StudyMed医師国家試験

同じ用紙、違う書類―死体検案書の「誰が・いつ・何のために」を整理する

第106回医師国家試験 H問題 第10問

国試問題にチャレンジ

第106回 H問題 第10問

死体検案書について正しいのはどれか。

  1. a.死因統計の資料となる。
  2. b.歯科医師も交付できる。
  3. c.死亡診断書と同時に交付できる。
  4. d.検案をした医師以外の医師も交付できる。
  5. e.検案日と検案書交付日とは同一でなくてはならない。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は死体検案書についての問題だ。医師になると早い段階で書く機会がある書類だけれど、学生のうちは死亡診断書との違いがあいまいになりがちだね。着眼点は、どんな場面で交付するのか、誰が交付できるのか、そして書いた内容が何に使われるのか、の3つだ。
医学生医学生
法医学の講義で習った気はするんですが、死亡診断書と死体検案書の使い分けがすっきりしません。
ドクタードクター
まずそこから整理しよう。どちらを書くかは、亡くなった人と医師との関係で決まる。自分が診療していた患者が、その診療していた傷病に関連して亡くなったなら死亡診断書。それ以外、たとえば診療したことのない人が亡くなった場合や、通院中の患者でも交通事故のように診療中の病気と関係ない原因で亡くなった場合には、死体を外表から調べて死亡の事実や時期、原因を医学的に判断する「検案」を行い、死体検案書を交付する。
医学生医学生
なるほど、通院中の患者さんでも外因死なら検案書になるんですね。
ドクタードクター
そう。そして大事なのは、両者がまったく同じ様式の用紙を使っていること。表題が「死亡診断書(死体検案書)」となっていて、使わないほうを二重線で消すんだ。
医学生医学生
ということは、1人の死亡に対してどちらか一方だけを出すのであって、両方同時に交付することはないわけですね。
ドクタードクター
その通り。だから「死亡診断書と同時に交付できる」は誤りだ。では、誰が交付できるかに進もう。歯科医師はどうだと思う?
医学生医学生
歯科医師も死亡診断書は書けると聞いたので、検案書も書けそうな気がします。
ドクタードクター
そこが落とし穴だね。歯科医師法には、自ら診療していた患者についての死亡診断書の規定はあるけれど、死体検案書の規定はない。つまり死体検案書を交付できるのは医師だけなんだ。災害時などに歯科医師が身元確認のために歯の所見を取ることはあるけれど、それは検案書の交付とは別の行為だよ。
医学生医学生
検案した医師以外が交付するのはどうですか。たとえば当直医が検案して、翌朝の担当医が書類を書くような場面です。
ドクタードクター
それは認められない。医師法第20条で、医師は自ら検案しないで検案書を交付してはならないと定められている。実際に死体を見て判断した医師が、自分の責任で作成・交付するのが原則だ。他の医師の所見を伝え聞いただけで書くことはできない。
医学生医学生
日付についてはどうでしょう。検案したその日に交付しないといけないのかと思っていました。
ドクタードクター
そういう規定はないんだ。様式にも検案年月日と発行年月日が別々の欄として用意されていて、ずれることが想定されている。身元不明の遺体で身元判明を待つ場合や、解剖や検査の結果を待って死因を確定する場合など、検案の後日に交付されることは珍しくない。
医学生医学生
そうすると正しいのは、死因統計の資料になる、という点ですね。
ドクタードクター
正解。死亡診断書も死体検案書も、遺族が死亡届に添えて市区町村に提出し、その内容が人口動態統計の死因統計の基礎資料になる。死因はICD、つまり国際疾病分類に従って原死因で分類される。検案書は事故や自殺、他殺、原因不明の死亡を多く含むから、不慮の事故や自殺の統計を支える重要な情報源なんだ。
医学生医学生
公衆衛生の講義で出てきた死因順位のデータも、元をたどればこの書類なんですね。
ドクタードクター
そういうこと。だからこそ記載の質が大事で、「心不全」「呼吸不全」のような終末像だけを書くのは避け、直接死因から原死因へと因果関係をさかのぼって、できるだけ具体的に書く必要がある。書類1枚が国の保健医療政策の根拠になると思うと、責任の重さがわかるよね。
医学生医学生
検案して異状があった場合は警察への届出も必要でしたよね。
ドクタードクター
よく覚えているね。医師法第21条で、死体または妊娠4か月以上の死産児を検案して異状を認めたときは、24時間以内に所轄警察署に届け出なければならない。届出と検案書の交付は別の手続きで、届出の後に検視や解剖が行われ、その結果を踏まえて検案書が作られることもある。もう一つ、医師法第20条ただし書きの「受診後24時間以内の死亡なら改めて診察しなくても死亡診断書を交付できる」という規定は、24時間を超えたら診断書が書けないという意味ではない。死後に改めて診察し、診療中の傷病に関連する死亡と判断できれば死亡診断書を交付できる、と通知で示されているよ。
医学生医学生
「24時間を過ぎたら必ず警察」と思い込んでいました。届出の要否は異状の有無で判断するんですね。
ドクタードクター
その通り。死亡届は届出義務者が死亡を知った日から7日以内に出すものだから、遺族のためにも適切な書類を速やかに用意したい。臨床実習で看取りに立ち会う機会があったら、指導医がどちらの書類を選び、どう記載しているかぜひ見ておこう。

まとめ

死体検案書は、診療中でなかった人の死亡や、診療中の傷病と関係のない死亡(外因死など)において、医師が死体を検案したうえで交付する書類で、死亡診断書と同じ様式を用い、どちらか一方のみを交付します。死亡届に添付されて市区町村に提出され、人口動態統計の死因統計の資料となり、ICDに基づく原死因で分類されます。交付できるのは医師のみで(歯科医師は死亡診断書のみ交付可)、医師法第20条により自ら検案しない医師は交付できず、検案日と交付日が異なっても構いません。また、検案で異状を認めた場合は医師法第21条により24時間以内に所轄警察署へ届け出る必要があります。死亡に関する書類の法的な位置づけと記載の意義を理解することは、看取りや救急の現場で適切に対応し、正確な死因統計を支えるための基本です。

解答・解説

正解はaです

本問は、死体検案書の役割と交付に関する法的な決まりを問う一般問題である。

死亡診断書と死体検案書の使い分け

人の死亡を医学的・法律的に証明する書類には、死亡診断書と死体検案書の2種類があり、同じ様式の用紙を用いる。どちらを交付するかは、死亡した人と医師との関係で決まる。 ・死亡診断書: 医師(または歯科医師)が診療していた患者が、その診療に関連する傷病で死亡した場合。 ・死体検案書: 診療中の患者以外の者が死亡した場合、または診療中の患者であっても診療していた傷病と関係のない原因(外因死など)で死亡した場合。医師が死体を外表から調べ、死亡の事実・時期・原因などを医学的に判断すること(検案)を行ったうえで交付する。

法的な根拠

・医師法第19条第2項: 診察・検案をした医師は、死亡診断書・死体検案書の交付を求められた場合、正当な事由がなければ拒んではならない。 ・医師法第20条: 医師は自ら診察しないで診断書を、自ら検案しないで検案書を交付してはならない(無診察・無検案での交付の禁止)。 ・歯科医師法には死亡診断書の規定はあるが、死体検案書の規定はない。すなわち死体検案書を交付できるのは医師のみである。

統計上の役割

死亡診断書・死体検案書は、遺族が死亡届とともに市区町村に提出し、その記載内容が人口動態統計(死因統計)の基礎資料となる。死因は国際疾病分類(ICD)に従って分類・集計され、国内外の保健医療政策の基盤となる。 以上を踏まえると、各選択肢のうち死体検案書の性質として正しいのは「死因統計の資料となる」である。

選択肢考察

  1. ○a.  死因統計の資料となる。

    正しい。死体検案書は死亡診断書と同様に、死亡届に添付されて市区町村に提出される。記載された「死亡の原因」欄などの情報は、厚生労働省が作成する人口動態統計の死因統計の資料となり、ICD(国際疾病分類)に基づいて原死因が分類される。死体検案書は外因死(事故・自殺・他殺など)や原因不明の死亡を多く含むため、不慮の事故や自殺の統計においても重要な情報源である。このため、「心不全」「呼吸不全」のような死亡に至る最終的な状態(終末像)だけを書くのではなく、死亡の原因となった疾患や外因をできる限り具体的に記載することが求められる。

  2. ×b.  歯科医師も交付できる。

    誤りである。歯科医師法は、歯科医師が自ら診療していた患者について死亡診断書を交付することを認めているが、死体検案書についての規定はなく、歯科医師は死体の検案を行って検案書を交付することはできない。死体検案書を交付できるのは医師に限られる。なお、歯科医師が身元確認のために歯科所見を採取することはあるが、これは検案書の交付とは別の行為である。

  3. ×c.  死亡診断書と同時に交付できる。

    誤りである。死亡診断書と死体検案書は同一の様式で、表題が「死亡診断書(死体検案書)」となっており、交付する側でない方を二重線で消して用いる。一人の死亡について、状況に応じてどちらか一方を交付するものであり、両者を同時に交付することはない。診療中の患者がその傷病で死亡したなら死亡診断書、それ以外なら死体検案書を選ぶ。

  4. ×d.  検案をした医師以外の医師も交付できる。

    誤りである。医師法第20条により、医師は自ら検案しないで検案書を交付してはならない。死体検案書は、実際に死体を検案した医師が、自らの判断に基づいて作成・交付する。他の医師の所見を伝え聞いただけで交付することは認められない。

  5. ×e.  検案日と検案書交付日とは同一でなくてはならない。

    誤りである。検案日と交付日が同じでなければならないという規定はない。死体検案書の様式には検案年月日と発行年月日を別々に記載する欄があり、両者が異なることは想定されている。実際、検案の翌日以降に交付されることや、身元不明の遺体で身元が判明するのを待って交付されることもある。また、解剖や検査結果を待って死因を確定する場合もある。

死亡診断書と死体検案書の比較

死亡診断書: 自ら診療していた患者が、診療中の傷病に関連して死亡した場合に交付。医師・歯科医師が交付できる。 死体検案書: 上記以外(診療中でなかった者の死亡、診療中の傷病と無関係な死亡、外因死など)で、死体を検案した医師が交付。医師のみが交付できる。

医師法第20条ただし書きとその解釈

診療中の患者が受診後24時間以内に死亡した場合は、改めて死後に診察しなくても死亡診断書を交付できる。ただし、これは24時間を超えたら死亡診断書を交付できないという意味ではない。24時間を超えていても、死後に改めて診察を行い、生前に診療していた傷病に関連する死亡と判断できれば死亡診断書を交付できる(厚生労働省通知)。診療中の傷病と関連しない死亡と判断されれば、死体検案書を交付する。

異状死体の届出(医師法第21条)

医師は、死体または妊娠4か月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは、24時間以内に所轄警察署に届け出なければならない。異状死の届出と検案書の交付は別の手続きであり、届出後に警察の検視・調査や解剖(司法解剖、死因・身元調査法に基づく解剖、監察医による行政解剖など)が行われ、その結果を踏まえて死体検案書が作成されることがある。

死亡届と統計の流れ

届出義務者(同居の親族など)は、死亡の事実を知った日から7日以内(国外での死亡は3か月以内)に、死亡診断書または死体検案書を添付して市区町村長に死亡届を提出する(戸籍法)。死亡届の情報は人口動態調査票として保健所・都道府県を経て厚生労働省に送られ、人口動態統計の死因統計として集計される。死因は原死因(直接に死亡を引き起こした一連の事象の起因となった疾病・損傷)に基づき、ICDに従って分類される。

記載上の注意

・死亡の原因欄には、直接死因から原死因へとさかのぼる因果関係の順に記載する。 ・「心不全」「呼吸不全」など終末期の状態のみを書くことは避ける。 ・死因の種類(病死・自然死、外因死の内訳、不詳の死)を選択する欄がある。 ・訂正する場合は二重線で消し、訂正箇所に押印(または署名)する。

POINT

・死体検案書は死亡診断書と同様に、死因統計(人口動態統計)の資料となる。 ・死体検案書を交付できるのは医師のみ(歯科医師は死亡診断書のみ交付可)。 ・自ら検案しないで検案書を交付してはならない(医師法第20条)。 ・死亡診断書と死体検案書は同じ様式を用い、どちらか一方のみを交付する。 ・検案日と交付日が異なってもよい。 ・異状を認めたら24時間以内に所轄警察署へ届け出る(医師法第21条)。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。