」で攻略―体質性黄疸からガストリノーマまで消化器の名前つき症候群を整理する

第107回医師国家試験 A問題 第7問

国試問題にチャレンジ

第107回 A問題 第7問

症候群と病態・疾患の組合せで正しいのはどれか。

  1. a.Boerhaave症候群 ―― 好酸球性胃腸炎
  2. b.Dubin-Johnson症候群 ―― 消化管ポリポーシス
  3. c.Gardner症候群 ―― GIST〈gastrointestinal stromal tumor〉
  4. d.Gilbert症候群 ―― ビリルビン代謝異常
  5. e.Zollinger-Ellison症候群 ―― 膵・胆管合流異常症

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、人名がついた消化器系の症候群と、その本態を正しく結びつけられるかを問う知識問題だ。人名の症候群は丸暗記すると混乱しやすいけれど、「一言でいうと何か」を言えるようにしておけば迷わない。まずは5つを順番に見ていこう。
医学生医学生
正直、人名がついた症候群はCBTの勉強のときから苦手で、名前と中身がよく入れ替わってしまいます。
ドクタードクター
みんなそうだよ。だから今日は一つずつ「本態」と「臨床でどう出会うか」をセットにしよう。最初はBoerhaave症候群。これは何だったかな。
医学生医学生
嘔吐に関係する食道の病気だった気がします。Mallory-Weiss症候群と似ていたような……。
ドクタードクター
いいところまで来ているね。Boerhaave症候群は特発性食道破裂だ。飲酒後などの激しい嘔吐で食道内圧が急に上がり、食道壁が全層性に裂ける。好発部位は解剖学的に弱い下部食道の左壁。嘔吐、胸痛、皮下気腫がそろえばMacklerの三徴と呼ばれる。縦隔炎や膿胸から敗血症に進みうるので、緊急手術になることが多いんだ。
医学生医学生
Mallory-Weiss症候群は粘膜だけの裂創で、吐血が主症状でしたね。全層か粘膜だけかで重症度がまったく違うと。
ドクタードクター
その通り。好酸球性胃腸炎は消化管壁に好酸球が浸潤する炎症性疾患で、食道破裂とは関係がない。次はDubin-Johnson症候群とGilbert症候群。この2つは同じグループに入るけれど、何のグループだろう。
医学生医学生
どちらも体質性黄疸です。生化学の講義でビリルビン代謝の図と一緒に習いました。
ドクタードクター
そう。体質性黄疸は、ビリルビンの肝細胞への取り込み、グルクロン酸抱合、胆汁中への排泄のどこかに先天的な異常がある疾患群だ。だから「ビリルビン代謝異常」と組み合わせるのは正しい。Gilbert症候群は抱合酵素UGT1A1の活性が遺伝的に軽度低下していて、間接ビリルビン優位の軽い高ビリルビン血症になる。
医学生医学生
Gilbert症候群が正解の組合せですね。でも、Dubin-Johnson症候群も体質性黄疸なのに、なぜ消化管ポリポーシスと組み合わされているんでしょう。
ドクタードクター
そこがひっかけだ。Dubin-Johnson症候群は抱合型ビリルビンを毛細胆管へ排出する輸送体MRP2の異常で、直接ビリルビン優位になる。肝細胞に色素が沈着して肝臓が黒っぽく見えるのが特徴だ。ポリポーシスとは無関係で、色素沈着を伴うポリポーシスといえばPeutz-Jeghers症候群のほう。「色素」という言葉つながりで混同しないようにね。
医学生医学生
黒色肝と口唇の色素斑、どちらも「色」なので確かに混ざりそうです。Gardner症候群はポリポーシスの仲間でしたよね。
ドクタードクター
そう、Gardner症候群は家族性大腸腺腫症の一亜型だ。APC遺伝子の生殖細胞系列変異で大腸に多数の腺腫ができ、そこに下顎骨などの骨腫、デスモイド腫瘍などの軟部腫瘍、歯牙異常が加わる。GISTはCajal介在細胞に由来する間葉系腫瘍で、KITやPDGFRAの変異が関わる。Gardner症候群の構成病変ではなく、GISTとの関連で知られるのは神経線維腫症1型やCarney三徴だ。
医学生医学生
最後のZollinger-Ellison症候群はガストリノーマですよね。膵・胆管合流異常症とは場所が近いだけで関係なさそうです。
ドクタードクター
正解。ガストリノーマが高ガストリン血症と胃酸の過剰分泌を起こし、多発性で治りにくい消化性潰瘍や下痢をきたす。十二指腸球部より肛門側のような非典型的な部位に潰瘍ができるのがヒントになる。腫瘍は膵臓だけでなく十二指腸にも好発し、MEN1に合併することもある。膵・胆管合流異常症は膵管と胆管が十二指腸壁の外で合流する先天異常で、胆道癌や胆道拡張症と関連する別の病態だ。
医学生医学生
整理すると、Boerhaaveは食道破裂、Dubin-JohnsonとGilbertは体質性黄疸、GardnerはFAPの亜型、Zollinger-Ellisonはガストリノーマ、ということですね。
ドクタードクター
完璧だね。発展として体質性黄疸をもう少し整理しておこう。間接ビリルビン優位なのはGilbert症候群とCrigler-Najjar症候群。Crigler-Najjar症候群I型はUGT1A1がほぼ欠損して新生児期から重い黄疸と核黄疸の危険があり、II型はフェノバルビタールで酵素が誘導されて黄疸が軽くなる。直接ビリルビン優位なのはDubin-Johnson症候群とRotor症候群で、Rotor症候群は肝への再取り込みの障害で色素沈着はない。
医学生医学生
臨床実習の消化器内科で、健診で軽い黄疸を指摘された若い人がGilbert症候群と言われていました。絶食で悪くなると聞きました。
ドクタードクター
まさに典型例だ。Gilbert症候群は人口の数%にみられ、空腹や疲労、感染で軽く黄疸が出る。溶血や肝機能障害がなければ治療は不要で予後良好だから、不要な精査や不安を避けるためにも、間接ビリルビン優位で他の異常がないことを確認して説明できることが大切だよ。一方でBoerhaave症候群のように見逃すと命に関わるものもある。嘔吐後の激しい胸痛では、心筋梗塞や大動脈解離と並んで食道破裂を必ず鑑別に入れてほしい。

まとめ

人名を冠した消化器の症候群は、それぞれの本態を一言で言えるようにしておくのが攻略の近道です。Boerhaave症候群は嘔吐による特発性食道破裂、Gardner症候群は骨腫・軟部腫瘍を伴う家族性大腸腺腫症、Zollinger-Ellison症候群はガストリノーマによる難治性消化性潰瘍であり、Gilbert症候群とDubin-Johnson症候群はビリルビン代謝異常による体質性黄疸です。体質性黄疸は、間接ビリルビン優位(Gilbert、Crigler-Najjar)と直接ビリルビン優位(Dubin-Johnson、Rotor)に分けて、障害される段階とともに整理すると理解しやすくなります。良性で治療不要のGilbert症候群から、緊急手術を要するBoerhaave症候群まで重症度は大きく異なるため、本態を正確に押さえることは試験対策だけでなく臨床判断の基礎にもなります。

解答・解説

正解はdです

人名を冠した消化器系の症候群について、その本態を正しく結び付けられるかを問う知識問題である。各症候群の本態を一言で言えるようにしておけば、組合せの正誤はすぐに判断できる。 ・Boerhaave症候群:嘔吐に伴う特発性食道破裂 ・Dubin-Johnson症候群:直接ビリルビン優位の体質性黄疸 ・Gardner症候群:骨腫・軟部腫瘍を伴う家族性大腸腺腫症 ・Gilbert症候群:間接ビリルビン優位の体質性黄疸 ・Zollinger-Ellison症候群:ガストリノーマによる胃酸分泌亢進と難治性消化性潰瘍 このうち体質性黄疸は、ビリルビンの肝細胞への取り込み・グルクロン酸抱合・胆汁中への排泄のいずれかの段階に先天的な異常がある疾患群であり、ビリルビン代謝異常と組み合わせるのは正しい。

選択肢考察

  1. ×a.  Boerhaave症候群 ―― 好酸球性胃腸炎

    誤り。Boerhaave症候群は特発性食道破裂のことである。飲酒後などの激しい嘔吐で食道内圧が急上昇し、食道壁が全層性に裂ける。解剖学的に弱い下部食道の左壁に好発する。嘔吐後の激しい胸痛・上腹部痛、皮下気腫・縦隔気腫が典型で(嘔吐・胸痛・皮下気腫はMacklerの三徴と呼ばれる)、縦隔炎・膿胸から敗血症に至りうるため緊急手術を要することが多い。粘膜のみの裂創であるMallory-Weiss症候群とは区別する。好酸球性胃腸炎は消化管壁への好酸球浸潤による炎症性疾患で、Boerhaave症候群とは無関係である。

  2. ×b.  Dubin-Johnson症候群 ―― 消化管ポリポーシス

    誤り。Dubin-Johnson症候群は常染色体劣性遺伝の体質性黄疸であり、抱合型ビリルビンを肝細胞から毛細胆管へ排出する輸送体MRP2(multidrug resistance-associated protein 2)の異常により、直接ビリルビン優位の高ビリルビン血症をきたす。肝細胞内にメラニン様色素が沈着して肝臓が黒色調を呈すること、BSP(ブロムスルファレイン)試験で一度低下した血中濃度が再上昇することが特徴である。消化管ポリポーシスとは関係がない(皮膚・口唇の色素沈着を伴うポリポーシスはPeutz-Jeghers症候群である)。

  3. ×c.  Gardner症候群 ―― GIST〈gastrointestinal stromal tumor〉

    誤り。Gardner症候群は家族性大腸腺腫症(familial adenomatous polyposis:FAP)の一亜型であり、APC遺伝子の生殖細胞系列変異(常染色体優性遺伝)により大腸に多数の腺腫が発生し、これに骨腫(下顎骨・頭蓋骨など)、軟部腫瘍(デスモイド腫瘍、類表皮嚢胞など)、歯牙異常などを伴う。GISTは消化管の筋層にあるCajal介在細胞に由来する間葉系腫瘍でKITやPDGFRAの遺伝子変異が関与し、Gardner症候群の構成病変ではない。GISTとの関連で知られるのは神経線維腫症1型やCarney三徴である。

  4. ○d.  Gilbert症候群 ―― ビリルビン代謝異常

    正しい組合せである。Gilbert症候群は、ビリルビンをグルクロン酸抱合する酵素UGT1A1(UDP-グルクロン酸転移酵素)の活性が遺伝的に軽度低下しているため、間接(非抱合型)ビリルビン優位の軽度の高ビリルビン血症を呈する体質性黄疸である。頻度が高く(人口の数%)、思春期以降に空腹・絶食、疲労、感染などを契機に軽い黄疸として気づかれることが多い。溶血所見や肝機能障害を伴わず、予後は良好で治療は不要である。同じUGT1A1の異常でも活性がほぼ欠損するCrigler-Najjar症候群I型は重症となる。

  5. ×e.  Zollinger-Ellison症候群 ―― 膵・胆管合流異常症

    誤り。Zollinger-Ellison症候群はガストリン産生腫瘍(ガストリノーマ)によって高ガストリン血症と胃酸の過剰分泌が起こり、多発性・難治性の消化性潰瘍(十二指腸球部より肛門側の非典型部位にもできる)や下痢をきたす病態である。ガストリノーマは膵臓のほか十二指腸にも好発し、多発性内分泌腫瘍症1型(MEN1)に合併することがある。膵・胆管合流異常症は膵管と胆管が十二指腸壁外で合流する先天的な形成異常で、胆道癌や胆道拡張症と関連するが、Zollinger-Ellison症候群とは無関係である。

体質性黄疸の整理

・間接ビリルビン優位(抱合障害)  Gilbert症候群:UGT1A1活性の軽度低下。頻度が高く軽症で、絶食や疲労で増悪する。治療不要。  Crigler-Najjar症候群I型:UGT1A1活性がほぼ欠損。新生児期から重度の黄疸で核黄疸の危険がある。  Crigler-Najjar症候群II型:活性が高度に低下。フェノバルビタールで酵素が誘導され黄疸が軽減する。 ・直接ビリルビン優位(排泄・貯蔵障害)  Dubin-Johnson症候群:MRP2の異常。肝臓が黒色調。BSP試験で再上昇がみられる。  Rotor症候群:肝細胞への再取り込み(OATP1B1/1B3)の障害。肝の色素沈着はない。

消化管ポリポーシスの主なもの

・家族性大腸腺腫症(Gardner症候群を含む):APC遺伝子、腺腫性。放置すればほぼ全例で大腸癌を発症する。 ・Peutz-Jeghers症候群:過誤腫性ポリープと口唇・口腔粘膜・指趾の色素斑。 ・若年性ポリポーシス、Cowden病:過誤腫性。 ・Cronkhite-Canada症候群:非遺伝性で、脱毛・爪甲萎縮・皮膚色素沈着を伴う。

食道破裂と食道裂創

Boerhaave症候群は全層性の破裂で縦隔気腫・縦隔炎を起こす重篤な病態、Mallory-Weiss症候群は嘔吐による食道胃接合部付近の粘膜裂創で吐血を主症状とし、多くは保存的治療や内視鏡的止血で改善する。

POINT

・Boerhaave症候群=嘔吐による特発性食道破裂(下部食道左壁)。 ・Gilbert症候群=UGT1A1活性低下による間接ビリルビン優位の体質性黄疸。 ・Dubin-Johnson症候群=MRP2異常による直接ビリルビン優位の体質性黄疸、黒色肝。 ・Gardner症候群=家族性大腸腺腫症+骨腫・軟部腫瘍。 ・Zollinger-Ellison症候群=ガストリノーマ(膵・十二指腸)による難治性潰瘍、MEN1との関連。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。